フリーランスは下請法を知っておこう!下請法の概要から深い知識まで徹底解説!

フリーランスとして活動する際、法的保護を受けられる「下請代金支払遅延等防止法」の存在を認識しておくことが重要です。
この法律は、発注企業から個人事業主への不当な取り扱いを防ぐ目的で制定されました。
契約時の条件や支払い期日などのルールを無視すれば、トラブルに巻き込まれる可能性があります。
本稿では、個人事業主が自身の権利を守るために必要な、この法律の概要や基本的な知識、活用方法について詳しく説明します。

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下請法とは?

下請法とは?

下請取引の適正化と下請事業者の権利保護を目指す法律が下請法です。独占禁止法の特別法として1956年に制定され、時代の変化に合わせて改正が重ねられてきました。

近年、フリーランスの増加に伴い、以下のようなトラブルが多発しています。

  • 報酬の遅延や未払い
  • 不当な値引き要求

そのため、フリーランスを法的に保護する観点から、

  • ガイドライン策定
  • 下請法の改正

が検討されています。

下請法の対象となる取引

下請法の対象となる取引

下請法の適用範囲は、主に4つの取引類型に分けられます。それぞれについて説明いたします。

  • 製品の製造、修理、情報成果物の作成、役務の提供に関する取引が対象となります。
  • 製造委託では、原材料や設計図面の支給の有無を問わず、製造行為そのものが下請取引に該当します。
  • 修理委託は、機械や設備の修理を請け負う場合が該当します。
  • 情報成果物作成委託では、プログラミングやデザイン、マニュアル作成などが対象となります。
  • 役務提供委託は、運送や保守、検査などのサービスを委託する場合に適用されます。

製造委託の概要

企業が製品の企画、品質基準、デザインなどを決定し、実際の製造工程や加工作業をフリーランスや中小企業などの外部事業者に委託することを製造委託といいます。
自動車や家電製品の部品や金型の製作を外注する場合がこれに当てはまります。
製造委託の対象となるのは、

  • 動産全般

を指し、

  • 不動産

は含まれません。

修理委託の概要

物品の機能回復を目的とする作業を、専門事業者に外注することを指します。修理作業の範囲は問われず、自社利用品の修繕でも対象となります。
ただし、

  • 点検
  • メンテナンス

などの作業は含まれません。
修理とは本来の機能を取り戻すことであり、それ以外の委託は該当しません。

情報成果物作成委託の概要

制作会社や提供業者が、情報製品の作成を外部に委託することを情報成果物作成委託と呼びます。
情報製品とは、

  • ソフトウェア
  • ウェブコンテンツ
  • 動画
  • 様々なデザイン

などを指します。
プログラムやアプリも情報製品に含まれるため、フリーランスエンジニアが企業から受注する案件の多くは、情報成果物作成委託に該当します。

アニメ制作 テレビ番組 ポスターデザイン 設計図

の外注も、情報成果物作成委託に分類されます。

役務提供委託の範囲

企業が受託した業務を第三者に委託することを役務提供委託といいます。

  • 輸送業務やソフトウェアサポートなどのサービスが該当します
  • 点検やメンテナンスなども含まれます

ただし、建設工事は建設業法の規定により対象外となります。
また、企業が自社の業務のために役務を委託する場合は、役務提供委託には当たりません。

親事業者(クライアント・企業)と下請事業者(フリーランス・個人事業主)の定義

親事業者(クライアント・企業)と下請事業者(フリーランス・個人事業主)の定義

企業と個人事業主の関係は、下請法の規定により、業務内容に応じて異なる基準で定められています。

  • 製造、修理、一定の情報処理や役務提供の委託では、親事業者は資本金3億円超、下請事業者は3億円以下または1千万円超の企業となります。
  • 一方、デザインや設計図面作成、ビルメンテナンス、コールセンター業務などの委託では、親事業者は資本金5千万円超、下請事業者は5千万円以下または1千万円超の企業と規定されています。

業務内容によって適用される基準が変わることに留意が必要です。

親事業者(クライアント・企業)が遵守する4つの義務

親事業者(クライアント・企業)が遵守する4つの義務

個人事業主やフリーランスなどの下請け業者の権利を守るために、親事業者には4つの責務が定められています。
現在、親事業者と契約関係にある個人事業主の方は、この機会に責務の内容を確認することをお勧めします。

  • 適正な給付金の支払い
  • 労働時間の適正な管理
  • 安全衛生の確保
  • 健康管理措置の実施

下請法に基づく3条書面の必要事項

フリーランスとして業務を行う際、事前の取り決めがないと問題が生じる可能性があります。
法令では、発注者がフリーランスに仕事を依頼する場合、必須事項を記載した発注書の即時発行が義務付けられています。この発注書は「3条書面」と呼ばれています。
3条書面に記載すべき必須項目は以下の通りです。

  • 発注者と受注者の名称
  • 委託日
  • 業務内容の詳細
  • 納品期限
  • 納品場所
  • 検査完了期日(検査がある場合)
  • 報酬額または算定方法
  • 支払期日
  • 手形の内容(手形支払いの場合)
  • 一括決済の内容(一括決済の場合)
  • 電子記録債権の内容(電子記録債権の場合)
  • 有償支給品の内容(有償支給がある場合)

見積書作成時に、これらの項目をすべて決めておくことが重要です。

下請法と支払期日

契約に基づき成果物を提出しても、発注者から代金の支払いがない事態に直面したことはありませんか。フリーランスにとって、支払い遅延は深刻な問題です。

下請法では、下請事業者の経営を守るため、支払期限を事前に定めることが義務付けられています。

  • 物品の場合、親事業者が受領した日から60日以内で、可能な限り短い期間内に支払わなければなりません。
  • 役務提供の場合は、役務を提供した日が起算日となります。

下請法における5条書類の記載事項

下請取引における記録保存の義務について説明します。
親事業者は、下請事業者との取引内容を文書化し、一定期間保存することが法令で定められています。
この文書は「5条書類」と呼ばれ、以下の事項を記載する必要があります。

  • 下請事業者の名称
  • 業務委託日
  • 給付内容
  • 納期
  • 受領日
  • 検査結果
  • 変更・やり直しの内容と理由
  • 下請代金の額と支払期日
  • 変更があれば変更後の額と理由
  • 実際の支払額・日・手段
  • 手形交付の場合はその内容
  • 一括決済の場合は金融機関からの貸付額等
  • 電子記録債権の場合はその額と期間
  • 有償支給品の内容と対価
  • 下請代金の残額
  • 遅延利息の額と支払日

このように、取引の透明性を確保するため、詳細な記録を残すことが義務付けられています。

下請事業者への遅延利息支払い義務

支払期限を過ぎても支払いが行われない場合、発注元企業は個人事業主などの受注者に対し、遅延金を支払わなければなりません。
遅延金の計算期間は、

  • 発注元が納品物を受け取ってから60日経過した日から
  • 実際に支払いがある日まで

です。
発注元は遅延日数に応じて、未払い金額に年14.6%の割合を乗じた金額を支払う義務を負います。

親事業者(クライアント・企業)の違法行為があった時の対応

親事業者(クライアント・企業)の違法行為があった時の対応

フリーランスや個人事業主が親事業者との取引で問題に直面した際、中小企業庁の「下請かけこみ寺」が支援を行っています。
この相談窓口では、

  • 企業間取引や下請法に精通したスタッフがアドバイスを提供します
  • 必要に応じて弁護士による無料相談や裁判外紛争解決手続(ADR)の利用も可能です

全国に48か所の窓口が設けられており、取引上の悩みを抱えるフリーランスや個人事業主は、最寄りの相談窓口に連絡することをお勧めします

フリーランスの下請け業務トラブル事例

フリーランスが請け負った業務において、親事業者との間でトラブルが発生した際の解決事例をご紹介します。

  • 事例1: 代金の一部しか支払われなかった案件で、相談員のアドバイスを受けて「債務残高確認書」を取り付け、後日残金を受領できました。
  • 事例2: 見積金額と異なる金額での支払い要求があり、「減額」は法令違反である旨を説明し、当初の契約金額通りの支払いを受けることができました。
  • 事例3: 追加作業の有無が争点となり、調停人を交えた話し合いの末、一部金額で和解が成立しました。

その他の事例については、活用事例集をご覧ください。

まとめ

まとめ

フリーランス(個人事業主)にとって、下請法の知識は重要です。
クライアントへの意見表明が難しいと感じる方もいるかもしれませんが、トラブル発生時の適切な対応のためにも、下請法を理解しておくことが賢明です。
フリーランス(個人事業主)も下請法の保護対象であり、その知識を活用することで有利に働くことができます。
法的知識を深め、フリーランスとしてのキャリアを積極的に構築していきましょう。
ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」では、スキルに合わせた案件を紹介してくれるので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。