ITに携わる専門家には様々な種類がありますが、その中でも経営層に対して提言を行う役割を担うのが「ITストラテジスト」と呼ばれる存在です。
企業経営に深く関与することから、近年ITストラテジストへの需要が高まっています。
本稿では、以下について詳しく解説します。
- ITストラテジストの試験内容
- 業務の実態
- 資格取得のメリット
- 収入水準
ITストラテジスト資格の取得を検討中の方、試験の概要を知りたい方、職務内容に興味がある方、収入面での見通しを立てたい方は、ぜひ一読いただければと思います。
ITストラテジスト試験概要
この節では、ITストラテジスト試験の受験資格、問題の形式、出題範囲、難易度レベルなどの概要を説明します。
受験者の方々に試験の全体像を把握していただくことを目的としています。
ITストラテジストの役割と魅力
ITの専門家として、経営戦略と情報技術を橋渡しする役割を担うのがITストラテジストです。この職種は、システム開発の初期段階から事業戦略の策定に関与し、ITを活用した基本方針の立案や提言を行います。
ITストラテジストの業務範囲は多岐にわたり、
- 経営戦略に基づくIT戦略の策定
- ITを活用した事業革新や業務改革
- 競合他社との差別化を図る製品・サービスの企画立案
などが含まれます。
つまり、ITストラテジストは単なる技術者にとどまらず、経営の視点からビジネスの要所に参画する存在です。
CIOやITコンサルタントを志す場合は、この資格の取得が推奨されます。
ITストラテジストは2009年に認定制度が開始された国家資格で、難関とされながらも収入面やキャリアパスの魅力は大きいと言えます。
ITストラテジスト試験の概要と受験対象者
ITストラテジストの資格取得を目指す人は、高度なIT専門知識と経営戦略の提案力が求められます。
企業の事業戦略に基づき、ITを活用して業務を改革・高度化・最適化するための基本方針を立案・提言・推進する役割を担います。
また、IoTシステムの企画・開発を統括し、新たな価値創出のための戦略を策定・提案・推進することが期待されています。
ただし、この資格試験には受験要件はなく、年齢や学歴に関係なく誰でも挑戦できます。
実力次第で取得可能な資格で、
- 試験会場も全国の主要都市に設けられているため、幅広い層が受験しやすい環境が整っています。
ITストラテジスト試験午前I試験の概要
ITストラテジスト試験は、午前と午後の4つの部門に分かれています。
午前I試験の詳細は次の通りです。
・試験時間は9時30分から10時20分までの50分間で、多肢選択式の問題が出題されます。
・出題数と解答数は共に30問で、配点は満点100点、合格基準は60点です。
この試験は、応用情報技術者試験の午前問題から30題が選ばれて出題されます。
具体的には、
- テクノロジー系
- マネジメント系
- ストラテジ系
の3系統、合計23分野から出題されます。
系統 | 分野 |
---|---|
テクノロジー系 | 基礎理論、アルゴリズム、コンピューター構成要素、システム構成要素、ソフトウェア、ハードウェア、ヒューマンインターフェース、マルチメディア、データベース、ネットワーク、セキュリティ、システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術 |
マネジメント系 | プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査 |
ストラテジ系 | システム戦略、システム企画、経営戦略マネジメント、技術戦略マネジメント、ビジネスインダストリ、企業活動、法務 |
午前II試験の概要と出題範囲
午前II試験は、10時50分から11時30分までの40分間で実施されます。出題形式は多肢選択式で、四者択一方式となっています。出題数と解答数はともに25問で、配点は100点満点、基準点は60点です。
出題範囲は、午前I試験で取り上げた23項目のうち、以下の8分野からなります。
- セキュリティ
- システム戦略
- システム企画
- 経営戦略マネジメント
- 技術戦略マネジメント
- ビジネスインダストリ
- 企業活動
- 法務
午前I試験と比べて出題範囲は狭くなっていますが、その分、問題の難易度が高くなっています。常識的な知識だけでは解答できない問題が出題されるため、平素から新しい用語の理解に努める必要があります。
午後I試験の概要と試験範囲
午後I試験は12時30分から14時までの90分間で実施されます。
出題形式は記述式で、
- 4問が出題され
- そのうち2問を解答する必要があります
配点は100点満点で、基準点は60点です。
この試験では、
- 業種ごとの事業特性を踏まえた上で
- 情報技術を活用した事業戦略の策定やその支援
- 情報システム戦略と全体システム化計画の立案
- 個別システム化構想・計画の策定
- 情報システム戦略の実行管理と評価
- 組込みシステムの企画、開発、サポート及び保守計画の策定・推進に関する理解が問われます
午後II試験の概要と評価方法
午後の試験は2時間30分の記述式試験です。
- 3つの問題が出題されますが、1つの問題に対して解答を書きます。
- 点数による合否判定はなく、論述内容を総合的に評価してランク分けされ、最上位のランクAのみが合格となります。
- 論理性、具体性、見識、文章力などが評価の対象となります。
ただし、問題冊子の指示に従わない場合は減点の対象となるため、注意が必要です。
ITストラテジスト資格の難易度
ITストラテジストの資格は、エンジニア系の認定試験の中でも最上位クラスの難易度を誇ります。
- 論文形式の試験があり、単なる知識の暗記では合格は難しく、深い理解力と論理的な文章力が問われます。
- 合格率は15%程度と極めて低く、基本情報技術者試験の合格率を大きく下回っていることからも、その難しさがうかがえます。
- 十分な知見と理解がなければ、満足のいく解答を記すことはできません。
- 最終の論文試験では、一定の水準に達していない場合は不合格となるため、合格を目指すには徹底した対策が不可欠です。
- 一部では士業試験と同等の難関資格とも評されており、受験対策には十分な時間と労力を割く必要があります。
ITストラテジストの仕事内容
この節では、IT戦略立案者の職務内容を説明いたします。
ITストラテジストは、企業や組織のIT活用戦略を策定する役割を担っています。
具体的には、
- 経営目標の達成に向けて、情報システムの最適化や新技術の導入計画を立案します。
- ITリソースの効率的な配分や、ITガバナンスの構築なども重要な任務となります。
高度な技術知識と経営マインドを兼ね備えた専門家であり、組織のデジタルトランスフォーメーションを主導する存在です。
ITストラテジストの役割と業務内容
ITコンサルタントの主要な役割は、企業の現状を分析し、情報技術の活用によって業務効率化やコスト削減などの利益をもたらす戦略を立案することです。
この戦略策定には、クライアント企業の実態把握が不可欠です。
- 現場への赴き、従業員へのヒアリングを行い、業務内容や課題を把握する必要があります。
- また、IT業界全体の動向を注視し、最新の技術動向を把握することも重要です。
企業の実情とIT動向を踏まえて初めて、適切な戦略が立案できるのです。
さらに、提案した戦略の実行状況を評価し、フィードバックすることも求められます。
このように、ITストラテジストには技術的な知見と経営コンサルティングの両面の能力が必要とされます。
ITシステム導入の戦略的計画
ITストラテジストの主要な職務の一つは、ITシステムの導入計画を立案することです。
全体的なシステム導入では、戦略実行のための基盤構築を検討します。
中長期的な視点で計画を策定し、品質管理、リスク対策、災害復旧計画も含まれます。
個別システムの場合、全体計画の中で対象業務を分析し、モデル化とプロセス再設計を行います。
- サービスレベル
- コスト
- スケジュール
を比較し、実現可能な範囲で導入計画を立てる必要があります。
例えば、契約管理の電子化ニーズがあれば、単にツール導入ではなく、
電子化範囲 |
既存書類の扱い |
組織変更 |
など様々な点を検討しなければなりません。
さらに、導入後はシステム全体の監視と管理、リスク管理、プロジェクト評価も重要な役割です。
ITストラテジストのプロジェクト推進役
ITコンサルタントの役割は、企業の経営戦略を実現するためにITを活用することです。
主な業務は、システム開発や導入までの過程を担当します。
しかし、状況によっては、システム稼働後もプロジェクトの推進役を務めることがあります。
本来は異なる職種ですが、場合によっては業務範囲が曖昧になる可能性があります。
プロジェクト管理能力を兼ね備えたITコンサルタントは、より高い市場価値を持つと考えられます。
ITストラテジストの知識習得と還元
ITストラテジストには、最先端の技術動向を把握し、企業内に反映させることが求められます。
プログラミングの基礎知識に加え、
- ソフトウェア
- ハードウェア
- 法律など
幅広い分野の知見が必要不可欠です。
常に新しい情報を収集し、組織に活かしていく姿勢が重要視されます。
ITストラテジストを取得するメリット
確かに、ITストラテジストの資格は高度な専門性が求められる証明書であり、取得には相当の努力が必要とされます。
しかし、その分野で活躍するための重要な手段ともなり得るのです。
ITストラテジストの資格を手にすることで得られる恩恵について、ここで説明させていただきます。
- 専門知識の証明
- キャリアアップの機会
- 高い報酬
資格 | 年収 |
---|---|
ITストラテジスト | 800万円 |
一般社員 | 500万円 |
このように、ITストラテジストの資格を取得することで、専門性の高い知識を身につけ、キャリアアップと高い報酬を得ることができます。
ぜひ、この機会に挑戦してみてはいかがでしょうか。
ITストラテジスト資格取得のメリット
ITストラテジストの資格取得には、専門家コミュニティへの参加が主要な利点となります。
日本ITストラテジスト協会は、情報化戦略や計画に関する知見を共有し、実務能力の向上と人脈形成を目指す団体です。
同協会に正会員として加入できるのは、この資格保持者のみの特典です。
- 会員同士で知的交流や議論を行える場が設けられており、他のエンジニアからの刺激や最新情報を得られるなど、プロフェッショナルとしての成長に大きく寄与します。
年会費は必要ですが、社外の専門家と交流できる機会は貴重な財産となるでしょう。
エンジニアが継続的に成長するには、同業者のコミュニティに所属することが不可欠です。
ITストラテジスト資格と転職
ITストラテジストの資格保有は、転職活動において有利に作用する可能性があります。
近年、技術革新が急速に進み、新たな業務が生まれていますが、それらを担う人材が不足しているという企業も多数存在します。
特に上流工程を担うITストラテジストの有資格者は希少であり、転職の際に優位に立てる可能性が高いでしょう。
しかし、ITストラテジストには幅広い知識が求められます。
面接で資格取得の理由や目的を問われた際、的確に説明できなければ、かえって不利になる恐れがあります。
つまり、資格保有自体が合格の決め手となるわけではなく、自身の長所を適切にアピールする戦略が重要となります。
ITストラテジスト資格の価値
ITの専門家として認められるためには、資格取得が有効な手段となります。
実務経験だけでは客観的な実力評価が難しいため、資格を持つことで専門知識を備えていることを示せます。
名刺に資格を記載すれば、高い知識レベルをアピールできます。
社内でも資格取得は昇進に好影響を与えるでしょう。
仕事ができるかどうかを完全に保証するものではありませんが、少なくとも専門家に求められる知識は持ち合わせていることが証明できます。
新たな仕事に挑戦する際の強みとなる可能性があり、ITコンサルタントやシステム企画業務に従事する人は積極的に取得を検討するべきでしょう。
経営者層も資格取得により評価が高まる場合があります。
ITストラテジストの年収
ITストラテジストは高度な専門性が求められる職種であり、その年収水準も高いと言えます。
フリーランス求人サイトの情報によれば、月収ベースで50万円から95万円程度が中心的な価格帯となっています。
これを年収に換算すると600万円から1,140万円の範囲となり、この金額がITストラテジストの年収目安と考えられます。
他の情報源でも600万円から700万円程度が平均年収とされていることが多く、一般職種や他のエンジニア職種と比べても高年収であると言えるでしょう。
まとめ
ITストラテジストは、経営戦略や事業戦略の策定において、ITに関する専門知識とスキルを活用する職種です。
非常に高度な専門性が求められるため、関連資格の取得は容易ではありません。
しかし、その難易度ゆえに、資格保持者のキャリアに好影響をもたらすことが期待できます。
報酬面でも一般のエンジニアよりも高水準であり、
- システム開発や経営に携わる方には、資格取得をお勧めします。
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