ひとりで情シスの実態と課題：増加の背景と効果的な対策方法を徹底解説

2024年6月30日

情報システム部門（情シス）を一人で担当する状況は、特に中堅企業で頻繁に見られます。

このような体制では、多くの課題に直面することになります。にもかかわらず、多くの企業は情シス部門の人員を増やすことに消極的です。

本稿では、なぜ「一人情シス」が増加しているのか、その背景と問題点、そして対処法について解説します。

一人で多岐にわたる業務をこなさなければならない情シス担当者の実態と、企業がとるべき適切な対応策を探ります。

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1 情シス(情報システム部門)とは？
2 ひとりで情シスが増えた背景
3 ひとりで情シスの問題点
4 ひとりで情シスを任せられた場合の対策
5 ひとりで情シスを解決するツール
6 まとめ

情シス(情報システム部門)とは？

情シスとは企業の情報システム部門を指し、業務で使用するパソコンやサーバー、ネットワークなどのシステム管理・運用が主な仕事です。

近年、情シスを少人数で運営しなければならない状況が増加し、問題視されています。

その背景には、情シス担当者の離職率の高さ、IT人材の不足による人材確保の困難さ、経営層のIT理解不足などがあります。

少人数での情シス運営には以下のような問題点があります:

担当者の負担増加
技術習得時間の不足
作業の属人化

これらの問題に対する対策としては:

業務のアウトソーシング
研修会やセミナーへの参加
状況改善が見込めない場合は転職も選択肢

また、業務効率化のためのツール導入も有効です:

コミュニケーションツール(Slack、Chatworkなど)
情報共有ツール(Googleドライブ、Dropboxなど)
IT資産管理ツール
チャットボット
RPAツール

情シスを少人数で運営する状況は決して理想的ではありませんが、上記の対策やツールを活用することで、ある程度の改善が期待できます。ただし、根本的な解決には経営層のIT理解向上と適切な人員配置が不可欠です。

ひとりで情シスが増えた背景

企業のシステム管理・運用を一人で担当する情シス担当者が増えています。

組織全体のITインフラを一人で管理することは非常に困難な課題です。しかし、この傾向は近年強まっているようです。

なぜこのような状況が生まれているのでしょうか。その背景には複数の要因があります。

以下では、この現象を引き起こしている主な理由について説明します。

情報システム部門の人材流出問題

近年、情報システム部門の担当者の離職率が高くなっている傾向が見られます。これは転職市場の活性化が一因として考えられます。

Dell EMCが2018年末から2019年初頭にかけて中堅企業を対象に実施したIT投資動向調査によると、情報システム担当者の21％が退職していることが明らかになりました。

この調査結果からは、退職した情報システム担当者が1人だけだったのか、それとも比較的規模の大きい部門だったのかは判断できません。しかし、最初から1人体制ではなかった可能性も考えられます。

例えば、情報システム部門に配属された当初は複数の担当者がいたものの、徐々に転職していった結果、人員が減少したというシナリオも想定されます。このような状況は、多くの企業の情報システム部門が直面している課題かもしれません。

情シス部門の人材不足と採用難

近年、情報システム部門の担当者が転職により減少する傾向にあり、企業は積極的な採用活動を行っています。

Dell EMCの調査によると、情シス担当者の37%が外部からの採用であることが分かっています。しかし、人員減少が即座に新規採用につながるわけではありません。IT技術者全体の人材不足という背景もあり、採用意欲はあっても実現が難しい状況です。

このような環境下で情シス担当者が転職すると、後任の確保に時間がかかることがあります。その結果、以下のような問題が発生する可能性があります：

残された担当者が一人で業務を担わざるを得なくなるケースも少なくありません。
長期的に見ても人員が増加せず、負担が継続する可能性もあります。

これらの課題は、多くの企業の情報システム部門が直面している現実の問題となっています。

IT人材不足の根本原因

経営者層のIT理解度と人員確保の認識は、必ずしも十分ではありません。IT技術に詳しくない経営者は、システムの導入や運用に必要な工数を正確に把握できていないことが多々あります。「情シス担当に任せれば何でもすぐにできる」という誤解を持つ経営者もおり、実際の問題点を認識できていない場合があります。

情シス担当者自身も、ITの全分野に精通しているわけではありません。新しい課題に直面すると、調査に時間がかかり、業務の進行が遅れることがあります。同時に複数のタスクをこなすことが難しいにもかかわらず、経営者にその状況を理解してもらえないことも少なくありません。

さらに、予算の制約も大きな要因となります。限られた予算の中で優先順位を決める際、情シス部門の人員増強が後回しにされることもあります。これらの要因が重なり、IT部門の人材不足が長期化する可能性があります。

ひとりで情シスの問題点

情シス部門を少人数で運営することの課題について説明します。

小規模な体制で情報システムを管理することには、いくつかの重要な問題点が存在します。

これらの課題を理解することで、組織のIT戦略をより効果的に立案し、実行することができるでしょう。

情シス担当者の一人体制における課題

情シス担当者が1人で全ての業務を担う場合、いくつかの課題が生じます。

まず、複数のシステムの導入計画から実際の導入、そして運用まで、全てを一人で管理しなければならない点が挙げられます。さらに、システムに問題が発生した際は、通常業務に加えて復旧作業も行う必要があり、これは大きな負担となります。

また、IT技術に精通していても、全ての分野を完全にカバーすることは困難です。そのため、作業に時間がかかることも多く、効率的な業務遂行が難しくなる可能性があります。

結果として、情シス担当者一人に過度の負担がかかり、長期的には業務の質や効率の低下につながる恐れがあります。このような状況は、企業のIT管理体制において重要な課題となっています。

情報システム部門の時間不足と技術習得の課題

情報システム部門の課題として、技術習得のための時間不足が挙げられます。少人数で多岐にわたる業務を担当するため、新しい技術を学ぶ余裕がありません。

特に近年は、マイナンバーなどの機密情報が増加し、セキュリティ対策の重要性が高まっていますが、最新情報を収集する時間も確保できません。

また、IT技術に詳しい相談相手がいないため、全ての判断を自分で下さなければなりません。しかし、最新技術の知識が不足しているため、判断の正確さに自信が持てない状況に陥ります。

もし判断を誤れば問題が発生し、その対応に追われて通常業務が滞り、さらに時間不足に陥るという悪循環に陥ってしまいます。

このように、技術習得時間の不足は、情報システム部門の業務効率と判断の質に大きな影響を与える重要な課題となっています。

情報システム部門の属人化リスク

作業の属人化も重大な課題となっています。

情報システム部門の担当者が一人しかいない場合、全ての判断と作業がその一人に集中してしまいます。

この状況下で、その担当者が退職したり長期休暇を取ったりすると、業務の継続性が著しく損なわれる可能性があります。

後任者にとっては、前任者が構築したシステムの詳細や意思決定の背景が不明確なため、円滑な業務引継ぎが困難になります。

このような作業の属人化は、組織の安定性と効率性を脅かす大きなリスク要因となるため、早急な対策が必要です。

ひとりで情シスを任せられた場合の対策

少人数での情シス運営には多くの課題が伴うため、迅速な対応が求められます。

情シス担当者が一人体制になった場合、日々の業務に不安を感じることは避けられません。

このような状況下での効果的な対策について、いくつかの方法を紹介します。

組織の規模や特性に応じて、適切な解決策を検討することが重要です。

新任IT担当者の業務把握ガイド

新任のIT担当者として、まず社内のIT環境と既存の情報を把握することから始めましょう。
具体的には、ネットワーク構成図や基幹システムの稼働状況を確認します。
サーバやクラウド上のアプリケーション構成、社内システムで管理している情報の一覧などを整理し、最新の状態に更新することが重要です。

次に、社用PCや携帯電話などのITデバイス、使用中のソフトウェアを確認し、それぞれのセキュリティ対策をリスト化します。

パッケージソフト
SaaS
社内システム

ごとのログイン情報を洗い出し、各アカウントの運用保守手順も確認しましょう。

テレワークを導入している場合は、その実施状況も確認項目に含めます。
これらの情報を整理することで、社内ITの全体像を把握でき、今後の対策立案に役立ちます。
社内IT環境の現状を十分に理解した上で、必要な改善策や新たな施策を検討していくことが大切です。

ITアウトソーシングの利点

情報システム部門の業務を外部委託することは、人材不足への有効な対策の1つです。

専門のアウトソーシング企業は、多くの企業の課題に精通しているため、あなたの組織が直面している問題についても豊富な知見を持っている可能性が高いです。

さらに、自社内で不足している専門知識や技術についても、これらの業者から学ぶことができます。

特に、社内に相談できる適切な人材がいない場合、外部の専門家のサポートを受けることで、効率的に問題解決を図ることができるでしょう。

このアプローチは、以下に役立つ可能性があります：

技術的な課題の解決
業務プロセスの改善

1人IT部門の自己啓発戦略

予算の制約により、アウトソーシングが難しい企業も少なくありません。そのような状況では、1人で多岐にわたる業務をこなす必要があります。これは大変な挑戦ですが、幅広い知識を身につけ、様々な状況に対応できる能力を養うことが重要です。

この能力を磨くには、以下が効果的です：

研修会への参加
セミナーへの参加
異業種交流会への参加

ただし、情報システム部門を1人で運営している場合、日々の業務に追われ、こうした機会に参加することすら困難な場合があります。

そのため、まずは上司の理解を得ることから始めましょう。研修会やセミナーへの参加が業務にどのように役立つのか、具体的な利点を明確に説明できるよう準備をしておくことが大切です。上司との建設的な対話を通じて、自己啓発の機会を確保し、より効率的な業務遂行につなげていくことが可能になるでしょう。

IT人材不足時代の転職選択

上記の対策を実行するには、上司や経営層のIT理解が不可欠です。しかし、上司の理解が得られず、業務負担が増加し、研修参加も困難な状況が続く場合、転職も選択肢の一つとなります。

冒頭で述べたように、現在IT人材は不足しています。情報システム部門での経験や実績があれば、他社での受け入れ可能性は高いでしょう。

忙しさのために転職活動の時間確保が難しいかもしれません。しかし、心身の健康を損なってからでは手遅れです。まずは転職エージェントへの相談から始めることをお勧めします。状況改善のための行動を起こすことが重要です。

ひとりで情シスを解決するツール

情報システム部門の担当者が少ない組織で直面しやすい課題を解決するための効果的なツールについて解説します。

限られた人員で情報システムを管理する際の負担を軽減し、業務効率を向上させるソリューションをお伝えします。

効率的な情報システム管理ツールの活用

コミュニケーションツールの活用は、少人数での迅速な対応に有効です。
チャットツールを使えば、電話やメールよりも素早く、写真付きで情報を共有できます。
これにより、課題解決のスピードアップと業務効率化が図れます。

情報共有ツールも重要です。
クラウドストレージサービスを利用すれば、リアルタイムで文書やファイルを共有・管理できます。
これは情シス部門内だけでなく、他部署との情報共有にも役立ちます。
必要な情報を一箇所にまとめることで、社員が自ら問題を解決できるケースが増え、情シス部門の負担が軽減されます。

IT資産管理ツールは、特に大規模な企業で効果を発揮します。
一般的に100台以上のIT機器がある場合、導入が推奨されます。
エージェントベースとエージェントレスタイプがありますが、多くの場合前者が採用されています。
これらのツールは、以下の機能を持っています：

IT機器の管理
OSやソフトウェアの情報管理
ファイル操作やアクセスログの自動収集

結果として、IT資産管理の効率化に大きく貢献します。

チャットボットとRPAによる業務効率化

チャットボットは、社内の問い合わせ対応を効率化する優れたツールです。
マニュアルやFAQに記載されているような一般的な質問に対して、自動的に回答を提供することで、担当者の負担を大幅に軽減できます。
チャットボットには主に2種類あり、

選択肢から回答を選ぶ「シナリオ型」
入力されたテキストを分析して回答する「AI型」

があります。

一方、RPAツールは情報システム部門の定型業務を自動化するのに適しています。
RPAは事前にプログラムされた手順に従って、コンピューター上の作業を自動的に実行します。
データの抽出や分析などの反復的なタスクをRPAに任せることで、作業の効率性と正確性が向上し、人的リソースをより創造的な業務に振り向けることができます。