近年、中国のIT業界で急速に台頭してきたのがBATH(バース)と呼ばれる4大企業群です。14億人という巨大な国内市場を背景に、これらの企業は驚異的な成長を遂げ、世界的なプラットフォーマー企業として注目を集めています。
その影響力は既存の有名企業をも脅かすほどになっています。
BATHの各企業は、世界の時価総額ランキングでも上位に食い込んでおり、その存在感は年々増しています。
彼らのビジネスモデルは革新的で、多岐にわたるサービスを展開しています。
また、中国独自の技術革新「チャイナイノベーション」を推進し、独自の成長戦略を築き上げてきました。
本稿では、BATHの台頭の背景、各社の特徴、そして今後の展望について詳しく解説します。
中国のIT産業が世界に与える影響力と、その成長の核心に迫ります。
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BATHとGAFAとの関係性
世界経済に大きな影響力を持つ企業群として、アメリカのGAFAと中国のBATHが挙げられます。
GAFAは「Google」「Apple」「Facebook」「Amazon」の頭文字を組み合わせた造語で、現在も世界のIT市場を牽引する主要企業群です。
多くの企業がGAFAに追随するサービスを展開していますが、近年急成長を遂げているのがBATHです。BATHは中国の「Baidu」「Alibaba」「Tencent」「Huawei」の頭文字を組み合わせた造語で、国際的にビジネスを展開し、GAFAに匹敵する影響力を持ちつつあります。
これらの企業群は、世界のテクノロジー産業と経済の動向に大きな影響を与え続けています。
BATHの世界時価総額ランキング
新興勢力として注目を集めるBATHが、先行するGAFAなどの巨大テクノロジー企業にどの程度追いついているのか、グローバルな企業価値の観点から分析してみましょう。
世界の時価総額ランキングを参照しながら、両者の現在の立ち位置と競争状況を詳しく見ていきます。
時価総額:企業価値を映す指標
時価総額は、上場企業の株価と発行済株式数を掛け合わせて計算される指標です。
企業ごとに一株の価格は異なりますが、この方法で各社の相対的な市場価値を数値化できます。
株価は現在の業績だけでなく、将来への期待も反映しています。
そのため、時価総額ランキングは企業の成長ポテンシャルを示す一つの指標と考えられます。
この数値は日々の株価変動に応じて変化し、投資家や市場分析家にとって重要な参考情報となっています。
世界株式時価総額ランキング:AppleとBATHの躍進
2020年9月時点の世界株式時価総額ランキングでは、アメリカのAppleが首位を独走しました。
同社は唯一の2兆ドル超え企業で、日本円換算で200兆円以上の価値を持つことになります。
注目すべきは、中国のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)企業から2社がトップ10入りしていることです。
ファーウェイは非上場のため、このランキングには含まれませんが、売上高ではアリババとテンセントの合計を上回ると推定されています。
時価総額は投資家による企業の将来性評価を反映しており、BATHの高順位は世界の投資家がこれらの企業に大きな成長可能性を見出していることを示唆しています。
BATHの各社戦略
中国は2014年頃から国家戦略として技術革新とイノベーションを推進し、デジタル経済の急速な発展を実現しました。
その結果、デジタル経済の規模は2002年の約19兆円から2017年には約435兆円へと飛躍的に拡大しました。
この国家主導のインフラ整備を背景に、中国のIT大手企業群(BATH4社)は独自の成長戦略を展開し、目覚ましい業績向上を遂げました。
各社がどのようにしてこの機会を活かし、成功を収めたのかは注目に値します。
テンセントの事業戦略と成長展望
ここでは、テンセントの主要事業と将来の展望について解説します。
テンセントは、10億人以上のユーザーを持つWeChatなどのSNSやメッセージングプラットフォームを中核事業とする中国のIT大手です。コミュニケーションサービスを基盤としつつ、オンラインゲーム、メディア、決済など多様なサービスを展開しています。
同社の最大の強みは、圧倒的なユーザー基盤です。この巨大なプラットフォームを活用した広告収入や決済サービスの手数料が、テンセントの主要な収益源となっています。
今後の成長戦略として、テンセントはゲーム事業に注力しています。世界的なヒット作「王者栄耀」を生み出したテンセントゲームズの開発力が、さらなる成長の鍵を握っています。膨大なユーザーを惹きつける魅力的なゲームコンテンツの開発を続けることで、テンセントの持続的な成長が期待されています。
アリババ:中国ECの巨人と成長戦略
アリババは中国を代表するEコマース企業で、国内外向けのBtoBおよびBtoC ECサイトを主要事業としています。
特に企業向けECサイト「Alibaba.com」は世界的に高いシェアを誇り、海外バイヤーと中国企業をつなぐマーケットプレイスとして機能しています。
同社はオンライン決済サービス「アリペイ」も展開し、収益源の多様化を図っています。2019年11月11日の「独身の日」セールでは1日で4兆円超の売上を記録し、流通の最高記録を更新しました。
アリババは新型コロナウイルス感染拡大後も成長を続けており、時価総額ランキングを上昇させています。その要因として、
- CT画像解析技術を用いたコロナウイルス診断支援サービスの開始
- 感染症対策への取り組み
が挙げられます。
さらに、2020年4月にはクラウド事業への約3兆円規模の大型投資計画を発表しました。デジタル化が加速する社会情勢の中で、この投資は将来性が高いと評価されています。
アリババは技術革新と市場ニーズに応じた事業展開を続けることで、今後も成長が期待されています。
ファーウェイ:多角的事業と技術投資で成長する世界的ICT企業
ファーウェイは、通信事業者向けネットワーク、法人向けICTソリューション、コンシューマー向け端末を主要事業とする世界的なICT企業です。
スマートフォン出荷台数で世界第3位に位置し、企業向けサーバーやクラウドサービスも提供しています。多角的な事業展開がファーウェイの強みとなっています。
ファーウェイの将来性は、先端技術への積極的な投資にあります。売上の10%以上を研究開発に投じており、この投資額はBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)の中でもトップクラスです。特に近年はAI開発に注力しており、スマートフォンのカメラ性能向上などで注目を集めています。
豊富な資金力を背景に、ユーザーニーズに応える技術開発を継続することで、ファーウェイは今後も成長を続けると予想されます。通信技術やAIなどの分野で革新的な製品やサービスを生み出し、グローバル市場での競争力を維持・強化していくことが期待されます。
バイドゥ:中国検索大手の現状と未来戦略
バイドゥは中国最大の検索エンジン「Baidu.com」を運営する企業で、中国版Googleと呼ばれています。国内シェア70%以上を誇り、膨大な検索リクエストに対応できる能力が強みです。主な収益源は検索エンジンを通じた広告事業ですが、音声アシスタントや自動運転技術など、検索以外の分野にも進出しています。
バイドゥの特徴は、中国の国民性を理解したサービス開発にあり、検索スピードの改善やコミュニケーションツールの開発などに力を入れています。
しかし、新型コロナウイルスの影響で広告出稿が減少し、売上に打撃を受けています。この状況を打開するため、バイドゥはAI技術を活用した自動運転開発プラットフォームなど、新事業の展開に注力しています。
今後のバイドゥの成長は、広告事業以外の新規事業で収益の柱を確立できるかどうかにかかっています。AI技術や自動運転分野での成功が、企業の将来を左右する重要な要素となるでしょう。
BATHの直近の売上推移
コロナウイルスの世界的流行により多くの国で経済が打撃を受けている中、中国のIT大手BATHの業績は比較的安定しています。
2020年第1四半期の決算報告によると、アリババとテンセントは前年同期比で20%以上の成長率を記録しました。両社はそれぞれの主力事業であるEC事業やゲーム事業で好調な結果を残しています。
一方、バイドゥは7%のマイナス成長となり、やや苦戦の兆しが見られます。しかし、広告事業の落ち込みはあるものの、ユーザー数や検索数の増加など前向きな指標もあることから、今後の回復が期待されています。
BATHを支える今後の成長戦略
BATHの各企業は、単なる模倣ではなく、独自の確固たる事業戦略に基づいて成長を遂げています。
その戦略を詳しく分析すると、かつての中国企業とは一線を画す洗練された経営手法が見えてきます。
これらの企業が急速に発展した背景には、どのような要因があるのでしょうか。
その成功の核心を探ることで、現代のテクノロジー産業における重要な洞察が得られるかもしれません。
チャイナイノベーション:BATHの台頭と独自技術の進化
中国のIT企業は、当初アメリカの技術やサービスを模倣する傾向がありましたが、徐々に独自の技術力を磨き上げ、革新的なサービスを生み出すようになりました。これがBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)の急成長の原動力となりました。
中国企業は単なる模倣から脱却し、独自のイノベーションを起こすことで新たな価値を創造しています。彼らは市場規模を活かしつつ、後発者の利点を超えて、先駆者としての地位を確立しつつあります。
例えば、テンセントはSNSから事業をスタートさせましたが、現在では多様な産業に進出し、独自の存在感を示しています。この「チャイナイノベーション」と呼ばれる新しい事業展開の背景には、BATHを支える優秀な人材の存在が不可欠です。彼らの創造性と技術力が、中国IT企業の持続的な成長と革新を支えています。
深センのIT革命:BATH4社の成長と企業文化
BATH4社は、中国の深セン(深圳)を拠点としています。
深センはアジアのシリコンバレーと呼ばれ、多くのIT企業が集中する地域です。政府の経済特区に指定され、65歳以上の高齢者比率がわずか2%という未来型IT都市へと急速に発展しました。
深センでは、企業の枠を超えた人材交流が活発です。ライバル企業同士でも合同イベントや勉強会を頻繁に開催し、異業種・多国籍社員によるハッカソンから新たなイノベーションが生まれています。
BATHでは、キャリアアップのための転職や起業が一般的で、社員の流動性が非常に高いのが特徴です。BATHで経験を積んだ社員が他のベンチャー企業の創業メンバーになることも珍しくありません。例えばファーウェイでは、CEOを半年ごとに交代させる「輪番制」を採用しています。
日本の企業文化とは大きく異なるこのような環境が、BATHの急速な成長を支え、今後もさらなる発展を促進する要因となっています。
世界に目を向けた働き方を
グローバルな視点で企業の時価総額ランキングを見ると、日本企業は2社のみがランクインしています。
- TOYOTAが47位
- SoftBankが95位
一方、アメリカは56社、中国は15社がランクインしており、日本との差が顕著です。この状況を踏まえ、日本人の働き方について考えてみましょう。
企業の時価総額が市場価値を表すように、個人にも市場価格があります。日本の伝統的な人事制度は「職能主義」が主流で、個人の能力や経験年数に応じて賃金が決まる傾向があります。これが定期昇給や終身雇用といった慣行につながっています。
対照的に、多くのIT企業や欧米企業では「職務主義」が一般的です。この制度では、職位や役割に対して給与が設定されており、その職務に必要な能力要件も明確です。つまり、ポジションに価格が付けられているイメージです。
長期的にキャリアを築き、自身の価値を高めていくためには、自分の市場価格を把握し、それを向上させる戦略を立てることが重要です。グローバル化が進む現代において、自身のキャリアプランを見直し、市場価値を高める努力が不可欠といえるでしょう。
まとめ
BATHのような大手IT企業の高い時価総額は、優秀な人材によって支えられています。
これらの企業から学ぶべき重要な点は、自分自身の市場価値を向上させる必要性です。
ただし、市場価値を高めるには単に資格取得やスキルアップだけでは不十分です。むしろ重要なのは、自分の仕事が持つ価値を明確に説明できることです。
現在の業務内容や成果が、会社や顧客にどのような利益をもたらしているかを具体的に示せることが大切です。
このような視点で自己分析を行うことで、今後のキャリア形成にも役立つでしょう。
自分独自の付加価値を見出し、それを効果的にアピールする能力を磨くことが、長期的な市場価値の向上につながります。
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