現代社会におけるデジタル化の進展に伴い、多くの人が「クラウドエンジニア」への転職を検討しているのではないでしょうか。
クラウドエンジニアとは、ユーザーが独自のインフラやソフトウェアを保有せずにインターネット経由でサービスを利用できるクラウドサービスを活用したシステムの設計、構築、運用を担当する専門家です。
近年、様々な開発プロジェクトでクラウド上のインフラ環境構築が一般化しており、コスト削減や開発スピード向上を目的にインフラ環境をクラウドに移行する企業が急増しています。
その結果、クラウドの導入や開発を推進するクラウドエンジニアの需要が急激に高まっています。
本記事では、クラウドエンジニアについて以下の点に焦点を当てて解説します。
- クラウドエンジニアの概要
- クラウドエンジニアの業務内容
- クラウドエンジニアの年収水準
- 転職市場からみたクラウドエンジニア需要の状況
- 未経験者がクラウドエンジニアへ転職する方法
クラウドエンジニアへの転職を現在または将来的に検討している方は、ぜひ一読していただければ幸いです。
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クラウドエンジニアとは
クラウドサービスを活用してシステムの設計、構築、運用を行う専門家がクラウドエンジニアです。
まず、サーバー運用の形態には「オンプレミス」と「クラウド」の2つがあります。
オンプレミスとは自社でサーバー機器を保有し、環境を構築・運用することです。
一方、クラウドはクラウドサービス上にシステムを構築する方式です。
オンプレミスとクラウドにはそれぞれ長所短所があります。
オンプレミス | クラウド |
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このように、クラウドを利用することで初期コストや運用コストを抑えられるメリットがあるため、近年多くの企業がオンプレミスからクラウドへ移行しています。
しかし、クラウドを運用するには、クラウドサービスを熟知する必要があります。
クラウドサービスとは、サーバーやネットワークなどのIT資源をインターネット経由でオンデマンドで提供するサービスです。
代表的なクラウドサービスは以下の通りです。
- AWS(Amazon Web Services):Amazonが提供。世界中に分散したデータセンターからリソースを提供
- GCP(Google Cloud Platform):Googleが提供。AI/機械学習の開発環境が充実
- Azure(Microsoft Azure):Windows OSが利用可能。オンプレミスとの連携に適している
このように、ビジネスのトレンドがオンプレミスからクラウドへ移行する中で、クラウドサービスを活用しながらインフラを構築・運用するのがクラウドエンジニアの役割です。
補足として、インフラエンジニアとクラウドエンジニアの違いを簡単に説明します。
- インフラエンジニア:ITインフラ全般の設計、構築、保守、運用を担当。オンプレミスのサーバー運用などを含む広範囲な業務
- クラウドエンジニア:クラウドサービスを活用し、ITインフラの設計、構築、運用を担当する技術者
つまり、クラウドエンジニアはインフラエンジニアの一部門として位置付けられる存在です。
クラウドエンジニアの仕事内容
クラウドエンジニアの職務内容を説明しましょう。
クラウドコンピューティングサービスのデプロイ、構成、管理を担当します。クラウドプロバイダーが提供するツールやサービスを活用し、以下のような作業を行います。
- クラウドインフラストラクチャの設計と構築
- クラウドリソースのプロビジョニングとモニタリング
- クラウドアプリケーションの開発とデプロイ
- クラウドセキュリティの確保
- クラウドコストの最適化
クラウドの技術的側面に加え、ビジネス要件の理解、コスト管理、ベンダー管理なども重要な役割となります。高度な技術力と幅広い知識が求められる職種です。
クラウドでのインフラ設計
インフラの構築においては、ITシステムやサービスが機能する最適な環境を把握し、具体的な要求や指示を取りまとめる作業が求められます。
- クラウドサービスの選択から始まり、開発目的を考慮しながらセキュリティ対策を講じたり、将来的な拡張性を見据えた設計を行うことが重要です。
- ITシステムの設計を検討する際には、要件定義や企画に関する知見が特に求められます。
- また、オンプレミスとクラウドを使い分ける場合もあるため、データベースやインフラ全般に関する知識が必要不可欠となります。
クラウド構築
クラウド環境の構築では、事前に作成された設計書に基づき、実際にクラウド上でシステム環境を整備する作業が行われます。
新規システムの環境構築に加え、既存のオンプレミスシステムをクラウドへ移行する業務も担当します。
具体的な業務内容としては、
- クライアントの要件に応じたソフトウェアのインストール
- ストレージの設定
- データベース構築
- 仮想サーバーの作成
などが挙げられます。
クラウドシステムに特定の機能を実装する必要がある場合は、プログラミングによるコーディング作業も発生することがあります。
クラウド(インフラ)運用・保守
クラウド環境の構築後、企業のサービスが安定的に機能するよう、運用とメンテナンスを実施します。
オンプレミス環境と比較して、クラウド上でのシステム構築は比較的簡単です。
そのため、クラウドエンジニアが最も活躍する業務領域は運用とメンテナンスになると考えられます。
主な業務としては、
- ミドルウェアやOSのバージョンアップ
- 運用コストの管理
- システムの監視
などが挙げられます。
クラウドエンジニアの年収
この記事では、クラウドエンジニアの収入状況について詳しく説明しています。
まず、正社員のクラウドエンジニアの平均年収は約595万円で、一般的な給与所得者の平均を上回っていることが分かります。
ただし、企業やスキルによって幅があり、336万円から1,012万円と開きがあります。
年代別の平均年収は以下の通りです。
年代 | 平均年収 |
---|---|
20~24歳 | 339万円 |
25~29歳 | 445万円 |
30~34歳 | 533万円 |
35~39歳 | 573万円 |
40~44歳 | 621万円 |
45~49歳 | 651万円 |
50~54歳 | 666万円 |
55~60歳 | 652万円 |
一般的に年齢を重ねるごとにスキルが向上するため、年収も高くなる傾向にあります。
一方、フリーランスのクラウドエンジニアの収入を見ると、以下の通りです。
- 平均年収:927万円
- 中央値年収:840万円
- 最高年収:1,800万円
- 最低年収:360万円
正社員よりもフリーランスの方が平均年収は高く、高収入を望むならフリーランスを検討するのがよいでしょう。
クラウドエンジニアの案件を探してみましょう。
クラウドエンジニア需要
将来的にクラウドエンジニアの需要は従来以上に増加すると見込まれています。その背景を明確にするため、まずはクラウドエンジニアの現状について説明いたします。
- クラウドコンピューティングの普及に伴い、クラウドエンジニアの需要が高まっている
- クラウドエンジニアには以下の役割がある
- クラウドインフラストラクチャの設計・構築・運用
- クラウドサービスの開発・導入支援
- クラウドセキュリティの確保
- クラウドエンジニアには以下の技術力が求められる
分野 必要な技術 クラウドプラットフォーム AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platform等の知識 プログラミング Python、Java、Go等の言語スキル ネットワーク TCP/IP、ファイアウォール、VPN等の知識 セキュリティ 暗号化、アクセス制御、脆弱性対策等の知識
クラウドエンジニアの現状
国内企業におけるクラウドサービスの利用状況と課題について、ある調査機関が実態を明らかにしました。
対象は国内企業約2万9千社のうち、クラウドサービスを導入済みまたは検討中の1,182社です。
調査結果によると、システム構築においてAWS、Azure、GCPなどのクラウドサービスを活用する企業が多数を占めていることが分かりました。
つまり、クラウドサービスの活用が広く浸透し、業務システムのクラウド化が進展していることが示唆されています。
一方で、自社でクラウドを運用する際の課題として、以下の点が挙げられています。
自社でクラウドを運用する際の課題 |
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これらの課題は、クラウドエンジニアの存在によって解決できる可能性が高いものです。つまり、クラウドエンジニアに対する需要は現状でも高く、今後さらに高まっていくことが予想されます。
クラウドエンジニアの将来性
国内クラウド市場は拡大の一途を辿っています。
2020年度の市場規模は前年比22.0%増の2兆8,750億円に達し、そのうちパブリッククラウドの占める割合は初めて1兆円を超えました。
2025年にはおよそ3.5兆円に達すると予測されており、年平均成長率は14.5%と見込まれています。
- IT人材不足や運用コスト削減のニーズから、今後さらに多くの企業がクラウド導入に乗り出すことが想定されます。
このようにクラウドサービスの需要拡大が続く中、クラウドエンジニアの人材需要も高まり続けることが見込まれています。
クラウドエンジニアへの転職を実現させるには
クラウドエンジニアへの転身は未経験者にとって困難な道のりですが、不可能ではありません。
クラウドサービスやインフラに関する知識とスキルを身につければ、転職の機会は十分にあります。
未経験からクラウドエンジニアを目指す際に必要な5つの要素を以下に示します。
- インフラエンジニアなど他のエンジニア職からの転身は比較的容易です。
インフラ開発経験を身に付ける
クラウド分野における開発者は、インフラストラクチャの構築に深く関与することが多い職種です。
そのため、以下のスキルを身につけておけば、転職活動において有利に進めることができます。
- インフラ全般(ネットワーク、サーバー、OS、セキュリティ、ストレージなど)に関する知見とスキル
- インフラの設計・構築の経験
クラウド開発者には、運用や監視を自動化するためのソフトウェア開発の側面も求められます。
知識だけでなく、以下の実績が重要視されます。
- 実際にプログラミングを行い運用効率の向上に貢献した実績
もちろん、以下のクラウドサービスの利用経験も転職に有利に働きます。
クラウドサービス |
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AWS(Amazon Web Services) |
GCP(Google Cloud Platform) |
Azure(Microsoft Azure) |
これらのクラウドサービスについての知識を身につけるとともに、無料で公開されているクラウド上に仮想環境を構築するなど、実践的なノウハウとスキルを積み重ねることが肝心です。
DevOps関連知識を身に付ける
DevOpsは、開発チームと運用チームが協力して製品を作り上げる方式を指します。
クラウドエンジニアは、アプリケーションの設計から開発、テスト、リリースまでの一連のプロセスを迅速かつ確実に行えるよう、DevOpsの考え方を取り入れることが多いのです。
DevOpsを活用することで、システム構築の手間を減らしリスクを低減できるため、顧客の要望に機動的かつスピーディーに応えられるようになります。
IaaS関連の資格を取得する
IaaSに関連する認定資格を取得することは、キャリアチェンジの有力な手段となります。クラウドエンジニアとして活躍するために推奨される資格を以下に示しますので、ご検討ください。
- AWSソリューションアーキテクトアソシエイト
- Google Cloud Certified Professional
- Microsoft Azure認定資格
- Alibaba Cloud認定プロフェッショナル
- CCSP(Certified Cloud Security Professional)
- CompTIA Cloud+
- CCNA Cloud
転職理由と志望動機を一貫させる
転職の理由と志望動機を一貫させることは極めて重要な課題です。その理由は、採用面接において説得力が高まるからです。
採用担当者は人物を見抜く専門家であり、応募書類の転職理由と志望動機から、その人物の概要を把握することができます。
例えば、
- 年収や福利厚生などの条件面のみを理由に面接に臨む場合、志望動機が希薄であると受け取られ、「他社でも構わないのでは?」といったマイナスのイメージを与えてしまう
そうです。
クラウドエンジニアへの転職を真剣に考えるのであれば、定型的な回答は避け、自身の熱意を訴え、入社への強い意志を明確に示すべきでしょう。
転職サイトや転職エージェントを活用する
クラウドエンジニアを志す際、経験がない場合、求人の探し方や必要なスキルなど、不明な点が多くあるでしょう。
転職サイトや転職エージェントを活用することで、適切な支援を受けられます。
転職のプロに相談すれば、自身の条件に合った求人を見つけやすくなります。
転職サイトごとに得意分野や特色が異なるため、状況に応じて複数のサービスを使い分けるのがおすすめです。
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企業名 | 特徴 |
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レバテックキャリア | IT・Webエンジニアの転職に強み |
リクルートエージェント | 求人数No.1の大手総合転職エージェントとして知られる |
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まとめ
この記事では、クラウドエンジニアの職務内容、収入水準、転職の見通しなどについて詳しく説明しました。
クラウドサービスの普及に伴い、この分野の専門家への需要は高まっており、将来性も期待できます。
未経験からの転職は難しい面もありますが、関連する経験やスキルを身につければ可能性は広がります。
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この記事がみなさまのお役に立てば幸いです。