ビジュアル表現を手がける職種として、グラフィックデザイナーが存在します。
広告会社やデザイン事務所など、様々な職場で活躍する存在です。
IT業界への転職を視野に入れつつ、デザイン関連の仕事にも興味があるのであれば、グラフィックデザイナーは選択肢の一つとなり得るでしょう。
本稿では、グラフィックデザイナーという職種の実態を、
- 業務内容
- 収入水準
- キャリアパス
などの観点から確認していきます。
未経験からこの職を目指す際のポイントも解説しますので、グラフィックデザイナーへの道筋を立ててみるのも一案かもしれません。
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グラフィックデザイナーとは
グラフィックデザイナーは、様々な製品やサービスに関わるビジュアル要素を創造する職業です。
クライアントの要望に基づき、オリジナルのデザインを考案し、完成品として仕上げることが主な業務となります。
グラフィックデザイナーの作業には、イラスト、フォント、写真、動画、3Dデザインなど多岐にわたる要素が含まれます。
この職種を目指す場合、デザインを構成する各要素に精通しておくことが重要視されます。
グラフィックデザイナーは、大まかに「広告系」と「ゲーム系」の2つに分類されます。
広告系のグラフィックデザイナーは、印刷物やWebなどのメディアに関わるデザインを手掛けます。
具体的には以下のようなものがその対象となります。
- 新聞や雑誌の広告
- 商品パッケージ
- 看板
- チラシ
- ポスター
- Webサイトに掲載するグラフィック など
広告系のグラフィックデザイナーは、広告代理店やデザイン事務所、出版社や印刷会社などに就職・転職することが多く、またこれらの企業と業務委託契約(フリーランス)を結ぶケースもあります。
一方、ゲーム系のグラフィックデザイナーは、ゲームソフト内で使用されるグラフィックのデザインを担当します。
家庭用ゲームやスマートフォンゲームなどにおいて、キャラクターや背景などを制作します。
近年は3Dソフトを用いたデザイン(3Dデザイナー)が主流ですが、ドットやイラストによる2Dデザイン(2Dデザイナー)にも需要があります。
ゲーム系のグラフィックデザイナーは、ゲーム開発会社に就職・転職するか、フリーランスとして業務委託を受けることが一般的です。
グラフィックデザイナーの仕事内容
デザイン業務の流れは、以下のステップで進行します。
- 各プロセスで必要となる作業内容と求められるスキルを理解しておくことが、グラフィックデザイナーを目指す際に重要となります。
- ここでは、グラフィックデザイナーの職務を3つの観点から説明します。
依頼・企画提案
グラフィックデザイナーの仕事は、最初に依頼主からの要望を把握することから始まります。
- ヒアリングを行い、どのようなデザインが求められているかを確認する必要があります。
- ヒアリングの内容を基に、デザインのコンセプトや方向性、納期や予算などを決定していきます。
ただし、依頼主の要求を一方的に受け入れるだけではなく、デザイナーとしての知識や経験を活かし、具体的な提案やアドバイスを行うことが重要です。
制作業務がスムーズに進むよう、初回のヒアリングで必要な情報を漏れなく引き出すことを心がけましょう。
デザイン作成・初稿提出・修正
グラフィックデザイナーは、クライアントとの打ち合わせ後、要求事項に沿って実際のデザイン制作に取り掛かります。
完成したデザインをクライアントに提示し、必要に応じて修正を行います。
初回のデザインで完璧な仕上がりとなることは稀であり、基本的にクライアントとの往復を重ねることになるでしょう。
細部を徐々に調整しながら、最終的にクライアントが満足できる形に仕上げていくのがデザイナーの役割です。
デザインに関する知識が乏しいクライアントの場合は、事前に複数のデザインパターンを用意し、内容を擦り合わせやすくすることもあります。
デザイン制作では、複数のメンバーでチームを組んで業務を進めることもあります。
- デザインに使用するイラストはイラストレーターに
- 雰囲気に合った写真はフォトグラファーに依頼することもあります。
様々な素材を組み合わせて一つのデザインにまとめあげるのも、グラフィックデザイナーの仕事の一部です。
最終校正・納品
デザインの完成品をクライアントに提示し、最終チェックで承認が得られれば、引き渡しの手続きに移ります。
納品に際しては、以下の作業が求められます。
- 制作したデザインをデータ化する
- 印刷物のデザインの場合
- データを会社に送り、実際の色合いを確かめるための色調整を行う
要求事項を満たした内容になっていることを確認した上で、クライアントへ納品します。
グラフィックデザイナーの年収
視覚デザイナーの収入は、従業員の場合、平均で約418万円と報告されています。
一般的なIT技術者の平均年収が約469万円であることから、やや低めの水準にあると言えるでしょう。
一方、フリーランスの視覚デザイナーの場合、ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」のデータによると、
- 平均単価57.4万円
- 中央値単価60万円
- 最高単価100万円
- 最低単価4万円
となっています。
上記の月額単価を年間ベースに換算すると、フリーランスの視覚デザイナーの平均年収は約688万円となります。
収入を重視して視覚デザイナーへの転職を検討する際は、フリーランスでのキャリアアップも選択肢の一つとして考慮に入れることができるでしょう。
グラフィックデザイナーの将来性
グラフィックデザイナーの職業は、今後ウェブメディアを中心に需要が拡大すると考えられます。
従来、グラフィックデザイナーは印刷媒体で活躍してきましたが、その市場は縮小傾向にあり、同様の需要を見込むことは難しくなっています。
公益財団法人出版文化産業振興財団の「出版指標年報」によれば、
- 書籍や雑誌の販売金額は年々減少しており、新刊点数も減少傾向にあります。
このため、出版関係者がグラフィックデザイナーに仕事を発注することは少なくなる可能性があります。
一方で、ウェブメディアの市場は拡大しており、グラフィックデザイナーの仕事も増加しています。
経済産業省の調査では、コロナ禍の影響で前年並みでしたが、国内のBtoC-EC市場規模は19.3兆円と非常に大きいことがわかっています。
また、スマートフォンの普及率が高く、多くの人がウェブメディアに接する機会が増えていることも要因です。
総務省の統計によれば、
2020年の世帯のIT機器保有率は95%を超えています。 |
ほとんどの家庭がスマートフォンやPCを所有しているため、ウェブメディアに注力する企業が増え、グラフィックデザイナーの需要も高まると予想されます。
今後グラフィックデザイナーを目指す場合は、印刷媒体だけでなく、ウェブメディアを中心とした仕事を意識することが重要です。
さらに、AI、ブロックチェーン、XRなどの先端技術の発展により、ゲーム市場も拡大する可能性があります。
特にNFT市場が活況を呈しており、ブロックチェーンデータ企業Chainalysisの報告書によると、
- 2021年のNFTの取引総額は約4兆7,100億円に上りました。
誰もが気軽に参加でき、クリエイターが活躍する場所も増えています。
つまり、2Dデザイナーや3Dデザイナーの需要も高まる可能性が高く、その観点からもグラフィックデザイナーの将来は有望であると言えるでしょう。
グラフィックデザイナーが転職する際に必要なポートフォリオとは?
グラフィックデザイナーへの転職を志す際、作品集の準備は必須となります。これまでの実績をまとめた作品集は、面接時に自身の能力を示す重要な役割を果たします。
スムーズな転職活動を後押しするだけでなく、フリーランスとしての活動の足がかりにもなるでしょう。
作品集には単なるデザイン作品の紹介にとどまらず、以下の情報を盛り込むことが肝心です。
- 制作対象の案件内容
- デザインのテーマやコンセプト
- 制作に要した時間
- 使用したツールやソフトウェア(Illustrator、InDesign、Photoshopなど)
グラフィックデザイナーとしてのスキルを裏付ける情報は、できる限り詳しく記載することが重要です。
加えて、作品集自体にデザイン性があれば、より良い印象を与えることができます。
実際にグラフィックデザイナーとして活躍している人の作品集を参考にするのも良いでしょう。
未経験からの転職においても、作品集は強力な武器となります。独学で培ったデザイン力が高ければ、グラフィックデザイナーへの転職の可能性は十分にあります。
転職活動の一環として、作品集の充実化に力を入れることをおすすめします。
グラフィックデザイナーへの転職を実現させるには
未経験からグラフィックデザイナーへの転職を実現するには、いくつかの事前準備が肝心です。
転職活動において留意すべき重要なポイントをまとめましたので、グラフィックデザイナーを目指す方はご確認ください。
- ポートフォリオの作成
- スキルアップ
- デザインソフトの習得
- デザイン理論の学習
- 資格取得
資格名 | 概要 |
---|---|
グラフィックデザイナー検定 | グラフィックデザインの基礎知識を問う検定試験 |
Illustrator/Photoshop資格 | Adobe社のデザインソフトの操作スキルを認定する資格 |
転職活動では、ポートフォリオと資格が重視されます。
未経験からグラフィックデザイナーを目指す方は、しっかりと準備を整えましょう。
デザインスキルや実務経験を身に付ける
グラフィックデザイナーへの転職を目指す際には、デザイン能力と実践的な経験を意識的に培うことが肝心です。
デザイン力には以下が含まれます。
- 基礎的な描写力や色彩理解
- トレンドを把握し自身なりに吸収する情報収集能力
また、以下のツールの操作技術もデザイン力として磨くことをお勧めします。
- Illustrator
- PhotoShop
- InDesign
- Figma
- Adobe XD
さらに、広告分野のグラフィックデザイナーとゲーム分野のグラフィックデザイナーでは、身に付けるべきデザイン力が異なるため、しっかりと調査する必要があります。
転職理由と志望動機を一貫させる
グラフィックデザイナーとしての新たな挑戦を目指す際、転職の動機と志望先企業への思いを一貫させることが重要です。
単に「デザインが好き」といった漠然とした理由では不十分で、
- 自身の強みを活かし〇〇の実現を目指したい
など、具体的な目標を掲げることが肝心です。
そうした明確な転職理由を基に、
- だから〇〇の実績を持つ会社で働きたい
- だから会社の事業領域拡大に貢献できる
といった志望動機を展開すれば、面接官の理解も得やすくなるでしょう。
転職の動機と志望先企業への思いを確実に結びつけることを意識し、アピールを行いましょう。
デザインスクールを受講する
デザインの専門知識やテクニックが不足していると感じる場合は、転職活動に先立ってデザインスクールで学ぶことも一案です。
デザインスクールでは、経験豊富な講師から実践的な指導を受けられるため、プロならではのノウハウを身につけることができます。
最近では通信教育のコースも充実しているので、現職を維持しながら段階的にスキルアップが図れるでしょう。
転職を成功させる方法
グラフィックデザイナーへの職種変更を目指す際には、転職支援サービスを中心に活用することが賢明です。
未経験からデザイン職へ転身する場合、就職活動と並行してデザインスキルの習得やポートフォリオ制作に時間を割く必要があります。
そのため、転職プロセスをバックアップしてくれる転職エージェントの存在は不可欠となります。
- 転職支援会社は、適切な求人を探したり、面接日程を調整したりと、実践的な支援を提供してくれます。
- 就職活動に伴う雑務を任せられるため、デザイン学習やポートフォリオ制作に専念できるのです。
さらに、デザイナー専門の転職サービスも存在します。
グラフィックデザイナーならではの課題を理解したキャリアコンサルタントによるサポートが受けられるため、よりスムーズな転職活動が可能になるでしょう。
まとめ
グラフィックデザイナーへの転身を検討する際には、事前の準備が不可欠です。
本稿を参考にすれば、グラフィックデザイナーの基礎知識と、転職に必要なスキルや環境について理解を深めることができます。
転職の前に、グラフィックデザイナーに関する情報収集を行うことをおすすめします。
ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」に少しでも関心がある方は、ぜひ登録をご検討ください。
本稿が皆様のお役に立てば幸いです。