近頃、人々の価値観の変化や技術革新により、働き方のバリエーションが広がっています。
その中で、フリーランスを選択する人も増えていますが、個人事業者として活動する際は、個人事業税の存在に注意を払う必要があります。
本稿では、個人事業税の概要、計算方法、対象業種、税率について説明します。
特に以下の方は、この記事をお読みいただくとよいでしょう。
- 個人事業主を目指しており、税金について漠然とした不安を抱えている方
- 個人事業税の計算方式を知りたい方
- 自分が個人事業税の課税対象かどうかを確認したい方
- 個人事業税の税率を知りたい方
そもそも個人事業税とは
個人が営む事業のうち、地方税法等で定められた業種に対して課される税金が個人事業税です。この税金は国ではなく、各都道府県に納めることになります。
事業所の所在地を管轄する自治体に対して納税が義務付けられており、居住地とは関係ありません。
個人事業税は法定業種に該当する事業者のみが課税対象となり、全ての個人事業主が納める必要はありません。
- 課税対象業種は70種類以上に及び、幅広い事業が対象とされています。
ただし、年間所得が290万円以下の場合は、法定業種に該当していても課税されることはありません。
課税対象者は、前年の事業所得等について毎年3月15日までに税務署に申告する義務があります。ただし、所得税や住民税の申告をした場合は、個人事業税の申告は不要です。
一方、年度途中で事業を廃止した場合は、廃業日から1ヶ月以内に個人事業税の申告が必要となります。
個人事業税の算出方法
個人事業主が支払う税金の計算方式は次のとおりです。
個人事業税額は、(事業収入から必要経費と青色申告特別控除額を差し引いた金額+所得税の事業専従者給与控除額-個人事業税の事業専従者給与控除額+青色申告特別控除額-事業主控除-各種控除)に税率を乗じて算出されます。
事業収入から必要経費と青色申告特別控除額を差し引いた金額が事業所得となります。
事業専従者給与控除額は、
- 青色申告の場合は実際の給与支払額
- 白色申告の場合は配偶者86万円、その他は1人当たり50万円
個人事業税では青色申告特別控除額がないため、所得金額に上乗せされます。
事業主控除は290万円が基準ですが、営業期間が1年未満の場合は月割で計算します。
事業月数 | 事業主控除額 |
---|---|
1ヶ月 | 24万2,000円 |
2ヶ月 | 48万4,000円 |
3ヶ月 | 72万5,000円 |
4ヶ月 | 96万7,000円 |
5ヶ月 | 120万9,000円 |
6ヶ月 | 145万円 |
7ヶ月 | 169万2,000円 |
8ヶ月 | 193万4,000円 |
9ヶ月 | 217万5,000円 |
10ヶ月 | 241万7,000円 |
11ヶ月 | 265万9,000円 |
12ヶ月 | 290万円 |
所得税・住民税・事業税のいずれかを期限内に申告していれば、繰越控除も受けられます。
個人事業税は確定申告後に納税通知書が送付されるので、自身で計算する必要はありません。しかし、計算方法を把握しておけば翌年の個人事業税の見積もりが立てられます。個人事業税は事業に課される税金なので、経費として扱え、所得税や住民税とは異なります。そのため、個人事業税を納付した場合は、翌年の確定申告で申告を忘れずに行いましょう。
個人事業税率は業種によって変わる
個人事業税の計算方式は、前章で説明した通りですが、適用される税率は業種によって異なります。
そこで本章では、個人事業税における業種の分類基準について解説します。
事業
個人事業者に課される税金の種類の一つに個人事業税があり、その税率は5%となっています。この税金が適用される業種は37種類あり、
- 商品の販売
- 運送
- 飲食店の経営
- 保険業務
- 金融関連の業務
- 不動産関連の業務
- 製造業
- 印刷業
- 問屋業
- 電気やガスの供給
- 出版業
- 両替商売
- 冠婚葬祭の施設運営
- 採石業
- 写真業
- 公衆浴場の経営
- 通信事業
- 興行場の運営
- 運送業
- 宿泊業
などが含まれます。
この個人事業税の計算例を示します。青色申告で、所得金額が400万円、専従者給与がない場合、個人事業税は次のように計算されます。
(所得金額400万円 - 事業主控除290万円) × 税率5% = 5万5,000円 |
事業
個人事業における課税対象業種の一部には、牧畜や漁業、木炭製造などが該当し、これらは4%の税率が適用されます。この税率の計算例を示しますと、所得金額が400万円で専従者給与控除がない場合、課税所得金額は(400万円-290万円の事業主控除)となり、個人事業税は(110万円×4%)で4万4,000円となります。
事業
第3種事業には30種類の業種があり、個人事業税率は5%と3%の2つに分かれています。
以下の職種は個人事業税率が5%となります。
- 医師
- 公証人
- 設計監理者
- 公衆浴場業者(銭湯)
- 歯科医師
- 弁理士
- 不動産鑑定士
- 歯科衛生士
- 薬剤師
- 税理士
- デザイナー
- 歯科技工士
- 獣医師
- 公認会計士
- 芸術家
- 測量士
- 弁護士
- 計理士
- 理容師
- 土地家屋調査士
- 司法書士
- 社会保険労務士
- 美容師
- 海事代理士
- 行政書士
- コンサルタント
- クリーニング業者
- 印刷・製版業者
一方、以下の職種は個人事業税率が3%です。
- あんま師・マッサージ師・指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師
- その他医療に類する事業
- 装蹄師
第3種事業の税額計算例
・医業の場合 |
青色申告特別控除前の所得金額が400万円、専従者給与控除がない場合 |
個人事業税=(所得金額400万円-事業主控除290万円)×税率5% |
=5万5,000円 |
・装蹄師業の場合 |
青色申告特別控除前の所得金額が400万円、専従者給与控除がない場合 |
個人事業税=(所得金額400万円-事業主控除290万円)×税率3% |
=3万3,000円 |
上記以外
従来の70種類の法定業種に含まれない事業者は、個人事業税の課税対象外となります。
現状では、以下のような職種には個人事業税が課されません。
- 文筆家・作家・ライター
- コーディング業務従事者(エンジニア、プログラマーなど)
上記以外にも様々な事業が存在し、これらの職種を中心に活動する個人事業主は、所得金額の多寡に関わらず個人事業税の非課税対象です。
ただし、契約形態が「業務委託契約」や「準委任契約」ではなく「請負契約」の場合、業種は請負業と見なされ、個人事業税の課税対象となる点に留意が必要です。
また、業務内容次第では、非課税事業を行っていても課税対象と判断される可能性があります。最終的な判断は所轄税務署が下すため、注意を払う必要があります。
判断が難しいケースでは、各都道府県の税務事務所から個人事業税の課税対象者か否かを判定するための書類が送付されることもあります。事実を正確に記載すれば問題ありませんが、非課税事業者であるにもかかわらず誤って課税対象と判断されないよう気をつける必要があります。
まとめ
個人事業者が行う事業のうち、地方自治体の条例で定められた事業に対して課される税金が個人事業税です。
個人事業税は、
- 事業所得に一定の控除額を加算し
- さらに各種控除を差し引いた後
- 業種ごとに定められた税率を乗じて算出されます
業種によっては課税対象外となる場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
通常、個人事業税の計算は確定申告時に税務署が行いますが、基本的な計算方法を理解し、課税の有無や概算額を把握しておくことをおすすめします。
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本記事がお役に立てば幸いです。