技術者の皆さんは日頃、どの程度の時間外労働を行っているでしょうか。
職種や業務内容、個人のスキルや経験によって、作業スピードや所要時間は異なるため、残業時間も様々です。
本稿では、「技術者の残業実態」に焦点を当て、詳しく解説します。
- 技術者の残業実態
- フリーランスの残業実態
- 従業員の残業実態
- 働き方改革による残業時間規制の影響
- 法定残業時間超過時の対応
- 36協定の概要
などを取り上げます。
技術者の職種は一般的に残業が多いとされていますが、これは世論に過ぎず、信頼性に欠けます。
本稿では、具体的なデータを用いて技術者の残業実態や他業種との比較を行い、その実態を明らかにしていきます。
技術者として活躍中の方や、将来技術者を目指す会社員・学生の皆さんは、ぜひお読みください。
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エンジニアの残業実態
エンジニアの仕事は将来有望な職種とされていますが、長時間労働を強いられるハードな業務というイメージが根強く存在します。
しかし、実際のところはどうなのでしょうか。
本稿では、エンジニアの残業実態について、実データを基に検証していきます。
IT業界の残業実態と長時間労働の現状
エンジニアの残業実態を把握するため、株式会社Geeglyが実施した「IT業界における残業に関する調査」の結果を基に、IT業界の長時間労働の実情を明らかにしていきます。
調査概要は以下の通りです。
- 対象者:20代から40代の男女
- 回答者数:334名
- 調査内容:IT業界従事者の1か月の残業時間
調査結果によると、IT業界の月平均残業時間は23.2時間でした。この数値が他業種と比べて多いか少ないかは後述します。
職種別の平均残業時間を示すグラフでは、ほとんどのIT職種で20時間以上と長時間の傾向がみられました。特にITコンサルタント、プロジェクトマネージャー、受託のWebデザイナー/ディレクターは30時間前後と残業が多い職種でした。
エンジニアの残業が多い理由として、トラブル対応や開発方針変更など、臨機応変な対応を求められる場面が多いことが考えられます。一方、上流工程の職種では、クライアントとの要件定義や折衝、時間外対応などのコミュニケーション業務が長引くため、残業時間が増えると推測されます。
ただし、これらの残業は、より良い製品を作りたいという熱意から生じる超過勤務であり、一概に否定できるものではありません。
フリーランスの残業実態
フリーランスの労働時間について、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が実施した「フリーランス白書 2020」の調査結果を見ていきましょう。
2019年10月23日から11月24日にかけて、インターネット上でフリーランス・パラレルキャリア活動者568名を対象に行われた調査では、彼らの現在の平均勤務時間が明らかになりました。
グラフによると、
- フルタイム勤務に近い140時間以上200時間未満の労働時間の人が189名(33.3%)
- さらに200時間以上働いている人が97名(17%)
と、半数以上の人が会社員並みかそれ以上の時間を費やしていることがわかります。
フリーランスには残業の概念はありませんが、実際には会社員と同等以上に長時間労働に従事している実態が浮き彫りになりました。
サラリーマン(会社員)の残業実態
会社員の残業の実情について説明します。先に述べたフリーランスの残業状況とは異なる点があります。
- サラリーマンの残業は、企業の方針や業務量、上司の指示などによって左右されます。
長時間労働は健康リスクにもつながるため、適切な労働時間管理が重要視されています。
ただし、業種や職種によっては多くの残業が避けられない場合もあり、労使双方の理解と対策が求められます。
平均残業時間の実態と職種別ランキング
本文では、株式会社dodaが実施した調査結果に基づき、2020年のサラリーマンの平均残業時間と職種別の残業実態について説明しています。
全体の平均残業時間は1カ月当たり20.6時間で、前年同期と比べて7.5時間短くなっていました。
職種別では、
- ITコンサルタント(アプリ)
- サーバーエンジニア
- プロデューサー/ディレクター/プランナー(出版/広告/Web/映像関連)
- 組み込みエンジニア
- 研究開発/R&D(IT/通信)
の順に残業時間が長い結果となりました。
IT業界やエンジニア職種は全体平均を上回る残業時間となっていますが、前年比で約10時間減少しており、コロナ禍によるリモートワーク普及が一因と考えられます。
残業の是非は一概に言えませんが、その理由次第で受け止め方は変わってくるでしょう。
サラリーマンの平均残業時間の実態
労働統計調査の結果から、会社員の平均的な労働実態を確認することができます。
2021年9月時点の数値によると、従業員5人以上の事業所において、
- 会社員の1か月当たりの平均出勤日数は19.4日
- 残業時間は12.8時間
となっています。
前年と比べると、残業時間は4.1%増加しており、新型コロナウイルス感染症の影響によるリモートワーク導入が一因と考えられます。
働き方改革で変わった残業時間規制
近年の社会情勢を受け、労働環境の見直しが行われました。
法改正により、残業時間に一定の制限が設けられることとなり、企業規模に応じて段階的に適用されています。
この新たな規制の詳細について、ここで説明を加えていきましょう。
規制内容 | 適用時期 |
---|---|
|
|
労働時間の上限規制と罰則強化
労働時間に関する法的規制は、従業員の健康と安全を守るために設けられています。
基本的には、
- 1日8時間、週40時間を超えない範囲で労働することが求められます
- 毎週少なくとも1日は休息日を設けなければなりません
この基準を超えて労働する場合は、労使間で36協定を締結する必要があります。
過去には、法定上限を超える時間外労働が可能でしたが、近年の法改正により、罰則付きの上限規制が導入されました。臨時的な事情があっても、一定の上限を超えることはできません。
具体的には、
- 時間外労働は原則月45時間、年360時間までとされています
- 特別条項を適用した場合でも、年720時間を上限とし、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2〜6ヶ月平均で80時間以内に収まる必要があります
- さらに、特別条項の適用有無にかかわらず、年間を通して時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2〜6ヶ月平均が80時間以内でなければなりません
例えば、
時間外労働が40時間で収まっていても | 休日労働が65時間あれば |
合計で105時間となり法違反になります |
このように、労働時間管理は複雑な規制がありますが、従業員の健康と安全を守るためには遵守が不可欠です。
時間外労働の上限と特別条項
労働時間の制限は、原則として月45時間・年360時間を超過することはできません。ただし、特別な事情がある場合は、時間外労働を最小限に抑えるよう具体的な対策を講じる必要があります。
使用者は業務区分を細分化し、範囲を明確化することが求められます。
特別条項として認められる例としては、
- 予算編成
- 決算業務
- ボーナス商戦の繁忙期
- 納期の逼迫
- クレーム対応
- 重大な機械トラブル
などが挙げられます。
時間外労働に対しては、25%を超える割増賃金の支払いが努力義務とされています。
36協定や特別条項に違反した場合、使用者には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
一方、労働者が上限を超えて働いたとしても、不利益を被ることはなく、残業代の支払いを受ける権利があります。
エンジニアが残業時間の上限を超えた場合
エンジニアとして勤務する際、慎重に業務を遂行していても、その月の作業量や納期、トラブル対応などで法定残業時間を大幅に超過してしまうことがあり得ます。そのような場合、エンジニアには超過分の残業代を請求する権利が発生します。
法令上、割増賃金には以下の3種類があります。
- 時間外手当:法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合、使用者は25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
- 休日手当:法定休日(週1日以上)に労働した場合、使用者は35%以上の割増賃金を支払う義務があります。
- 深夜手当:夜22時から翌朝5時までの労働に対し、使用者は25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
時間外労働と深夜労働の両方に該当する場合、割増率は合計50%となります。
残業を認める法律「36協定」とは?
労働時間を超えて従業員に勤務を求める際には、使用者と労働組合または従業員との間で文書による合意を交わす必要があります。この合意は「時間外・休日労働に関する協定届」と正式に呼ばれ、労働基準法第36条に規定されているため、一般に「36協定」と称されています。
この協定は、以下の場合に締結が義務付けられています。
- 1日8時間を超える時間外労働を認める場合
- 週40時間を超える時間外労働を認める場合
- 法定休日の労働を認める場合
使用者がこの協定なしに従業員に長時間労働や休日出勤を命じた場合、法違反として処罰の対象となります。
一方で、36協定の締結により長時間労働が容認されかねないという課題もあります。従業員に残業を求める際は、法令を遵守しつつ、可能な限り労働時間を抑制する配慮が重要です。
まとめ
エンジニアの残業実態について、労働者の残業に関する詳細な説明がなされました。
- エンジニアは他の職種と比べて残業時間が長い傾向にあり、フリーランスの方がサラリーマンよりも働く時間が長いことが指摘されています。
一方で、
- サラリーマンの残業時間は減少傾向にあり、働き方改革による労働基準法の改正で残業時間に上限が設けられ、違反した場合は罰則が科されることが述べられています。
- エンジニアが法定残業時間を超えた場合、割増賃金を請求できること
- 36協定によりワークライフバランスが守られること
が説明されています。
エンジニアの仕事は残業時間が長く厳しいイメージがありますが、法改正の影響でワークライフバランスの充実が図られつつあると指摘されています。
将来性 | 待遇面 |
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エンジニアは魅力的な職業 | 就職・転職を検討するのも良いかもしれません |
また、
- フリーランスエンジニアが増加しており、独立する際はITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」を活用するのが良いでしょう。
- 労働基準法や契約について学習が重要であると述べられています。