同一賃金同一労働って?企業で対応しなければならないことを分かりやすく解説!

企業は「同一労働同一賃金」の原則に従うことが求められています。この原理は、同種の業務に従事する労働者に対して、雇用形態に関わらず公平な待遇を確保することを目指しています。
この課題に適切に対処するには、制度の目的と適用範囲を正しく理解し、適切な運用が不可欠です。
本稿では、同一労働同一賃金の趣旨、対象となる従業員と賃金項目、関連する裁判例などを解説します。
特に以下の方々にご一読いただければ幸いです。

  • 採用担当者として同一労働同一賃金への対応が必要な企業関係者
  • 非正規雇用者を雇用する経営者
  • 非正規雇用として活躍する労働者
  • 同一労働同一賃金に関心のあるフリーランス従事者

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同一賃金同一労働とは

同一賃金同一労働とは

この節では、同一の仕事に従事する場合には、正規雇用と非正規雇用の区別なく、公平な報酬が支払われるべきであるという「同一労働同一賃金」の概念について説明します。
この原則の目的や対象範囲、そして賃金・待遇の決定方法についても触れます。
加えて、日本と欧州連合(EU)諸国との間にある同一賃金同一労働に関する制度の違いを明らかにすることで、日本における状況をより深く理解できるようになります。

  • 同一労働同一賃金の定義と目的
  • 対象となる非正規雇用労働者
  • 賃金・手当ての考え方
  • 日本とEU諸国の制度の違い

非正規雇用労働者と正規雇用労働者の待遇差解消を目的に策定

同一の業務に従事する場合、雇用形態に関わらず原則として同等の報酬を支払うことを定めた制度が同一賃金同一労働です。
つまり、正社員と非正規雇用労働者の間で不当な待遇格差を是正することが目的とされています。
ただし、

  • 職務内容や配置転換の範囲が異なれば、一定の相違は許容されます。

この制度は2020年4月に施行された改正パートタイム・有期雇用労働法に規定されており、

  • 派遣労働者や契約社員を雇用する企業は就業規則の見直しなど、法令順守のための対応が求められます。

同一賃金同一労働が適用される非正規雇用労働者

政府によると、2020年4月1日以降、パートタイム労働者は「同一事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間と比べて短い労働時間の労働者」と定義されています。したがって、社内での呼称が異なっていても、上記条件に該当する場合はパートタイム労働者とみなされます。
ここでいう「通常の社員」とは、その企業や団体における正社員や中核的な働き手を指します。

有期雇用労働者とは、事業主と期間を定めた労働契約を結んでいる労働者のことです。
労働基準法により、有期雇用契約期間は3年が上限と定められています。
無期雇用労働者と比較すると、雇用の安定性や福利厚生面で不利な扱いを受けることが多く、2020年3月31日以前のパートタイム労働法の対象外でした。
しかし、2020年4月にパートタイム・有期雇用労働法が施行されたことで、有期雇用労働者も対象に含まれることになりました。

同一労働同一賃金の対象には、派遣労働者も含まれます。派遣労働者とは、派遣元企業と労働契約を結び、その指示のもと派遣先企業に赴き、派遣先の指揮命令下で働く労働者のことです。
派遣労働者の場合、同一労働同一賃金の実現は派遣元企業が主体となり、一定の判断基準に基づいて待遇を検討する必要があります。その方法は大きく二つに分けられます。

  • 一つは「派遣先均等・均衡方式」と呼ばれ、派遣元と派遣先企業の協定により、派遣先の正社員待遇に合わせることで同一労働同一賃金を図る方式です。
  • もう一つは「労使協定方式」と呼ばれ、派遣元と派遣労働者などが協議し、同一エリアで同種業務に従事する一般労働者の平均賃金と同一労働同一賃金を目指す方式です。

給与・待遇の考え方

ここでは、賃金・待遇における公平性の観点から、同一労働同一賃金の考え方を項目ごとに整理します。

  • 基本給

基本給については、労働者の

  • 能力または経験
  • 業績または成果
  • 勤続年数

の3つの条件に基づいて決定されるべきです。一定の差異がある場合は、その差異に応じた支給が認められますが、主観的かつ抽象的な理由ではなく、客観的かつ具体的な実態に照らして不合理となってはなりません。

  • 賞与

会社業績に対する労働者の貢献度が同一であれば、正社員と非正規雇用社員で賞与の支給に差をつけてはいけません。ただし、貢献度に一定の違いがある場合は、その違いに応じた賞与の支給が認められます。雇用形態のみを理由に賞与の支給条件を決めることは不合理な待遇差と見なされます。

  • 各種手当

通勤手当や時間外手当など、各種手当についても正社員と同一の待遇で支給する必要があります。家族手当や住居手当などについては、ガイドラインに明示されていませんが、均衡・均等待遇の対象となります。各社の事情に応じて労使で議論することが望ましいとされています。

  • 福利厚生や教育訓練

福利厚生施設の利用、社宅、休暇など、福利厚生についても同一の利用・付与が求められます。病気休職については、無期雇用の短時間労働者は正社員と同一、有期雇用労働者は契約期間を踏まえた同一の付与が必要です。教育訓練も、職務内容が同一であれば同一、違いがあれば違いに応じた実施が求められます。

諸国との違い

欧州連合加盟国では、同種の仕事に対して同水準の報酬を支払うことが、人権保護の観点から差別的取り扱いを禁止する原則として位置づけられています。
性別や人種といった一般的な属性、または宗教的信念などを理由に賃金格差を設けることが禁じられているのです。

そのため、日本とEUで導入されている同一労働同一賃金の制度には類似点がある一方で、若干の相違点も存在します。

  • 日本では企業ごとに労働条件を定めることが多い
  • フランスでは職務内容に基づいて賃金が決定される仕組みがあるため、結果として「同一労働同一賃金」が実現されている

同一労働同一賃金の施行時期(大企業と中小企業の違い)

同一労働同一賃金の施行時期(大企業と中小企業の違い)

この節では、大企業と中小企業における同等の仕事に対する同等の報酬の導入時期の相違点を明確化します。

大企業

大規模な企業においては、2020年4月から実施に移されています。

中小企業

中小企業に関しては、2021年4月が新制度の適用開始時期と定められています。
中小企業の範囲は次の通りです。

  • 資本金または出資総額が3億円以下の事業主
  • 常時雇用する従業員数が300人以下の事業主

同一賃金同一労働によって求められる企業側の対応

同一賃金同一労働によって求められる企業側の対応

この節では、均等待遇の原則に基づき企業に求められる措置について説明します。
必要な対策は、主に2つの側面から成り立っています。

  • 側面1
  • 側面2

自社の正規雇用労働者・非正規雇用労働者の待遇確認

企業には、従業員全体の雇用形態と処遇を把握することが求められます。
正規従業員と非正規従業員の間で、

  • 賞与や手当の支給方法や金額に違いがないかを確認し、
  • 合理的な理由なく差が生じている場合は是正する必要があります。

労働者の待遇に関して、

  • 公平性を欠く点がないかを点検し、
  • 不合理な格差があれば適正化を図らなければなりません。

人事制度と就業規則の確認と変更の検討

従業員間の処遇格差を把握した後、次のステップは不当な格差を解消するための人事制度や就業規則の見直しと改訂の検討です。
正社員と非正規社員の役割の違いを明確化することで、現状の処遇差を合理的に説明できるようになります。
しかし、役割の違いだけでは合理的な説明ができない場合、

  • 賃金制度を含む人事制度や就業規則の変更が必要となるでしょう。

人事制度や就業規則を変更する際は、

  • 誰もが理解しやすく
  • 一貫性があり
  • 高い水準の規定にする必要があります。

同一賃金同一労働の対応を怠るとどうなる?

同一賃金同一労働の対応を怠るとどうなる?

この節では、均等な労働に対して均等な報酬を払わなかった場合の影響について説明します。

国からの罰則規定はなし

結論として、同種の労務に対する報酬の均等化は法的義務ではありません。しかし、厚生労働省は「同一労働同一賃金ガイドライン」を策定し、その考え方を示しています。
このガイドラインは法的拘束力を持たない指針に過ぎませんが、雇用形態以外の待遇差別については、個別の罰則規定が設けられている場合があります。
したがって、罰則がないからといって同一労働同一賃金を無視してよいわけではありません。将来的に罰則が導入される可能性も考慮し、早期の対策が求められます。

裁判事例

同一の業務を行う従業員間で待遇に不当な格差があった場合、企業は法的責任を問われる可能性があります。裁判所は、以下のような判断を下しています。

  • 正社員と契約社員の間で、住宅手当や病気休暇の取り扱いに違いがあれば、不合理な待遇差と見なされる場合があります。企業は、契約社員に対して相応の賠償金の支払いを命じられることがあります。
  • 残業手当の割増率や退職金の支給において、正社員と契約社員の間で不当な格差がある場合、裁判所は企業に対し、契約社員への退職金の一部支払いを命じることがあります。契約期間や定年年齢なども考慮されます。

裁判所は、同一労働同一賃金の原則を重視し、業務内容が同じであれば、雇用形態に関わらず待遇に不合理な差を設けることを認めていません。企業は、従業員間の公平な処遇に留意する必要があります。

同一賃金同一労働でフリーランスはどうなる?

同一賃金同一労働でフリーランスはどうなる?

同一の労務に対して同一の報酬を支払うべきだという考え方が広まることで、フリーランスの働き方にも影響が及ぶと予想されます。
具体的には、

  • フリーランスに支払う報酬額について、業務ごとに最低基準を設けることが検討されています。
  • 独占禁止法の規定により、フリーランスに不当な不利益を与える契約は禁止される予定です。
  • フリーランスにとって不利な現行の社会保険制度についても、改善の動きがあります。

非正規雇用労働者だけでなく、フリーランスを含むあらゆる働き手が、成果に見合った適正な報酬を得られる環境づくりが、日本でも徐々に進められつつあるのではないでしょうか。

まとめ

まとめ

この記事では、同一労働同一賃金の導入目的、施行時期、企業に求められる対応や姿勢について説明しました。
この取り組みは大企業では既に浸透しており、中小企業でも2021年4月の施行に向けて万全の準備が必要とされています。
この制度は労働者が適正な報酬を受け取ることを目指しており、今後はフリーランスの報酬にも法的保護が及ぶことが期待されます。

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この記事がお役に立てば幸いです。