世界中で広く採用されているERPソフトウェア「SAP」は、日本国内の多くの企業においても活用されています。
そのため、SAPの導入や開発に携わるSAPエンジニアやコンサルタントの職務に関心を寄せる人が増えています。
本稿では、以下の内容について解説します。
- SAPの概要と主要機能
- SAPエンジニア・コンサルタントの業務内容や必要なスキル
- この職種の年収水準や将来性
特に、SAPエンジニア・コンサルタントを志す方、この分野の仕事内容や収入面に興味のある方は、ぜひご一読ください。
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SAPとは
ERPソリューションの代表格であるSAPは、ドイツに本社を置く同社が開発したビジネスアプリケーションです。
ERPとは以下のことを指します。
- 企業資源を統合的に管理するシステム
- 人材、物資、資金などの経営資源を一元化して効率化を図ることができる
SAPは業界をリードするERPパッケージとして、企業名と製品名の両方で広く知られています。
SAPの主要モジュール
この節では、SAPが備える多様な機能について説明します。
SAPでは、それぞれの機能を「モジュール」と称しています。
主要なモジュールの概要を解説しましょう。
- 財務会計(FI)モジュール
会計業務全般を支援するモジュール |
主な機能は以下の通り |
・総勘定元帳管理 |
・債権債務管理 |
・固定資産管理 |
・予算管理 |
FIモジュールと財務会計システム
FIは企業の財務状況を示す重要な会計システムです。このモジュールを活用して、関係者向けの財務諸表を作成することができます。
企業活動には必ず会計処理が伴うため、FIは多くの企業で利用されている基幹ツールと言えます。
さまざまな会計業務に対応するため、以下のサブモジュールが用意されています。
- 財務管理
- 総勘定元帳
- 特別目的元帳
- 固定資産管理
- 債権管理
- 銀行業務
これらの機能を組み合わせることで、複雑な会計処理にも柔軟に対応できるようになっています。
COモジュールの概要と主要機能
COは、企業内の費用と収益を管理するための機能を備えたモジュールです。
財務諸表作成とは異なり、社内向けの原価計算や収益性分析を目的としています。
主な機能は、以下の3つに分けられます。
- 間接費の配賦
- 製品原価の算出
- 利益分析
間接費管理では、間接費を各部門に割り当てます。
製品原価管理では、直接費を集計し製造原価を算出します。
収益性分析では、集計された費用から原価や利益を分析します。
COの業務フローは企業ごとの目的によって異なり、多様な活用方法があります。
販売業務管理システム
この文書は、販売業務に関連する様々な機能を備えたモジュールについて説明しています。
具体的には、
- 受注処理
- 出荷管理
- 請求発行
などの業務を効率的に行うことができます。
顧客対応やロジスティクスの最適化にも役立ち、売上向上を支援する包括的なソリューションとなっています。
在庫・調達管理システムの概要
物品の管理を行うシステムを指し、発注元や発注量、在庫量などを一括して把握できる機能を備えています。
仕入れや在庫の状況を総合的に把握し、効率的な運用を実現することができます。
SAPエンジニア・コンサルタントの仕事内容
SAPの専門家には、エンジニアとコンサルタントの2つの役割があります。
エンジニアは、以下の業務を担当します。
- SAPシステムの設計、開発、テスト、保守運用などの技術的な業務
- クライアントへのアドバイス
- キャリアの初期段階では、保守運用やテストから始めることが一般的
- VBAやACCESSなどのスキルを活用して業務の効率化や自動化
一方、コンサルタントは、以下の役割を担います。
- SAPシステムの導入に関するアドバイス
- 企業に合わせたカスタマイズ
- 導入前には企業の状況を把握し、システム導入と併せて業務改善の提案
- 導入後は、プロジェクトマネージャーとして機能し、必要に応じてフォローアップも実施
SAPエンジニア・コンサルタントに必要なスキル
この節では、SAPの専門家やアドバイザーに求められる能力について説明します。
- SAPの専門家やアドバイザーには、以下の能力が求められます。
- SAPシステムの構築や運用に関する高度な技術力
- 業務プロセスの理解力と改善提案力
- 顧客との円滑なコミュニケーション能力
- プロジェクトマネジメント能力
能力 | 内容 |
---|---|
技術力 | SAPシステムの構築や運用に関する高度な知識と経験 |
業務理解力 | 顧客の業務プロセスを理解し、改善案を提案できる力 |
コミュニケーション力 | 顧客との円滑な意思疎通を図れる対話力 |
プロジェクト管理力 | プロジェクトを効率的に遂行できる能力 |
SAPエンジニア・コンサルタントのスキルと経験
SAPの専門家として成長するためには、各モジュールに関する深い理解と実践的な業務知識が不可欠です。
プロジェクトの現場で経験を積み重ねることで、スキルを磨き、キャリアを発展させることができます。
SAPプログラミング言語ABAPの概要
SAPシステムの開発や保守を行うエンジニアやコンサルタントには、SAPの独自言語であるABAPの理解が求められます。
ABAPは「Advanced Business Application Programming」の略称で、SAPソフトウェアを構築するためのプログラミング言語です。
当初はCOBOLに似た手続き型言語でしたが、徐々にオブジェクト指向の概念を取り入れて進化を遂げています。
ABAPのプログラムは主に、
- データ出力用のレポート
- バッチ処理用のバッチインプット
- 画面入力用のDynpro
の3種類に大別されます。
SAPコンサルタント認定資格の重要性
SAPでは、コンサルタントとしてキャリアを積む際に、専門的な資格の取得が推奨されています。
この認定資格を手にすることで、SAPに関する知見や実務経験を客観的に示すことができ、業務範囲の拡大にもつながります。
SNSなどでデジタルバッジを掲載し、保有スキルをアピールすることも可能です。
資格がなくてもコンサルタント業務自体は行えますが、より高度な専門性を身につけるためには、資格取得を検討するのが賢明でしょう。
SAPエンジニア・コンサルタントの年収
SAPの専門家の収入は、500万円前後から1,500万円前後と幅広い範囲にわたります。
導入プロジェクトでの実績を積み重ね、プロジェクト管理者の経験を重ねることで、収入を向上させることができるでしょう。
- 様々な職種や分野での活躍
- SAPに関連する技術以外の能力を身につけること
が、収入アップのポイントとなるでしょう。
SAPエンジニア・コンサルタントの将来性(2024年問題)
SAPエンジニア・コンサルタントの将来性について検討しましょう。
日本国内の多くの企業がSAP ERPを導入しており、2027年にサポートが終了する問題が存在します。この「2027年問題」の解決策として、
- S/4HANAへの移行
- 他ERPの利用
が考えられますが、いずれの選択肢も大きなコストと労力が必要とされます。
そのため、2027年までの間はSAPの移行プロジェクトが増加し、SAPコンサルタントの需要が高まると予想されます。
また、グローバル化の流れでSAPシステムを導入する企業も増加すると考えられます。
したがって、SAPのフリーランスエンジニア・コンサルタントの需要は今後高まっていくでしょう。
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