還付申告制度の存在は知られていますが、自身が対象者に該当するかどうかが分からない人が多数います。
税務手続きは初心者にとって難解な部分も多く、無知は損失につながる可能性があるため、特にフリーランス(個人事業主)の方は学習しておくことをお勧めします。
本稿では、還付申告の概要をまとめました。
- フリーランス(個人事業主)が還付申告の対象となるケース
- 還付申告の手順
を解説しています。
本稿を読めば、還付申告の要否が判断でき、過払い税金の還付を受けられる可能性があります。
還付申告に関心のあるフリーランス(個人事業主)の方は、ご一読ください。
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還付申告の手順
所得税の過払い分を取り戻すための手続きが還付申告です。
就労者には所得税の納付義務がありますが、状況によっては超過納付となる場合があります。
前年度の超過納付分は還付申告を行うことで返金を受けられます。
- 個人事業主も還付申告の対象者となり得ます。
確定申告と還付申告の違い
所得税の計算結果によって、納税額が発生するか還付金が生じるかが異なります。自身で所得税額を算出し、税務署へ報告する手続きが確定申告です。
- 会社員の場合は勤務先が確定申告を代行します
- 個人事業主で事業収入が一定額を超えると自身で申告が義務付けられています
計算の結果、所得税額がマイナスとなれば、支払い済みの税金の還付を求める還付申告が可能になります。
還付申告は確定申告と同様の手順で行われますが、申告期限が異なり、還付申告は翌年から5年間の間であれば通年で受け付けられます。過去に還付申告を失念していた場合でも、まだ間に合う可能性があります。
年末調整と還付申告の違い
会社員と個人事業主では、所得税の計算方法が異なります。
会社員の場合、雇用主が代わりに税額を算出し、過払い分を調整します。
一方、個人事業主は自ら所得税の計算と申告を行わなければなりません。
つまり、
- 前者は雇用主が年末調整と確定申告を代行しますが、
- 後者はすべての手続きを自身で行う必要があります。
フリーランス(個人事業主)が還付申告の対象となる具体例
フリーランスや個人事業主が税金の還付を受けられる可能性がある状況を説明します。
前年に会社員を退職した際、源泉徴収額が過剰だった場合、あるいは予定納税額が多すぎた場合などが該当します。
ただし、これらの条件を満たしていても、必ずしも還付が認められるとは限りません。
- それぞれの事例について詳しく説明を加えていきましょう。
退職後の還付申告について
昨年、勤務先を離職した方は、源泉徴収税額が過剰に控除されている可能性があるため、還付申告の対象となる場合があります。
給与所得者は毎月の収入から所得税が天引きされており、事前に納税していることになります。
勤務を継続していれば、雇用主が年末調整を行い、過払い分は自動的に還付されます。
しかし、退職後にフリーランスとして個人事業を開始した場合、年末調整が行われないため、還付を受けるには自身で申告する必要があります。
前年度に離職した方は、還付申告の対象かどうかを確認することが賢明です。
開業初年度は多忙ですが、
- 還付申告や確定申告について事前に情報収集しておくこと
をお勧めします。
フリーランスの源泉徴収と還付申告
所得税の源泉徴収額が多額であれば、還付申告の対象となる可能性があります。
フリーランスやソロ事業主は、取引先によっては、毎月の支払いから所得税相当額が控除されることがあります。
源泉徴収を行った取引先は、フリーランスやソロ事業主に代わって所得税を国に納付しています。
この場合、所得税の前払いとなり、過剰納付分があれば還付申告ができます。
還付申告対象外でも、確定申告時には源泉徴収額を記載する必要があるため、フリーランスやソロ事業主は源泉徴収状況を確認しましょう。
源泉徴収の有無は業務内容によって異なり、
- 原稿執筆
- 講演
- 資格業務
などでは源泉徴収が必要となる傾向にあります。
源泉徴収対象業務の詳細は、国税庁ウェブサイトを参考にすると良いでしょう。
予定納税と還付申告
所得税の前払い制度である予定納税を利用した場合、実際の税額よりも多く支払ってしまうことがあります。そのような場合には、還付申告を行うことで過剰に支払った金額を取り戻すことができます。
この制度は、所得税の負担を分割して軽減するために設けられており、対象者は
- 前年の所得に基づいて算出された基準額が15万円以上の人
となります。
納付は
- 7月
- 11月
の2回に分けて行われます。
予定納税を活用することで、高額な税金を一括で支払う必要がなくなり、納税者の負担が軽減されます。
フリーランス(個人事業主)が還付申告(確定申告)をする際に必要な書類
フリーランス(個人事業主)が税金の還付を受けるための申告手続きで求められる書類を説明します。
主な必要書類は4種類です。
- 申告書
- 収支の内訳を示す書類
- 各種控除を証明する書類
- 源泉徴収された税金の額を示す書類
状況によっては、これら以外の書類の提出も求められる場合があります。
それぞれの書類の具体的な内容と作成方法について、次に詳しく説明していきます。
還付申告の手続き
所得税の還付を求める際も、確定申告と同様の書類が必要となります。
しかし、確定申告時とは異なり、還付金の振込先口座情報を記載する必要があります。
書類作成には、
- 国税庁の専用サイト
- e-Tax
- 会計ソフトウェア
などを活用すると手間が省けます。
確定申告書の収支内訳書
確定申告時に添付が求められる書類が収支内訳書です。この書類には、
- 源泉徴収を受けた取引先名と金額を記載しなければなりません。
ただし、青色申告を選択する場合は、収支内訳書ではなく青色申告決算書の作成と提出が義務付けられています。
控除証明書の重要性
国民健康保険や生命保険などで支払った金額を証する書類が控除証明書です。この証明書を活用することで、納税額を減らすことが可能となります。
確定申告の際には、控除証明書を添付し税務署へ提出する必要があります。
紛失した場合は再発行を受けなければなりませんので、大切に保管することが重要です。
源泉徴収票と支払調書の活用
所得税の納付額を示す書類が源泉徴収票です。会社員には勤務先から渡されますが、フリーランスや個人事業主の方も、前年に会社を退職していれば、この書類を提出することで納税額を減らせる可能性があります。
会社員からフリーランス・個人事業主に転身した場合、前職から受け取った源泉徴収票は確定申告時まで大切に保管しましょう。
一方、フリーランス・個人事業主としてクライアントから源泉徴収された際には、支払調書が交付されることがあります。ただし、支払調書の交付は義務付けられていないため、必ずしも渡されるとは限りません。支払調書が交付された場合のみ、確定申告書に添付する必要があります。
フリーランス(個人事業主)が還付申告(確定申告)を行う流れ
個人事業主がフリーランスとして税金の還付手続きを行う際の流れを説明します。
還付申告を行うには、以下の4つのステップを踏む必要があります。
- 帳簿を整理する
- 確定申告書類を作成する
- 税務署に書類を提出する
- 還付されたことを確認する
各ステップの詳細について、順を追って解説していきます。
確定申告の準備と帳簿の重要性
確定申告を行う前に、前年の収入、経費、控除額などの数値を正確に把握する必要があります。
申告書への記載に際しては、
- 請求書
- 領収書
- クレジットカード明細
- 公共料金の明細
などの関連書類を集めて整理する作業が欠かせません。
この作業を一度にまとめて行うのは大変なので、日頃から帳簿を付けておくことが賢明です。
クラウド会計ソフトを活用すれば、クレジットカード支払いの内容が自動的に集計されるなど、作業を効率化できます。
確定申告書類の作成方法
記帳作業と必要書類の準備が済めば、次は確定申告書類の作成に移ります。
確定申告書類は、以下の方法で作成できます。
- e-Taxを活用すると効率的に作成できます。
- e-Taxの利用が難しい場合は、確定申告書等作成コーナーを利用するのがよいでしょう。
- 確定申告書類の作成が困難な場合は、税理士に依頼することも選択肢の一つです。
還付申告を行う際は、確定申告書に銀行口座情報を記載する必要があります。
税務署への書類提出方法
必要な書類が整い次第、居住地を管轄する税務署へ提出しましょう。
提出先の税務署が分からない場合は、国税庁のウェブサイトで所在地を確認することができます。
書類は
- 窓口への持参
- 郵送での提出
も認められています。
確定申告の還付手続き
税務申告書類の提出後、概ね1〜2か月程度で指定の銀行口座に還付金が振り込まれます。
オンラインで申告を行えば、さらに早期の還付が期待できます。
これが還付申告の大まかな手順となります。
まとめ
この記事では、フリーランス(個人事業主)が還付申告を行う手順について説明しました。還付申告を実施することで、過払い分の税金が返金される可能性があります。
特に会社を退職して独立したばかりの方は、還付申告の対象となる可能性が高いため、所得額や源泉徴収税額などをあらかじめまとめておき、自身が対象者かどうかを確認することをおすすめします。
また、還付申告の対象でなくても、確定申告が必要な場合がありますので、確定申告期限が近づく前に、
- 帳簿の整理など準備を行っておくこと
が重要です。
還付申告や確定申告の手続きについて不明な点がある場合は、専門家に相談するのが賢明でしょう。