業務委託契約に最低賃金は適用されるのか?

フリーランスと従業員の選択においては、収入面が大きな要素となります。
従業員やアルバイトには最低賃金制度がありますが、フリーランスが多く関わる業務委託契約では最低賃金の保証はありません。
本稿では、以下の点を解説します。

  • 最低賃金の概要
  • 業務委託契約における最低賃金の適用の有無
  • 契約内容の詳細

特に、以下の方はご一読ください。

  • 業務委託での最低賃金適用の有無に関心がある方
  • 最低賃金制度の理解を深めたい方
  • 業務委託契約の内容を知りたい方
  • 業務委託と雇用の違いを整理したい方

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最低賃金とは

最低賃金とは

国が定めた最低限の賃金基準があり、使用者はこの水準を下回る賃金を労働者に支払うことができません。
たとえ労働者と使用者の合意があったとしても、法的に無効となります。
最低賃金に満たない賃金しか支払われなかった場合、使用者は不足分を追加で支払う義務を負うことになります。

最低賃金の種類

最低賃金の種類

賃金の最低基準には、地域ごとに設定される「地域別最低賃金」と、特定の業種に従事する労働者を対象とした「特定産業別最低賃金」の2種類が存在します。

地域別最低賃金は、地域によって物価や賃金水準が異なることから導入されました。
一方、特定産業別最低賃金は、

  • 関係する労働者と使用者からの申請を受け、
  • 最低賃金審議会が地域別最低賃金よりも高い水準を設定する必要があると判断した特定の産業分野に対して定められます。

最低賃金を下回って支払った場合の影響

最低賃金を下回って支払った場合の影響

賃金が法定最低水準を下回った場合、使用者には制裁金が課されます。

  • 地域ごとの最低賃金を下回れば、最低賃金法に基づき50万円以下の罰金刑。
  • また、産業別の最低賃金を下回れば、労働基準法により30万円以下の罰金刑が科されます。

業務委託契約では最低賃金は適用されない

業務委託契約では最低賃金は適用されない

業務委託契約では最低賃金の規制は適用されません。この項目では、

  • 業務委託契約において最低賃金が除外される根拠と、
  • 業務委託契約における法的保護措置について説明します。

業務委託契約の実態

業務委託契約においては、労働者は雇用関係にはなく、特定の業務を請け負うだけの立場となります。
このため、労働基準法や最低賃金法の適用を受けることがありません。
そのため、発注者側は低額の報酬でも業務を依頼でき、労働者側もそれを引き受けることが可能な状況にあります。

業務委託契約における法的義務

外部委託の際は最低賃金法が適用されますが、下請法の規定も遵守する必要があります。
下請法では、

  • 発注内容や対価を明記した書面の交付
  • 取引記録の保存義務が発注者に課せられています

さらに、

成果物提出から60日以内に 発注者は報酬を支払わなければなりません

業務委託契約の詳細

業務委託契約の詳細

この節では、業務委託契約の性質を3種類に分けて説明します。
業務委託契約には法的な定義はありませんが、一般的には

  • 「委任契約」
  • 「準委任契約」
  • 「請負契約」

と呼ばれる3つの契約形態があります。
これらはいずれも発注元に雇用されているわけではなく、独立して仕事を遂行できますが、労働関連法規の適用外となります。

委任契約の概要と特徴

委託契約とは、契約当事者の一方が特定の法律行為を他方に依頼し、他方がこれを承諾することで成立する契約のことです。
この契約では、受託者の作業の完成ではなく、業務の遂行自体に対して報酬が支払われます。
つまり、契約内容に沿って業務を行えば対価が発生し、その結果が成功したか否かは問われない点が特徴的です。
ただし、そのため受託者側には「善管注意義務」が課され、業務遂行には細心の注意を払う必要があります。
例えば、

  • 弁護士が行う代理人業務は、委託業務に該当します。

準委任契約の概要と種類

準委任契約は、委託者が受託者に対し、法律行為以外の事務作業を依頼する契約形態です。
新人研修や各種セミナー、学習塾の講師業務などがこれに該当します。
報酬は業務の遂行自体に対して支払われ、成果物の有無は問われません。
実務上、委任契約よりも準委任契約の方が多用されています。
準委任契約には、以下の2種類があります。

  • 業務量や時間に応じて報酬が決まる「履行割合型」
  • 最終目標までの業務完遂に対して報酬が支払われる「成果完成型」

請負契約の概要

業務の完了を報酬支払いの条件とする契約が請負契約です。
報酬は業務の過程ではなく、成果物に対して支払われることが委任契約との違いです。
請負契約では一定の成果を出すことが求められ、発注者が期待する成果があれば報酬請求が可能になります。

  • ソフトウェア開発
  • ウェブサイト制作
  • 清掃業務

などがこれに該当します。
請負契約では成果物の納品期限と品質が重視され、作業時間の長短は問われません。

業務委託契約と雇用契約との違い

業務委託契約と雇用契約との違い

この節では、業務の外部発注と従業員の雇用との相違点を説明いたします。
業務委託契約は、特定の業務を外部の事業者に依頼する契約形態です。
一方、雇用契約は、労働者を直接雇用し、指揮命令下に置く関係を定めた契約です。
両者の主な違いは、

  • 指揮監督権の有無
  • 報酬の支払い方法
  • 社会保険の加入義務付けの有無

などにあります。
詳細は次節以降で解説します。

雇用契約の概要と労働者保護

労務提供と報酬支払いの合意を指す雇用契約では、従業員は法的保護を享受できます。

  • 社会保険や労働保険への加入
  • 有給休暇の権利
  • 解雇の制限
  • 最低賃金以上の賃金支払い

などが含まれます。
しかし、契約締結時の書面作成は義務付けられておらず、非正規雇用では雇用契約書が交付されないケースも多々あります。

雇用契約と業務委託契約の違い

労働関係における契約形態には、雇用契約業務委託契約の2種類があります。
前者の場合、従業員は使用者の指示に従い業務を遂行する義務があります。
一方、後者では作業の進め方や時間設定に拘束はなく、成果物の提出のみが求められます。
さらに、業務委託契約では労働関連法規の適用対象外となり、最低賃金などの保護を受けられないことも、雇用契約との相違点の1つと言えます。

業務委託契約における労働者性の判断基準

業務委託契約においては、通常、労働基準法の適用を受けることはできません。しかし、実際の状況によっては、労働者性が認められ、労働関連法規の保護対象となる可能性があります。

  • 勤務時間や場所が指定されている
  • 報酬が時間単位で算定されている
  • 上司から業務指示や評価を受けている

などの場合が該当します。

まとめ

まとめ

国が定めた最低限の賃金基準がありますが、これは雇用契約の場合のみ適用されます。業務委託契約では、発注者と受注者の合意があれば、いくら低い報酬でも契約は成立します。

業務委託には

  • 委任契約
  • 請負契約

など、様々な形態があり、性質も異なります。

雇用契約と業務委託契約の大きな違いは、使用従属性の有無です。これにより、適用される法律が変わってきます。

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