ITの専門家を目指す人にとって、応用情報技術者試験の資格取得は重要な目標となります。この国家資格は、
- ITスキルと知識を高めたい人
- 就職時に自身の能力をアピールしたい人
に適しています。
しかし、高度な技術力と幅広い知識が必要とされる難関資格であるため、事前の十分な準備と情報収集が不可欠です。
本稿では、応用情報技術者試験の概要、メリット、デメリットなどを解説します。ITのキャリアアップを目指す方は、以下の内容を参考に、この資格取得に向けた準備を進めましょう。
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応用情報技術者試験とは
この資格は、経済産業省が認定する国家資格の一つであり、高度なIT知識と実践力を兼ね備えた技術者が取得できる資格です。
企業にとってメリットのある人材であると判断された場合に授与されるため、ITエンジニアやプログラマーを目指す人にとって魅力的な資格となっています。
この試験は、IT技術者の能力を測る共通基準である「共通キャリア・スキルフレームワーク」におけるレベル3に位置づけられており、レベル1から4までの中で2番目に高い難易度を持つことから、合格者は高いスキルを有する技術者であることが証明されます。
応用情報技術者試験の違い
ITエンジニアの世界に足を踏み入れる際の第一関門とされているのが、基本情報技術者試験という資格です。
IT技術者として求められる基礎的な知識や技能が問われるため、就職活動に先立ってこの資格を取得する人が増えています。
ITエンジニアの基本業務に関連する内容も出題範囲に含まれているため、就労しながら基本情報技術者試験の取得を目指すケースもあります。
基本情報技術者試験は、応用情報技術者試験とは異なり、必要とされる技術・知識の水準が基礎的なレベルに留まっているのが特徴です。
ITエンジニア業界に新たに参入する人でも合格可能で、自身のITスキルを客観的に確認する手段としても活用されています。
文系出身者がIT分野への就職を希望する場合など、基礎力の保有を証明する必要がある際にも役立つでしょう。
一方の応用情報技術者試験は、アルゴリズムやプログラミングの科目を選択しなくてもよく、より上位工程や経営視点での試験と言えます。
基本情報技術者試験は、応用情報技術者試験とは異なり、基礎力の証明を目的とした資格であるため、即戦力が求められる中途採用の場面ではメリットが薄くなります。
新卒者の入社時に必要とされる資格であり、転職時やより高度な能力を証明する必要がある場合は、応用情報技術者試験の取得をおすすめします。
ITパスポートとの違い
ITに関する資格の中でも、ITパスポートは日常的に使われるIT技術や一般的な知識のレベルが問われるため、特別な準備なしでも取得が可能です。
IT業界に従事している方であれば、専門的な学習をせずとも合格できる資格となっています。
しかし、既にITエンジニアとして活躍している人や、学校で専門教育を受けた人にとっては、メリットが少ない資格と言えるでしょう。
ITパスポートの「共通キャリア・スキルフレームワーク」は最低レベルのレベル1に位置づけられています。
一方、基本情報技術者試験はレベル2となっているため、
- ITパスポート
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
と、順次レベルアップしながら取得することが考えられます。
ITパスポートで習得した技術や知識は、基本情報技術者試験でも活用できるため、効率的な学習が可能です。
エンジニアの方が資格取得を検討する場合は、基本情報技術者試験から着手することをお勧めします。
応用情報技術者試験の詳細を知ろう
応用情報技術者の資格を手にするには、指定された試験に合格することが求められます。
応用情報技術者試験は、十分な学習時間を確保すべき資格試験であるため、試験日程や申請手続きを事前に確認しておくことが重要なポイントとなります。
以下の情報を参考に、応用情報技術者試験の基本事項を把握しておきましょう。
- 試験の概要
- 出題範囲
- 試験日程
- 申請手続き
- 合格基準
応用情報技術者試験の試験会場・日程・受験料・試験時間・出題形式・出題数・申し込み手順
【試験実施時期】
応用情報技術者試験は年に2回、春と秋に行われます。
一般的に春は4月頃、秋は10月頃に試験が予定されています。
受験者は自身の生活環境や学習進捗状況に合わせて、受験時期を選択できるため、合格しやすいタイミングを見計らることができます。
申込期間は、春季が1月中旬から2月中旬頃まで、秋季が7月中旬から8月中旬頃までが目安となります。
ただし、これらは目安であり、応用情報技術者試験を受ける際は、最新情報を確認し、具体的な日程を把握しておく必要があります。
令和4年(2022年)度の試験実施時期については、こちらからご確認ください。
【受験料】
応用情報技術者試験の受験料は7,500円(税込)です。
以前は5,700円だった受験料が、2021年7月16日に改定されています。
この改定の理由は、新型コロナウイルス対策費用や試験実施に必要な様々な実費の増加によるものです。
これまで応用情報技術者試験を受けてきた人は、今後の受験料が7,500円に変更されていることを認識しておく必要があります。
【試験時間・出題形式・出題数】
午前 | 午後 | |
---|---|---|
試験時間 | 9:30~12:00(150分) | 13:00~15:30(150分) |
出題形式 | 多肢選択式(四肢択一) | 記述式 |
出題数 | 80問 | 11問 |
解答数 | 80問 | 5問 |
(参照:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要綱 Ver.4.8)
【申し込み手順】
応用情報技術者試験の申し込み手順は以下の通りです。
- 情報処理推進機構(IPA)よりインターネット申込みを行う
- 申込画面から指示される手順に従い、必要事項を入力する
- 受験料の支払い(クレジットカード決済、ペイジー(Pay-easy)による払込み、コンビニでの払込み)
- 受験票到着
上記の手順で応用情報技術者試験の受験が可能です。
申し込みや受験料の支払いには期限が設けられているため、
応用情報技術者試験の受験者数・受験者層・合格率
応用情報技術者試験の受験者数と合格率は、最新の令和3年度の情報を参照すると、以下の通りとなっています。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|
59,698人 | 14,006人 | 23.5% | 30歳 |
29,024人 | 6,807人 | 23.5% | 30.4歳 |
63,555人 | 14,160人 | 22.3% | 30.8歳 |
64,367人 | 14,865人 | 23.1% | 30.9歳 |
65,036人 | 13,659人 | 21.0% | 30.8歳 |
- 令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、秋期(10月)のみの試験実施となったため、他の年度と比較して数値が低くなっています。
コロナ禍の影響を受けた令和2〜3年度のデータを除けば、応用情報技術者試験の受験者数は毎年6万人を超えていることが分かります。令和3年度には既に受験者数が回復基調にあることから、この資格に対する需要は非常に高いと言えるでしょう。
応用情報技術者試験の難易度・勉強時間
応用情報技術者試験は極めて高度な難易度を有する試験であると判断できます。合格率は年々20%を僅かに上回る程度に留まっています。
その困難さの一因は、試験内容にあると考えられます。
応用情報技術者試験は、午前と午後の2部構成となっており、
- 午前は80問の多肢選択式
- 午後は11問の記述式で構成されています
記述式問題が出題されるため、豊富な知識だけでなく、それを活用・応用する力が問われるのです。
単なる知識習得では記述試験に対応できず、点数が伸びない受験者が増加していると推測されます。
また、この資格では、
- 情報戦略への提案力
- 企業の方針に必要な情報・市場動向・事例の収集力
- 各種データや評価に基づく分析能力
などの高度な技術水準が求められています。
ITの知識や技術を単に身につけるだけでなく、実務で活用できる能力を有することが資格取得者に期待されているのです。
このような高い技術水準が要求されることも、試験の難易度を高める要因となっていると考えられます。
このような高難易度の試験に合格するためには、多大な学習時間が必要とされます。
IT初心者の場合は、基礎から学ぶ必要があるため、500時間程度の学習が必要とされています。
1日2時間勉強すれば、約7ヶ月の期間が必要になります。
日々着実に学習を重ねることが、合格への鍵となるでしょう。
一方、基本情報技術者の資格を持つ者は、ある程度のIT知識があると想定されるため、約200時間の学習時間で足りると言われています。
1日2時間の学習ができれば、約3ヶ月で取得を目指せる計算になります。
ただし、これらの時間は目安に過ぎず、個人差があることは言うまでもありません。
応用情報技術者試験を取得するメリット
応用情報技術者試験の資格を手にすると、様々な利点が得られます。これらの長所を理解することで、資格取得への意欲を高め、目標設定の一助となるでしょう。
具体的な恩恵について、以下でご確認ください。
- スキルの証明
- キャリアアップの機会
- 高い年収
- 転職の有利性
- 自己実現
IT系企業への就職対策
応用情報技術者試験の資格を手にすることは、IT関連企業への就職活動において有利に働くでしょう。
この資格は、高度なIT知識とスキルを保有していることを証明するものであり、書類審査や面接の場で自身の強みを効果的にアピールできます。
また、応用情報技術者試験の合格には相当の学習時間が必要となるため、受験者の向上心の高さも伝わります。
特に即戦力のITエンジニアを求めている企業は、この資格保持者を優先的に検討する傾向にあります。
つまり、採用担当者への訴求力が高まることが、応用情報技術者試験の取得メリットの一つと言えるでしょう。
高度な情報処理の知識が身に付く
応用情報技術者試験の資格を手にするには、高度な技術力と専門知識が求められます。
そのため、この資格取得に向けて勉強を重ねることで、高水準の情報処理に関する知見を身につけることができます。
IT関連のシステムや技術は年々進化を遂げているため、プログラミングや活用を行うエンジニアにも高い能力が必要とされています。
応用情報技術者試験で高度な情報処理知識を習得すれば、ITエンジニアとしてのキャリアの幅を広げることができるでしょう。
例えば、
- 待遇の良い企業への転職や
- フリーランスとしての独立など
新たな道が開けるかもしれません。
今後のキャリアアップを視野に入れているのであれば、応用情報技術者試験の取得は有益な選択肢となるはずです。
基本情報技術者試験よりも大きなアピールポイントになる
応用情報技術者試験は、基本情報技術者試験よりも上位の資格であり、より高度な技術力と知識を備えていることを示すものです。
基本情報技術者試験の資格は、IT関連の職場への就職には役立つものの、基礎的な要素しか把握していないため、場合によっては評価されないこともあります。
一方、応用情報技術者試験は、高いレベルの技術と知識を持つことを証明するため、就職の機会を広げ、将来的なキャリアアップにも影響を与えるでしょう。
資格手当や報奨金を得られる
応用情報技術者試験の資格を手にすることで、企業から金銭的な報酬や手当を受けられる可能性があります。
一部の会社では、従業員に対して応用情報技術者試験の合格を奨励するため、
- 合格者に対する報奨金や手当を設けているケースが増加しています。
企業にとって、応用情報技術者の資格保有者が増えれば、
- 業務の効率化や生産性の向上が期待できるため、大きな利点となります。
また、従業員の給与が月々アップする可能性もあり、個人的なメリットも考えられます。
高度試験の午前試験の一部免除
応用情報技術者試験の合格は、一定期間、特定の資格試験の一部を免除する特典を付与します。
具体的には、以下の資格試験において、応用情報技術者試験の取得により試験範囲の一部が免除されます。
- 「スペシャリスト系試験(ITストラテジスト試験やシステムアーキテクト試験など)」の午前部門
- 「中小企業診断士試験」の経営情報システム部分
- 「弁理士試験」の理工V・情報部分
将来的にこれらの資格取得を視野に入れている場合、応用情報技術者試験を先行して取得しておくことで、勉強範囲を絞り込むことができます。試験範囲が限定されるため、集中力が高まり、合格率向上が期待できるでしょう。
応用情報技術者試験を取得するデメリット
応用情報技術者試験の資格を手にしても、その学習期間と難しさに見合わない結果となる可能性があります。
それはIT技術者としての貴重な時間を無駄にするマイナス面につながるかもしれません。
以下のデメリットについても確認しておくことをお勧めします。
- デメリット1
- デメリット2
- デメリット3
評価されないこともある
高度なIT技術・知識を有することを示す応用情報技術者試験の資格は、企業や業界によっては必ずしも高く評価されないことがあります。
ITに関連しない一般企業では、IT以外の能力を重視する傾向にあり、応用情報技術者の資格保有者が優秀であると判断されないケースもあり得ます。
特に外資系企業においては、この資格の価値が十分に認められないこともあるのです。
勉強時間を確保する必要がある
応用情報技術者試験の資格取得には、長時間の学習が欠かせません。
高難易度の試験であるため、短時間の勉強では十分な技術力や知識を身につけることができないでしょう。
時間の確保が必須なことは、特に多忙な社会人にとって不利な点です。
この資格を目指すのであれば、
- できるだけ早期から準備を進め
- 学習の習慣化と効率的な方法を見出すこと
が重要です。
応用情報技術者試験を取得するために
応用情報技術者試験の合格を目指すには、効率的な学習方法を見つけることが重要です。
- 情報処理推進機構(IPA)の公式ウェブサイトには、過去の試験問題が公開されています。
- これらの問題を活用することで、出題傾向や具体的な問題内容を把握しながら学習を進めることができます。
- 試験の雰囲気に慣れることも、合格率向上につながる可能性があります。
そのため、公式が提供する過去問を有効活用することをお勧めします。
また、最初から応用情報技術者試験に挑戦するのではなく、基本情報技術者試験などの比較的簡単な資格から取得することも検討すべきでしょう。
- 段階を踏んでITエンジニアとしての技術と知識を身につけていけば、応用情報技術者試験に必要なスキルも自然と習得できます。
- 連続して不合格が続くと、モチベーションが下がる恐れがあるため、自分のレベルに合わせて別の試験から着手するのも一案です。
まとめ
ITエンジニアとしてのスキルと知識を示す資格である応用情報技術者試験の取得は、就職や転職、さらにはフリーランスエンジニアを目指す際の準備にもなるでしょう。
この機会に応用情報技術者試験の概要を確認し、取得に向けた学習を始めてみてはいかがでしょうか。
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