コンピューターの基盤となるシステムには、Windows、macOS、Android、iOSなどが広く知られていますが、UNIX系のOSも企業のサーバーで多用されており、近年ではデスクトップ環境でも注目を集めています。
本稿では、UNIXとLinuxの概要、特徴、相違点について詳しく解説します。
- ネットワーク、サーバー、インフラなどの分野でキャリアを歩む方は、これらのOSに関する知見を持つことで、より幅広い活躍の場が開けるでしょう。
- エンジニア志望の方や、UNIXとLinuxの違いを明確に理解したい方は、ぜひ一読いただければと思います。
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UNIXとは
UNIXは、現代のオペレーティングシステムの中で最古参であり、多くのOSの源流となったものです。
1969年、Windowsがまだ存在しなかった時代に、AT&Tの研究機関であるベル研究所で生み出されました。
UNIXの歴史と標準化の経緯
当初、ベル研究所は他社と協力してマルチタスク対応のOSを開発しようと試みましたが、システムが肥大化し過ぎたため、プロジェクトは頓挫しました。
その後、ベル研究所を離れたケン・トンプソンが、自作のゲームを移植する過程で、UNIXの原型となるOSを生み出しました。
UNIXは機能を簡素化し、カーネルをCで記述したことで汎用性と移植性に優れ、1974年にソースコードが公開されました。
しかし、様々な改良を経る中で互換性が失われていきました。
そこで、UNIXは商用化の流れとなり、名称の商標管理が始まりました。
現在では、IEEE規格のPOSIXを拡張した「Single UNIX Specification」に準拠したOSのみが「UNIX」と呼べるようになっています。
一方で、認証を受けていない
- 「UNIX系」
- 「UNIXライク」
のOSも存在します。
UNIXの系統と特徴
UNIXは、AT&Tが開発した「System V」と、カリフォルニア大学バークレー校の開発者グループが手掛けた「BSD」の2つの主要な系統に分かれて進化を遂げてきました。
コマンドなどに違いはあるものの、現在では両方の機能を備えた製品も多数存在します。
- System Vは商用ベースで、
サンマイクロシステムズ社のSolaris HPのHP-UX IBMのAIX などがあります。
- 一方、BSDはソースコードが非公開ながら、誰でも商用利用や改変、配布が可能なライセンスを持ちます。
BSDには、
- 安定性とユーザビリティに優れたFreeBSD
- セキュリティ性の高いOpenBSD
- Intel、Macなど約50種のプラットフォームに対応する移植性の高いNetBSD
など、それぞれ明確な開発理念を持つ製品があります。
UNIXの広がり
UNIXは過去、企業の業務用コンピューターで主に活用されていましたが、現代では様々な分野で幅広く採用されています。
- ネットワーク機器
- テレビ
- 車載ナビゲーションシステム
などにも搭載されています。
身近な事例としては、AppleのmacOSがUNIXをベースに開発されていることが挙げられます。
UNIXの特徴
UNIXは複数のタスクと複数のユーザーを同時に扱うことができる。
- マルチタスク機能により、複数のプログラムを同時に実行できる
- マルチユーザー機能により、複数のユーザーが同時にシステムを利用できる
また、高度なセキュリティ機能を備えており、リソースを効率的に利用するため、軽快な動作が可能である。
- ユーザー認証やアクセス制御などのセキュリティ機能を備える
- メモリやCPUなどのリソースを効率的に管理し、軽快な動作を実現する
マルチタスク・マルチユーザーのUNIX
UNIXには、以下の機能がありました。
- 複数のプログラムを同時に実行できるマルチタスク機能
- 複数のユーザーが同時にログインして利用できるマルチユーザー機能
当時のコンピュータは高価であり、1台を効率的に活用する必要がありました。
マルチタスクは1990年代前半までほとんど普及しておらず、革新的な機能でした。
UNIXのセキュリティ強化
OSをサーバーとして利用する際は、データの安全性を確保するためセキュリティ強化が不可欠です。
しかし、ウイルスの大半はWindows向けであり、UNIXへの攻撃は比較的少ないのが実情です。
さらに、UNIXはマルチユーザー環境を想定して設計されているため、
- ユーザー間でのファイル保護機能が組み込まれています。
UNIXの軽量性とコマンド操作
UNIXは機能が限られており、極めてシンプルな構造を持っています。
また、マウスを使ったグラフィカルな操作ではなく、コマンドラインによるテキスト入力が主な操作方式となっています。
そのため、UNIXは軽量で動作が速く、
- 複数のタスクやユーザーが同時に稼働していても、パフォーマンスへの影響は小さくなります。
Linuxとは
Linuxは、UNIXをベースとしたオペレーティングシステムの一種です。
その起源は1991年に学生によってなされたプロジェクトに遡ります。
当初は個人的な取り組みとして始まりましたが、その後、多くの開発者が参加するオープンソースのプロジェクトへと発展しました。
Linuxの誕生
ライセンス契約下にあったUNIXは、制限が多く、変更するためには手順を踏む必要があったため、開発者から好まれませんでした。
そのような背景から、1991年にフィンランドのヘルシンキ大学の学生リーナス・トーバルズが、Linuxという新しいオペレーティングシステムを開発しました。
LinuxはUNIXと互換性がありますが、コードはゼロから作られているため、UNIXとは全く別のものとなります。
リーナスが作ったのはOSの中核であるカーネルのみでしたが、その後は
- 世界中のユーザーによって発展を遂げ
- Linuxは成長を続けています。
Linuxディストリビューションの概要
Linuxは、本来はカーネルを指す用語ですが、実際にはカーネルだけでは機能しません。そのため、ライブラリやツール、アプリケーションなどを組み合わせてパッケージ化されたものがLinuxと呼ばれています。
このパッケージ化されたLinuxのことをディストリビューションと言います。
Linuxには多種多様なディストリビューションが存在しますが、ここでは主要な2つをご紹介します。
- RedHat社が開発したRed Hat Enterprise Linux(RHEL)は、商用ライセンスのディストリビューションで、公式サポートが受けられ、安定した運用が可能です。
- 一方、世界中の人々によって作り上げられたDebianをベースとするUbuntuは、初心者でも使いやすいディストリビューションとして知られています。
Linuxの多様な活用
LinuxはUNIXと同様に、企業のサーバーや開発作業など、様々な目的で活用されています。
- 一般的な例としてAndroidOSが知られており、Linuxをベースとして開発されています。
- さらに、IBMやHPなどの大手コンピューター企業も、Linuxを搭載したサーバー製品を積極的に展開しています。
Linuxのデスクトップシェア率と魅力
Windowsが圧倒的なシェアを占める一方で、Linuxは2%程度の小さな割合にとどまっています。
しかし、Linuxは以下のような特徴があります。
- 多様なディストリビューションが用意されている
- 初心者でも扱いやすいOSとして知られている
OSの選択は用途や好みによって異なりますが、Linuxは魅力的な選択肢の一つと言えるでしょう。
Linuxの特徴
Linuxは、オープンソースのオペレーティングシステムであり、無償で利用することができます。
また、ユーザーの好みに合わせてカスタマイズが可能な柔軟性が魅力です。
それぞれの特徴について、より詳しく解説しましょう。
- オープンソースとは、ソースコードが公開されており、誰でも自由に改変や再配布ができることを意味します。
- 無料で利用できるため、コストを抑えられるメリットがあります。
- さらに、ユーザーのニーズに合わせて機能を追加したり、デザインを変更したりできるため、柔軟性に富んでいます。
カスタマイズ可能なLinuxの特徴
Linuxはオープンソースのオペレーティングシステムなので、個人や企業を問わず、誰もがコードの改修や再配布を行えます。
ユーザーのニーズに合わせてカスタマイズが可能なため、様々な派生OSが存在しています。
オープンソースの利点
Linuxは無償のライセンスを採用しているため、個人や企業を問わず、誰もが自由に利用することができます。
企業においては、開発コストの削減につながるため、より高品質なアプリケーションの開発が実現可能となります。
UNIXのカスタマイズ性
OSの種類によって異なりますが、多くのUNIX系OSではグラフィカルユーザーインターフェイスを提供するためにX Window Systemが採用されています。
近年では、デスクトップ環境と呼ばれるパッケージがあらかじめインストールされており、ユーザーはそのUIの見た目を変更することができます。
また、
- サーバーの構成を柔軟に設定できたり
- LinuxをベースにしてカスタマイズされたOSを新たに作成できるなど
高い拡張性が特徴的です。
UNIXとLinuxの違い
Linuxは、UNIXをベースに開発されたため、多くの共通点を持っています。例えば、以下のようなことが挙げられます。
- 企業のサーバーや開発環境で幅広く活用されていること
- 高い安定性とセキュリティを備えていること
しかし、両者には異なる点もあります。
UNIXは当初、ミニコンピューターへの搭載を目指し、学術研究や開発を目的に作られました。一方、Linuxは学生の趣味から始まり、ビジネス利用は当初想定されていませんでした。現在では、両者ともに派生OSが存在し、商用での利用も見られます。
ライセンスの考え方も異なります。UNIXはAT&T社が商標管理していますが、UNIXという名称を使わなければ無料で利用できます。Linuxはオープンソースでライセンスフリーですが、一部有償のディストリビューションもあります。
コマンドの違いはほとんどありませんが、一部異なるものも存在します。例えば、パッケージ管理ツールでは、以下のようになります。
OS | コマンド |
---|---|
UNIXの「Solaris」 | pkgコマンド |
Linuxのディストリビューションによっては | RPMコマンド、yumコマンド |
CUIでの操作には慣れが必要ですが、習熟すれば効率的に作業できるでしょう。ただし、一度実行したコマンドは取り消せないため、ファイルやディレクトリの削除には十分注意を払う必要があります。
まとめ
この記事では、UNIXとLinuxの概要、特徴、そして相違点について説明しました。
UNIXは、
- 様々なOSの基盤となった最古のオペレーティングシステムであり、長年の歴史から膨大な知見を有しています。
一方、Linuxは
- UNIXをベースに開発されたOSで、無償のオープンソースソフトウェアとして、世界中の技術者が協力して作り上げてきました。
- 豊富なディストリビューションから、現在でも企業のサーバーなどで幅広く利用されており、個人のデスクトップOSとしても人気があります。
コンピューターの歴史やサーバーについて学ぶ上で、UNIXとLinuxは避けて通れない存在です。
実際にUNIXやLinuxを使用し、CUIの操作に触れてみることをお勧めします。