DX(デジタルトランスフォーメーション)の概要やメリット、事例を解説

政府が推進するデジタル化への取り組みについて、ご理解いただけていますか?デジタル化に遅れをとる企業は、2025年以降、年間で最大12兆円の経済的損失が生じる恐れがあると指摘されています。
本稿では、デジタル化の定義と現状、2025年問題との関連性、成功事例などを詳しく説明します。

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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

テクノロジーの進化が人々の生活を豊かに変えるという概念は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。
近年、企業がテクノロジーを活用し、業績や働き方、社会にイノベーションをもたらす取り組みを総称して「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と呼んでいます。

  • 2018年には経済産業省が関連の研究会を設置し、ガイドラインやレポートを発表しています。
  • 2020年12月下旬にも、DXの加速に向けた研究会の報告書がまとめられました。

「デジタルトランスフォーメーション」を直訳すると「デジタル変換」となりますが、ビジネスにおいては「変革」という意味合いが強くなります。
この言葉は頭文字をとって「DX」と略されることが多く、英語圏では接頭辞の「Trans」を省略する際に「X」と表記されるため、そのように表記されています。

DXの本質的な意味

デジタル技術の進化に伴い、企業は激しい環境変化に対応する必要に迫られています。
経済産業省が公表した指針では、デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、

  • データとデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズに基づいて製品、サービス、ビジネスモデルを革新するだけでなく
  • 業務プロセス、組織体制、企業文化までもが変革されることで競争力が確立されるプロセス

と定義されています。
つまり、DXは単なる製品やサービスの変革にとどまらず、企業の根幹に関わる総合的な変革を意味しています。
デジタル技術を軸に、

  • これまでにない新しい価値創造
  • 生産性向上
  • 働き方改革

など、ビジネス全体の変容をもたらすものと言えるでしょう。

デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXの違い

デジタル技術の活用は、業務の一部分のみを対象とする場合と、全体的なプロセスを対象とする場合があります。

  • 前者は「デジタイゼーション」と呼ばれ、紙の書類をデジタルデータに変換したり、特定の作業をデジタルツールで効率化したりすることを指します。
  • 一方、後者は「デジタライゼーション」と呼ばれ、業務フローやプロセス全体をデジタル化し、長期的な視野で企業のデジタル化を推進することを意味します。

デジタライゼーションの事例としては、RPAの導入によるバックオフィス業務の自動化が挙げられます。これにより、従業員はより創造的な業務に専念できるようになります。
デジタライゼーションは、デジタルトランスフォーメーションへと進むための重要なステップとなります。

概念 説明
デジタイゼーション 部分的
デジタライゼーション 全域的
デジタルトランスフォーメーション 企業を超えた社会変革を目指す取り組み

デジタイゼーションは部分的、デジタライゼーションは全域的、デジタルトランスフォーメーションは企業を超えた社会変革を目指す取り組みであると理解することが重要です。

デジタル変革の本質

デジタル技術の活用により、人々の生活をあらゆる側面で豊かに変化させることを目指す概念がDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
この考え方は、スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。
一方、ITの導入は主に業務の効率化を目的としており、作業の仕方が変わるだけにすぎません。
DXは企業全体での取り組みとして、デジタル化による業務プロセスの最適化やコスト削減を実現し、さらに顧客へ高付加価値サービスを提供することを見据えています。
つまり、DXは企業のビジネスモデル自体に変革をもたらすものであり、ITの活用とは本質的に異なる概念なのです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の現状

DX(デジタルトランスフォーメーション)の現状

国内企業におけるデジタル化の現状は、危機感を抱きながらも具体的な取り組みに至っていない企業が多数存在することが明らかになっています。

IPAの調査によると、

  • デジタル技術の普及により競争力の低下を危惧する企業が6割近くに上り
  • 既存のビジネスモデルの変革や新規事業創出の必要性を強く感じている企業も6割に達しています。

しかし、実際にデジタル変革に取り組んでいる企業は4割にとどまっており、その内容も

  • 業務効率化
  • 製品・サービスの高付加価値化が中心で、新規事業創出までには至っていない状況です。

経済産業省の研究会でも、危機感を抱きながらも具体的な行動に移せていない企業の二極化が指摘されています。

この要因として、

  • 経営層のデジタル変革に対する理解不足
  • 具体的な推進方法が分からないこと

が挙げられています。

デジタル化を進めている企業でさえ、本来の目的である企業変革の実現までには至っておらず、中小企業を含めハードルが高い状況にあります。

DXによる企業変革の必要性

政府の報告書によると、企業がデジタル化を進めないと、2025年から2030年にかけて莫大な経済損失が発生する恐れがあります。一方で、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現できれば、2030年までに実質GDPが大幅に押し上げられる可能性もあるとされています。

近年、消費者の行動がモノの所有からサービスや情報の入手へと変化しており、企業にもデジタル化による新たなビジネスモデルの構築が求められています。

従来のシステムに依存してきた企業では、内部構造が複雑化し、ブラックボックス化が進行しているケースも多く、これが企業の成長を阻害し、コスト高騰の要因ともなっています。

DXは企業が変革を遂げ、利益最大化を図るための重要な手段と位置付けられています。

DXと「2025年の崖」

経済産業省は、2025年以降、旧式システムを利用し続けた企業が深刻な経営危機に陥る可能性を指摘しています。この問題は「2025年の崖」と呼ばれ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れが主因とされています。
同省は、システム更新を怠った場合、年間最大12兆円の経済損失が生じるとの試算を示しています。
しかし、従来のビジネスモデルの変革は容易ではなく、DXに本格的に取り組んでいるのは一部の先進企業に限られています。
経済産業省は、2025年までにシステム刷新を行わなければ、デジタル競争で敗退し、高コストや人手不足によるセキュリティリスクの増大などを警告しています。
政府が民間のシステム問題に言及するのは異例ですが、「2025年の崖」が日本経済に与える影響の深刻さを物語っています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)のメリットデメリット

DX(デジタルトランスフォーメーション)のメリットデメリット

DXの導入には様々な利点と課題があります。
デジタル技術の活用により業務効率が向上し、新たな価値創造が期待できます。
一方で、

  • システム投資
  • セキュリティ対策
  • 人材育成

などのコストがかかる点にも留意が必要です。
企業は自社の実情に合わせて、メリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。

DXによる業務効率化と生産性向上

デジタル化の推進により、業務の効率性と生産性が高まります。
デジタル技術を活用することで、以下のメリットがあります。

  • 作業の自動化と精度向上が図れる
  • 人的ミスを防ぐことができる
  • 従業員は、より重要な業務に専念できるようになる

現代社会では労働人口が減少しており、デジタル化は人手不足の解消と人件費削減にも貢献します。

DXによる市場変化への柔軟対応

市場の変化に機動的に適応できる点は、デジタル変革の長所と言えるでしょう。

様々な破壊的イノベーションが市場で発生し、新規参入企業が次々と現れています。

  • 宿泊業界ではAirbnbが参入し、大きな変革をもたらしました。

今後、デジタル技術や先進的マーケティングノウハウを有するベンチャー企業が、あらゆる市場で破壊的イノベーションを引き起こすと予想されるため、デジタル変革によって市場変化に迅速に対応できるよう備える必要があります。

DXによる新サービス創出

デジタル化の推進により、新たなサービスの開発が可能になります。
例えば、

  • SNSなどから収集した消費者の大量データをAIで分析し、新規事業を立ち上げたり
  • 既存の商品・サービスを最適化して顧客ニーズに合わせたり
  • 全く新しいビジネスモデルへと進化させることができます

定額制でドラマ、アニメ、音楽などを自由に楽しめるサブスクリプションサービスや、IoTを活用して肌状態を判断し、パーソナライズされたスキンケアを提案するサービスなど、デジタル化によって次々と新サービスが生み出されています。

DXの障壁

デジタル化の障壁は、既存システムの移行が困難なことにあります。
長年の運用で内部構造が複雑化し、新技術の導入が難しくなっています。
効果も限定的です。
さらに、旧システムの維持費用が高く、新規投資の余裕がない可能性があります。
企業はデジタル変革を進めるため、以下の課題に直面し、労力を要します。

  • 目標設定
  • 人員確保

DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例4選(2024年6月)

DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例4選(2024年6月)

企業がデジタル化を推進し、業務の効率化や新たな価値創造を実現した事例を4つご紹介します。
これらの実践例を参考にしながら、自社のデジタルトランスフォーメーションを検討してみてはいかがでしょうか。

  • 製造業におけるIoTの活用です。
    生産ラインにセンサーを設置し、リアルタイムでデータを収集・分析することで、設備の予防保全や生産性の向上を図りました。

  • 小売業でのオムニチャネル戦略の導入です。
    実店舗とECサイトを連携させ、在庫管理の最適化や購買データの一元化を実現しています。

  • 金融業でのAI活用による業務自動化です。
    AIを用いた高度な分析により、与信審査の迅速化や不正検知の精度向上を達成しました。

  • サービス業でのクラウド活用による業務効率化が挙げられます。
    従来の社内システムをクラウドに移行することで、コスト削減とシステムの柔軟な拡張性を実現しています。

デジタル配車サービス「Uber」の仕組み

ウーバーは、米国の企業が提供する配車サービスです。
利用者はアプリで目的地を設定し、車両の到着時間や料金を確認できます。
車に乗ると、ドライバーは事前に目的地を把握しているため、そのまま目的地まで案内してくれます。
料金は事前にアプリで支払われるので、現金の支払いは不要です。

ウーバーでは一般人がドライバーとして登録できるため、サービスの質が心配される場合があります。しかし、

  • 利用者がドライバーを評価するシステムが導入されており、不適切な対応をするドライバーは排除されます。
  • ドライバーも利用者を評価できるため、サービスの品質は維持されています。

ウーバーはスマートフォンなどのデジタル技術を活用したサービスであり、デジタルトランスフォーメーションの成功例と言えます。

Spotifyの音楽ストリーミングサービスの成功

スウェーデンに拠点を置く音楽配信プラットフォームSpotifyは、デジタルトランスフォーメーションの成功例として挙げられます。

2016年に日本進出を果たし、無料プランでは広告を視聴する代わりに音楽を無償で楽しめ、また有料会員になれば自身のプレイリストを自在に編集できるなどの機能が人気を博しました。

かつては音楽を聴くためには以下が一般的でした。

  • CDの購入
  • CDのレンタル

しかし、スマートフォンの普及とインターネット環境の高速化に伴い、ストリーミング再生が定着するようになりました。

Spotifyはこうした変化に対応し、従来の音楽プレーヤーを使う方式から脱却し、ネット接続さえあれば場所を選ばず好みの曲を自在に楽しめるサービスを実現しました。

OS間の垣根を越えた開発姿勢もあり、現在では全世界で3億2000万人以上のユーザーが利用する人気配信サービスに成長しています。

三井住友銀行のAIテキスト認識による顧客意見分類システム

三井住友金融機関は、顧客からの多数の意見を効率的に活用するため、AIによるテキスト認識システムを導入しました。

  • 年間3万5,000件にも及ぶ顧客の声を、少数のスタッフでは分類が困難でした。

そこで、NECが開発したテキスト含意認識技術をベースに、テキストマイニングによる内容要約と自動分類を実現しました。
この技術は、

  • 単語の重要度や文構造を理解し、高精度かつ高速にテキストの意味を分析します。

三井住友金融機関は、このデジタル化により

  • 分類作業の効率化を図り、顧客ニーズの迅速な把握、サービス品質向上、事業判断への活用を実現しています。

家庭教師のDX、無料授業動画で新収益モデル

教育サービス企業トライグループは、従来の家庭教師派遣事業から得た知見と生徒データを活用し、中高生向けの無料動画授業サービス「Try IT」を展開しています。
このサービスでは、

  • スマホやタブレットからいつでも授業動画(約15分)を視聴できる
  • 分からない点を講師に質問できる仕組みが用意されています

無料の動画コンテンツで多くのユーザーを獲得し、別売りのテキストや有料の質問サービス(1回500円)で収益を上げるビジネスモデルを採用しています。
これは、従来の「時間販売」ビジネスから、動画コンテンツを活用した「場所や時間に制約されない学習環境の提供」へと転換を図ったDXの成功例と言えます。

まとめ

まとめ

デジタルトランスフォーメーション(DX)の概念、デジタイゼーションやデジタライゼーションとの相違点、注目される理由、2025年問題、具体例などについて説明してきました。
専門用語が多く、一度で理解するのは難しいかもしれませんが、経済産業省が警告している「2025年問題」は真剣に取り組むべき課題です。
少しずつでもDXについて知識を深め、ビジネス変革の機会を逃さないよう心がけましょう。

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