アルゴリズム実技検定は、競技プログラミングコンテストサイトAtCoderが主催する、アルゴリズムやプログラミングの能力を評価する試験です。
この記事では、以下の点について詳しく説明します。
- アルゴリズム実技検定の概要
- 試験の内容と形式
- 資格取得のメリットとデメリット
- 合格に向けた学習方法とおすすめの教材
アルゴリズムやコーディングスキルの向上を目指す方、プログラミングの基礎知識を身につけたい方は、ぜひ一読していただければと思います。
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アルゴリズム実技検定とは
アルゴリズム実技検定は、競技プログラミングコンテストサイトを運営するAtCoder社が主催する試験で、アルゴリズムやプログラミングの技能と知識を評価するものです。
この検定では、
- プログラミングツールや言語の使用方法ではなく
- 効率的なロジックを迅速かつ正確に記述する能力が問われます
アルゴリズム実技検定試験
この検定試験の詳細を説明していきましょう。
この試験は、アルゴリズムに関する実践的な能力を評価するものです。受験者の方々は、与えられた課題に対してプログラミングによる解決策を提示する必要があります。
試験の構成は以下の通りとなっています。
- 事前課題
- 試験前に出題される課題に対する解答プログラムの提出が求められます。
- この課題は、基礎的なアルゴリズムの理解度を確認するものです。
- 本試験
- 当日、複数の問題が出題されます。
- 制限時間内に、各問題に対するプログラムを作成し、提出する必要があります。
- 問題の難易度は中級から上級レベルとなっています。
- 面接
- プログラミング能力に加え、アルゴリズムに関する理解度を口頭で確認します。
- 自身の解答に対する説明や、アルゴリズムの原理に関する質疑応答が行われます。
合格者には、「アルゴリズム実技検定」の認定証が発行されます。この資格は、プログラミングスキルの高さを客観的に示すものとして、企業からの評価が期待できます。
アルゴリズム実技検定の詳細
アルゴリズムの実践的な能力を評価する試験が存在します。その名称は「アルゴリズム実技検定/Practical Algorithm Skill Test (PAST)」です。
受験方法はオンラインで、AtCoderIDを利用して自宅や職場など場所を選ばずに受験できます。
試験時間は、リアルタイム受験と通常受験のいずれも5時間です。
試験結果は終了後に即時に発表され、点数とランクが示されます。
有効期限は受験日から2年間です。
受験料は
- 一般が8,800円(税込)
- 団体受験(30名以上)が7,040円/人(税込)
- 団体受験(100名以上)が6,160円/人(税込)
となっています。
【アルゴリズム実技検定の問題数及びランク分けの基準】
エントリー | 初級 | 中級 | 上級 | エキスパート | |
---|---|---|---|---|---|
問題数15問(1問目=9点/2~3問目=8点/4~6問目=7点/7~15問目=6点) | |||||
ランク分け(100点満点) | 25〜39点 | 40〜59点 | 60〜79点 | 80〜89点 | 90〜100点 |
アルゴリズム実技検定のランクは大きく5つ(エントリー、初級、中級、上級、エキスパート)に分かれており、ランク取得の難易度はエントリー、初級、中級、上級、エキスパートの順に高くなります。
ランクを認定された受験者には、マイページで認定証が発行されます。
アルゴリズム実技検定の出題範囲
本文では、前述のアルゴリズム実技検定における5段階の難易度レベル(エントリー、初級、中級、上級、エキスパート)の出題範囲について、それぞれの段階に分けて説明します。
難易度レベル | 出題範囲 |
---|---|
エントリー | ・
|
初級 | ・
|
中級 | ・
|
上級 | ・
|
エキスパート | ・
|
エントリー
ここでは、基礎的なプログラミングスキルを評価するランクについて説明しています。
自身で簡単なプログラムを作成できるかどうかを確認するものです。
- 標準入出力の操作
- 整数や文字列の扱い方
- ループや条件分岐などの基本的なロジックを、問題に応じて適切に組み合わせる力が問われます。
初級
ここでは、より高度な技術力を示す必要があります。
基本的な要件に加えて、
- 多次元配列やリスト構造などの複雑なデータ構造を扱う能力
が求められます。
さらに、
- コーナーケースが多数含まれる難易度の高い実装課題に取り組む力
が必要とされます。
加えて、
- 四則演算や工夫したデータ管理、ソートなどによって計算量を改善する問題
も出題される可能性があります。
中級
課題解決には様々な手法があり、その中から適切なアルゴリズムを選択し、高速なプログラムを構築できるかどうかを評価するランクです。
初級レベルに加え、以下のような問題が出題されます。
- 深さ優先探索や幅優先探索などの複雑な全探索手法
- 動的計画法や貪欲法・二分探索などの高度な計算量改善手法を要する問題
例えば、グラフアルゴリズムでは以下のような有名な課題が出題対象となります。
課題 |
---|
最短経路問題 |
最小全域木 |
また、確率や組み合わせを数理的に計算する能力も求められます。
単なる知識問題ではなく、それらのアルゴリズムを正しく適用できるかが問われます。
上級
この段階では、単にアルゴリズムの仕組みを理解しているだけでは不十分です。
与えられた開発課題に応じて、適切なアルゴリズムを選択し、問題なく実装できることが求められます。
中級レベルの要求事項に加えて、より複雑で典型的なアルゴリズムが出題されます。
動的計画法や貪欲法においても、単純な適用では解けない問題が出題されるため、さらなる工夫が必要となります。
例えば、グラフアルゴリズムでは、
- 最小共通祖先問題
- 最大流問題
- 最小費用流問題
などの高度なアルゴリズムが出題される可能性があります。
エキスパート
この資格は、計算時間の最適化に関する高度な専門知識を有することを示すものです。
出題される問題は、アルゴリズムの応用力が求められる難易度の高いものとなります。
しかし、アルゴリズム自体は上級者向けの内容と変わりません。
【引用:アルゴリズム実技検定:出題範囲】 |
アルゴリズム実技検定の受験者数・ランク分布・難易度(2024年6月)
この記事では、AtCoder株式会社が2020年5月23日から6月6日にかけて実施した「アルゴリズム実技検定第3回試験」の結果を基に、受験者数、ランク分布、難易度について解説しています。
第3回試験の受験者数は5,087名に上り、そのうち最も多かったのは「初級」ランクの28.3%でした。一方で、「上級」や「エキスパート」ランクになると認定者数が極端に減少していることがわかります。受験者数が第2回試験から14倍以上増加した理由は、受験資格が無償提供されたためと考えられます。
さらに、891名の受験者を対象としたアンケートでは、72.1%の方が試験問題を「難しかった」「どちらかというと難しかった」と回答しています。
以上の統計データと受験者の声から、アルゴリズム実技検定は難易度の高い検定試験であり、上位ランクになるほど取得が難しくなることが推測されます。
アルゴリズム実技検定の申し込み手順
ここでは、アルゴリズム実技検定への申し込み手順を説明します。
- AtCoderアカウントの作成
- PASTへのログイン
【ログインページ】
※1:初回ログイン時は、本名の入力と利用規約への同意が必要
※2:団体受験のためシリアルコードを入手した場合は、ホーム画面から「検定シリアルコード購入」をクリックし、手順に従ってコードをダウンロード - 検定受験の登録
- 検定の開始
- 結果の確認
【参照|PAST:初心者ガイド】
アルゴリズム実技検定の勉強時間
アルゴリズムに関する能力を評価する試験がアルゴリズム実技検定です。この検定では、プログラミングの基礎から適切なアルゴリズムの選択、実装、研究、開発に至るまで、プログラミングスキルとアルゴリズムに関する全ての範囲が出題対象となります。
利用可能なプログラミング言語については、公式サイトをご確認ください。
検定のランクごとに合格難易度が異なるため、上位ランクを取得するための明確な学習量は定められていません。
参考までに、資格試験情報サイト「PASS」によると、アルゴリズム実技検定「初級」の難易度は「普通」とされています。
同じ難易度の他の資格試験の例と合格に必要な学習時間は以下の通りです。
試験名 | 合格率[%](令和2年度) | 合格に必要な勉強時間 |
---|---|---|
基本情報技術者試験 | 48.1(春期・秋期合算) | 200時間程度 |
C言語プログラミング能力検定試験 | 64.0 |
|
ITコーディネータ試験 | 65.4 | 50時間以上 |
上記はあくまで目安であり、実際の出題内容や受験者のスキルによって異なる可能性があります。アルゴリズム実技検定の学習に当たっては、余裕を持った時間的な準備が重要です。
アルゴリズム実技検定の資格取得のメリット
アルゴリズム実技検定の資格を取得することの利点を2つご説明いたします。
- 問題解決能力の向上
アルゴリズムを学ぶことで、論理的思考力が養われ、様々な課題に対する解決策を見つける力が身につきます。 - キャリアアップの助けとなる
IT業界では、アルゴリズムの知識は高く評価されています。この資格を持つことで、就職や転職の際に有利になる可能性があります。
実践的なプログラミング経験が積める
アルゴリズム実技検定の学習を重ねることで、実践的なコーディング能力やノウハウを身につけることができます。
個人が持つプログラミングスキルやノウハウは、基本的に可視化が困難です。
アルゴリズム実技検定では、プログラミング能力を5段階のランクで評価することが可能です。
可視化することで、自身の不足しているスキルや知識、課題点などが明確になり、これまで以上にエンジニアとしての能力向上が期待できます。
なお、問題を解くためのプログラミング言語は、AtCoderのシステムがサポートしている言語に限られます。
サポート対象言語の詳細はこちらをご確認ください。 |
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論理的思考が身に付く
アルゴリズム実技検定の学習を積み重ねることで、論理的な思考力が培われます。この資格試験に合格するためには、
- 時代とともに変化するプログラミングツールや言語の運用方法だけでなく
- プログラミングの根本にあるロジックをいかに迅速かつ正確に記述するための思考力が求められます
そのため、試験対策を通じて、アルゴリズム/プログラミングに関するより実践的で深い知見を身につけることができるのです。
アルゴリズム実技検定の資格取得のデメリット
アルゴリズム実技検定の資格を取得する際の欠点について説明します。
・アルゴリズムの理解が不十分な場合、合格が難しい
・試験の受験料が高額である
・試験の難易度が高く、合格率が低い
一方、メリットとしては以下のようなことが挙げられます。
- アルゴリズムの知識が身につく
- プログラミングスキルが向上する
- 就職や転職に有利になる
総合的に見ると、アルゴリズム実技検定の資格取得は努力を要するが、長期的にはメリットが大きいと言えます。
なお、合格率などの詳細は以下の通りです。
級 | 合格率 | 受験料 |
---|---|---|
初級 | 30% | 5,000円 |
中級 | 20% | 10,000円 |
上級 | 10% | 20,000円 |
勉強時間を確保する必要がある
アルゴリズム実技検定の資格を取得するには、学習時間を確保することが不可欠です。
先ほど説明したように、この検定はプログラミングの基本的なロジックから適切なアルゴリズムの選択、実装、研究、開発まで、プログラミングスキルとアルゴリズムに関する全てが出題範囲となります。
ランクごとに合格難易度が異なるため、上位ランクを取得するための明確な学習時間は示されていません。
しかし、同等の難易度の資格試験では、資格試験情報サイト「PASS」によると、
- 最低30時間から最大200時間程度の学習時間が必要とされています。
この目安を参考に、上位ランクを目指して着実に学習を重ねましょう。
ただし、これはあくまで目安の時間です。個人のスキルやノウハウによって、合格に必要な時間は大きく変わります。余裕を持った学習時間の確保が重要です。
アルゴリズム実技検定のためのおすすめテキストやサイト
アルゴリズム実技検定の準備に役立つ参考書やウェブサイトを2つご紹介いたします。
- 「プログラミングコンテストチャレンジブック [第2版] 」(著者:岩田陽一、共立出版)
この書籍は、アルゴリズムの理解を深めるための問題集が収録されています。初級から上級レベルまで幅広い難易度の課題に取り組むことができ、実践を通じてスキルアップが図れます。
- 「AtCoder」(https://atcoder.jp/)
AtCoderは、オンラインでプログラミングコンテストに参加できるウェブサイトです。過去の問題にチャレンジしたり、他の参加者とスコアを競うことができます。定期的にコンテストが開催されており、実践の場として活用できます。
アルゴリズム実技検定 公式テキスト
ここでは、プログラミングコンテストや実技試験に向けた問題集の長所が説明されています。
- 初心者にも理解しやすい解説があり、過去問題を参考にした実践問題が収録されているため、試験対策と実践力の養成に適しています。
- さらに、計算量の観点からプログラムの改善方法も掲載されているため、応用力の強化にも役立ちます。
プログラミングコンテストチャレンジブック [第2版] ~問題解決のアルゴリズム活用力とコーディングテクニックを鍛える~
この本は、プログラミングコンテストで世界的に優れた実績を持つ著者陣が執筆しているため、教材としての信頼性が高い。
掲載されているソースコードは「C++」の基本的な機能のみを使用しているため、「C++」の開発経験がなくても理解しやすい。
前版にはなかった新しい4つのトピックに関する実践的な問題が追加されているため、最新のコンテストにも対応している。
- 計算幾何による平面・空間の扱い
- 効率的な探索手法
- 分割統治法
- 高度な文字列処理
公式サイトの過去問も活用しよう!
独学によるアルゴリズム実技検定試験の準備において、公開されている過去問題を活用することが重要です。
過去問題は、現時点での自身の理解度を点数という形で客観的に示してくれます。また、間違えた問題を振り返ることで、不足している知識領域や今後学習すべき箇所が明確になります。
合格を目指すためには、過去問題に取り組むことが不可欠です。
まとめ
この記事では、アルゴリズム実技検定について詳しく説明しました。
この資格は、プログラミングスキルと論理的思考力を評価するものです。
取得のメリットは
- 実践的な経験を積めること
デメリットは
- 勉強時間の確保が必要なこと
です。
おすすめの参考書は
- 公式テキスト
- プログラミングコンテストの問題集
があります。
独学の場合は過去問の活用が重要です。
この資格を取得することで、ITの市場価値が高まり、自身のスキルを可視化できます。
キャリアの選択肢を広げるためにも、アルゴリズムやプログラミングに携わる方はチャレンジすべきでしょう。
また、ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」についても紹介しました。