リバースエンジニアリングの方法や注意点について解説

製品の開発現場では、製品の分析や研究に逆行分析という手法が用いられています。
逆行分析とは具体的にどのような作業なのか、どのように進めていけばよいのか、イメージしづらい人もいるかもしれません。
そこで、ここでは逆行分析の概要と、実施する際の留意点について説明します。

• 逆行分析の概要
• 実施する際の留意点

項目	説明
逆行分析の概要	製品を分解し、その構造や仕組みを解明する作業のこと。競合製品の分析や、自社製品の改良のために行われる。
実施する際の留意点	製品の権利を侵害しないよう注意する 分解作業は慎重に行う 分析結果は適切に管理する

リバースエンジニアリングとは

製品の内部構造や動作原理を解明するために、既存の製品を分解したり、ソースコードを分析したりする作業をリバースエンジニアリングと呼びます。
製品の製造過程が簡単に理解できてしまうと、企業の技術が外部に流出し、模倣品が出回る恐れがあるため、製品は一般的に暗号化などの工夫がなされています。
そのため、リバースエンジニアリングを行うには、製品開発で一般的に使用される技術について知識を持つ必要があります。

リバースエンジニアリングの目的

リバースエンジニアリングの目的について説明します。

リバースエンジニアリングは全ての企業で実施されているわけではありません。
したがって、開発において必須の作業とは限りません。
しかし、リバースエンジニアリングに注力している企業は、相当な労力を費やしています。

そこまでリバースエンジニアリングに力を入れる理由は何でしょうか。

• 製品の品質向上
• 競合製品の分析
• 特許侵害リスクの回避
• 新製品開発の参考

などが挙げられます。

目的	内容
製品の品質向上	自社製品の不具合や欠陥を発見し、改善する
競合製品の分析	競合他社の製品を分析し、自社製品の差別化を図る
特許侵害リスクの回避	他社の特許を侵害していないかを確認する
新製品開発の参考	他社の優れた技術を参考に新製品を開発する

競合他社の技術力向上のためのリバースエンジニアリング

リバースエンジニアリングを実施することで、競合他社が製品開発に活用している技術を把握することができます。
特に業界をリードする企業では、以下のような点が特徴的です。

• 高い効率性と堅牢性を備えたシステムを構築する手法
• 未だ一般に普及していない先進的な技術が採用されている

このようなリバースエンジニアリングを通じて、トップ企業の優れた技術やノウハウを自社に取り入れることが可能となります。

リバースエンジニアリングによるマニュアル作成

企業内で長年使用されているシステムでは、マニュアルが古くなっていたり、存在しない場合があります。
そういった状況では、以下の対応を行います。

• 製品の内部構造を解析し、システムの動作原理を明らかにする
• 新しいマニュアルを作成する

この作業を通じて、製品の適切な利用方法を社内で共有することができます。

リバースエンジニアリングの活用

新製品の開発には多大な時間と労力が必要となります。しかし、既存製品を参考にすることで、開発期間の短縮と工程の簡素化が図れます。

• 他社製品の技術を分析し、基本部分は真似しつつ、独自の機能を付加することで、自社ブランドの製品として販売することができます。

システムの規模が大きければ大きいほど、このようなリバースエンジニアリングのメリットは大きくなります。

リバースエンジニアリングの方法

リバースエンジニアリングの手順を、分野ごとに解説しましょう。

まず、ソフトウェアの場合は、

• プログラムのコードを逆アセンブルして、アルゴリズムや設計を解析します。

ハードウェアでは、

• 製品を分解し、各部品の構造や配線を調べます。

生物学的なリバースエンジニアリングでは、

• 生物の構造や機能を詳細に観察し、その仕組みを理解することが目的です。

いずれの分野でも、対象を徹底的に分析し、その内部メカニズムを明らかにすることが重要です。

ハードウェアリバースエンジニアリングの実態

ハードウェアの内部構造を解明するには、通常、分解作業が伴います。この過程を経ることで、

• 製品の製造工程
• 回路設計の詳細

が明らかになるのです。

ソフトウェアのリバースエンジニアリング手法

ソフトウェアの仕様書は、しばしば公開されています。しかし、重要な技術情報を完全に公開すると、模倣品の製造や技術の不正流用などのリスクが高まります。
そのため、一般的には機密部分は暗号化やコード難読化によって隠蔽されています。
そこで、リバースエンジニアリング手法を用いて難読化された部分を解析し、開発や仕様書作成の参考にします。
ソフトウェアのリバースエンジニアリングには、以下の2つの手法があります。

• 逆アセンブル
• 逆コンパイル

それぞれアセンブリ言語とコンパイラ言語に対応した技術で、専用ツールを使うことで難読化された部分を可視化できます。

リバースエンジニアリングの注意点

逆アセンブルやデコンパイルなどのリバースエンジニアリング作業を行う際には、様々な留意事項があります。
これらを無視すると、法的リスクにさらされる可能性があります。
そこで、リバースエンジニアリングを適切に実施するための重要なポイントを説明しましょう。

• ソフトウェアのライセンス条項を確認し、リバースエンジニアリングが許可されているかどうかを確認する
• リバースエンジニアリングの目的が適法であることを確認する
• 機密情報の漏洩を防ぐための適切な措置を講じる
• リバースエンジニアリングの過程で生成された派生物の取り扱いに注意を払う

リバースエンジニアリングの適切な利用

リバースエンジニアリングそのものは法的に問題ありませんが、分析した技術を自社製品に無断で活用すると、著作権や特許権の侵害となる可能性があります。
企業はこうした模倣品対策として、自社技術に特許を取得しています。

• 特許製品のソースコードを無断で流用した製品を作成したり
• リバースエンジニアリングで得た情報を公開したりすると違法行為となります

他社の利益を不当に侵害するリバースエンジニアリングは控えめにし、開発の参考程度に留めることが賢明です。

リバースエンジニアリングの適切な利用について

ソフトウェアの内部構造を解析し、悪意ある目的で他者のシステムに被害を与えることは、法的に許されません。
セキュリティ上の問題点を特定するためにリバースエンジニアリングを行う場合は、

• 自社製品に限定し
• 他社の製品には適用しないよう注意が必要です。

リバースエンジニアリングに携わるには

リバースエンジニアリングに従事したいと考えている人もいるかもしれません。関連する求人は存在しますが、数は限られています。
リバースエンジニアリングは高度な専門性が求められるため、一般的な教育機関では学ぶ機会が少なく、必要なスキルを身につける方法に悩む人も多いでしょう。

リバースエンジニアリングで求められるスキルは分野によって異なりますが、基本的には設計などの上流工程の経験が3年から5年程度必要とされます。ただし、若手人材の育成を目指す企業もあり、経験年数が足りない場合は若手向けの求人を探すことをおすすめします。

しかし、知識だけでは他社製品に使用されている技術を特定することは難しく、実践的な経験が不可欠です。そのため、新しい分野を学ぶよりも、現在携わっている分野の知識と経験を深めることが重要です。

さらに、リバースエンジニアリングでは分析結果を設計書などの文書にまとめる必要があります。上流工程の経験に加え、

• 仕様書や設計書の作成経験があれば、市場における人材価値が高まるでしょう。

リバースエンジニアの働き方

リバースエンジニアリングの専門家を求める企業は、正社員よりもフリーランスの需要が高い傾向にあります。
製品の解析が終了すれば、リバースエンジニアの役割は一時的に終了するためです。
そのため、期間限定で雇用できるフリーランス人材への要求が増えています。

一方、正社員としてリバースエンジニアリングの分野で活躍したい場合、

• コーディング
• リファクタリング

など、幅広い技術を習得しながらキャリアを形成することが一般的です。
必要とされるスキルが多岐にわたるため、転職は難しくなる可能性がありますが、関連スキルを一つでも身に付けていれば採用に繋がる企業も存在します。
ぜひ挑戦してみる価値はあります。

まとめ

リバースエンジニアリングとは、既存の製品を分析し、その設計や使用技術を特定する手法です。
単なる知識だけでなく、豊富な経験が求められます。
製品を一から作り上げるのとは異なり、作業のイメージを掴みにくいかもしれません。
しかし、

• 新しい技術に触れられたり
• 他社のノウハウを知ることができるため

面白い仕事と言えるでしょう。
さらに、無限の選択肢から正解を探す作業は奥深く、考えることが好きな人に適した職業です。
リバースエンジニアリングに関心がある方は、ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」を活用してみてはいかがでしょうか。