フリーランスや個人事業主の方々は、健康保険への加入が義務付けられていることをご存知でしたか?会社員の場合は雇用主が保険料の支払いを代行してくれますが、自営業者では加入手続きから保険料の納付まで全て自身で行う必要があります。
本稿では、今後独立を検討している会社員の皆様に向けて、以下の点を中心に健康保険制度について解説いたします。
- 会社員と自営業者で加入する健康保険の違い
- 自営業者が加入できる保険の種類
- 自営業者が保険料を抑える裏ワザ
- 保険未加入時のリスク
このように、自営業者にとって健康保険への加入は必須事項です。ぜひ最後までお読みいただき、今後の参考にしていただければ幸いです。
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フリーランス(個人事業主)と健康保険
フリーランス(個人事業主)を志す方に向けて、会社員とは異なる保険加入の必要性について説明します。
フリーランスと会社員では、加入すべき保険の種類や内容が大きく異なります。
まずは両者の違いを比較しながら、フリーランス(個人事業主)にとって重要な保険について確認していきましょう。
- 会社員の場合、以下の保険に加入しています。
保険の種類 | 概要 |
---|---|
健康保険 | 病気やケガをした際の医療費の一部を給付 |
厚生年金保険 | 老後の生活を支える年金を給付 |
雇用保険 | 失業した際の生活費を一時的に給付 |
労災保険 | 業務上の事故や病気に対する保障を給付 |
一方、フリーランス(個人事業主)の場合は、上記の保険に自身で加入する必要があります。
特に、国民健康保険と国民年金は必ず加入しなければなりません。
また、収入が不安定なフリーランスにとって、所得補償保険や医療保険にも加入することをおすすめします。
健康保険
労働者が加入する医療保険制度は「一般被用者保険」と呼称されています。この制度は主に民間企業に勤務するサラリーマンとその家族を対象としています。
一般被用者保険には、以下の2つがあります。
- 大企業従業員向けの組合管掌健康保険
- 中小企業従業員向けの全国健康保険協会管掌健康保険
この保険の最大の利点は、個人が支払う保険料の半額を雇用主が負担してくれる点にあります。
また、以下のメリットがあります。
- 給与水準に応じた高額の傷病手当金の支給
- 就労不能時の様々な保障を受けられる
健康保険について
フリーランス(個人事業主)が加入する健康保険は「国民健康保険」と呼称されています。国民健康保険は、以下の人々を対象とした保険制度で、市区町村が保険者となっています。
- 自営業者
- 年金受給者
- 非正規雇用者やその家族
- 被用者保険(会社員が加入する保険)の対象外の国民
フリーランス(個人事業主)本人のみならず、その家族も加入が可能です。
支払う月々の保険料は市区町村ごとに算出方法が異なるため、詳細は居住地の自治体窓口やウェブサイトで確認することをおすすめします。
また、会社を退職してフリーランスに転じる場合、退職日の翌日から14日以内に居住地の市区町村に届出を行う必要があります。保険証がないと、医療費の3割負担ではなく全額自己負担となるため、できる限り早期に手続きを行うよう心がけましょう。
フリーランス(個人事業主)が加入できる保険の種類
フリーランサー(個人事業主)が加入すべき保険は主に4種類に分類されます。
ここでは、それぞれの保険について詳細を説明していきましょう。
- 独立した仕事をする方にとって、適切な国民健康保険を選択することが重要です。
国民健康保険への加入
国民健康保険は、企業に所属していない個人事業主やフリーランスの方々が主に加入する保険制度です。多くの個人事業主やフリーランスの方が、この保険に加入することになるでしょう。
国民健康保険加入のメリット
- 所得が基準値を下回る場合、自動的に保険料が減額される。
【例】現在も世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少し、国民健康保険料や税金の支払いが困難になった場合の減免措置を考えてみましょう。
減免の対象となるには、以下の項目のいずれかに該当する必要があります。
- 新型コロナウイルスの影響で、生計維持者が死亡または重篤な傷病を負った世帯。
- 新型コロナウイルスの影響で、生計維持者の事業収入が前年比30%以上減少すると見込まれる世帯。
- 新型コロナウイルスの影響で、生計維持者の前年の所得が1000万円以下の世帯。
- 新型コロナウイルスの影響で、生計維持者の前年の事業収入以外の収入が400万円以下の世帯。
①に該当する世帯の場合は全額免除となります。②の場合、前年の合計所得によって減免割合が以下の
主な生計維持者の前年の総所得金額 | 減免割合 |
---|---|
300万円以下 | 全額免除 |
400万円以下 | 80% |
550万円以下 | 60% |
750万円以下 | 40% |
1000万円以下 | 20% |
【例】広島県三原市に住む、夫婦と子ども2人の4人世帯を例に具体的なシミュレーションをしてみましょう。
生計維持者の前年度総所得金額が300万円の場合、年間の国保税42万1200円が全額免除になります。
妻などに収入がある場合は、数値が変動しますので注意が必要です。
世帯情報
対象保険料額=300万円世帯合計所得
本来の保険税=421000円
減免割合=100%
→421,000円×100%=421,000円
また、新型コロナウイルスに関係なくても、国保料・税の支払いが困難な場合は、減額免除制度を利用できます。
その他、国が定める法定軽減と各自治体が
会社の保険の任意継続(健康保険任意継続制度)
退職後も現在の健康保険制度を維持できる仕組みが任意継続制度です。
会社を離れた際、一定の条件を満たせば、これまでと同様の保険適用を受けられます。ただし、
- 退職前2カ月以上の加入期間と、
- 資格喪失後20日以内の申請書提出が義務付けられています。
詳細は公的機関のウェブサイトをご確認ください。
任意継続のメリットとして、
- 扶養家族も対象となり、
- 所得に関わらず保険料が一定であること
が挙げられます。
一方で、
会社負担分も自己負担となり保険料が2倍になる点や、 |
2年の有効期限があるデメリットもあります。 |
国民健康保険組合への加入
国民健康保険組合は、同種の職業に従事する人々によって構成される健康保険団体です。地域ごとに運営されており、医療費の自己負担は3割、高額療養費や出産一時金の支給など、国民健康保険と同様の仕組みです。
国民健康保険組合のメリットは、
- 所得に関係なく、組合員の身分によって保険料が固定されていること
- 給与水準に左右されません
一方、デメリットとしては、
- 被扶養者の概念がないため、個人事業主の場合は扶養家族が多いほど保険料負担が重くなります
- 傷病手当金や出産手当金など、付随的な給付が弱い点が挙げられます
フリーランス賠償責任補償への加入
フリーランスの業務遂行中に発生する可能性のある様々なリスクに備えた保険制度があります。対人・対物事故、納品物の欠陥、情報漏洩、著作権侵害、納期遅延による損害などのフリーランス特有の賠償リスクに対して補償が行われます。補償額は内容によって最高1億円、期間中の限度額は10億円に設定されています。
この保険には以下のようなメリットがあります。
- 損害賠償請求額の支払いを軽減できる
- クライアントが安心して業務を依頼しやすくなるため受注機会が増える
フリーランスは様々なトラブルに巻き込まれる可能性があるため、最低限の備えとして、このような補償制度に加入しておくことが推奨されます。
フリーランス(個人事業主)として健康保険料を安くするには
フリーランス(個人事業主)が加入すべき保険の種類について説明してきましたが、いずれも一定額の保険料を支払う必要があります。
しかし、保険料を払うのであれば、できる限り節約したいと考える人も多いでしょう。
ここでは、フリーランス(個人事業主)として健康保険料を抑えるための方策について説明します。
- 国民健康保険の保険料は、前年の所得に応じて決まります。所得が低ければ保険料も安くなります。
- 国民健康保険の保険料は、世帯単位で計算されます。世帯主の所得が高くても、世帯員の所得が低ければ保険料を抑えられます。
- 国民健康保険の保険料には、所得に応じた均等割額と平等割額の2つがあります。平等割額は世帯人数に応じて決まるため、世帯人数が多いほど保険料が高くなります。
世帯人数 | 平等割額(例) |
---|---|
1人 | 20,000円 |
2人 | 30,000円 |
3人以上 | 40,000円 |
このように、フリーランス(個人事業主)の健康保険料は、所得や世帯構成によって大きく変わります。保険料を抑えるためには、所得を控えめに見積もったり、世帯分離を検討したりすることが有効な方策となります。
フリーランス(個人事業主)が保険料を安くする方法 保険料の安い自治体に引っ越す
フリーランスの方々は、居住地域によって支払う保険料に大きな開きがあることをご存知でしたか? 意外と知られていない事実ですが、仕事の場所を自由に選べるフリーランスならではの利点を活かし、保険料負担が軽い地域に転居するという選択肢もあるかもしれません。
任意継続加入者の方は、政府の公式ウェブサイトから都道府県別の令和3年度保険料を確認できますので、関心のある方はぜひチェックしてみてください。
2024年6月フリーランス(個人事業主)が保険料を安くする方法青色申告で確定申告をする
税務申告において、青色申告制度を利用することで、保険料の負担が大幅に軽減される可能性があります。
- 個人事業主が従来の白色申告から青色申告に移行すれば、特別控除の適用を受けられるようになります。
- 簡易な帳簿の場合は10万円、複式簿記の場合は65万円が控除対象となり、課税対象所得が減少するため、住民税額も低くなり、結果として国民健康保険料の負担も軽減されます。
この制度を積極的に活用することをお勧めします。
青色申告制度の詳細を知りたい個人事業主の方は、以下の関連記事をご覧ください↓
フリーランス(個人事業主)が健康保険に加入しなかったらどうなる?
日本の健康保険制度は強制加入型であるため、皆さんは必ず何らかの社会保険に加入しなければなりません。
万が一、保険に未加入であったり、保険料の支払いを怠った場合、所属する自治体から保険料の納付を求める通知が届きます。
この通知を無視し続けると、「督促状」が送付され、さらに保険料の支払いを拒否すれば「滞納」扱いとなり、通常の保険証ではなく「短期被保険者証」が発行されます。
その後も1年以上滞納が続けば、短期被保険者証の効力が失われ、保険料は全額自己負担となります。
それでも支払いがない場合、
- 「罰金」
- 「差し押さえ」
の対象となり、最悪の場合、財産の差し押さえや銀行口座の凍結など、重い処分を受ける可能性があります。
フリーランスの方で労災保険について知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、フリーランス(個人事業主)として活動する際に必要となる健康保険について説明しました。
会社員とは異なり、フリーランスは国民健康保険に加入する必要があります。
加入できる主な保険は
- 国民健康保険
- 任意継続保険
- 国民健康保険組合
- フリーランス賠償責任補償
の4つです。
保険料を抑えるには、
- 居住地の自治体を選んだり
- 確定申告で青色申告を行うなど
の方法があります。
健康保険に未加入の場合、最悪の事態として財産の差し押さえリスクもあります。
フリーランスにとって健康は大切な資産です。定期的な健診や自己管理が不可欠です。医療費の節約と併せて、自分のニーズに合った国民健康保険への加入が重要となります。
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