消費税額の計算方法やメリット・デメリットについて解説!簡易課税制度とは?

消費税の計算を簡素化できる簡易課税制度は、状況によっては支払うべき消費税額が増加する可能性があり、注意が必要です。
この制度の概要、利点と欠点、インボイス制度との関連性、手続きの方法について説明します。
本記事を読めば、簡易課税制度の利用が適切かどうかを判断できるようになります。
簡易課税制度に関心がある方は、ぜひご一読ください。

インボイス制度導入に備え、節税対策を検討している人は多いでしょう。
しかし、簡易課税制度を活用するメリットがあるのか疑問に思う人も少なくありません。

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簡易課税制度の解説

簡易課税制度の解説

消費税の計算方法を簡素化する制度が簡易課税制度です。この制度は、通常の計算方式とは異なり、簡便な方法で消費税額を算出し、納税することができます。
フリーランスを含む一定の要件を満たす事業者が対象となります。

  • 具体的には、基準期間における課税売上高が5,000万円以下であり、
  • 適用を希望する年の前事業年度末までに所定の届出書を提出することが条件です。

通常の消費税計算は複雑で、事務負担が大きくなります。特に個人事業主は一人で税務関連業務を処理する必要があるため、簡易課税制度はその負担を軽減する役割を果たします。
個人事業主は、クライアントから報酬を受け取る際に消費税相当額も含まれていますが、2年前の課税売上高が1,000万円以下であれば、その消費税を納める義務がありません。

しかし、2023年からインボイス制度が始まることで、消費税を任意で納付するフリーランスが増加すると見込まれています。その場合、簡易課税制度の選択肢について判断する必要があります。

原則課税とは?

消費税の計算方法には、一般的な原則課税と簡易課税があります。

  • 原則課税では、売上げに対する消費税額から仕入れや経費に係る消費税額を差し引いて、納付すべき消費税額を算出します。

例えば、スマホアプリの開発で年間売上が100万円、経費が70万円の場合、消費税額は10万円から7万円を差し引いた3万円となります。
しかし、原則課税では経費の課税対象や税率を細かく仕分ける必要があり、作業に時間がかかります。
そのため、事務作業の簡素化を望む場合は、簡易課税制度の利用も検討すべきでしょう。

消費税額計算方法(簡易課税制度の場合)

消費税の計算方法は、一般的な課税方式と簡易課税制度では異なります。簡易課税制度では、実際の仕入れ経費を計算する代わりに、売上げに対する一定の控除率を適用して消費税額を算出します。
この控除率は「みなし仕入率」と呼ばれ、事業の種類ごとに異なる割合が設定されています。
つまり、売上げに対する消費税額から、みなし仕入率に基づく控除額を差し引くことで、納付すべき消費税額が決まります。

事業区分ごとのみなし仕入率は以下の通りです。

  • 第1種事業(卸売業): 90%
  • 第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る)): 80%
  • 第3種事業(農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業): 70%
  • 第4種事業(第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業): 60%
  • 第5種事業(運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く)): 50%
  • 第6種事業(不動産業): 40%

例えば、システム開発はサービス業に分類されるため、第5種事業に該当し、みなし仕入率は50%となります。
したがって、スマホアプリ開発で年間100万円の売上があった場合、消費税額は「10万円 - (10万円 × 50%) = 5万円」と計算されます。

簡易課税制度を活用するメリット

簡易課税制度を活用するメリット

簡易課税制度を利用することによる恩恵は2点あります。

  • 事務作業の負荷が軽減されること
  • 納税額が減額される可能性があること

それぞれの利点について詳しく説明していきましょう。

事務負担の軽減

課税方式を簡易課税に切り替えることで、事務作業の負荷が軽減される可能性が高くなります。
消費税の計算においては、

  • 経費に係る消費税額を一つずつ集計する必要があり、手間がかかりますが
  • 簡易課税であれば売上高に基づく消費税額のみを納付すれば済むため、経費分を気にする必要がなくなります。

特に個人事業主の場合、事務処理を一人で行わなければならず、本業の遂行にも支障が出る恐れがあるため、簡易課税制度の適用によってメリットを享受できる方が多数いるはずです。

納税額減少の可能性

納税額の軽減が期待できる場合があるため、簡易課税制度の選択は検討に値します。
課税方式により消費税の算出プロセスが異なるためです。
簡易課税では経費の多寡に関わらず納付額が決まるため、経費が少ないフリーランサーなどにとっては有利な制度と言えるでしょう。
また、みなし仕入率の高い卸売業者も、簡易課税を選択することで節税効果が見込めるかもしれません。

簡易課税制度を活用するデメリット

簡易課税制度を活用するデメリット

簡易課税制度の利用には、いくつかの欠点があります。

  • まず、納税額が増加する可能性が高いことです。
  • また、事業数が多い場合、計算が複雑になり面倒です。
  • さらに、還付を受けることができません。

事業の性質や規模によっては、簡易課税制度を選択すると不利益を被る可能性があるため、注意が必要です。

欠点 説明
納税額の増加 納税額が増加する可能性が高い
計算の複雑さ 事業数が多い場合、計算が複雑になり面倒
還付不可 還付を受けることができない

納税額が増えることも多い

課税方式の選択によっては、意図に反して納税額が増加してしまうケースが多々あります。
簡易課税制度では、実際の経費の多寡に関わらず控除額が一定であるため、経費が多額になればなるほど納税額が高くなる可能性があります。
例えば

  • 設備投資などで多大な経費が発生した場合、簡易課税を選択すると大きな損失を被ることになります。

節税を目的として簡易課税制度を利用する際は、原則課税との双方の計算を行い、納税額の少ない方式を選ぶことが肝心です。

計算が大変な事業数

納税額の計算を簡素化するための制度である簡易課税制度ですが、事業の種類が多数に及ぶと、かえって計算が複雑化する可能性があります。

簡易課税の場合、業種ごとに想定される仕入率が異なるため、売上に係る消費税を業種別に区分する必要があります。
多種多様な事業を営む企業においては、このような区分管理に時間を要してしまい、本来の課税方式を選択した場合と事務的な負担に変わりがなくなる可能性があるでしょう。

フリーランス(個人事業主)など事業の種類が少数であれば、簡易課税の方が簡便なことが多いですが、事業の種類が多岐にわたる場合は注意を要します。

還付は受けられない

消費税の納付方式において、簡易課税制度を選択すると、支払った消費税の還付を受けることができなくなります。
一方、原則課税の場合は、

  • 売上げに係る消費税額が仕入れや経費に係る消費税額を下回れば、その差額分の還付を受けられます。

簡易課税では、経費に含まれる消費税額は考慮されないため、還付の対象外となってしまいます。
したがって、多額の経費が発生した場合、簡易課税を選択すると不利益を被る可能性があります。

インボイス制度と簡易課税制度の関係性について

インボイス制度と簡易課税制度の関係性について

来年10月1日から新たな税制度が施行されることが決定しています。この制度の影響で、課税事業者として登録し簡易課税制度を利用するフリーランス(個人事業主)が増加すると予想されます。

そこで、この新制度の内容について詳しく説明します。
制度の詳細を理解していない方はぜひ参考にしてください。

  • 制度の概要
  • 対象者
  • メリット
  • デメリット
  • 手続き方法
項目 内容
制度の概要 課税売上高が一定額以下の個人事業者に対し、簡易な方法で消費税の計算ができる制度
対象者 基準期間の課税売上高が1,000万円以下のフリーランス(個人事業主)
メリット 帳簿の記載が簡単になり、事務負担が軽減される
デメリット 税額控除ができないため、実質的な税負担が増える可能性がある
手続き方法 所轄税務署に簡易課税制度選択届出書を提出する

インボイス制度とは?

インボイス制度は、消費税の管理を徹底させるための仕組みです。フリーランスや企業が発行する請求書を、記載内容が決められた公的な「適格請求書」に統一することが目的です。
適格請求書を発行することで、適格請求書発行事業者となり、消費税を税務署に支払った証明が可能になります。
ただし、適格請求書を利用する場合、課税売上高が1,000万円未満であっても消費税の納付が義務付けられます。

消費税納付の必要性に関する疑問

インボイス制度の導入により、消費税の納付義務が生じるわけではありません。
課税売上高が1,000万円未満の場合、消費税を支払う必要がなく、適格請求書の発行も求められません。
しかし、適格請求書を利用しない場合、取引先は消費税相当額を負担することになります。
そのため、取引先は適格請求書を発行できるフリーランスと契約を結びたいと考えるでしょう。
結果として、消費税を納付せず適格請求書を発行できないフリーランスは、契約機会が減少する可能性があります。
ただし、消費税を納付することで契約獲得のチャンスを広げることは可能です。
インボイス制度の導入により、必ずしも消費税の納付が義務付けられるわけではありませんが、契約機会の減少を避けるため、やむを得ず納付を選択する個人事業主も出てくるかもしれません。
消費税の納付を選択する場合、簡易課税制度の利用も検討すべきでしょう。
フリーランスは、インボイス制度に備え、簡易課税制度について理解を深め、税額軽減の可能性を確認することが重要です。

簡易課税制度の適用を受けるための手続き方法

簡易課税制度の適用を受けるための手続き方法

消費税の簡易課税制度を選択するには、課税期間の開始前日までに税務署へ届出書を提出する必要があります。
事業開始年度であれば、その年度内に手続きを行えば適用対象となります。
制度利用に手数料は不要ですが、期限を守って手続きを行うことが重要です。
簡易課税制度が適用できるのは、課税期間の売上高が5,000万円以下の企業または個人事業主に限られます。

まとめ

まとめ

この記事では、簡易課税制度の仕組みと計算方法について説明しました。簡易課税制度は消費税額の計算を簡素化できる便利な制度ですが、計算方法の違いにより納税額が増える可能性があるため注意が必要です。

また、2023年10月1日からはインボイス制度が導入されます。個人事業主の方はインボイス制度に備え、消費税や所得税に関する知識を深め、

  • 課税事業者になるか
  • 簡易課税を選択するか

を決める必要があります。

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この記事がお役に立てば幸いです。