基本情報技術者試験とは?合格率など試験詳細や2024年6月改定内容、合格するためのポイントを解説

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する基本情報技術者試験は、情報処理の促進に関する法律に基づき実施される国家資格試験です。この試験に合格すると、システムエンジニア(SE)やプログラマーとしての基礎的な能力を有することが証明されます。
本稿では、以下の点について詳しく解説します。

  • 基本情報技術者試験の概要
  • 試験の内容と範囲
  • 資格取得のメリット
  • 資格取得のデメリット
  • 合格に向けた対策

基本情報技術者試験の勉強中または今後勉強を予定している方は、ぜひ一読いただきたい内容となっています。また、2023年4月から大幅な試験形式の変更が予定されていますので、その詳細についても触れています。

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基本情報技術者試験とは

基本情報技術者試験とは

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する国家資格試験があり、情報処理の分野における基礎的な知識とスキルを有することを証明できます。
この試験に合格すると、システムエンジニアやプログラマーなどの高度IT人材としての基礎力が認められます。
出題範囲は幅広く、以下のような領域からの問題が出題されます。

  • 統計学や数学の知識
  • データ構造やアルゴリズムに関する理解
  • コンピューターやOSの仕組み
  • データベースの構築と運用
  • ネットワークの構築と管理
  • Webシステムの開発と運用
  • メディアコンテンツの制作と表現
  • プロジェクト管理の手法
  • 経営戦略と情報システムの関係
  • システム開発の手法
  • プログラミングの実践力
  • システムアーキテクチャの設計
  • セキュリティ対策の実装

ITパスポートとの違い

ITに関する基礎的な知識を証明する国家資格として、経済産業省が認定しているITパスポートがあります。この資格は、ITを活用する全ての人々を対象としており、基本情報技術者とは異なり、プログラミングに関する高度な知識は必要とされません。
基本情報技術者の試験では、

  • データ構造
  • アルゴリズム

などが出題され、プログラミングスキルの実践レベルが求められます。
一方、ITパスポートの試験では、簡単なプログラミングに関する基礎知識があれば合格できる内容となっています。

2つの資格を分ける決定的な違いは、プログラミングに関する知識や実践力のレベルにあります。

基本情報技術者 レベル2(実践レベル)、高度IT人材向けの資格
ITパスポート レベル1(基礎レベル)、ITを活用する全ての人向けの資格

なお、2023年4月から基本情報技術者試験の対象者像が改定され、「ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材」を対象とすることになります。

基本情報技術者試験の詳細を知ろう

基本情報技術者試験の詳細を知ろう

この節では、基本情報技術者試験の詳細な内容を解説していきます。

基本情報技術者試験は、情報処理技術者試験の中でも最も基礎的な資格です。この試験に合格すれば、以下のような能力を身につけていることが証明されます。

  • コンピュータの基本的な構成や動作原理を理解している
  • ソフトウェアの開発プロセスを把握している
  • ネットワークやデータベースの基礎知識を有している
  • 情報セキュリティの重要性を認識している

試験の形式は、次のとおりです。

出題形式 四肢択一式
問題数 90問
制限時間 90分
合格基準 60点以上

試験の対策としては、以下が有効です。

  • 公開されている過去問題を解く
  • 参考書や問題集を活用する
  • eラーニングなどの学習教材を利用する
  • 模擬試験に挑戦する

基本情報技術者試験に合格すれば、IT業界での就職や転職がスムーズになるでしょう。また、上位資格の学習にも役立つ知識が身につきます。

基本情報技術者試験の試験会場・受験料・試験時間・出題形式・出題数

以下は、基本情報技術者試験の試験会場、日程、受験料、試験時間、出題形式、出題数に関する情報です。

【試験会場】
全国の都道府県に少なくとも1か所の試験会場が設置されています。試験会場の詳細は専用サイトでご確認いただけます。また、当日の受験の流れについても別途ウェブサイトをご覧ください。

【試験日程】
基本情報技術者試験は年に2回、上期と下期に分けて実施されています。2022年度の試験実施時期は専用サイトでご確認ください。
なお、2023年4月から基本情報技術者試験は随時受験が可能になる予定です。詳細は別途ご確認ください。

【受験手数料】
7,500円(税込)
受験手数料は以前5,700円でしたが、以下の時期から7,500円に改定されています。

  • 筆記試験: 2021年度秋期試験から
  • CBT方式: 2022年4月実施分から

【試験時間・出題形式・出題数】
現行:

午前 午後
試験時間 150分 150分
出題形式 四肢択一式 選択問題あり
出題数 80問 11問
解答数 80問 5問

2023年4月改定後:

科目A 科目B
試験時間 90分 100分
出題形式 四肢択一式 四肢択一式
出題数 60問 20問
解答数 60問(全問必答) 20問(全問必答)

採点方式も従来の方式からIRT(項目応答理論)に基づく方式に変更される予定です。

基本情報技術者試験の出題範囲

基本情報技術者試験の出題範囲について説明します。2023年4月より大幅な改定が行われ、出題範囲も変更されています。

【科目A試験(旧午前試験)】

  • 基礎理論(基本概念、アルゴリズム、プログラミング)
  • コンピューターシステム(構成要素、システム構成、ソフトウェア、ハードウェア)
  • 技術要素(ユーザーインターフェース、マルチメディア、データベース、ネットワーク、セキュリティ)
  • 開発技術(システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術)
  • プロジェクトマネジメント
  • サービスマネジメント(運用管理、システム監査)
  • システム戦略(システム計画、業務プロセス改善)
  • 経営戦略(経営戦略、技術戦略、ビジネス分野)
  • 企業と法務(企業活動、法的事項)

【科目B試験(旧午後試験)】

  • プログラミング全般
    • 要求仕様の理解、プログラム実装、既存プログラムの解読・変更
    • 処理の流れ、変数の変化の想定、テスト、デバッグ
  • プログラムの処理実装
    • 型、変数、配列、演算、選択・繰返し処理、手続き・関数呼び出しなど
  • データ構造・アルゴリズム
    • 再帰、スタック、キュー、木構造、グラフ、連結リスト、整列、文字列処理など
  • 情報セキュリティ
    • セキュリティ要求事項、マルウェア対策、バックアップ、ログ監視
    • 情報転送時のセキュリティ、脆弱性管理、アクセス管理、運用状況の点検

改定後は科目Bの範囲が絞られており、プログラミングとセキュリティに重点が置かれています。詳細な変更点は公開資料を参照してください。

基本情報技術者試験の受験者数・受験者層・合格率(2024年6月)

ここでは、基本情報技術者試験の受験状況について、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の公式データを基に、平成29年度から令和3年度までの5年間を分析します。

【基本情報技術者試験の受験者数・合格者数・合格率の推移】

年度 受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
平成29年度 105,252(36,533) 23,288(8,854) 22.1(24.2)
平成30年度 111,381(36,610) 28,552(10,235) 25.6(28.0)
令和元年度 121,556(38,926) 31,224(10,549) 25.7(27.1)
令和2年度 52,993 25,499 48.1
令和3年度 32,549 13,544 41.6

※( )内は学生の数値。令和2年度・3年度の学生数は不明。

この5年間の平均合格率は32.6%となり、比較的難易度の高い試験と推測されます。ただし、年度や出題問題によって合格率にばらつきがあるため、あくまで目安です。

令和2年度と3年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で受験者数が減少し、合格率が高くなっています。受験者母数の減少に加え、外出自粛期間中の自宅学習時間の確保が要因と考えられます。

また、新型コロナの影響が少なかった平成29年度から令和元年度のデータから、

  • 学生の方が社会人よりも合格率がやや高い傾向にあることがわかりました。

学生は社会人に比べ学習時間を長く確保できることが、その理由と推測されます。

基本情報技術者試験の難易度と勉強時間

ここ数年の基本情報技術者試験の平均合格率は32.6%と決して高くありません。つまり、誰もが簡単に合格できる試験ではないと言えるでしょう。
その難しさの理由としては、以下の点が挙げられます。

  • アルゴリズムやプログラミングに関する問題が多く、ITの初心者には難解な内容となっている
  • 試験範囲が広範囲に及ぶため、学習すべき量が膨大になる
  • 特にIT業界未経験者は、十分な学習時間を確保する必要がある

基本情報技術者試験は、情報処理技術者試験の中でレベル2に位置づけられており、比較的基礎的な資格試験と言えます。IT業界で就業経験のある方であれば、ある程度取り組みやすい試験かもしれません。しかし、ITに関する知識が全くない状態から学習を始める場合、約200時間の学習時間が必要とされています。
そのため、基本情報技術者試験に合格を目指すのであれば、できる限り長い学習期間を設けることが重要になるでしょう。

基本情報技術者試験を取得するメリット

基本情報技術者試験を取得するメリット

基本情報技術者試験に合格し、資格を取得することには以下のようなメリットがあります。

  • 情報処理の基礎知識を身につけられる点
  • 就職や転職の際に有利になる点
  • 給与アップの期待ができる点
  • 自己啓発や能力向上につながる点

これらのメリットから、基本情報技術者試験の合格は、キャリアアップや収入増加のチャンスとなり得ます。

IT系企業への就職対策

ITに関する資格の中で広く知られている基本情報技術者試験に合格すると、IT企業への就職が容易になります。
この資格を持つことで、一定のITスキルを備えていることを示すことができるため、転職の際にも有利に働きます。
さらに、一部の企業では、基本情報技術者の資格保持者に対して昇進や人事異動で優遇措置を講じるケースもあり、IT業界で注目される資格の一つとなっています。

情報処理の基礎知識が身に付く

基本情報技術者試験の学習を通じて、情報処理の基礎的な知見を習得することができます。
具体的には、

  • プログラミングの基本
  • 専門用語の理解

が可能となります。
基礎的なプログラミングスキルを身に付けることで、従来は手作業で行っていた業務を自動化して処理できるようになります。
業務の効率化が図れ、自動化のノウハウを持つエンジニアは企業から高く評価される存在です。
将来的なキャリア形成を見据えた場合、基本情報技術者は取得に値する資格証と言えるでしょう。

資格取得の基礎となる

情報処理技術者の資格取得において、基礎レベルの試験に合格することは、より高度な試験を受験する際の有利な足がかりとなります。

基本情報技術者試験は、情報処理技術者試験の共通キャリアフレームワークにおいて、レベル2に位置づけられています。
この試験に合格すれば、以下の資格が得られます。

  • 応用情報技術者試験(レベル3)
  • プロジェクトマネージャ試験
  • より高度な試験(レベル4以降)

上位レベルの試験では、基本情報技術者試験の範囲をより深く掘り下げた内容が出題されることが多いため、基礎レベルの資格を保有していれば、より上位の試験に合格しやすくなるでしょう。

資格手当や報奨金を得られる

基本情報技術者の資格を持つと、企業から金銭的な恩恵を受けられる可能性があります。
近年、従業員の資格取得を奨励する企業が増加しており、手当や報奨金を支給する例が多くなっています。
基本情報技術者試験は、IT関連の資格試験の中では比較的簡単なレベルの試験と言えます。
そのため、高額の手当は望めませんが、月額5,000円程度の手当を支給する企業も存在します。
加えて、一部の企業では

  • 資格保有者数を公表し
  • 企業ブランディングの一環として基本情報技術者の資格を評価する動きもあります。

基本情報技術者試験を取得するデメリット

基本情報技術者試験を取得するデメリット

本文では、基本情報技術者試験の資格取得に伴う欠点について2点に焦点を当てて説明します。

  • 試験範囲が広範囲に及ぶため、合格に向けた学習負担が重くなる可能性があります。
    情報技術分野は多岐にわたるため、試験で問われる内容を網羅的に理解するには相当の努力を要します。

  • 資格取得後も継続的な学習が求められます。
    IT業界は日進月歩で進化しており、一度合格しても時間の経過とともに知識が陳腐化してしまう恐れがあります。
    最新の動向を常に把握し続ける必要があるでしょう。

評価されないこともある

外資系企業や多国籍企業では、国内で一般的な資格の評価が低い傾向があります。
例えば、基本情報技術者試験に合格しても、そのスキルを重視されないケースがあります。企業によっては、グローバルで通用する資格を重視する方針があるためです。
エンジニアの職種に応じて、求められる資格は異なりますが、外資系企業で役立つIT系資格やサービスの一例をご紹介します。

【グローバル企業で評価されるIT資格】

資格名 概要
Cisco Certified Network Associate(CCNA) ネットワーク機器大手Ciscoによる認定資格。ネットワークエンジニアの入門レベル。
AWS認定試験 Amazon Web Servicesに関する専門知識を認定する資格試験。ベーシック、アソシエイト、プロフェッショナルの3段階があり、合計11種類の認定資格がある。
Oracle認定Javaプログラマ Javaを扱うエンジニア向け資格。

  • Bronze(基礎)
  • Silver(上級者の指示下)
  • Gold(設計者の意図を汲み取り独力でプログラミング可能)

の3段階に分かれる。

学習時間の確保が必要

基本情報技術者試験の合格には、莫大な学習時間を確保することが不可欠です。
この試験は出題範囲が広範囲に及び、習得すべき基礎知識が多岐にわたるためです。
先に簡単に触れましたが、一般的にIT未経験者が同資格を取得するために必要とされる学習時間は200時間と言われています。

  • 学生であれば、比較的余裕を持って対応できる時間量かもしれません
  • しかし、日中就労している社会人にとっては膨大な時間を要するでしょう

基本情報処理技術者資格を合格するために

基本情報処理技術者資格を合格するために

基本情報技術者試験の合格には、個人に適した学習方法を見出すことが重要な鍵となります。ここでは、効果的な3つの学習法をご紹介いたします。

  • 過去問題を繰り返し解く
    出題傾向を把握し、知識の定着を図るために、過去に出題された問題を反復練習することをおすすめします。

  • 重点分野に特化した対策
    試験の出題範囲は広範にわたりますが、合格に向けて重点的に学習すべき分野があります。自身の苦手分野を分析し、集中的に対策を立てましょう。

  • 模擬試験で実戦形式を体験
    本番さながらの雰囲気の中で、時間配分や問題の難易度を体感することが大切です。模擬試験を活用し、実践的な対策を心がけましょう。

IT技術を学べるスクール

基本情報技術者試験に合格するためには、IT分野の知識を習得できる教育機関に通うことが賢明な選択肢です。この教育機関とは、実際に校舎に通う専門学校のみならず、通信教育やオンライン講座も含まれます。
教育機関に通うメリットや、基本情報処理技術者試験の対策に長けた機関について、以下にまとめましたので、ご参考ください。

【教育機関に通うメリット】

  • 最新のIT技術を網羅しつつ、体系的な学習が可能
  • 専門の講師陣による分かりやすい重要ポイントの解説
  • 資格取得に向けた学習サポートの提供
  • 時間や場所に縛られない柔軟な学習スタイルが可能で、社会人でも学習時間を確保しやすい

【基本情報処理技術者試験対策に強い教育機関】

・スタディング
・資格の学校TAC
・資格の大原

独学で学ぶ

情報技術者の資格取得を目指す場合、自主的な学習が有効な選択肢となります。
公式サイトで公開されている過去問を活用し、自身の知識レベルを把握することができます。
間違った問題を振り返ることで、不足している知識を補完し、理解を深めることが可能です。
また、参考書や問題集は学習や復習に役立ちます。
特に、プログラミングやアルゴリズムの分野は専門的な知識が求められるため、詳細な解説が掲載された参考書や問題集を活用するのがよいでしょう。

【おすすめの参考書や問題集】

  • 令和04年 イメージ&クレバー方式 栢木先生の基本情報技術者試験教室
  • 令和04年 基本情報技術者 合格教本
  • 令和04年【春期】応用情報技術者 パーフェクトラーニング過去問題集 (情報処理技術者試験)

学習ツールの活用

基本情報技術者試験の資格取得に向けては、学習サイトやアプリを活用することが一案です。特に、参考書や問題集を用いた勉強が苦手な方には適しています。
スマートフォンやタブレットを通じて動画で学習できるため、書籍を持ち歩く必要がなく、自分のペースで学習を進められるメリットがあります。
一部のサイトやアプリでは、過去問題の解説も提供されているため、参考書や問題集と併せて利用するのがおすすめです。

【おすすめの基本情報技術者試験向け学習アプリ】

  • 全問解説付基本情報技術者午前一問一答問題集
  • 2021年版 基本情報技術者試験問題集Lite(全問解説付)
  • 基本情報技術者試験 過去問

まとめ

まとめ

この記事では、基本情報技術者試験について詳しく説明しています。この資格は、ITエンジニアやプログラマーなどの高度IT人材の基礎スキルを証明する国家資格です。
平均合格率は32.6%と決して簡単ではありませんが、取得すれば様々なメリットがあります。

  • IT企業への就職が容易になったり
  • 情報処理の基礎知識が身に付いたり
  • 上位資格取得の足がかりになったりするのです

一方で、企業によっては評価されない場合もあり、学習時間の確保が必要なデメリットもあります。

合格に向けては、ITスクールに通ったり独学したり、学習サイトを活用するなどの対策が重要です。難易度はレベル2と低めですが、出題範囲が広いので決して楽ではありません。
しかし、この資格を取得できれば、IT業界で活躍できる人材に一歩近づけるでしょう。
IT業界への就職や活躍を検討中の方は、ぜひ挑戦してみてはどうでしょうか。

なお、2023年4月からは受験がいつでも可能になり、出題範囲も改定されて狭くなるため、そのタイミングを待つのも一案かもしれません。

最後に、ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」について紹介しています。
フリーランスを検討中の方はぜひ登録を。