ITコーディネータ試験の詳細と資格取得メリットを解説

ITキャリアを伸ばす一つの方策として、資格取得があげられます。
IT業界では実績が重視される傾向にありますが、キャリアアップや収入増加のチャンスを得たい場合は、資格取得に挑戦するのも賢明でしょう。
特に推奨できる資格がITコーディネータです。
現代企業にとって、IT技術を活用した業務効率化は急務ですが、十分に活用できていない企業も多数存在します。そこで、IT分野と経営分野の両方の知見を兼ね備えたITコーディネータが、現場を理解した上で業務改善に取り組めば大きな効果が期待できます。
ITコーディネータの資格認定試験がITコーディネータ試験です。
本稿では、ITコーディネータ試験の概要や、資格取得のメリット・デメリットについて説明します。

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ITコーディネータとは

ITコーディネータとは

ITコンサルタントは、経営とIT両面の知見を持ち合わせ、企業のデジタル化を推進するために必要な助言やサポートを提供する役割を担っています。

現代社会においては、業種を問わずあらゆる企業がITシステムの導入を急ぐ必要に迫られています。
しかしながら、単にシステムを導入しただけでは、十分な知識がなければ活用できず、最適なシステムの選定ができない企業も少なくありません。
そこで、経営とITの両面に精通したITコンサルタントが導入をサポートすることで、企業はスムーズにシステム導入を進め、業務効率化を図ることができます。

ITコンサルタントの働き方は、企業に所属する方法と独立した形態に分かれます。

  • 企業に所属する場合は、IT部門の管理職として経営陣とIT部門の橋渡し役を担い、経営陣に解決策を提言したり、IT分野での業務改善を推進したりします。
  • 一方、独立した場合は、企業から依頼を受けて、課題の洗い出しからシステム導入までをサポートします。

ITコンサルタントになるには、指定非営利活動法人ITコーディネータ協会が主催するITコーディネータ試験または専門スキル特別認定試験に合格し、ケース研修を受講する必要があります。
試験とケース研修のどちらを先に行ってもかまいませんが、いずれかの条件を満たした後、4年以内に残りの条件も満たさなければITコンサルタント資格を取得できないので注意が必要です。

試験名 受験資格 特徴
ITコーディネータ試験 受験資格の制限なし -
専門スキル特別認定試験 公認会計士などの士業や高度情報処理技術者試験合格者など 試験範囲が狭く、受験料が安価

ただし、専門スキル特別認定試験はITコーディネータ試験に比べて試験範囲が狭く、受験料も安価なため、専門スキル特別認定試験を受験する人が多い傾向にあります。
実際、ITコーディネータ試験の合格者の職種を見ると、専門スキル特別認定試験の対象資格関連業務に従事する人が約半数を占めています。

ITコーディネータ試験の詳細

ITコーディネータ試験の詳細

ITコーディネータの資格試験は年間3回の機会があります。
しかし、合格を目指すのであれば、試験の内容を十分に理解しておく必要があります。
それでは、ITコーディネータ試験の詳細について説明していきましょう。

  • 試験の概要
  • 出題範囲
  • 合格基準
  • 受験対策

ITコーディネータ試験の試験会場・日程・受験料

ITコーディネータ試験の試験会場は、居住地の近隣にある約300か所から選択が可能です。会場の詳細は公式サイトで確認できます。

この試験は年3回実施されており、以下の期間に受験が可能です。

  • 6月の受験期間(約1か月間)
  • 10月の受験期間(約1か月間)
  • 2月の受験期間(約1か月間)

試験最終日の3日前までであれば、都合の良い日時に受験することができます。前年度の試験日程は以下の通りでした。

5月25日から6月28日
9月16日から10月18日
1月20日から2月21日

年間スケジュールは公式サイトで確認できます。

受験料は19,800円(税込)と、国家資格に比べて高額となっています。ただし、対象資格を既に取得している場合の専門スキル特別認定試験の受験料は9,900円(税込)となります。

ITコーディネータ試験の試験時間・出題形式・出題数

ITコーディネータの資格試験は、コンピュータベースの試験方式で実施されます。
専門スキル特別認定試験の形態は、以下のとおりです。

  • 多肢選択式の問題からなります
  • 必須問題60問と選択問題40問の合計100問が出題され、試験時間は120分です

一方、必須問題のみの試験では、以下のとおりです。

  • 60問が出題され、試験時間は80分となります

ITコーディネータ試験の試験内容

ITコーディネータ試験は、IT経営の推進に関するガイドラインに基づいて出題されます。このガイドラインの内容は以下の通りです。

  • (1) 総論 - ITを活用して事業を成長させる、IT経営の概念、IT経営を支える人材と役割、IT経営の推進方法
  • (2) IT経営認識領域 - IT経営の認識に関すること、全体概要、変革の認識プロセス、変革マネジメントプロセス、持続的成長の認識プロセス
  • (3) IT経営実現領域 - IT経営を実現するための活動に関すること、全体概要、経営戦略プロセス、業務改革プロセス、IT戦略プロセス、IT利活用プロセス
  • (4) IT経営共通領域 - IT経営の全体最適化のために共通に求められるマネジメント、プロジェクトマネジメント、モニタリング&コントロール、コミュニケーション

試験問題は、基本問題/応用問題/応用・選択問題に分かれています。
基本と応用問題(60問)

  • ガイドライン全体に関する基本問題(40問)
  • 共通領域に関する応用問題(20問)

応用・選択問題(40問)

  • 経営系または情報系を選択
    • 経営系の範囲:経営戦略プロセス、業務改革プロセス、IT戦略プロセス
    • 情報系の範囲:IT戦略プロセス、IT利活用プロセス

応用・選択問題は受験申込時に決定する必要があり、自身のスキルに適した分野を選択することが重要です。専門スキル特別認定試験の場合、応用・選択問題の40問が免除され、計60問となります。

ITコーディネータ試験の受験者数・合格率・難易度

ITコーディネータ試験の受験者数は毎回200人前後となっています。
そのうち合格者は100人から150人程度で、合格率は50%から70%の範囲内で変動しています。
資格試験では都合が付かず受験を見送る人がよくいますが、ITコーディネータ試験の場合は1ヶ月の間で都合の良い日時を選べるため、申し込んでも受験しない人はほとんどいません。
申し込み後に受験しない人が少ないにもかかわらず、合格率が20%も変動するということは、ITコーディネータ試験の難易度が回ごとに大きく変化する試験であると考えられます。
ITコーディネータ試験の難易度は、ITスキル標準(ITSS)によりレベル4の認定を受けています。
レベル4に分類される資格には、以下が挙げられます。

  • 高度情報処理技術者試験
  • 情報処理安全確保支援士
  • CCIE

基本情報技術者試験がレベル2、応用情報技術者試験がレベル3に分類されていることから、ITコーディネータ試験は難関の資格試験であると言えるでしょう。

ITコーディネータ試験の申し込み手順

ITコーディネータ試験の申請プロセスは次のようになります。

  • 公式ウェブサイトから申請を行います。
    ITC+やCBTSに未登録の場合は、最初に会員登録が必要です。
  • 登録後、試験の予約を行います。
    申請画面の指示に従い、必要な情報を入力します。
  • 受験料の支払い(クレジットカード決済、ペイジー決済、コンビニ払込み)
  • 申請完了

なお、申請後に都合が悪くなった場合、公式サイトから受験日時・会場の変更が可能です。

ITコーディネータ試験の有効期限

ITコーディネータの資格は1年ごとに更新が必要となり、その際には手数料の支払いと実務報告書の提出、前年度の実践力ポイントが一定数以上あることが条件とされています。
実践力ポイントは、以下の通りです。

  • 協会が定めた基準に基づき、機関誌の購読や資格取得などで獲得できる
  • 対象業務を行った場合は自身で登録を行う

さらに、合格後3年以内にフォローアップ研修の受講も義務付けられています。
資格維持に関する詳細な流れは以下の通りです。

(出典:ITコーディネータ協会)

勉強時間

ITコーディネータ試験の準備には50時間以上の学習時間が推奨されます。
経営や情報分野での実務経験があれば、一部の問題は予習なしでも解答できるかもしれません。
しかし、自身の経験がない領域については、しっかりと勉強する必要があります。
試験時間は120分で100問を解かなければならず、1問あたり72秒しか時間がありません。
スピード力が求められるため、問題を見てすぐに答えられないと合格は難しくなります。
合格には教科書の内容を十分に理解することが不可欠です。
自身の業務範囲外の分野のみ学習すれば良いと考えがちですが、範囲が狭くても丁寧に教科書を読み込む時間を確保してください。
なお、ITコーディネータ試験の過去問は公開されていません。
類似問題集は公開されていますが、古いものなので、あくまで参考程度に留めるのが賢明です。

ITコーディネータ試験の資格取得のメリット

ITコーディネータ試験の資格取得のメリット

ITコーディネータの資格取得は決して容易ではありませんが、合格すれば様々な利点が得られます。
ITコーディネータ試験に合格することによるメリットについて、以下に説明します。

  • 高い専門性を身につけることができる
  • 企業から高い評価を受けられる
  • キャリアアップのチャンスが広がる
  • 年収アップが期待できる
資格 年収
ITコーディネータ 600万円
一般社員 400万円

このように、ITコーディネータの資格を取得することで、専門性の向上、高い評価、キャリアアップ、年収アップなどのメリットが期待できます。

IT活用における経営戦略知識が身に付く

経営戦略の理解は、IT活用を主導する立場にとって重要な課題です。
IT活用の推進において、経営陣の理解が得られにくいことが問題視されがちですが、同時に推進側が経営の知見を欠いていることも、日本企業のIT化が遅れる一因と考えられます。
IT活用を効果的に進めるには、IT部門が経営側に歩み寄り、相互理解を深める必要があります。

  • ITコーディネータの知識を習得することで、経営の視点を獲得し、経営陣とIT部門の双方が納得できるIT活用の実現が可能となります。

資格手当や報奨金を得られる

多くのIT企業では、従業員が専門的な資格を取得した場合、手当や賞与を支給する制度を設けています。その中でも、ITコーディネータ資格はITスキル標準において最上位のレベル4に位置づけられており、同じ区分に入る資格は業界内で難易度が高いと認識されています。
したがって、この資格を取得すれば、企業から高額の手当や報酬を受け取ることができる可能性が高くなります。

ITコーディネータ試験の資格取得のデメリット

ITコーディネータ試験の資格取得のデメリット

ITコーディネータ資格の取得には長所と短所の両面があります。
資格を手にする前に、短所についても理解しておくことが賢明でしょう。

勉強時間を確保する必要がある

ITコーディネータの資格取得には、学習時間の確保が課題となります。
ITコーディネータ試験の受験者は、主に社会人が中心でしょう。
50時間を超える学習時間は、それほど長くはないように感じられるかもしれません。
しかし、勤務前後の時間に勉強する機会を設けるのは容易ではありません。
さらに、ITコーディネータでは問題演習だけでなく、テキストの熟読も求められるため、通勤時間などの隙間時間を活用した学習は難しい側面があります。
ITコーディネータは試験期間の1ヶ月以内であれば、いつでも受験可能です。
そのため、比較的余裕のある時期を見計らって受験することをおすすめします。

ITコーディネータ試験の資格って役に立たない?

ITコーディネータ試験の資格って役に立たない?

ITコーディネータの資格取得が役立たないとの意見もありますが、それは単に資格を手にするだけでは意味がありません。
ITコーディネータ試験は、経営とIT両面の知見を持つことを証明する資格です。
つまり、ITコーディネータの資格を持つ人は、IT部門と経営陣を橋渡しする立場にあり、企業のIT活用について提言できる存在と言えるでしょう。

実際、ITコーディネータの受験者は40代・50代が多く、この世代は一般的に企業の管理職や上位職にあたります。
そのため、実務でIT活用に携わり、不足している知識を補うためにこの試験を受けていると考えられます。

一方で、若手でIT業界でのキャリアアップを目指す場合は、同じレベル4の

  • 高度情報処理技術者試験

などを受験する方が適切でしょう。

ITコーディネータ資格は必ずしも全員に役立つわけではないので、自身のキャリアや立場を踏まえて受験するかどうか判断することが重要です。

ITコーディネータ試験合格のために問題を解いて知識を蓄えよう

ITコーディネータ試験合格のために問題を解いて知識を蓄えよう

ITコーディネータ試験に合格するためには、テキストの学習だけでなく、問題演習も重要です。
ITコーディネータ試験は時間との勝負であり、内容を理解していても問題に慣れていないと合格が難しくなります。
ITコーディネータ試験の過去問題は販売されておらず、問題はセットからランダムで出題されるため、以前の受験者から情報を得ても参考にならない可能性があります。
一方で、

  • ケース研修を提供する企業の中には、ITコーディネータ対策講座を開講しているところもあります。
  • Amazonなどで疑似問題集が発売されているため、対策講座で使用したテキストや疑似問題集を活用して問題演習を行うことをお勧めします。

まとめ

まとめ

ITの専門家やコンサルタントにとって、ITコーディネータの資格は経営とITの両面での知識を示すことができるため、取得する価値が高いでしょう。
しかし、

  • 業務範囲外の学習が必要で
  • 過去問がないため問題の予測が難しい

など、取得が容易ではない資格でもあります。
そのため、自身のキャリアにおいて、現時点でITコーディネータの資格が必要かどうか、どのようなスキルを伸ばす必要があるかを検討した上で、受験するかどうかを判断することが重要です。

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本記事が皆様の参考になれば幸いです。