現代社会におけるデジタル化の進展に伴い、「AIエンジニア」への転職を検討する人が増加しているのではないでしょうか。AI(Artificial Intelligence)とは、人間の知能を模倣したコンピューターシステムのことを指します。
近年、AIは音声認識、自動運転、マーケティング、医療分野など、様々な領域で活用されています。
これらの技術を支えているのがAIエンジニアです。
本稿では、以下の観点からAIエンジニアについて解説します。
- AIエンジニアの役割
- AIエンジニアの業務内容
- AIエンジニアの年収水準
- AIエンジニアの需要動向
- AIエンジニアの将来性
- 未経験者がAIエンジニアへ転職するための方策
AIエンジニアへの転職に関心がある方は、ぜひ一読していただければ幸いです。
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AIエンジニアとは
AIエンジニアは、人工知能(AI)を活用した開発を担当する職種です。主に深層学習の技術を駆使し、コンピューターに人間の思考に近い処理を行わせることで、様々な課題の解決に導きます。
また、AIを機能させるための重要な機械学習アルゴリズムの開発を行うため、機械学習エンジニアとも呼ばれます。
近年、AIは以下の分野で活用されています。
- 情報技術分野
- 製造業
- 福祉
- 医療
- ゲーム業界
AIの導入により、以下のような貢献をもたらしています。
貢献 |
---|
業務の効率化 |
リスクの回避 |
人命救助 |
災害予測 |
AIエンジニアは、そうした情報技術革命を支える重要な役割を担っているといえるでしょう。
AIエンジニアの仕事内容
AIエンジニアの職務内容を3点ご紹介いたします。
1. 機械学習モデルの構築と最適化
- AIエンジニアは、大量のデータを活用し、高精度な機械学習モデルを開発します。
- モデルのアーキテクチャ設計、ハイパーパラメータのチューニング、性能評価などを行います。
2. データ前処理とフィーチャエンジニアリング
- AIシステムの性能は、入力データの質に大きく依存します。
- AIエンジニアは、データの前処理やフィーチャ抽出、次元削減など、適切なデータ加工を実施します。
3. AIシステムの統合とデプロイ
- 開発したAIモデルをクラウドやエッジデバイスなどの実運用環境に組み込み、APIやWebアプリケーションとして提供します。
- また、モデルの監視やメンテナンスも担当します。
アルゴリズム・モデル開発
問題を解決するための方法や手順をアルゴリズムと呼び、未知のデータが入力された際に結果を予測するロジックをモデルと称します。
モデルを作成するには、予測対象に関する大量のデータが必要不可欠です。
これらのデータをアルゴリズムに適用することで、モデルが構築される仕組みとなっています。
つまり、AIエンジニアのアルゴリズム・モデル開発とは、人間では時間がかかりすぎたり面倒な計算をAIに効率良く実行させるためのシステムやプログラムの開発作業です。
わかりやすい例を挙げてアルゴリズムを説明しましょう。
皆さんがリンゴをいちょう切りにする際、どのような方法を用いますか?
- まず全ての皮を剥いでから、いちょう切りを始める
- リンゴを半分に切った後、そこから皮を剥き始め、いちょう切りを始める
- リンゴをいちょう切りにしてから皮を剥く
最終的にはいずれの方法でもいちょう切りされたリンゴになりますが、そこに至るまでの手順や過程によって所要時間は変わってきます。
この手順や過程をアルゴリズムと呼びます。
このように、ある目的を達成するための最適な処理方法を見つけ出し、AIにプログラミングすることがAIエンジニアのアルゴリズム・モデル開発の役割となります。
PoC、実証実験
PoC、つまり概念実証は、AIエンジニアの重要な職務の一つです。
PoC(Proof of Conceptの略)とは、新たな技術やアイデア、手法などが実現可能かどうか、目的の効果や機能が得られるかを検証する実験のことを指します。
AIエンジニアは、アルゴリズムやモデル開発時に構築したシステムが、ウェブ上などで適切に機能するかを確認する作業を行います。
主眼は、想定した精度が達成されているか、予期せぬ動作がないかを検証し、次の開発段階に進んでも問題ないかを判断することです。
優れたシステムでも、データの量や質が現実的に確保できない場合や、アルゴリズムとの相性が悪く精度が上がらず、実装が困難になる可能性があります。
そうした事態を回避するためにも、実装前にPoCを行うことが不可欠なのです。
【PoC、実証実験の具体例】
- 不良品検出
- 売上予測
- コールセンター音声解析
- 自動運転バスの実用化
- AI・IoTによる無人店舗運営
- 5G活用によるトラック隊列走行
開発業務
人工知能技術者の中核的な職務は、ソフトウェア開発作業となります。
彼らは、以下の作業を行います。
- アルゴリズムやモデルを構築する
- 概念実証を行う
- 実験によりその有効性を検証する
有用性が認められた場合、
- 実装に向けた開発を進める
さらに、
- ウェブ上での最適なパフォーマンスを発揮できるよう、システムの見直しを行う
ことがあります。
AIエンジニアとデータサイエンティストの違い
ここでは、AIエンジニアとデータサイエンティストの相違点について説明します。
基本的には、両者は「AI関連の専門家」という1つのカテゴリーに分類されます。
しかし、それぞれの役割には明確な違いがあります。
- AIエンジニア
機械学習のアルゴリズムを繰り返し適用することで、優れたAIシステムを構築する役割を担います。
- データサイエンティスト
AIテクノロジーを活用してデータ分析を行い、ビジネス戦略の立案に貢献する役割があります。
簡潔に言えば、AIエンジニアはPythonなどのプログラミング言語を使ってAIシステムの開発を主に行い、データサイエンティストはデータ分析を中心とした業務を担当します。
両者ともディープラーニングや機械学習を利用してデータを扱う点は共通していますが、AIエンジニアはAIシステム自体の開発を担い、データサイエンティストはAIを活用して新しいシステムを開発する、と捉えることができます。
AIエンジニアの年収
ここでは人工知能分野の技術者の収入状況について説明します。
まず、正社員として働くAIエンジニアの平均年収を見てみましょう。
求人情報サイトの調査によると、AIエンジニアの平均年収は599万円となっています。
この金額は日本の平均年収と比べると高い水準にあると言えるでしょう。
月額換算すると約49万円、初任給相場は21万円前後となります。
正社員全体の年収幅は376万円から1,062万円と幅広く、所属する企業によって収入に大きな開きがあることがわかります。
また、年代別のAIエンジニアの平均年収は以下の通りです。
年代 | 平均年収 |
---|---|
20~24歳 | 339万円 |
25~29歳 | 445万円 |
30~34歳 | 533万円 |
35~39歳 | 573万円 |
40~44歳 | 621万円 |
45~49歳 | 651万円 |
50~54歳 | 666万円 |
55~60歳 | 652万円 |
この表から、年齢が上がるにつれて年収も高くなる傾向があることがわかります。
基本的に経験を重ねるごとにスキルやノウハウが向上するため、AIエンジニアの収入は年齢に比例して増加すると考えられます。
ただし、若年層でも優れた能力を持つ人材は多く、平均を上回る収入を得ている方もいます。
そのため、AIエンジニアは若くてもキャリアを積める職種だと言えるでしょう。
一方、フリーランスのAIエンジニアの収入状況は以下の通りです。
- 平均年収 916万円
- 中央値年収 900万円
- 最高年収 2,400万円
- 最低年収 240万円
高収入を望むAIエンジニアにとって、フリーランスは検討に値する選択肢となるでしょう。
人工知能関連の案件を見てみましょう。
AIエンジニア需要の現状
要約すると、今後AIエンジニアの需要はさらに増加すると見込まれています。その背景を説明するため、まずはAIエンジニアの現状について述べましょう。
AIエンジニアの現状
現代社会においては、AIエンジニアの人材不足が深刻な課題となっています。
情報処理推進機構(IPA)が公表した「DX白書2021」によると、デジタル事業に対応できる人材の確保状況を見ると、ITエンジニア全体で半数以上が不足しているという実態が明らかになりました。
先端技術エンジニアとは、機械学習やブロックチェーンなどの先進的なデジタル技術を担当する人材を指します。
また、下図の「DX領域で採用・育成すべき人材像」では、AI(人工知能)エンジニアが7.3%を占めており、企業が求める重要な人材であることが分かります。
DX領域で採用・育成すべき人材像 |
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AIエンジニアの将来性
AIの進化は目覚ましく、私たちの生活に浸透しつつあります。AIエンジニアの人材不足が指摘される中、この分野は今後の有望な成長産業と見なされています。
AIは以下のような場面で既に活用されています。
- コールセンター業務の自動化
- フリマアプリの出品支援
- 不良品の選別や人数カウント
- 映画キャスティング
- 株価予測
- 無人レジ店舗
- 介護支援ロボット
- AIによるピザ製造
- 手話通訳AI
- 採用活動の分析支援
- 音声アシスタント
このように、AIは日常生活のさまざまな場面で活躍し始めています。AIテクノロジーの発展に伴い、AI開発に取り組む企業が増加すると予想されます。その結果、AIエンジニアやデータサイエンティストの需要が高まり、企業間での人材獲得競争が激化するでしょう。転職市場においても、AIエンジニアの求人ニーズは高まることが見込まれます。
AIエンジニアへの転職を実現させるには
未経験からAIの専門家を目指す際に必要なこと
- AIに関する知識だけでなく、AIを活用する分野の専門知識も必要不可欠
- AIに関する情報は日々進化しているため、最新の論文や資料を常に学習し続ける必要がある
- AIの需要は高まる一方で、人材不足が深刻化しているため、着実にスキルを身につければ、将来的にAIの専門家になれる機会がある
- AIの専門家は新しい職種なので、キャリアパスが明確ではない
- 皆さん自身がAIの専門家のモデルケースとなるチャンスでもある
開発経験を身に付ける
AIの専門家になるためには、開発作業に必要なコーディングの知識とテクニックを身に付ける必要があります。
つまり、AIに関連する言語の習得や何らかの開発経験を積むことが、AIエンジニアへの第一歩となるでしょう。
【AI開発で利用される主なプログラミング言語】
- Python
- C++
- Ruby
- JavaScript
- SQL
加えて、PythonのDjangoやFlaskといったフレームワーク、または機械学習・ディープラーニングに特化したTensorflowやPytorchなどのフレームワークについても、スキルとして習得しておくことが望ましいでしょう。
統計、数学、データ分析の知識/スキルを身に付ける
AIエンジニアの職務においては、統計学、数学、データ分析に関する知識とスキルが不可欠です。扱う業務の性質上、理工系分野の素養が求められるため、これらの科目に苦手意識がある方は、早期の段階から克服することが賢明です。
統計の知見は、AIの開発に広く活用されている深層学習(ディープラーニング)の手法において、AIに与えるインプットデータの選定に重要な役割を果たします。より優れたAIを構築するためには、適切なインプットデータを判断する統計学的知識が不可欠です。特に以下の項目については理解を深めておく必要があります。
- 分散
- 検定
- 確率分布
- 推定
- 標準偏差
数学の知識もAIエンジニアには欠かせません。以下の数学的概念や理論を十分に理解していないと、業務遂行が困難となります。
- 微分積分学
- 線形代数学
- 確率論
- 統計学
- 線形代数
- ベクトル
- 行列
- 確率
AIに最適な学習データを選定するためには、データ分析の手法を理解しておく必要があります。基本的なデータ分析の手法には以下のようなものがあります。
- クロス集計→情報を限定して情報の結びつきを調べる
- ロジスティック回帰分析→結果から原因を推測する
- 決定木分析→樹木状のモデルを使う
転職理由と志望動機を一貫させる
転職の理由と志望動機を一貫させることは極めて重要な課題です。その理由は、採用面接において説得力が高まるからです。
採用担当者は人物を見抜く専門家であり、応募書類の転職理由と志望動機から、その人物の概要を把握することができます。
- 例えば、年収や福利厚生などの条件面のみを理由に面接に臨む場合、志望動機が希薄であると受け取られ、「他社でも構わないのでは?」といったマイナスのイメージを与えてしまうそうです。
AIエンジニアへの転職を真剣に考えるのであれば、定型的な回答は避け、自身の熱意を訴え、入社への強い意志を明確に示すべきでしょう。
AIエンジニア特化型スクールを受講する
AIエンジニアとしての経験がない場合、スキルやノウハウを身につけるには、AIを学べるプログラミングスクールに通うことが最も効率的な方法です。
AIエンジニアは新しい職種であり、インターネット上の情報は少なく、正確でないものも存在します。実践で活かせないようでは本末転倒となってしまいます。
そのため、AIエンジニアの適切なスキルやノウハウを持つ専門家から直接指導を受けることをおすすめします。
以下に、AIを学べるおすすめのプログラミングスクールをいくつか紹介します。ご参考ください。
【AIが学べるおすすめのプログラミングスクール】
企業名 | 特徴 | 受講形態 |
---|---|---|
TechAcademy | 業界最安値を売りにしている |
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CodeCamp | 最適な学習カリキュラムで顧客満足度96.6% |
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Aidemy | Python特化型のAI学習が強み |
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転職を成功させる方法
未経験からAIエンジニアへの転身を目指す際、求人の探し方や必要なスキルなど不明な点が多いことでしょう。
そういった場合は転職エージェントを活用するのがおすすめです。
転職のプロに相談することで、自分の条件に合った求人を見つけられるため、最適な企業に出会えます。
転職サイトによって得意分野や特色は異なります。
状況に応じて複数の転職エージェントを使い分けるのが賢明です。
【AIエンジニア転職に強いエージェント】
企業名 | 特徴 |
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レバテックキャリア | IT・Webエンジニアの転職に強み |
リクルートエージェント | 知名度と求人数が国内トップクラスの大手総合転職サイト |
doda | 10万件以上の豊富な案件数とサポート力に定評 |
まとめ
この記事では、AIエンジニアの職務内容、収入水準、転職の見通しなどについて詳しく説明しました。
AIエンジニアは、様々な産業分野でAIを活用した開発を担当する職種です。
主な業務には、
- アルゴリズムやモデルの開発
- PoC
- プログラミング
などが含まれます。
平均年収は599万円ですが、所属企業やスキルによって376万円から1,062万円と幅があります。
AIエンジニアの需要は今後さらに高まると予想され、将来性の高い職種といえます。
一方で、未経験者がAIエンジニアに転職するのは難しく、開発経験や統計・数学・データ分析の知識が必須となります。
AIエンジニアは給与が高く、やりがいのある仕事ですが、求められるスキルレベルも高いため、強い意欲が必要不可欠です。
AI理論や数学に関心がある方は、この職種に挑戦してみる価値があるでしょう。
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