SLOとSLAの違いを分かりやすく解説!

ITサービスの調達プロセスにおいて、顧客側と提供側は様々な事項を確認する必要があります。その際、「SLO」という用語に疑問を持つ人もいるでしょう。
SLOはサービス契約において重要な概念ですが、理解を深めるには「SLA」の理解が不可欠です。
そこで本稿では、まずSLAについて解説し、その上でSLOの詳細を説明します。
特に以下の方々に参考にしていただきたいです。

  • SLOとSLAの違いを理解したい方
  • SLAのポイントを知りたい方
  • SLOのポイントを知りたい方

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SLAを理解しよう

SLAを理解しよう

この節では、最初にSLOを把握するための基礎知識として、SLAについて説明します。
SLAとは、サービスレベル合意のことで、顧客とベンダー間で合意された品質水準を指します。
SLOはサービスレベル目標の略語で、この合意内容を満たすための具体的な目標値を定めたものです。
SLAの内容を達成するためには、SLOを適切に設定する必要があります。

サービスレベル合意(SLA)の重要性と運用

サービスの質を保証する合意書であるSLAは、提供者と利用者の双方が満たすべき水準を定めたものです。この契約には、以下が明記されています。

  • サービスの内容や範囲
  • サービスレベル
  • 未達時の対応
  • 運営ルール

前提条件の共有が重要で、相互の認識に食い違いがあれば合意は成立しません。
対象は以下のようなさまざまなものがあります。

  • セキュリティ
  • ネットワーク
  • ホスティング

自社にとっての重要度や明文化の可否、達成可能性を見極めて選定する必要があります。
SLAを締結することで、以下が期待できます。

  • サービスレベルの確保
  • サービスレベルの統一

ただし、一度合意しただけでは不十分で、PDCAサイクルを継続的に回し、適切な水準を維持していくことが求められます。

サービスレベル合意における可用性の意味

サービスレベル合意書(SLA)において、サービスの品質基準は主に「可用性」という指標で示されることが多い。
可用性とは、システムが利用可能な時間の割合を表す数値である。
例えば、月間可用性が99%と定められていれば、その月の1%の期間はシステムが停止していても問題ないことになる。
具体的には、

  • 1か月30日とすれば、「24時間×30日×1%」で計算すると、最大7.2時間のダウンタイムが許容される。

つまり、可用性が高ければ高いほど、システムの信頼性が高く、障害発生リスクが低くなると考えられている。
可用性の水準は「SLA99.95%」「SLA99.999%」のように表記される。

サービス基準未達時のペナルティ規定

サービスレベル合意(SLA)で定められた基準を満たせなかった際の対応策として、違約金などの制裁措置を契約書に記載することができます。このような条項を設けることで、SLAは損害賠償や緊急時の保険としての役割を果たします。
ただし、天災などの不可抗力による場合は例外とし、ペナルティの対象外とすることで公平性を確保することが重要となります。

SLOとは

SLOとは

この節では、これまで解説してきたサービスレベル合意の概要を踏まえて、サービスレベル目標の定義と意味について説明していきます。

サービスレベル目標とは、以下のような項目を指します。

  • 可用性
  • 応答時間
  • スループット
  • データ転送量
  • その他のサービス品質に関する指標

これらの項目に対して、サービスレベル合意の中で具体的な数値目標を設定することで、サービスレベルを定量化し、サービス提供者と利用者の双方で共有することができます。

例えば、以下のようなサービスレベル目標を設定することができます。

項目 サービスレベル目標
可用性 99.9%
応答時間 1秒以内
スループット 100トランザクション/秒

サービスレベル目標(SLO)の概要と設定項目

サービスの品質目標を示すSLO(Service Level Objective)は、サービス提供者が設定する基準値です。SLAよりも高い水準を設けることが一般的で、例えばSLAで月間稼働率99.9%と定めた場合、SLOでは99.95%などより高い数値を掲げます。つまり、SLOを達成することでSLAの基準をクリアできるよう設計されています。

SLOは計測可能な指標で表され、目標達成状況を検証できるようにします。ただし、100%の稼働率を求めるのは現実的ではありません。SLOでは以下を規定します。

  • 可用性(システムの停止頻度や告知方式)
  • セキュリティ(準拠基準と体制維持方法)
  • 作業手順(ユーザー向け利用手順)
  • 計測方法
  • 報告方法
  • サポート体制(トラブル時の対応方法や時間)

また、SLOには実際のサービス提供時の計測方法と報告方法も定められます。

SLOの公開メリットと設定の重要性

サービスレベル目標(SLO)は、サービスレベル合意(SLA)とは異なり、利用者側との合意は必要ありません。SLOは提供側の内部目標であり、利用者に開示されないケースが多数存在します。
これは、SLOがサービス提供者の一方的な目標設定にすぎず、利用者との契約ではないためです。
したがって、SLOには公開義務はなく、内部管理のみで構いません。

しかし、提供側が積極的にSLOを公開することで、

  • 利用者との数値目標の共有が可能となり、業務の優先順位付けが容易になる
  • 利用者側から過度な品質要求を防ぐこともできます

というメリットがあります。
利用者側も、提供側のSLOを確認することで、期待できるサービスレベルを把握できます。
つまり、SLOの公開には一定の利点があるということです。

SLOの有効性を高めるには、利用者にとって重要でない項目に過剰な基準を設けず、優先度の高い課題に的を絞った数値目標を立てることが肝要です。

内部指標としてのSLOの役割

SLOには外部への開示義務がなく、達成できなくても制裁措置を受けることはありません。
公表されないケースが多いため、罰則規定を設けても実効性に乏しいと言えるでしょう。

まとめ

まとめ

SLAとは、サービス提供者と利用者の間で合意された品質基準を指します。可用性の指標として表されることが多く、基準を満たせなかった場合の罰則規定を含むこともできます。

一方のSLOは、サービス提供者が自ら設定する目標値のことです。SLOは公開されないケースが多く、未達時の罰則はありません。この点を押さえておくことが重要です。

サービスの質を維持向上させるためには、SLAとSLOの適切な運用が不可欠となります。