フリーランスエンジニアが注意しておきたいポイントを解説

従業員から独立した働き手へと移行する際、契約上の留意点を把握することが重要です。
特に「機密保持契約」の内容を正しく理解しておかないと、損害賠償などの深刻な問題に発展するリスクがあります。
会社に雇用されている場合とは異なり、フリーランスは自身の利益を守る必要があります。
機密保持契約の理解は、フリーランスとしての活動において欠かせないポイントとなるでしょう。
本稿では、機密保持契約の概要と、フリーランスエンジニアが注意すべき点について説明します。

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秘密保持契約の概要

秘密保持契約の概要

企業の機密データや顧客情報などの取り扱いについて定めた契約が秘密保持契約です。英語表記では「Non-disclosure agreement」と呼ばれ、「NDA」と略されることもあります。

  • 一般的には、機密情報の取り扱い方法、秘密保持義務の確認、開示された機密情報の利用目的などが記載されます。

守秘義務契約とは異なり、フリーランスエンジニアと企業が独自に設定する契約であり、法律で定められているものではありません。そのため、フリーランスはその内容を十分に確認した上で、契約を締結する必要があります。

秘密保持契約の目的と内容

企業は機密情報の保護を目的として、フリーランスエンジニアと事前に秘密保持契約を締結します。この契約には、以下の目的があります。

  • 会社の重要な情報が外部に漏れることを防止する
  • 提供された情報の利用範囲を明確にし、許可されていない使用を禁止することで、情報の不正利用を防ぐ
  • 機密情報の廃棄や返還に関する規定を設けることで、情報の適切な管理を図る

万が一、情報漏洩が発生した場合の補償についても定められています。
フリーランスエンジニアは、契約内容を確認し、禁止事項や機密情報の取り扱い方法を正しく理解する必要があります。

秘密保持契約の種類と留意点

秘密保持契約には、「一方向型」と「相互型」の2種類があります。

  • 一方向型とは、契約当事者の一方のみに義務を課す形式です。特に個人事業主の場合、不当な責任を押し付けられるリスクがあり、できれば回避すべき契約形態です。
  • 一方、相互型は企業側と個人事業主の双方が秘密保持条件を守ることを約束する契約方式です。互いに情報を開示する立場にあるため、対等な関係を築きやすくなります。

秘密保持契約の締結プロセス

機密情報の共有に先立ち、秘密保持契約の締結が求められることが一般的です。
企業側から提示された紙媒体または電子データの契約書の内容を確認し、双方の合意の上で契約が成立します。

  • 郵送された場合は記名押印の上返送し、
  • 電子契約の場合は電子署名等の方法で合意を示す必要があります。

秘密保持契約の注意点

機密保護に関する合意は、双方の同意に基づいて締結されるものです。フリーランスエンジニアには締結を強制される義務はありません。
合意内容に不自然な点があったり、報酬や業務範囲に納得がいかない場合は、再交渉を行い、内容の変更を求めることができます。
しかし、「機会を逃してはならない」という不安から、納得のいかない機密保護契約に署名してしまうフリーランサーも少なくありません。一度締結した機密保護契約は基本的に破棄できないため、その後も納得のいかない条件下で働き続けなければなりません。
このことは仕事へのストレスを高め、金銭的な不利益をもたらす可能性があります。機密保護契約の締結は強制されるものではないため、十分に検討した上で判断する必要があります。

秘密保持契約の内容や適用範囲とは

秘密保持契約の内容や適用範囲とは

企業やプロジェクトごとに秘密保持契約の条件や適用範囲は異なります。そのため、新たに秘密保持契約を締結する際には、

  • その都度、内容を入念に確認し、懸念される点がないかを精査することが肝要です。
  • 過去に交わした秘密保持契約と同一の内容や適用範囲であることは稀であり、契約書の詳細を逐一吟味する必要があります。

秘密保持契約を結ぶ際のチェックポイント

秘密保持契約を結ぶ際のチェックポイント

独立したエンジニアが機密保持契約を締結する際には、いくつかの重要な点を確認する必要があります。
契約を交わす前に、これらの要点を理解しておくことが賢明です。

  • 機密情報の範囲
  • 契約期間
  • 違反時の対応策など

細かな条件を慎重に吟味することが肝心です。
適切な機密保持契約を結ぶことで、双方の利益を守り、安心して業務に専念できるでしょう。

秘密保持契約の対象と範囲の明確化

機密情報の範囲を明確にすることが重要です。秘密保持契約において、どの情報が守秘義務の対象となるのか、どこからが対象外なのかを把握しておく必要があります。
そうすることで、適切に情報を活用しながらエンジニア業務に従事できます。
もし契約内容が曖昧であったり、当事者間で認識の相違があれば、無自覚のうちに違反行為に及ぶリスクが生じます。
口頭で説明を受けた場合でも、必ず契約書の内容を確認しましょう。

  • 担当者の勘違いや伝達漏れの可能性があるため、そうしたリスクを排除するには、守秘範囲を明確にした上で契約を締結することが肝心です。

秘密保持契約の存続期間について

秘密保持契約には、契約終了後も一定期間、規定事項を遵守する必要がある「存続期間」が設けられています。この期間中は、契約で定められた義務を果たさなければなりません。

例えば、

  • 契約期間が1年で存続期間が3年の場合、契約終了後も3年間は秘密保持に関する条項に従わなくてはいけません。

フリーランスエンジニアでは、無償での対応義務などが存続期間中に課される可能性があります。

存続期間が長ければ長いほど、業務上の責任を負う期間が延長されます。他社への業務内容の開示禁止などの条項があれば、新規案件獲得の際に実績をアピールできなくなるなどのリスクが生じます。

過度に長い存続期間は、契約締結を再考する必要があるかもしれません。

フリーランスエンジニアが秘密保持契約の契約後に注意すべきこと

フリーランスエンジニアが秘密保持契約の契約後に注意すべきこと

独立したエンジニアが機密保持契約に署名した後は、いくつかの留意事項があります。
問題が生じないよう、次の点に気をつける必要があります。

  • 機密情報を第三者に漏らさないこと
  • 機密情報を適切に管理すること
  • 機密情報を不正に利用しないこと

秘密保持契約遵守の重要性

機密情報の取り扱いには細心の注意を払う必要があります。
秘密保持契約を締結した後に入手した情報を家族や友人に漏らすと、重大な問題に発展する可能性があります。
「少し話しても大丈夫」と考えるのは危険な発想で、フリーランスとしての信頼を失うリスクがあります。

  • また、機密文書のコピーやメール転送なども、契約違反に当たる場合があります。

秘密保持契約後は、関連情報を一切口にせず、適切に管理することが求められます。

実績公開時の注意点

フリーランスとして活動する際、自身の能力を示すために過去の業績を開示することが一般的です。しかし、守秘義務契約の内容によっては、実績の公表が違反行為となる場合があります。
過去に活用したノウハウや技術を実績として開示すると、企業にとって機密情報の漏洩に相当する可能性があるのです。
フリーランスの実績を公開する予定がある場合、事前に企業側と公開可能な範囲や内容について確認することが重要となります。

秘密保持契約書の適切な保管方法

企業から提示された機密文書は、適切に管理する必要があります。
将来的な問題発生時に、その内容を確認できなければ対処が困難になります。
業務中に契約内容を参照する機会も想定されるため、機密文書の適切な保管は必須です。

  • 紙媒体の機密文書は、原本を保存しつつ、電子データへの変換も推奨されます。

一般的に、機密文書は7年程度の保管期間が求められます。

秘密保持契約に違反した場合のリスク

秘密保持契約に違反した場合のリスク

契約違反によるフリーランサーの危険性は多岐にわたります。
秘密情報の漏洩は、法的責任を問われる可能性があり、損害賠償請求や訴訟リスクにもつながります。
さらに、信用を失墜させ、将来の仕事機会を失うおそれもあります。
プロフェッショナルとしての評価が傷つき、キャリアに深刻な影響を及ぼす恐れがあります。
したがって、

  • 守秘義務違反は避けるべきであり、
  • 契約条件を厳格に順守することが肝心です。

秘密保持契約違反のリスク

フリーランスエンジニアが守秘義務に反した場合、以下のリスクがあります。

  • 契約が即座に打ち切られる可能性がある
  • 収入源を失うリスクがある

一方で企業側も、以下の対応をする可能性があります。

  • 秘密漏洩の調査のため業務を停止させる

いずれにしろ仕事がなくなるため、フリーランスエンジニアにとって秘密を守ることは重要な義務となります。

秘密保持契約違反のリスク

機密情報の取り扱いに関する契約条件によっては、違反行為に対する損害賠償請求が発生する可能性があります。
事前に機密漏洩などの違反事項と対応策が定められている場合、その規定に従った制裁措置が課されます。

  • 一般的には、企業が被った損失額をフリーランス従事者が填補することになります。
  • 損害金額次第では数百万円から数千万円規模にもなり得るため、機密保持契約に伴うリスクの重大性を十分に認識しておく必要があります。

まとめ

まとめ

独立したエンジニアとして企業と契約を結ぶ際、機密保持の合意が求められることが多くあります。この合意書には、エンジニアに不利な条項もありますが、内容を十分に理解しないと、将来的に業務や案件探しに支障が出る可能性があります。
機密保持の基本ルールを確認し、トラブルを避けるよう注意深く対応する必要があります。
独立したエンジニアとして活躍するためには、適切な情報管理が欠かせません。