システム監査技術者試験の詳細や勉強対策、おすすめ参考書/サイト

システム監査技術者試験は、企業の目標達成に貢献するため、システムに関わるリスクを把握・分析・評価できる能力を証明する国家資格です。
情報処理技術者としての誇りと理念を持ち、IT業界全体の発展に寄与することが求められます。
この資格を取得するには、独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」が定める「高度な知識・技能レベル」の国家試験に合格しなければなりません。
企業内の監査役とは異なる立場から、システム全体の点検や検証・評価を行うため、高度なIT知識と技術が不可欠です。
2021年度の合格率は16%と極めて難関の資格であり、IT関連の基礎知識だけでは試験に合格することは困難です。応用分野にも精通している必要があります。
本記事では、システム監査技術者試験の特徴や難易度、合格に向けた目安の勉強時間、おすすめの参考書などを解説しています。ぜひ最後までご覧ください。

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システム監査技術者試験とは

システム監査技術者試験とは

システム監査技術者試験は、IT関連システムを客観的な視点から検査・評価できる人材を育成することを目指した国家資格です。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主導しており、ITに関する高度な知識とスキルが求められます。
具体的には、

  • 企業が運用する情報システムや組み込みシステムなどに関連するリスクを理解し、自らコントロールしながら点検や検証ができる知識と技術を身に付ける必要があります。
  • 最終的な評価に基づき、企業の目標達成度や方針の妥当性を再確認し、企業の利益につながる行動ができる人材でなければなりません。

この試験は、そうした高度なIT知識と技術を持つ人材を育成することを目的としており、国がその資格を保証する制度です。

システム監査技術者試験の対象者は、年齢や受験資格に制限はありません。
監査対象から独立した立場で、利用者に適切なアドバイスや改善提案ができる方が対象となります。
例えば、

  • 組み込みシステム開発において、外部の立場からシステム全体を点検・検証したとします。
  • その後、監査対象のシステムの評価に基づき、利用者向けにコントロールやガバナンスなどの改善策を提示したり、適切なコントロールができるようアドバイスします。

このように、システム監査技術者として適切に対応できる人材、または将来的にその役割を担う人材が対象となります。

システム監査技術者の業務内容とは

システム監査専門家の具体的な職務内容を見ていきましょう。
この役割は、情報システムや組み込みシステムの運用管理における改善点や評価を行うことが主な責務です。
例えば以下のような業務があげられます。

  • 情報システムや組み込みシステムの運用管理に関する専門知識と技術を有し、企業の目標達成のためにリスク管理を行う
  • 企業が掲げる目標を達成するため、セキュリティ、情報ビジネス、内部統制などの仕組みを評価する監査計画の策定
  • システム運用の各プロセスにおける評価基準を明確化
  • システム開発の企画から保守に至る一連の流れを効率的に運用できるよう要件を設定
  • 監査結果に基づく報告書の作成とフォローアップ

このように、システム監査専門家には高度なIT知識とスキルが求められます。

システム監査技術者試験の詳細

システム監査技術者試験の詳細

システム監査技術者試験の詳細については、独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」が公式に公表しています。
情報処理技術者試験の中でも「高度な知識と技能レベル」に分類され、英語表記は「Systems Auditor Examination(AU)」となっています。
この試験は年間を通して秋期(10月)に実施されます。

ここでは、独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」が公式に発表しているシステム監査技術者試験の詳細について説明します。

  • 情報処理技術者試験の中でも「高度な知識と技能レベル」に分類される
  • 英語表記は「Systems Auditor Examination(AU)」
  • 年間を通して秋期(10月)に実施される

2024年6月のシステム監査技術者試験の会場・日程・受験料

システム監査技術者試験の試験会場については、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表している資料を参考にすることができます。
新型コロナウイルス感染症の影響により、一部の会場では試験実施が困難になる可能性があるほか、定員オーバーで希望の会場で受験できない場合もあり得ます。

試験会場
(引用:https://www.jitec.ipa.go.jp/1_01mosikomi/04h_annaisho/04h_02.pdf)
  • システム監査技術者試験は年に1回、秋期(10月)のみ実施されます。
  • 令和4年度の試験時期については、公式サイトでご確認ください。

受験料は7,500円(税込)と定められています。一旦支払った受験料は原則として返金されませんが、IPAや経済産業省の判断で試験中止となった場合は例外的に返金手続きが行われる可能性があります。

システム監査技術者試験の試験時間・出題形式・出題数

システム監査技術者試験の試験時間は、以下のように分かれています。

  • 午前の第1部
  • 午前の第2部
  • 午後の第1部
  • 午後の第2部

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している情報によると、
・午前の第1部が50分
・午前の第2部が40分
・午後の第1部は90分
・午後の第2部は120分

時間/区分 午前の第1部 午前の第2部 午後の第1部 午後の第2部
注意事項の説明開始時間 9:15 10:35 12:15 14:15
試験時間 9:30~10:20(50分) 10:50~11:30(40分) 12:30~14:00(90分) 14:30~16:20(120分)
出題数解答数 多肢選択式(四肢択一)全30問出題解答数:30問 多肢選択式(四肢択一)全25問出題解答数:25問 記述式全3問出題解答数:2問 論述式全2問出題解答数:1問

システム監査技術者試験の出題内容

システム監査技術者試験の出題範囲は、試験時間帯によって異なります。

【午前Ⅰ】
この時間帯では、ITに関する基礎的な知識が問われます。具体的には、

  • テクノロジー
  • マネジメント
  • 戦略

に関する問題が出題されます。テクノロジー分野では、数学や情報理論、データ構造、プログラミング、アルゴリズム、コンピュータ構成要素、システム構成要素などが対象となります。一方で、応用情報処理技術者試験の午前問題と類似した難しい問題も含まれる可能性があります。マネジメント分野では、サービスマネジメント、プロジェクトマネジメント、内部統制などのシステム監査関連の問題が出題されます。戦略分野では、経営戦略、技術戦略、システム戦略・企画に関する時事的な問題が出題されます。

【午前Ⅱ】
この時間帯では、午前Ⅰの出題範囲のうち、

  • ネットワーク
  • データベース
  • セキュリティ
  • サービスマネジメント
  • システム開発技術
  • システム監査
  • 経営戦略マネジメント
  • 法務
  • 企業活動

の9分野から出題されます。午前Ⅰと重複する分野もありますが、問題の難易度は高くなります。特に「システム監査」関連の問題は難易度が高く、ボリュームも多くなる傾向にあります。

【午後Ⅰ・午後Ⅱ】
午後の試験では、午前試験よりも更に難易度が上がり、より深いシステム監査に関する知識が必要とされます。出題内容は以下のようにカテゴリー分けされます。

  • 情報システム、組込みシステム、通信ネットワーク関連
  • システム監査人としての行動関連
  • システム監査の実践
  • システム監査に関連する法律 など

システム監査技術者試験の受験者数・合格率・難易度

日本資格取得支援(JQOS)の情報によると、2020年度のシステム監査技術者試験の合格率は15.3%と示されています。受験者数1,702名のうち、合格者は260名に留まりました。
過去のシステム監査技術者試験の受験者数と合格率の推移を見ると、より明確になります。

(引用:https://jqos.jp/kokka/systemkansagijutusha)

受験者数は2019年まで一定の水準を維持していましたが、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で急激に減少に転じました。一方で、合格率は毎年約15%前後で推移し、一定の水準を保っています。

過去5年間のシステム監査技術者試験の受験者数、合格者数、合格率の指標は以下の通りです。

開催時期 受験者数(名) 合格者数(名) 合格率(%)
2017年度 2,862 433 15.1
2018年度 2,841 408 14.4
2019年度 2,879 421 14.6
2020年度 1,702 260 15.3
2021年度 1,877 301 16.0

2020年度のシステム監査技術者試験の受験者数が減少した要因として、コロナ禍においてAI技術やIoTが注目を集める一方で、日本の総人口減少が影響していると考えられます。総務省統計局によれば、日本の総人口は平成20年をピークに年々減少し、令和3年12月時点で12,547万人まで低下しています。

さらに、システム監査技術者試験を含む一部の高度情報処理技術者試験の受験者数が令和3年より減少していることから、試験全体に対する関心や意欲が薄れつつあるとも推測できます。

システム監査技術者試験の申し込み手順

システム監査技術者試験の受験手続きは、次のステップに従う必要があります。

  • 情報処理推進機構(IPA)のウェブサイトから申し込む
  • 申込フォームに従い、求められる情報を記入する
  • 受験料の支払い方法を選択する(クレジットカード決済、ペイジー(Pay-easy)による支払い、コンビニ支払い)
  • 受験票の到着を待つ

指定された手順を逸脱すると、申し込みが受理されない可能性があるため、注意が必要です。

システム監査技術者試験の有効期限

システム監査の国家資格試験に合格すれば、その認定は永続的なものとなります。IT分野の高度な専門性を証明するこの試験は、一定期間の有効期限を設けるものではありません。
なぜなら、資格取得によって特定の権利が付与されるわけではなく、あくまでも技術力の認証を目的としているためです。

勉強時間

私が実際にシステム監査技術者試験の合格者に尋ねたところ、約120時間の学習時間を要したと回答がありました。
個人差はあるものの、IT関連の基礎知識と実務経験があれば、一般的には100時間から150時間程度の勉強で対応できるようです。

一方、私がデータベーススペシャリスト試験に挑戦した際は、約2,000時間の学習時間を費やしました。
これは、IT知識が全くない状態から独学で情報処理技術者試験に取り組んだためです。
具体的には、

  • 基本情報技術者と応用情報技術者試験に約1,800時間(1日5時間、12ヶ月間)を費やし
  • さらに6ヶ月後にシステム監査技術者試験と同レベルのデータベーススペシャリスト試験に向けて約200時間の学習を行い、合格に至りました。

上記の時間は私個人のものですが、既存の知識レベルや学習方法によって個人差が大きいため、あくまで参考程度にとどめてください。

システム監査技術者試験の資格取得のメリット

システム監査技術者試験の資格取得のメリット

システム監査技術者の国家資格を取得することには、以下のようなメリットがあります。

  • ITに関する基礎的な知見やスキルを習得できる
  • インフラや法制度などの最新動向を把握できる

また、以下のようなキャリアアップの効果も期待できます。

  • IT企業への就職がスムーズになる
  • 採用後の待遇面で有利になるケースがある

したがって、IT分野で活躍するのであれば、この資格を持つメリットは大きいと言えます。

システム監査やITガバナンスの知識が身につく

システム監査やITガバナンスに関する専門知識を習得できることが、システム監査技術者の資格を取得するメリットとして挙げられます。
企業でシステム監査技術者として勤務する場合、

  • 社内の情報システム、ネットワークインフラ、組込みシステムの運用環境を定期的に検証し、単なる点検にとどまらず評価も行う必要があります。
  • ITガバナンスの観点からリスク分散などの管理体制を構築しなければなりません。

このように、システム監査技術者の職務は多岐に渡ります。
情報処理技術者の中でも、幅広い分野の知見が求められる職種であり、高度なIT知識とスキルを身につけることができるのが大きな利点です。

IT系企業への就職対策

システム監査技術者の資格取得は、IT企業への就職や転職を有利にする可能性があります。
この試験は、情報処理技術者試験の中でも高度な知識と技能が問われるため、専門的なIT関連能力が求められます。
そのような難関の資格を持つことで、企業にとってもメリットが大きく、採用される機会が増えるのです。

資格手当や報奨金を得られる

システム監査技術者の資格を取得することで、勤務先企業から手当や賞与を受け取れる機会があります。
IT関連企業では、専門資格の取得に対する報酬制度が設けられていることがあります。
つまり、この資格を持つことで、金銭的な恩恵を受けられる可能性があるということです。
キャリアアップだけでなく、給与面での待遇改善も期待できるため、大きな利点と言えるでしょう。

高度試験及び支援士試験の一部免除

システム監査の専門家資格を保有していれば、情報技術分野の上位試験の一部が免除されます。2年間の有効期限はありますが、以下の条件を満たせば、高度試験や支援士試験の午前Ⅰが免除され、午前Ⅱから受験できます。

  • 応用情報技術者試験に合格済み
  • 高度試験や支援士試験の午前Ⅰで基準点を超えている
  • 高度試験または支援士試験のいずれかに合格している

これらの条件のうち1つでも当てはまれば、免除が適用されるため、受験の負担が軽減されるメリットがあります。

システム監査技術者試験の資格取得のデメリット

システム監査技術者試験の資格取得のデメリット

システム監査の専門家になるための試験は、いくつかの課題があります。
情報処理分野の試験の中でも、合格率が約15%と比較的難関であるため、相当の学習時間を要することがデメリットとして挙げられます。

それでは、具体的に見ていきましょう。

  • 合格率が低い
  • 長時間の学習が必要

勉強時間を確保する必要がある

システム監査技術者試験の資格取得には、相当の学習時間が必要不可欠です。

  • IT関連の基礎知識とスキルを有し、実務経験がある方であれば100時間から150時間程度を目安にしてください。
  • 一方、初心者の場合は約2,000時間の学習時間が必要となります。

また、IT知識やスキルが不足している方は、段階的に上位資格を目指すことが効率的です。
情報処理技術者試験には難易度の違いがあり、システム監査技術者試験は「高度な知識・技術」が問われるレベルの試験に値するためです。
そのため、社会人が仕事を続けながら、一定期間このような学習時間を確保することはデメリットとなり得ます。

システム監査技術者試験合格のためのおすすめ参考書

システム監査技術者試験合格のためのおすすめ参考書

システム監査技術者試験に独学で合格するには、適切な参考資料を用意することが不可欠です。
ここでは、効率的な対策が可能な推奨参考書をご紹介します。

  • 合格論文の書式と事例を収録した「システム監査技術者 合格論文の書き方・事例集 第6版」
  • 最新の出題傾向を反映した「情報処理教科書 システム監査技術者 2021~2022年版」
  • 総仕上げ段階での実力確認に適した「2021 システム監査技術者 総仕上げ問題集」

各書籍の特徴やメリットについて、詳しく説明していきます。

システム監査技術者 合格論文の書き方・事例集 2024年6月版 (合格論文シリーズ)

この参考書は、論理的思考力を鍛えることができる問題解説と、実践的な論述練習を特徴としています。
分かりやすいQ&A形式で解説されているため、初心者でも理解しやすくなっています。
さらに、第2部ではIT専門家による論文が収録されており、合格に向けた手法や考え方が詳しく解説されています。

情報処理教科書 システム監査技術者 2024年版

この参考書は、システム監査に関する基礎から応用までの内容を包括的に解説しています。
各問題には模範解答と詳細な解説が付されており、理解を深めるのに役立ちます。
重要ポイントをまとめたチェックリストが添付されているため、効率的な学習が可能です。
苦手分野の克服にも適しています。
さらに、最新の出題傾向を踏まえた午後試験対策も盛り込まれており、実践的な対策ができます。

2024年6月 システム監査技術者 総仕上げ問題集 (総仕上げ問題集シリーズ)

この参考書は、システム監査技術者試験の最新トレンドを把握するのに適しています。

  • 直近3年間の出題傾向が分かりやすくまとめられているため、試験対策に役立ちます。

IT分野の実践的な知識やスキルを身に付けたい方や、現在の実力を確認したい方にもおすすめです。
最新の情報処理技術者試験の内容が反映されているため、実用的な学習資料として活用できます。

システム監査技術者試験を合格するには過去問も解こう!

システム監査技術者試験を合格するには過去問も解こう!

システム監査技術者試験に合格するためには、過去問題の演習が重要な役割を果たします。それは、毎年の試験で過去問題が出題されているからです。

  • 特に、「午前Ⅰ」「午前Ⅱ」では、全く同じ問題が出題されることが多くあります。
  • 一方、「午後Ⅰ」「午後Ⅱ」では、問題そのものは異なりますが、類似した考え方や解法が求められる問題が出題されることがあります。

つまり、システム監査技術者試験の過去問対策を行えば、合格の可能性が高まるということです。そのため、過去問題の演習は必須と言えるでしょう。
システム監査技術者試験の過去問は、以下で入手できます。

  • 「情報処理推進機構(IPA)」
  • 「システム監査技術者過去問対策.com」

まとめ

まとめ

ここでは、システム監査技術者試験の詳細と、その資格を活かしてフリーランスエンジニアとして活躍する方法について説明しました。

  • 試験の特徴、概要、申込手順
  • おすすめの学習方法や参考書
  • 資格取得のメリット

についても言及しました。
個人差はありますが、この資格を取得すれば、

  • IT企業への就職や転職
  • 処遇改善

など、大きな恩恵を受けられます。
合格後は、システム監査技術者としての副業やフリーランス活動も可能です。
ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」をご利用いただければ、スキマ時間でも求人を探せます。
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この記事がみなさまのお役に立てば幸いです。