ここでは、クラウド環境を活用した仮想デスクトップに注目が集まっている状況について説明します。
リモートワークの普及に伴い、「DaaS」と呼ばれるクラウドサービスが注目を浴びています。
このサービスは、リモートワークをはじめとする様々な事業に応用され、新しい労働形態の実現に寄与しています。
しかし、DaaSの定義やメリット・デメリットについて、正確に理解している人は意外と少ないのが実情です。
エンジニアの中にも、DaaSについて詳しく把握できていない人が多数います。
そこで本稿では、DaaSの基本的な内容やメリット・デメリットについて解説します。
また、フリーランスエンジニア向けのDaaS求人・案件も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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DaaSとは?
デスクトップ環境をクラウド上で提供するサービスが「Desktop as a Service」(DaaSまたは「ダース」)です。
従来のパソコンで構築されるデスクトップ環境を、仮想化技術によりクラウド上に再現することが特徴です。
DaaSでは
- OSやアプリケーションなどの各種ソフトウェアがクラウド側に用意され
- ユーザーはインターネット経由でこの仮想デスクトップにアクセスし、操作を行います
つまり、キーボードやマウスを使った作業はパソコンと同様に行えますが、実際の処理はクラウド上で実行されます。
作成したデータもクラウド上に保存されるため、簡単に共有できます。
また、DaaSではクライアント側のパソコン性能に依存しないため、十分な通信環境さえあれば、高速で安定したデスクトップ環境を実現できます。
仮想デスクトップについて
パソコン上で複数の作業スペースを生成できる機能が、オペレーティングシステムに組み込まれています。
異なるデスクトップ画面を用意し、それぞれで別々の作業を行うことで、業務の生産性を高められるメリットがあります。
Windows等のOSには、標準で複数のデスクトップを作成する拡張機能が搭載されており、自在に切り替えることができます。
この仮想デスクトップは、すでに多くの企業や技術者に活用されており、業務効率化に貢献しています。
DaaSの方式
DaaSには、さまざまな導入手法が存在します。選択した方式によって、実装時の手順が異なります。具体的には、DaaSでは以下の展開方式が採用されています。
- フルクローン方式: 基本となる仮想デスクトップを複製し、各ユーザーに配布する手法です。導入後は、ユーザーが自由にアプリケーションをインストールできる点が特徴です。
- リンククローン方式: 基本となる仮想デスクトップのOSイメージを複製・共有する方式です。ユーザーは独自のアプリケーション導入ができず、元のイメージを変更する必要があります。
- ネットワークブート方式: 仮想デスクトップをディスクイメージとしてファイル化し、ネットワークを介して起動する手法です。
DaaSの種類
DaaSには、提供形態によっていくつかの種別が存在します。
提供形態の違いにより、それぞれ異なる特性を持っているため、利用目的に応じて適切な選択が求められます。
ここでは、DaaSの提供形態ごとの特徴について説明します。
- パブリッククラウド型
- プライベートクラウド型
- ハイブリッド型
特徴 | クラウドベンダーが提供するパブリッククラウド上でデータ管理サービスを利用する形態。 |
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メリット | 初期費用が抑えられる、システム運用の手間が省ける。 |
デメリット | データの可用性や信頼性が低い、セキュリティ面での不安がある。 |
特徴 | 企業が自社のデータセンターにプライベートクラウドを構築し、そこでデータ管理サービスを利用する形態。 |
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メリット | データの可用性や信頼性が高い、セキュリティ面での安心感がある。 |
デメリット | 初期費用がかかる、システム運用の手間がかかる。 |
特徴 | パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方を組み合わせて利用する形態。 |
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メリット | パブリッククラウドとプライベートクラウドのメリットを組み合わせて活用できる。 |
デメリット | システム構成が複雑になる。 |
プライベートクラウドDaaS
プライベートクラウドDaaSとは、DaaSプロバイダーが顧客企業に合わせて専用のクラウド環境を構築し、DaaSサービスを提供することを指します。
- 顧客企業の要求に応じてシステムをカスタマイズできるため、柔軟な改善と高度なセキュリティ対策が可能となる特徴があります。
- 一方で、プライベートクラウドDaaSの運用と構築には幅広い専門知識が求められるため、スキルの高い技術者に依存する可能性があります。
バーチャルクラウドDaaS
バーチャルクラウドDaaSとは、ベンダーが提供するクラウドサービス上に構築された仮想デスクトップを利用するDaaSのことです。
プライベートクラウドDaaSほど完全に独立した環境ではありませんが、
- 他社と同じサーバを共有することがないため、カスタマイズ性が高いのが特徴となっています。
AWSやMicrosoft Azureなどの有名なクラウドサービスがこのバーチャルクラウドDaaSに分類されます。
パブリッククラウドDaaS
クラウド上のオープンプラットフォームを活用するデスクトップ仮想化サービスを指す「パブリッククラウドDaaS」は、複数の企業が共有する環境のため、カスタマイズ性や情報保護面での制約があります。
しかし、
- 低コストで導入でき
- 自社でのアップデートやメンテナンスが不要
なメリットがあります。
そのため、DaaSの初期導入においては、パブリッククラウドDaaSが選択されることが多くなっています。
DaaSとVDIの違いとは?
DaaSを採用する際には、しばしば「VDI」が比較対象として検討されます。
DaaSの本質を理解するためには、VDIとの相違点を把握することが重要です。
ここでは、DaaSとVDIの違いについて説明します。
- DaaSはクラウドサービスであり、VDIはオンプレミスのシステムです。
- DaaSはサブスクリプション型の課金体系ですが、VDIは初期投資が必要です。
- DaaSはクラウドベンダーが運用を担いますが、VDIは自社で運用する必要があります。
VDIとは?
VDIとは、仮想デスクトップインフラストラクチャの略称です。この技術では、サーバー上に仮想環境を構築し、リモートアクセスによってデスクトップを利用することが基本となります。
VDIは企業の自社サーバーに構築されるため、オンプレミスの環境で利用されることがDaaSとの主な違いとなります。
自社のサーバーで仮想デスクトップを生成するため、クラウド環境を使用せずに社内ネットワーク内で作業が完結します。
一方でDaaSとは異なり、VDIでは企業が運用、管理、保守などの全工程を担うため、多くのリソースが必要となります。
そのため、VDIに精通した専門のエンジニアを雇用するケースも多く見られます。
DaaSを利用するメリット
データ・アズ・ア・サービス(DaaS)の活用には、企業(導入企業)にとって数多くの長所が存在します。
DaaSに携わる技術者は、これらの利点を正しく把握し、適切なサービス提供のための環境を整備することが求められるでしょう。
以下に、DaaSを活用することの恩恵について説明します。
- ハードウェアの購入・管理コストの削減
- データ管理の専門家による運用
- セキュリティ対策の強化
- データ利活用の促進
- システムの柔軟性向上
運用・管理の工数削減につながる
DaaSは、仮想デスクトップの運用・管理に係る作業負荷を軽減することができます。
リモートワークなどを実施する際、DaaSを導入しない場合、従業員それぞれが自身のコンピューターを指定の環境に合わせて設定・構築する必要があります。
- OSの最新バージョンへのアップグレード
- アプリケーションの更新など、従業員個人に任せなければならない作業が発生します。
バージョンアップや更新が遅れているコンピューターを使用すると、セキュリティ上のリスクが高まる可能性があります。
一方、DaaSを活用すれば、クラウド上の仮想デスクトップ環境で必要な対応を行うことで、全従業員に同一の環境を提供できます。手間をかけずに迅速に必要な環境を構築できるため、業務への影響を最小限に抑えられるメリットがあります。
最新環境へのアップデートが容易であることから、DaaSはセキュリティ強化にもつながり、人的ミスによる情報漏えいリスクを低減できます。
さらに、DaaSではデータ全てがクラウド上に保存されるため、個人のコンピューターがウイルス被害に遭っても、情報流出のリスクが低くなります。
BCP対策に役立つ
事業の継続性を維持するための計画を指す「BCP」は、「Business Continuity Plan」の略称です。
クラウド上で仮想デスクトップを運用する「DaaS」は、災害などで自社のコンピューターが被害を受けたり、出勤できない状況になっても、クラウドにアクセス可能であれば業務を通常通り行えます。
また、作業データをクラウド上で管理することで、災害や自社のサーバー障害によるデータ消失リスクを低減できます。
DaaSを利用するデメリット
DaaSを活用する際には、さまざまな利点がある反面、いくつかの潜在的なリスクも存在します。
DaaSに固有の課題を事前に理解しておくことで、技術者として適切な対策を講じることができるでしょう。
以下の項目を参考に、DaaSの利用における潜在的な欠点について確認してみましょう。
- ベンダーロックイン
- データ移行の複雑さ
- セキュリティ上の懸念
- パフォーマンスの問題
- コスト管理の難しさ
ネットワークに遅延が発生する可能性がある
クラウド上の仮想デスクトップにアクセスするためには、ネットワークを介する必要があるDaaSですが、ネットワーク状況によっては接続が不安定になり、レスポンスの遅延などの問題が発生する可能性があります。
リモートワークにおいては、社員が利用するネットワーク環境の良し悪しが作業効率に影響を及ぼすことになります。
通信速度が一定でないネットワークを使用すると、業務に支障をきたすリスクがあり、これがDaaSの欠点と言えるでしょう。
DaaSならではのセキュリティリスクがある
DaaSの魅力の一つは高度なセキュリティ対策ですが、クラウドサービスならではの新たな脅威にも注意を払う必要があります。
例えば、
- DaaSで利用しているログイン情報が漏洩すると、不正アクセスの危険性が高まります。
セキュリティが万全だと過信せず、リスク管理を徹底することが肝心です。
DaaSのエンジニア求人・案件は多い?
デスクトップ仮想化サービスの構築と運用には、高度な専門知識が必要とされることが多々あります。
特に自社クラウドやプライベートクラウドを活用している企業では、エンジニアに保守管理業務を専任で担当させるケースも珍しくありません。
そのため、フリーランスの求人案件にもデスクトップ仮想化関連の募集が増加傾向にあります。
例えば、
- デスクトップ仮想化プロジェクトの推進
- インフラ運用の効率化
- 商用デスクトップ仮想化環境の運用改善
などの業務を、以下のような条件で募集しているケースがあります。
このようにデスクトップ仮想化サービスに関する求人案件は複数存在します。業務内容や採用条件は案件ごとに大きく異なるため、フリーランス向けの求人サイトを定期的にチェックし、最新の情報を収集することをおすすめします。
まとめ
クラウドサービスの普及に伴い、DaaSが再び注目を浴びています。
DaaSを活用することで業務の効率化や、セキュリティ面の強化を図る企業が増加すると見込まれています。
DaaSの利用事例が多くなれば、専門的な知見とスキルを持つエンジニアの需要も高まるでしょう。
DaaSの運用・管理が可能なエンジニアとなれば、様々な求人案件で活躍の場が広がります。
この機会にDaaSの基礎を押さえ、必要な知識・技能の習得に取り組んではいかがでしょうか。
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本記事がお役に立てば幸いです。