移動手段に関する革新的なITサービスであるMaaS(Mobility as a Service)の分野で注目を集める5社をご紹介します。
自動車産業は現在、100年に一度と言われる大きな変革期を迎えています。この変革の中心にあるのが、インターネットを活用したモビリティサービスです。
MaaSの実現には高度なIT技術が不可欠であり、この分野は今後さらなる成長が期待されています。
IT技術者にとって、MaaS関連企業は新たなキャリアの可能性を提供する魅力的な選択肢となるでしょう。
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車業界にイノベーションが起きつつある
近年、人工知能(AI)技術が急速な進歩を遂げており、特にディープラーニングの発展により、IT分野を中心に大きな変革をもたらしています。
この革新的なAI技術を積極的に採用しようとしている産業の一つが自動車業界です。
自動車関連企業や業界全体を指す言葉として「モビリティ分野」という表現が使われています。
これは英語の「mobility」に由来し、移動手段や交通システムの未来を形作る重要な領域として注目されています。
自動車産業の変革:MaaSと自動運転技術の進展
自動車産業は現在、100年に一度の大きな変革期を迎えていると言われています。
この変革の中心となっているのが、インターネットを活用した新しいモビリティサービス「MaaS」です。
この潮流を反映して、2019年の東京モーターショーではトヨタが一人乗りのMaaS車両「e-4me」を発表し、注目を集めました。
さらに、自動運転技術の進歩も著しく、2020年9月の北京モーターショーでは、中国メーカーが特定条件下で人間の操作を必要としないレベル4の自動運転車を公開しました。
日本でも2020年4月から、特定条件下で緊急時のみ人間の操作が必要なレベル3の自動運転車の公道走行が可能になりました。
今後は、さらに高度なレベル4やレベル5の自動運転技術の実用化に向けて開発が進むと予想されます。
政府や自動車業界は、ITテクノロジーを積極的に取り入れた自動運転車の開発を推進し、新たなモビリティサービスの拡充に向けて取り組んでいます。
自動運転技術がもたらす生活革新
自動運転技術の発展には、AIを駆使できるIT技術者の存在が不可欠です。この技術が最高レベルに達すると、社会の姿が大きく変わる可能性があります。例えば、交通渋滞の解消や、スマートフォンを使った簡単な配車サービスの実現が期待できます。
全ての車が自動運転になれば、移動がよりスムーズで快適になるでしょう。車内では休憩したり、オンラインで友人と交流したり、仕事をしたりと、時間を有効に使えるようになります。
このように、自動運転技術は私たちの移動体験を大きく向上させ、日常生活に革新をもたらす可能性を秘めています。交通システム全体の効率化や、より自由な時間の使い方など、様々な面で私たちの生活を豊かにする潜在力があるのです。
従来と正反対の価値観「CASE」
CASEは自動車産業の未来を象徴する4つの要素を表す略語です。
Connected(通信機能)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェア&サービス)、Electric(電動化)の頭文字を組み合わせたものです。
この概念は、メルセデス・ベンツ社の前身であるダイムラーAGの会長、ディーター・ツェッチェ氏によって提唱されました。
CASEは従来の自動車の概念を大きく変革するものです。
通信機能により車内外がつながり、自動運転技術によってドライバーの役割が変化し、シェアリングサービスにより所有の概念が変わり、電動化によってパワートレインが進化します。
これらの要素は、従来の自動車に関する価値観とは対照的な新しい可能性を示しています。
このような革新的な概念が、私たちの移動体験を大きく拡張し、新たな可能性を生み出すのです。
CASEの進化は、より包括的な移動サービスの概念へとつながっていきます。
自動車産業の未来を描くCASE技術戦略
経済産業省が中心となり、自動車業界の主要企業が参画する「CASE技術戦略プラットフォーム」が設立されました。
この組織は2020年に、自動車産業の未来に向けた重要な技術分野に関する見解を発表しました。
その報告書では、CASEの文脈で今後重点的に開発すべき技術領域が明確に示されています。
これらの技術は、自動車産業の変革と持続可能な成長を支える重要な要素として位置づけられています。
CASEが変える自動車の未来
Connected(コネクテッド)機能の向上により、車内エンターテイメントが充実し、音楽や映像をより楽しめるようになります。
さらに、地図データの送受信機能が改善され、交通事故の防止や、事故発生時の自動通報システムの効率化が期待できます。
また、リアルタイムの路況や気象情報を活用することで、ADAS(先進運転支援システム)の精度向上にも貢献します。
Autonomous(自動運転)の実現には、高度な運転支援システムの開発が不可欠です。これには以下の技術が含まれます:
- 衝突被害軽減自動ブレーキ
- 全車速追従機能
- 車線維持支援
Shared & Services(シェアリングとサービス)は、車の所有形態に変革をもたらしています。共同所有や必要時のみの利用など、新しい車の使い方が普及しつつあります。
Electric(電動化)は、ハイブリッド車や電気自動車(EV)の普及を加速させています。CASEの実現は温室効果ガスの大幅削減につながり、持続可能な社会の実現に寄与します。
ただし、現在の電池技術には課題があるため、より高性能な電池やモーターの開発が進められています。
移動体験を変えるMaaS
自動車産業が活況を呈している反面、一般の人々の視点からはどのように映っているでしょうか。
業界の発展と消費者の実感にはギャップがあるかもしれません。
新技術や環境対応車の登場など、業界側の盛り上がりは顕著ですが、それが実際の購買行動や生活の変化にどう結びついているかは、慎重に見極める必要があります。
デジタル時代における実体験の価値
デジタル技術の進歩により、多くの活動がオンラインで可能になりました。
しかし、実際に場所を訪れることで得られる体験の価値は依然として高いものがあります。
その場所特有の雰囲気や臨場感、人々との直接的な交流は、デジタル画面を通じては十分に伝わりません。
例えば、友人との対面での会話は、オンラインチャットよりも深い印象を残すことが多いでしょう。
また、実店舗での買い物体験は、商品を直接見て触れることができるという点で、オンラインショッピングとは異なる魅力があります。
さらに、物流の観点からも、人や物の移動は不可欠です。
日常生活に必要な物資は、実際には車や船、飛行機などで運ばれています。
つまり、デジタル技術がいくら発展しても、物理的な移動の重要性は変わらないのです。
人々の移動や探索への欲求は尽きることがありません。
新しい場所を訪れたり、直接体験を得たりすることへの価値は、今後も変わらず存在し続けるでしょう。
MaaS市場の急成長と将来性
2018年、インドの調査会社による報告では、MaaS(Mobility as a Service)市場の規模は2017年時点で約2兆7000億円に達していました。
さらに、この市場は急速な成長を続け、2025年までに約25兆円規模に拡大すると予測されています。
この成長予測はこの調査会社だけでなく、多くの研究機関や企業によっても支持されており、MaaS市場の将来性に大きな期待が寄せられています。
国交省が推進する統合型モビリティサービスの未来
国土交通省は、鉄道やバス、タクシー、カーシェアリング、シェアサイクリング、そして徒歩を含む多様な交通手段を統合的なサービスとして捉えています。
モビリティ・サービスの目標は、出発地から目的地までのシームレスな移動を、検索から予約、支払いまでスマートフォンアプリで一括管理することです。
国土交通省が提唱する「モビリティ・マネジメント」は、公共交通機関の賢明な利用を促進し、交通に関連する様々な問題の解決を目指しています。この概念は、MaaS(Mobility as a Service)の本格的な運用に不可欠とされています。
モビリティ・マネジメントの取り組みにより、より効率的で持続可能な交通システムの実現が期待されています。これは、以下の社会的課題の解決にも貢献すると考えられています:
- 環境負荷の軽減
- 交通渋滞の緩和
- 高齢者や障害者の移動支援
グリーンスローモビリティの可能性と課題
グリーンスローモビリティは、時速20km未満で公道走行可能な小型電動車を用いた移動サービスを指します。
一般に「グリスロ」や「GSB」と略されることもあります。
この交通手段には、操作が容易で狭い道路でも通行しやすいという特徴があり、高齢者の日常移動や観光客の周遊に適しています。
また、環境負荷が低いことも大きな利点です。
これらの特性により、地域が直面する様々な課題解決に貢献する可能性を秘めています。
一方で、以下のような課題もあります:
- 乗車定員が限られること
- 単独での収益化が難しいこと
しかし、こうした課題にもかかわらず、すでに導入を始めている自治体も存在します:
大分市 |
尾道市 |
和束町 |
トヨタ自動車
トヨタは1937年の創業以来、日本国内だけでなく世界中で自動車産業に大きな影響を与えてきました。
長年の実績を持つ同社は、近年の自動車業界におけるIT化の波にも積極的に対応し、革新的な技術開発に取り組んでいます。
トヨタの「my route」:MaaSの実現例
MaaSの代表的な例として、トヨタの「my route」サービスが挙げられます。
従来のGoogleマップなどのアプリは、単純に目的地までのルート検索機能を提供するにとどまっていました。これらは電車やバス、飛行機などの移動手段を組み合わせた経路を示すだけでした。
一方、「my route」はマルチモーダルルート検索に加え、予約や決済機能も統合しています。例えば、
- タクシーの予約と支払い
- 特定のバスや電車のデジタルフリー乗車券の購入
などが可能です。これにより、ユーザーは「my route」アプリ一つで、移動に関するあらゆる操作をシームレスに行うことができます。
このサービスは、まるで単一の移動手段で目的地に到達できるかのような便利さを提供し、従来のナビゲーションアプリを超えた利便性を実現しています。MaaSの概念を具現化したこのようなアプリケーションは、都市交通の未来を示唆するものといえるでしょう。
MONETが牽引する次世代モビリティサービスの展開
トヨタとソフトバンクの共同出資により設立されたMONET Technologies(モネ テクノロジーズ)は、次世代のモビリティサービス(MaaS)の開発に注力しています。
オンデマンド通勤シャトル、医療向けMaaS、予約型バスなど、多様な実証実験を展開しており、将来のモビリティ社会の形成に向けて積極的に取り組んでいます。
さらに、大阪府や浜松市、越前市をはじめとする多くの自治体とモビリティ分野での連携協定を締結しており、地域に根ざしたサービス開発も進めています。
これらの取り組みから、MONETは今後のMaaS市場において重要な役割を果たすことが期待されています。
MONETのAPIマーケットプレイス戦略
MONETの特筆すべき特徴として、APIマーケットプレイスの提供が挙げられます。
これは、Googleやその他の大手IT企業が独自システムのAPIを広く公開し、成長を遂げた戦略と類似しています。
MONETのAPIを活用することで、他のMaaS企業も新たなサービスを構築できるようになり、MONETが業界の中心的存在となる可能性があります。
現在進行中の実証実験や研究の成果により、将来的にはこれらのAPIがさらに拡充されることが期待されています。
このような取り組みは、MaaS業界全体の発展に大きく寄与する可能性があります。
日産
日産自動車とDeNAが共同開発した「Easy Ride」は、革新的な自動運転配車サービスです。
スマートフォンアプリを通じて簡単に車両を呼び出せるだけでなく、搭載された人工知能と対話することで、目的地の提案も受けられます。
このサービスの特徴は、運転免許の有無に関わらず幅広い年齢層が利用できる点です。
- 子供から高齢者まで、誰もが安全かつ便利に移動できる
- 従来の交通手段に大きな変革をもたらす可能性を秘めている
ナイル株式会社
スマートフォンアプリ検索サービス「appliv」を運営する企業として知られています。
同社はモビリティ分野にも注力しており、月額定額制で車を利用できる「定額カルモくん」というサービスを展開しています。
このサービスでは、毎月一定額を支払うことで自分専用の車を持つことができ、契約期間終了後にはその車を完全に所有することも可能です。
将来的には自動運転技術の進歩により、無人タクシーやカーシェアリングサービスが普及すると予想されます。しかし、共有車両だけでなく、個人で車を所有したいというニーズは依然として存在し続けるでしょう。
自動運転車の場合、スマートフォンで簡単に呼び出せるため、自宅に車庫を持つ必要がなくなります。
そのため、月々の定額料金を支払えば、住居の場所や形態に関わらず、近隣の駐車場に車を置いておくだけで、個人で車を所有する新しいスタイルが可能になるかもしれません。
株式会社Sun Asterisk
IT技術を活用し、多様な産業分野と連携する革新的な企業です。
幅広いセクターにソリューションを提供し、デジタル化を推進しています。
テクノロジーで多分野に革新を
スポーツやライフスタイル分野など、一見ITとは無関係に思える領域にもテクノロジーを融合させ、革新的なサービスを展開しています。
さらに、物流業界においても先進的な取り組みを行っており、トラック配送の効率化を目指した予約・受付システムの開発にも携わっています。
このように、幅広い分野でITの力を活用し、新たな価値創造に挑戦し続けています。
トラック簿:物流革新の切り札
Sun Asteriskが開発に携わった「トラック簿」は、物流業界に革新をもたらすサービスです。
株式会社モノフル(GLPグループ)が提供するこのプラットフォームは、トラックやバスの管理を効率化し、一元化することで、物流業界の課題解決に貢献しています。
ドライバーや物流関係者の業務負担を大幅に軽減し、作業効率を向上させる一方で、業界全体の労働環境改善にも寄与しています。
「トラック簿」の導入により、物流業界のデジタル化と働き方改革が加速することが期待されています。
株式会社じげん
幅広い事業を展開する総合サービス企業です。
人材関連では転職支援やアルバイト紹介を行っています。
不動産分野では賃貸物件の紹介や引っ越しサポートを提供しています。
環境分野ではクリーンエネルギーの導入支援に取り組んでいます。
また、自動車事業として車両の売買も手がけています。
多岐にわたるサービスを通じて、お客様の様々なニーズにお応えしています。
中古車購入のメリットと便利なサービス
車を手頃な価格で購入するなら、中古車が最適な選択肢です。
全国には膨大な数の中古車が流通しており、様々な条件で検索や比較ができるオンラインサービスが充実しています。
これらのサービスを利用すれば、
- 複数の車種を同時に確認したり、
- 希望の条件を保存して新着情報を受け取ったりすることも可能です。
自動車技術が進歩しても、中古車市場は今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。
効率的な中古車取引:じげんのIT活用
じげんは中古車の販売と買い取りの両方を手がけています。
その特徴は、一回の情報入力で複数の査定会社から見積もりを得られる点です。
これにより、顧客は簡単に様々な査定価格を比較できます。
このような効率的なサービスは、最新のIT技術を活用しているからこそ実現できたものと言えるでしょう。
日本の中古車を世界へ:TCVの挑戦
日本の高品質な中古車を世界中に届けるのがTCVです。
国内はもちろん、海外200カ国以上の顧客に向けて日本車の輸出を行っています。
信頼性の高い日本の中古車を求める世界中のバイヤーのニーズに応えるサービスを提供しています。
Waymo One
自動運転技術の先駆者として知られるWaymoが提供する「Waymo One」は、世界初の自動運転タクシーサービスとして注目を集めています。
このサービスは2018年12月にアリゾナ州で開始され、当初は安全のためドライバーが同乗していました。
しかし、技術の進歩と信頼性の向上により、2020年には一部のユーザーに対して完全無人のタクシーサービスを実現しました。
Waymo Oneは、自動運転技術の実用化における重要なマイルストーンとなっており、将来の都市交通の姿を示唆しています。
まとめ
自動車産業は現在、100年に一度と言われる大きな変革期を迎えています。この変革の中心となっているのは、従来の自動車の主要部品であるエンジンやボディーではなく、IT技術です。IT技術の進歩により、自動車産業は今後飛躍的に発展し、私たちの日常生活に大きな変化をもたらすことが予想されます。
この変革の波は、世界的な大手企業だけでなく、比較的知名度の低い企業にも及んでおり、多くの企業がMaaS(Mobility as a Service)に注目し、取り組みを始めています。これまでインターネットの発展によって、SNSや動画配信サービスなど、私たちの生活を豊かにする様々なサービスが生まれてきました。今後は、移動手段としての自動車産業においても、同様の革新的な進歩が起こると考えられています。
このような大きな変革期において、IT技術者が自動車産業へ転職することは、キャリアの選択肢として非常に魅力的な選択肢の一つとなっているでしょう。ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」を活用することで、自動車産業における新たな機会を見つけることができるかもしれません。