国税関係の帳簿や書類を電子データで保存することを義務付ける「電子帳簿保存法」が改正され、電子取引を行う場合は電子による帳簿保存が必須となりました。
この法改正により、フリーランスや個人事業主にはどのような影響があり、どう対応すべきでしょうか。
本稿では、
- 電子帳簿保存法の概要
- 保存区分
- メリット・デメリット
- 改正ポイント
- 対応策
と、対応ソフト・クラウドサービスの紹介を行います。
フリーランスや個人事業主の方は、この機会に電子帳簿保存法への理解を深めましょう。
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電子帳簿保存法とは
国税関連の帳簿や書類を電子データで保管することを義務付ける法律が存在します。この法律は、「電子計算機を利用して作成される国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」と呼ばれ、
- 所得税法や法人税法、消費税法に基づき、青色申告者や事業者が保存しなければならない
- 総勘定元帳
- 仕訳帳
- 売掛帳
- 固定資産台帳
などの帳簿類を電子データで保管することを義務付けています。
この法律の施行により、従来の紙媒体による保管に代わり、電子データでの保管が可能となりました。
電子帳簿保存法上での保存区分
法令に基づき、デジタルデータによる記録保管方式は3種類に区分されています。
- 電子データそのものを保存する方式
- 紙書類をスキャンして電子化する方式
- 電子取引によるやり取りを保存する方式
電子帳簿等保存の概要
企業は、会計ソフトウェアを活用し、独自に作成した税務関連の記録や文書をデジタルデータとして保管することができます。
この方法は、「電子帳簿等保存」と呼ばれ、紙媒体ではなく電子データ自体を保存するアプローチです。
書類のデジタル化と保存期間
紙媒体の文書を電子化して保管する手段が、スキャナ保存です。具体的には、
- 取引関係書類
- 自社作成文書などを画像データとして保存することを指します。
なお、
電子取引におけるデータ保存
データを電子的に受け渡し、保管する取引手段が電子取引です。
具体例としては、
- メールで送付された請求書や領収書のデータを受け取る場合
- ウェブからPDFファイルをダウンロードする場合
- クラウドサービスで書類のデータを受領する場合
などが挙げられます。
電子帳簿保存法のメリット
本文では、電子帳簿保存制度の利点を3つ紹介します。
この制度は、企業にとって有益な側面が存在します。
- まず、従来の紙の帳簿に比べ、保管スペースを大幅に節約できます。
- 次に、検索や閲覧が容易になり、業務効率が向上します。
- 最後に、災害時の被害リスクが低減されます。
このように、電子化による合理化が図れるのが大きな魅力です。
電子帳簿保存によるオフィス省スペース化
電子的な形式で記録や文書を保管することで、物理的な保管スペースを節約できます。
従来の紙媒体による保存方式では、以下のようなデメリットがありました。
- ファイルやバインダーなどを使用するため、長期間にわたると多くの場所を占有してしまう
しかし、電子帳簿保存法の活用により、オフィスのスペースを有効活用することができるようになります。
デジタル化による経費削減
企業は帳簿や書類をデジタル化することで、印紙代、印刷代、インク代などのコストを抑えることができます。
さらに、事務作業の効率化により、人件費の削減も見込めます。
紙の保存に比べ、データの保存は経営コストの大幅な削減につながるでしょう。
デジタル化で紛失リスク軽減
文書の管理において、紙媒体には常に紛失の危険性が付きまといます。
一方、クラウドストレージを活用すれば、そうした懸念は最小限に抑えられるはずです。
電子帳簿保存法のデメリット
電子帳簿保存法には、いくつかの欠点があります。
まず、
- システムの導入や運用に多額の費用がかかること
が挙げられます。
また、
- データの保存期間が長期にわたるため、膨大な容量のストレージが必要となること
。
さらに、
- セキュリティ対策が不十分な場合、情報漏えいのリスクが高まること
。
このように、電子帳簿保存法の運用には様々な課題が伴います。
電子データ保存のコスト
企業が帳簿や書類をデジタル化して保管するには、専用のソフトウェアやクラウドサービスなどの導入が不可欠です。
しかし、そうしたシステムの導入には初期投資と運用コストがかかるため、一定の経済的負担が発生するというマイナス面があります。
データ保護の重要性
データを電子的に保管する際、保存デバイスの紛失や破損によりデータが復元できなくなるリスクがあります。
さらに、システム障害が発生した場合、復旧に時間を要し、データ消失の可能性も無視できません。
そのため、定期的なバックアップが不可欠です。
クラウドストレージを活用することも、データ保護対策として有用な選択肢となります。
データ保存のセキュリティ対策
データを個人のデバイスに保管すると、セキュリティ上の脆弱性やサイバー攻撃により、重要な情報が流出するリスクがあります。
電子データを安全に管理するには、高度なセキュリティ対策が施されたクラウドサービスを利用することが賢明な選択肢となります。
電子帳簿保存法改正のポイント
政府は昨年1月、電子データの保管に関する法令を見直しました。
主な改正点は4つあり、
- 承認制度の撤廃
- タイムスタンプ要件の緩和
- 検索要件の緩和
- 電子取引データの保存義務化
です。
この法改正により、企業は電子データの3つの保存区分ごとに、異なる対応が求められることになりました。
以下では、それぞれの区分における変更点を説明します。
電子帳簿保存制度の改正点
税制改正により、電子帳簿等の保存に関する規制が緩和されました。
- 従来必要とされていた税務署長の事前承認制度が廃止され、事務負担が軽減されました。
- ただし、この変更は令和4年1月1日以降の保存分から適用されます。
- 一定の要件を満たせば、申告漏れがあった場合の過少申告加算税が5%軽減されることになりました。
- ただし、隠蔽や仮装があれば適用外となります。
- 最低限の要件を満たせば電子データでの保存が認められるようになりました。
- 要件は、
1. システム関係書類の備付け 2. 出力の容易性 3. 税務職員によるダウンロード対応 の3点です。
スキャナ保存制度の改正点
スキャナ保存の区分では、主要な変更点が5つありました。
- 承認制度の廃止により、税務署長による承認は不要になりました。
- ただし、適用開始は令和4年1月1日以降の保存からです。
- タイムスタンプの付与期間は最長約2か月または概ね7営業日以内に設定され、国税関係書類への自署も不要になりました。
- 検索要件では、取引年月日、金額、取引先から検索できれば十分で、日付や金額範囲の指定は不要になりました。
- また、本人以外による原本照合の適正事務処理要件が廃止されました。
一方で、電子記録に不正があった場合、重加算税が10%加重されるようになりました。
電子取引に関する税制改正
電子取引に関する規制が見直されました。主な変更点は3つあります。
- 1つ目は、タイムスタンプと検索要件の緩和です。タイムスタンプ要件はスキャナ保存と同様の扱いとなり、売上高1,000万円以下の事業者は税務職員の求めに応じてデータをダウンロード可能な状態にしておけば検索要件は不要になりました。
- 2つ目は、申告所得税と法人税における「紙への出力による電磁的記録の保存」が廃止されたことです。ただし、消費税はこの限りではありません。
- 3つ目は、スキャナ保存同様、電子取引で隠蔽や仮装があった場合、重加算税が10%加重されることになりました。
電子帳簿保存法の改正でフリーランス・個人事業主が取るべき対応策
帳簿の保存方法については、保存義務者が紙かデータかを選択できるため、すぐに対応する必要はありません。
しかし、電子取引におけるデータ保存は令和6年1月から義務化されるため、早急な対応が求められます。
フリーランスや個人事業主は、この点に注意を払う必要があります。
電子帳簿保存法に関する申請書や届出の様式は、国税庁のウェブサイトで確認できます。
また、対応した会計ソフトやクラウドサービスを導入すれば、経理業務の効率化が期待できます。
次章でその詳細を説明します。
電子帳簿保存法に対応した会計ソフト・クラウドサービス3選
本文では、電子帳簿保存法の要件を満たす会計ソフトウェアおよびクラウドサービスの3つの選択肢を紹介します。
これらのツールを利用することで、法令順守と業務効率化が期待できます。
ご検討の程、よろしくお願いいたします。
クラウド会計ソフト「freee」の機能と特徴
クラウドベースの会計ソフトウェアは、企業の事務作業を合理化するためのSaaSソリューションです。
全てのプランが電子帳簿保存法の要件を満たし、証憑の電子保管から優良電子帳簿の自動生成までをサポートします。
初心者向けに30日間の無料体験期間が用意されているので、まずは無料登録から始めることをおすすめします。
主な機能は、
- 会計帳簿の自動・手動作成
- 仕入れ・経費の自動計上
- 請求書作成と売上計上
- 決算と申告書類の作成
- 買掛金・売掛金の管理
などです。
マネーフォワード クラウド確定申告の特徴
マネーフォワード社が提供するクラウドベースの会計ソリューションは、以下の特徴があります。
- 取引データの自動入力機能を備えており、会計業務の効率化を実現します。
- 初心者でも安心して利用できるよう、メール・チャット・インストラクターによるサポート体制が整備されています。
主な機能は以下の通りです。
明細データの自動取得 |
AIによる仕訳自動化 |
確定申告書・決算書の作成 |
申告書類の提出 |
会計レポートの出力 |
請求業務・経費精算との連携 |
やよいの青色申告の機能と特徴
やよいの青色申告は、弥生株式会社が提供するクラウド型の確定申告ソリューションです。
会計処理をサポートする機能が豊富なため、会計や簿記の知識がなくても、フリーランスや個人事業主が簡単に書類を作成できます。
初年度は無料で利用可能なセルフプランがあり、会計ソフトを初めて使う方にもおすすめです。
主な機能は、
- 自動取込・自動仕訳
- 帳簿・伝票入力
- 仕訳帳・元帳・試算表の作成
- グラフ化
- 確定申告書・決算書作成
- データ保存・共有
- 他ソフトとの連携
などです。
まとめ
本稿では、フリーランス・個人事業主の方々に向けて、電子帳簿保存法の改正内容と、その影響および対応策について説明しました。
電子帳簿保存法とは、国税関係書類を電子データで保存することを義務付ける法律です。保存区分は
- 電子帳簿保存
- スキャナ保存
- 電子取引
の3種類があります。
メリットとしては、
- 書類の保管スペースの削減
- 経費削減
- 紛失リスク低減
が挙げられます。一方、デメリットとしては
- システム導入コスト
- データ破損リスク
- 情報漏洩の危険性
があります。
改正のポイントは、
- 承認制度の廃止
- タイムスタンプ要件の緩和
- 検索要件の緩和
- 電子取引データの保存義務化
です。特に電子取引データの保存については、フリーランス・個人事業主は早急な対応が求められます。
対応策としては、クラウド会計ソフトの活用が有効です。代表的なサービスとして、
- freee
- マネーフォワード クラウド確定申告
- やよいの青色申告
などがあります。
改正により事務負担が軽減されましたが、対応方法は個人差があります。まずは自身の取引内容に合わせて、電子取引部分のみの対応か全般的な対応かを検討することが重要です。会計ソフトを活用することで、会計処理や確定申告の効率化が図れるでしょう。