フリーランサーとして活動することを選択した際、事前に把握しておくべき重要な点が年金制度についてです。本稿では、フリーランサーが加入する年金種別と、国民年金のみでは不安な方向けの対策をご案内します。
1. フリーランサーが加入する年金
- 国民年金(基礎年金)
- 任意加入できる年金
- 厚生年金保険
- 国民年金基金
2. 国民年金だけでは心配な場合の対策
- 確定拠出年金(個人型確定拠出年金)
- 私的年金保険(個人年金保険)
- 投資信託などによる資産形成
国民年金は老齢基礎年金を受給できますが、加入期間が短いと年金額が少なくなる可能性があります。任意加入や私的年金などを組み合わせることで、より手厚い老後生活を送ることができます。
気になる内容をタップ
フリーランスになった時おさえるべき年金の基本知識
フリーランスとして活動する際に押さえておくべき公的年金制度の基礎知識について説明します。
国民年金と厚生年金、そして日本の公的年金制度の仕組みを解説していきます。
国民年金
- 20歳以上60歳未満の全ての国民が加入する基礎年金制度
- 毎月の保険料は16,610円(令和4年度)
- 老齢基礎年金の受給資格期間は10年以上
厚生年金
- 会社員やフリーランスの一部が加入する雇用者向けの年金制度
- 保険料は標準報酬月額に応じて決まる
- 老齢厚生年金の受給資格期間は25年以上
日本の公的年金制度の仕組み
制度 | 概要 |
---|---|
国民年金 | 基礎年金の部分 |
厚生年金 | 報酬比例部分と基礎年金の部分 |
国民年金
日本における公的年金制度の一つである国民年金は、職業を問わず20歳以上60歳未満の方が加入する義務があります。
- 個人事業主やフリーランスの方も例外なく、この制度に加入する必要があります。
- 第1号被保険者や任意加入被保険者の場合、月額保険料は16,410円と定められています。
- ただし、前払い制度を利用することで割引が受けられます。
- 40年間にわたり保険料を納付した場合、65歳到達時に満額年金を受給できます。
2019年の満額は月額65,008円でしたが、物価や賃金の動向に応じて変動します。
国民年金のみでは受給額が少ないため、フリーランスの方の中には任意加入できる年金制度を併用する人もいます。
厚生年金(一般被用者が加入)
会社員や公務員が加入する公的年金制度は厚生年金と呼ばれています。
この場合、会社員や公務員は国民年金の第2号被保険者となり、勤務先の企業を通じて
- 国民年金と厚生年金の両方の保険料を支払うことになります。
国民年金は年齢に関係なく一定額ですが、厚生年金は年齢や給与水準によって金額が異なり、通常は国民年金よりも高額な保険料となる傾向にあります。
しかし、より多くの保険料負担がある分、将来受け取れる年金額も大きくなるという特徴があります。
公的年金は二階建て
公的年金制度は、建築物に例えられることがあります。
- 国民年金のみに加入している状況は「一階建て」と称されます。任意加入の年金に未加入の場合、この「一階建て」に該当します。
- 一方、厚生年金保険料を納付している会社員や公務員は「二階建て」と呼ばれています。
- また、国民年金基金に加入しているフリーランサーも「二階建て」に分類されます。
- さらに、企業年金などに加入している方は「三階建て」と表現されます。
フリーランスになれば国民年金に切り替える必要がある
会社員から独立し、フリーランスとして活動を開始する際には、公的年金と医療保険の切り替え手続きが必須となります。
- 国民年金への加入は必須であり、居住する自治体の窓口で手続きを行う必要があります。その際、年金手帳または基礎年金番号通知書の提示が求められます。
- また、従来の健康保険から国民健康保険への切り替えも同時に行わなければなりません。国民健康保険加入の際は、前職における資格喪失を証明する書類と本人確認書類を持参する必要があります。
これらの手続きは、退職後14日以内に完了させなければならない重要な義務事項です。
フリーランスになった際の年金のメリットとデメリット
フリーランスに転身した場合の年金制度における利点と欠点を、それぞれ1点ずつ説明いたします。
メリット:
- 収入が不安定な場合でも、最低限の年金受給額が保証されます。従って、老後の生活に対する不安を和らげることができます。
デメリット:
- 会社員時代に比べ、年金の掛け金負担が重くなる可能性があります。収入が減れば、将来受け取れる年金額も減少してしまいます。
フリーランスは年金を控除対象にすることが可能(メリット)
一般的には収益から費用を差し引いた金額が課税所得となります。
- 自営業者は年金掛金を控除対象とすることができます。
所得から年金掛金を差し引いた金額が課税対象となるため、節税効果があります。
一方、会社員は国民年金と厚生年金に加入することになりますが、自営業者の場合は国民年金のみの加入となります。
- そのため将来受給する年金額は減少しますが、任意加入の年金制度に加入することで不安を和らげることができます。
- また、任意加入の年金制度でも国民年金と同様に、掛金を控除対象とすることが可能です。
フリーランスの扶養家族の年金(デメリット)
勤め人の場合、家族を扶養家族に指定することで、一定の所得控除を受けられ、所得税や住民税の負担を軽減できます。
一方、自営業者は家族を扶養家族に指定しても節税の恩恵を受けることはできません。
さらに、勤め人は健康保険に扶養家族を加えることができるため、本人分の保険料のみ支払えば済みます。
しかし、自営業者は家族全員分の保険料を支払わなければならないという違いがあります。
フリーランスはどうすればいいのか
確かに国民年金だけでは老後の生活に不安を感じる人も多いでしょう。
そこで、フリーランスの方向けに任意加入が可能な年金制度をご紹介します。
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 個人年金保険
- 企業年金基金への加入
- 国民年金基金への加入
これらの制度を上手に組み合わせることで、より手厚い年金生活を送ることができます。早めの対策が賢明な選択と言えるでしょう。
小規模企業共済
フリーランスの方向けの退職金制度として、小規模企業救済制度が存在します。
月々の拠出金は1,000円から70,000円の範囲で500円単位で自由に設定可能で、支払った金額に応じて共済金を受け取ることができます。
拠出金の額は途中で変更することも可能ですが、減額には厳しい条件があるため、低めの金額設定が賢明です。
税制上の取り扱いとしては、拠出金は所得から控除可能であり、節税効果があります。
一方で、任意設定のため事業費用としては計上できません。
また、任意解約した場合、受け取り額が拠出金を下回る可能性もあります。
共済金の受給要件は、主に
- 65歳以上で180ヶ月以上拠出した場合の「老齢給付(共済金B)」
- フリーランス廃業時(共済金A)
となります。
国民年金基金
国民年金基金制度は公的年金として法令に基づいて運営されています。
- 厚生年金に加入していない自営業者などが、国民年金と組み合わせて所得保障を図ることができます。
- 国民年金基金の掛金は全額が所得控除の対象となるため、節税効果があります。
- ただし、海外在住者は所得控除の適用を受けられませんので注意が必要です。
掛金の月額は、
- 選択した給付水準
- 加入口数
- 加入時の年齢や性別
などによって異なり、上限は月68,000円に設定されています。
なお、iDeCo(個人型確定拠出年金)にも加入している場合、国民年金基金とiDeCoの掛金の合計額が月68,000円を上限とすることに留意しましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoとは確定拠出年金法に基づく個人向け年金制度であり、自身で任意に加入し、運用商品を選択して掛金を拠出することができます。拠出した掛金と運用益の合計額を受け取ることが可能です。
掛金額は自由に設定できますが、自営業者の場合は月額68,000円、年額816,000円が上限となっています。
受取方法には以下の3つがあります。
- 60歳から70歳の間に一時金で受け取る
- 年金として受け取る
- 一時金と年金を組み合わせて受け取る
また、掛金は所得控除の対象となります。
付加年金
付加年金は自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者、または任意加入者が利用可能な年金制度です。
- 定額の保険料に加えて月額400円の付加保険料を支払うことで、老齢基礎年金に付加年金分が上乗せされた金額を受給することができます。
- ただし、受給額は200円に付加保険料の納付月数を掛けた金額となります。
一方、国民年金基金に加入している方は、付加保険料の納付はできません。
付加年金は国民年金を補完する制度と捉えるのが適切でしょう。
中小企業倒産防止共済
フリーランスの方々にとって、取引先企業の倒産は深刻な影響を及ぼす可能性があります。
そのような事態に備えるため、中小企業倒産防止共済制度が有効な手段となります。
この制度を利用すれば、取引先企業が倒産した際に、無担保かつ無利子で共済金を借り受けることができます。
大口クライアントに依存している場合、このようなリスクヘッジは非常に重要です。
共済掛金は以下の通りです。
- 5,000円から200,000円までの範囲
- 5,000円単位で自由に選択可能
さらに、フリーランスの場合、この掛金を必要経費に含めることが認められています。
支払い継続期間 | 払い戻し額 |
---|---|
40ヶ月以上 | 掛金の全額 |
ただし、共済を解約して払い戻しを受ける際は、全額が雑収入として課税対象となるため、解約のタイミングには注意が必要です。
まとめ
フリーランスとなることを決めた人にとって、年金は非常に重要な課題です。この記事を参考に、今後任意加入の年金に加わるべきか検討しましょう。
フリーランスになると
- 退職後14日以内に居住する自治体の役所で手続きを行い
- 国民年金に加入しなければなりません
忘れずに対応することが肝心です。
ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」に少しでも関心がある方はぜひ登録してください。
ぜひこの記事を参考にしてお役立てください。