VRは私たちの生活に浸透しつつある革新的な技術です。
従来は実現が困難だった機能が、技術の進化により可能になってきました。
VRは長年にわたり追求されてきた分野ですが、近年になって様々な業界で急速に活用されるようになりました。
本稿では、以下について解説します。
- VRの定義
- AR・MRとの違い
- 市場規模
- 導入業界
VRに関心のあるビジネスパーソン、トレンドを知りたい方、基本的な定義を整理したい方、5Gとの関係を知りたい方は、ぜひご一読ください。
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そもそもVRとは
この節では、仮想現実(VR)の基礎的な概念を説明します。
まずはVRの定義を明確にし、拡張現実(AR)や複合現実(MR)との相違点を示します。
VRの仕組みと可能性
VRとは、デバイスに投影された人工の空間に、まるで自身が存在しているかのように現実味のある世界を創造する技術を指します。この技術は「Virtual Reality」の略称であり、日本語では「仮想現実」と訳されています。
脳や感覚器官を意図的に錯覚させることで、ユーザーを人工の世界に没入させるのが特徴です。
現在広く普及しているVRシステムは、ヘッドセットを装着するタイプです。
- ヘッドセットを被ることで視界全体がデバイスに覆われ、そこに映し出される人工空間に自分が存在しているかのような臨場感を体験できます。
VR技術は1990年代から製品化されていましたが、近年の3D映像技術や機器性能の向上により、様々な分野での活用が注目を集めるようになりました。
VR、AR、MRの違いと概要
ここ数年、VR(仮想現実)と並んで注目を集めているのが、AR(拡張現実)とMR(混合現実)の技術です。
これらの定義を振り返ると、
- VRは仮想空間にリアルな世界を作り出すのに対し、
- ARは現実世界に仮想現実を重ね合わせ、
- MRは仮想世界と現実世界を融合させる点が異なります。
ARは、CGなどで生成した仮想オブジェクトを現実世界に重ねて表示することで、ユーザーに新たな体験を提供します。ゲーム「ポケモンGO」がその代表例と言えるでしょう。一方のVRは、ユーザーを完全な仮想世界に没入させますが、ARは現実世界を基盤としています。
MRは、現実世界の映像に3D画像を重ね合わせることで、リアリティを高めた体験を実現します。ヘッドセットを使い、現実の視界に3D画像を投影するツールなどがその一例です。MRはVRの要素とARの要素を組み合わせた技術であり、その点でVRとは区別されます。
VRの市場規模
仮想現実(VR)の産業は、最近急速な成長を遂げています。
2022年6月に発表された株式会社グローバルインフォメーションの調査レポート「拡張現実(AR)・仮想現実(VR)の世界市場」によれば、
- AR・VRの市場規模は2022年に約5.2兆円と推計されており、
- 年平均25.3%のペースで拡大し、
- 2027年には約16.4兆円に達すると予測されています。
VRが導入される業界（toC向け）
この節では、VR技術が浸透しつつある分野について、主に一般消費者向けの領域に焦点を当てて解説します。
一般向けでは、以下の領域で普及が進んでいます。
- 娯楽分野
VRゲームの進化と可能性
VRテクノロジーは、ゲーム業界において広く利用されています。
世界的に有名なソニーの「PlayStation4」では、ゲームの拡張機能として主流となっています。
プレイヤーがゲームの世界に没入できるよう、錯覚を与える技術により、ゲームへの没入度が飛躍的に向上します。
実は1990年代にも任天堂が「バーチャルボーイ」と呼ばれるVRゲームを発売していましたが、当時はハードウェアやソフトウェアの技術的な課題が多く、今日のように普及するには至りませんでした。
現在では、以下のジャンルでVRが活用されています。
- FPSジャンルのオープンワールド探索ゲーム
- パズルゲーム
- リズムゲーム
2021年以降、メタバースが注目を集めており、ゲームとの親和性が高いため、メタバースとVRの関係性はより深まっていくでしょう。
VR動画の活用
VRは映像分野においても幅広く活用されています。
YouTubeなどの大手プラットフォームでは、360度視野の映像コンテンツが頻繁に公開されています。
- 例えば、日本政府観光局が運営する公式チャンネルでは、外国人向けに国内の魅力を360度映像で紹介しています。
このように、VR技術を取り入れることで、リアルな体験を間接的に味わえるようになりました。
さらに、VRヘッドセットやスマートフォンアプリを使えば、一般の方でも手軽にVR映像を楽しむことができるようになっています。
VRが導入される業界（toB向け）
この節では、VR(仮想現実)技術が適用される企業向けの分野について説明します。
VRは、すでに多くの業務環境で実践的に利用されています。
- 製造業では、製品設計や製造工程のシミュレーションに活用されています。
- 建設業では、建物の設計や施工計画の検討に役立てられています。
- 医療分野では、手術シミュレーションや医療教育に利用されています。
- 観光業では、仮想旅行体験を提供するサービスが登場しています。
VRトレーニングの活用
VRテクノロジーは、実践的な訓練が困難または危険を伴う可能性がある分野において、効果的な教育ツールとして広く活用されています。
医療界では、熟練医師の手術を仮想空間で詳細に観察することで、不足している専門医の育成に貢献しています。
- ジョンソン・エンド・ジョンソン社は、日本で心房細動手術のVRトレーニングを実施しました。
航空業界や建設、製造業などでも、リアリティ溢れるシミュレーション環境を提供するVRが、安全かつ効率的な人材育成に役立てられています。
- 実例としてJALが航空機牽引訓練にVRシステムを導入しています。
VR技術による産業メンテナンス訓練
VR技術は産業メンテナンス分野においても積極的に活用されています。
従来、機器の保守・メンテナンスはマニュアルに基づいて実施されてきましたが、マニュアルでは表現しきれない作業もあり、スキルの習得が困難な面がありました。
そこで、VR訓練機器の導入により、産業メンテナンスの技術を効率的かつ確実に継承することが可能になると考えられています。
VRとARによる新しい買い物体験
リテール業界では、バーチャルリアリティ(VR)を活用して店内の雰囲気を再現し、実際に店舗に赴くことなく、消費者がオンラインで商品を閲覧できる機会を提供しています。
単に商品を眺めるだけでなく、例えば服飾品の場合、気に入った商品をARアプリで自分の体型に合わせて試着することもできます。
- 一部のサービスでは、ECサイトと同様に商品を購入し、インターネット上で全ての手続きを完了できます。
このように最先端の技術を組み合わせることで、従来は提供できなかった革新的なサービスを実現しつつあります。
6Gの影響
VR産業の将来を展望する際、2020年に携帯通信事業者各社が開始した「5G」の影響を無視することはできません。
5Gとは第5世代の移動体通信システムを指し、
- データ容量
- 通信速度
- 接続の継続性
のいずれにおいても従来の技術を大きく上回る性能を備えています。
5Gの導入によりVRコンテンツの配信がスムーズになり、ライブ配信時の遅延も低減されることが期待されます。
その結果、VR体験のリアリティと没入感が高まり、市場規模の拡大にも好影響を及ぼすと考えられます。
まとめ
仮想現実(VR)技術は、デバイスに投影された人工空間に実在するかのように没入できる革新的な手法です。
VRの適用範囲は個人向けサービス(toC)や企業向けソリューション(toB)を問わず広がっており、今後さらに市場規模が拡大すると見込まれています。
5G通信の普及により、これまでにない体験が可能になるサービスやコンテンツの実現が期待されています。
VRは多岐にわたる分野で活用が進み、新たな価値創出が見込まれる有望な技術分野です。
