フリーランスへの転身を希望しながらも、具体的な行動に移すべき手順が分からずに戸惑う人は多数いるでしょう。
フリーランスへの移行には事前の準備が不可欠です。十分な準備なしにフリーランスを始めると、失敗のリスクが高まるため注意が必要です。
安定した収入を得るためにも、フリーランスに関する情報収集が重要となります。
本稿では、以下について解説しています。
- フリーランスの実態
- 必要なスキル
- 手続き
フリーランスを目指す人は、最低限の知識を身につけるため、本稿を一読することをお勧めします。
フリーランスとは?
フリーランスとは、企業や組織に所属することなく個人で職務を遂行する人々や労働形態を指しています。
独立して事業を営んだり、他社や個人と契約を交わして業務を請け負ったりすることで収入を得ています。
この呼称は、中世ヨーロッパで特定の軍団に属さず戦地へ赴く傭兵から由来しています。
わが国ではまだフリーランスの人口は多くありませんが、米国では一般的な就労スタイルとなっています。
また、近年日本国内でもこの働き方が注目を集め始めています。
フリーランスと個人事業主の違い
フリーランスと個人事業主という用語は、しばしば明確に区別されずに使用されています。しかし、厳密には両者の定義は異なります。
フリーランスは「個人の働き方」を指す言葉です。
一方、個人事業主は「個人の働き方」を指すだけでなく、「税務上の所得区分」も意味します。
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営む人のことを指します。
税務署に開業届を提出することで、税務上の個人事業主となります。
個人事業主は、個人事業主としての税務関連手続きを行う必要があります。
しかし、必ずしもフリーランスが個人事業主に該当するわけではありません。
例えば、
- 会社員が副業として事業を行う場合、個人事業主に該当しますが、フリーランスではありません。
このように、フリーランスと個人事業主には定義上の違いがあります。
フリーランスと副業の違い
本業の傍ら、個人で別の事業を営み収入を得ることを副業と呼びます。
一方、フリーランスは特定の企業と雇用関係を結ぶことなく、自身の事業を主たる収入源とします。
フリーランスは企業と業務委託契約を締結しますが、正社員などの身分は有しません。
フリーランスの実状
フリーランスの現状を政府の公式データに基づいて概説します。「フリーランスは収入が少ない」と言われることがありますが、実態はどうなのでしょうか。ここでは、フリーランスの人口動向、労働時間、年収について説明します。
- フリーランスの人口規模
- フリーランスの就労時間
- フリーランスの年間収入
フリーランスの人口
フリーランスの従事者数は年々増加傾向にあります。
ランサーズが公表した「フリーランス実態調査 2021」によれば、日本におけるフリーランス従事者数は2019年の1,118万人から2021年には1,577万人へと460万人を超える大幅な増加となっています。
この結果から、2022年時点でフリーランス従事者は日本の人口の約15%を占めていることになります。
ただし、この統計にはフリーランスだけでなく副業者も含まれていることに留意が必要です。
本業としてフリーランスに従事している人のみを対象とすれば、フリーランス従事者数はさらに少なくなると考えられます。
「フリーランス実態調査結果」によると、内閣官房による統一調査では2020年の「広義のフリーランス」従事者数は462万人と試算されています。
また、2019年には以下のように、厚生労働省、内閣府、中小企業庁がそれぞれフリーランス従事者数の調査を実施しています。
- 厚生労働省:367万人
- 中小企業庁:472万人
- 内閣府:341万人
このように、調査機関によってフリーランス従事者数に差異が見られます。
フリーランスの定義の範囲によって、従事者数は変動するためです。
しかしながら、フリーランス従事者が以前より増加していることは確かなようです。
その要因としては、クラウドソーシングやフリーランスエージェントなどのサポートサービスの充実により仕事を得やすくなったことや、新型コロナウイルス感染症の影響で外部委託が増え案件数が増加したことなどが考えられます。
フリーランスの労働時間
フリーランスの就業実態に関する調査では、1日当たりの労働時間について質問が行われています。回答結果は以下の通りです。
- 1時間未満が11.4%
- 1時間以上2時間未満が13.1%
- 2時間以上4時間未満が19.8%
- 4時間以上6時間未満が19.4%
- 6時間以上8時間未満が19.6%
- 8時間以上10時間未満が10.8%
- 10時間以上12時間未満が3.2%
- 12時間以上が2.6%
この結果から、フリーランスの就業時間には個人差があることがわかります。総じてフリーランスの労働時間は従業員よりも短い傾向にあります。ただし、この調査の対象者は15歳から75歳未満と幅広い年齢層を含んでいるため、学生や退職後の方も一定数含まれていると考えられます。
フリーランスの年収
フリーランスの収入実態に関する調査結果が公表されました。フリーランス全体の平均年収は137.9万円でしたが、
・副業系のすきまワーカーは62.3万円
・複業系のパラレルワーカーは102.8万円
・自由業系のフリーワーカーは89万円
・自営業系の独立オーナーは297.5万円
と、働き方によって大きな開きがありました。
前年度と比べると、自由業系フリーワーカーの平均年収は約30万円増加しており、企業によるフリーランス活用の広がりが要因と考えられます。しかし、フリーランスには高収入者と低収入者の二極化が見られます。
実際の年収分布を見ると、
最も多かったのは「200万円以上300万円未満」の19%でした。この統計は純粋なフリーランスのみを対象としたものと思われます。
フリーランスの代表的職種一覧
フリーランスの職種は多岐にわたり、さまざまな分野で活躍しています。
ここでは、代表的な職種について説明します。
主な職種は以下の4つです。
- エンジニア
- コンサルタント
- デザイナー
- ライター
これらの職種は、スタートアップコストが比較的低いため、フリーランスとして始めやすい傾向にあります。
それぞれの職種の業務内容や必要なスキルセットについて、詳しく解説していきます。
エンジニア
エンジニアは企業から依頼を受け、システムの開発を行う職種です。
具体的には、ウェブアプリケーション、モバイルアプリ、デスクトップアプリなどのソフトウェアを制作します。
企業側から提示された設計書に基づき、機能を実装していきます。
場合によっては、一部の機能のみの開発を任されることもあれば、システム全体の開発を担当することもあります。
エンジニアとして収入を得るためには、プログラミング言語のスキルが必須です。
必要とされる言語は、開発対象のシステムによって異なります。
- 例えば、Androidアプリの開発ではJavaやKotlinを、
- iOSアプリの開発ではSwiftやObjective-Cを使用する必要があります。
フリーランスとして活動する場合は、特定の言語を熟知し、一人でアプリケーションを開発できる能力が求められます。
プログラミング言語の習得には一定の障壁がありますが、その分高収入が期待できる職種でもあります。
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コンサルタント
コンサルティング業務とは、クライアント企業の課題をIT化によって解決することです。
まずは「売上げが落ち込んでいる」「業務効率が悪い」などの問題点を企業側から聴取します。
コンサルタントは聴取した内容を基に、企業のどの部分に問題の原因があるのかを分析します。
その上で、課題解決のためのシステム導入を提言します。
フリーランスのコンサルタントを目指す場合、幅広い知見と経験が求められます。
- システム開発の上流から下流までの工程経験
- クライアント業界の知識
- 問題解決力
- コミュニケーション能力
など、様々なスキルを身に付ける必要があります。
ほとんどの場合、未経験からフリーランスコンサルタントになることはなく、システム開発の実務経験者が転身する形が一般的です。
しかし、エンジニアを上回る高収入が期待できる可能性もあります。
コンサルタント求人・案件の一例を以下に示します。
デザイナー
Webサイト、Webサービス、アプリケーションなどのデザインを手掛ける職種がデザイナーです。
クライアントから提示された構想に基づき、それに沿ったデザインを考案します。
Webサイトのデザインを請け負う場合は、制作まで携わることもあります。
デザイナーにはWebデザインに関する知識と経験が求められます。
- Illustrator、Photoshop、Adobe XD、Figmaなどのデザインツールの運用能力は必須です。
- 業務範囲次第では、HTMLやCSS、JavaScriptのスキルも必要とされます。
フリーランスのデザイナーは、過去の実績をポートフォリオとして提示し、自身のスキルを証明する必要があります。
自社サイトの制作やWebサービス・アプリ開発のためにデザイン設計を重視する企業が多く、フリーランスデザイナーの需要は高まっています。
ライター
ウェブサイトに掲載される文章を制作する仕事がライターです。顧客から指定されたキーワードで上位表示される記事を書く必要があります。
場合によっては記事の構成を自ら考え、WordPressへの投稿まで任されることもあります。
フリーランスのライターとして収入を得るには、文章力やSEO知識・スキルが求められます。
これらは未経験からでも身に付けられるため、ライターは他職種に比べ参入しやすい職種と言えます。
その一方で、
- フリーランスライター同士で案件を争奪することも多く
- 当初は低単価の仕事しか受注できないこともあります
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フリーランスエンジニアに必要なスキル
プログラミング言語の習熟
フリーランスエンジニアとして活躍するためには、プログラミング言語を高度に習熟している必要があります。
- 複数の言語に精通していることが望ましい
- 新しい言語を素早く習得できる能力が求められる
システム開発の知識と経験
- 要件定義から設計、実装、テストまでの一連の開発プロセスを理解している
- 様々な開発手法やツールを使いこなせる
- 過去の開発経験が豊富であることが望ましい
プロジェクト管理能力
- スケジュール管理、リスク管理、品質管理などができる
- 顧客との折衝や調整を行える
- チームをまとめるリーダーシップが求められる
コミュニケーション力
- 顧客や関係者との円滑なコミュニケーションが重要
- 要件や課題を的確に把握し、解決策を提案できる
- 文書作成力や発表力も必要
自己管理力
- 自身の作業を計画的に進められる
- モチベーションを維持し、継続的に学習できる
- 健康管理や時間管理ができる
能力 | 内容 |
---|---|
プログラミング言語の習熟 | 複数の言語に精通し、新しい言語を素早く習得できる |
システム開発の知識と経験 | 開発プロセス全体を理解し、様々な手法やツールを使いこなせる |
プロジェクト管理能力 | スケジュール管理、リスク管理、顧客折衝、チームリーダーシップ |
コミュニケーション力 | 円滑なコミュニケーション、要件把握、提案力、文書・発表力 |
自己管理力 | 作業の計画性、モチベーション維持、学習継続、健康・時間管理 |
プログラミング言語スキル
独立したエンジニアとして収入を得るには、コーディングスキルが不可欠です。
プログラミング言語の構文を理解し、関数やライブラリを活用できる能力が求められます。
さらに、プログラミング言語のフレームワークの習得も望ましいでしょう。
プログラミング言語は
- 専門学校などで学ぶことができます
- 自力で習得する人もいます
自習の場合、
- Progateやドットインストールなどのオンライン学習サービスが役立ちます
これらのサイトは
月額1,000円程度で利用可能で |
初心者にもわかりやすくまとめられています |
システム開発スキル
独立したエンジニアとして収入を得るには、システム開発の能力が必要不可欠です。
開発経験がない場合でも案件を見つけることはできますが、そのような機会は極めて稀であり、報酬額も低くなります。
ほとんどの案件では、1年以上のシステム開発経験が求められます。
実際の開発現場で他のエンジニアと協力し、設計書の作成やテストを行った経験の有無によって、受注できる案件の幅が変わってくるでしょう。
未経験からフリーランスエンジニアを目指すこともできますが、安定した収入を得たいのであれば、IT企業に正社員として数年間勤務することをお勧めします。
マネージメントスキル
より高額の報酬を得るためには、フリーランスエンジニアにはマネジメント能力が求められます。
IT企業におけるマネジメントとは、
- 部下の作業監督
- 開発スケジュールの顧客調整
- 開発上の問題対応
などの業務を指します。
このような責任の重い高度な能力が必要とされるため、高単価となる場合が多いでしょう。
マネジメント能力はプログラミング言語スキルとは異なり、実際の業務を通じて身に付けていくしかありません。
そのため、マネジメント業務の機会があれば、それを活かすべきです。
小規模プロジェクトでもマネジメント経験を積めば、今後のマネジメント業務の受注がスムーズになるはずです。
コミュニケーションスキル
フリーランスエンジニアにとって、円滑な意思疎通能力は欠かせない要素となります。個人で業務を遂行するイメージが強いものの、実際には大規模プロジェクトにおいては、他のフリーランサーや企業関係者と協力しながら進めていくケースが多くあります。
チームメンバーとのスムーズなコミュニケーションがなければ、伝達ミスから作業のやり直しなどのトラブルに見舞われる可能性があります。
さらに、案件の受注自体にも影響を及ぼします。応募時には自身の強みや実績をアピールし、適正な報酬額の交渉を行う必要があるためです。
このように、フリーランスエンジニアにとって円滑なコミュニケーション力は不可欠な資質なのです。
自己管理スキル
フリーランスエンジニアにとって欠かせないのが、自己管理能力です。
上司がいないため、業務の管理は全て自身で行わなければなりません。
- 複数のプロジェクトを抱える場合、それぞれの締め切りを把握し、期限に遅れないよう調整する必要があります。
また、フリーランスは生活リズムが乱れがちです。
- 夜型になったり、仕事へのモチベーションが低下したりする可能性があります。
そういった事態を防ぐためにも、自己管理能力は不可欠なのです。
フリーランスになるための手続きや準備
フリーランスへの転身には、事前に対応が求められる事柄が複数存在します。
フリーランサーとなるための必須事項は以下の4点です。
- クレジットカードやローンの手続き対応
- 各種届出の適切な実施
- 健康保険および年金の切り替え手続き
- 仕事獲得方法の検討
これらは、フリーランスに移行した後では対処が難しくなるため、現時点で確認が肝要です。
それぞれの項目について、より詳細な説明を加えます。
クレジットカードやローンの手続き
フリーランスへの移行を検討する際、クレジットカードやローンの申請を事前に行うことが賢明です。
フリーランスの方は、安定した収入源がないと見なされがちなため、審査を通過するのが難しい傾向にあります。その理由は、
- 会社員と比べて収入が不安定であり、支払い能力が低いと判断されやすいため
です。
したがって、クレジットカードやローンの手続きは、会社員としての身分のうちに済ませておくことをお勧めします。
届け出関係をきちんとする
フリーランスとして活動を開始する際には、税務署への開業届の提出が義務付けられています。
事業開始から1ヶ月以内に届け出を行わなければなりません。
提出を怠った場合でも直接的な制裁措置はありませんが、法的義務なので基本的には手続きを行うべきです。
また、個人事業主には確定申告の義務があり、所得税の納付のため、毎年決められた期限までに申告書類を提出する必要があります。
会社員の場合は勤務先が確定申告を行いますが、個人事業主は自身で手続きを行わなければなりません。
確定申告の方法は複雑な場合もあるため、事前に十分な準備が求められます。
なお、副業として事業を行う場合も確定申告が必要となるので注意が必要です。
健康保険と年金の切り替え手続き
職場を離れる際には、医療保障と老後の備えの手続きが求められます。
- 退職から2週間以内に、国民健康保険と国民年金への切り替えが必須となります。
- この手続きは、居住する自治体の窓口で行うことができます。
収入がない場合でも、退職者は健康保険と年金の切り替えを怠ってはなりません。
仕事探し方法の検索
仕事を探す際には、フリーランスになる前に様々な方法を調べておくことが重要です。
- クラウドソーシングサービスの活用
- ソーシャルメディアの利用
- エージェント会社の活用
など、多様な選択肢があります。
個人によって適した手段は異なるため、できる限り多くの選択肢を把握しておくことが賢明です。
まとめ
この記事では、フリーランスの現状、必要なスキル、そして必須の手続きについて説明しました。
フリーランスになるための準備作業と、そのプロセスについて理解できたと思います。
フリーランスで生活費を稼ぐためには、事前の準備が非常に重要です。
- まず、どの職種で収入を得るかを検討し、その分野で求められるスキルと経験を身につける必要があります。
- フリーランスは個人で業務を遂行しなければならないため、高度なスキルと経験が求められます。
- 一般的には、最初は副業として仕事を請け負い、一定のスキルと経験を蓄積してからフリーランスに転向することをおすすめします。
- また、フリーランスになるための必須手続きも忘れずに行ってください。
フリーランスになった後で焦ることのないよう、十分な準備が不可欠です。
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この記事が皆様の助けになれば幸いです。