派遣と出向の違いとは?それぞれの労働形態が持つ特徴と働く際の注意点を紹介

現代社会では、従来の雇用形態とは異なる労働スタイルが浸透しつつあります。
企業の事情や契約内容によって、勤務環境が大きく変化することも珍しくありません。
そのため、新しい職場環境に適応できずに戸惑う労働者も少なくありません。

「派遣」と「出向」は、異なる場所で業務に従事する点で共通していますが、その性質は必ずしも同じではありません。
このような雇用形態の違いを理解することが、スムーズな就労につながるでしょう。

本稿では、派遣と出向の相違点を解説し、それぞれの留意事項を説明します。

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派遣と出向の違いについて

派遣と出向の違いについて

労働者が異なる場所で業務に従事する形態として、派遣と出向があります。
しかし、両者には多くの相違点が存在します。
ここでは、様々な観点から派遣と出向の違いについて比較していきます。

観点 派遣 出向
雇用関係 派遣元企業との雇用関係が維持される 出向先企業との雇用関係が発生する
指揮命令系統 派遣先企業の指揮命令下に入る 出向先企業の指揮命令下に入る
期間
  • 原則3年を超えない期間
  • 期間の定めはない
目的
  • 労働力の臨時的な補充
  • 専門的な知識・技能の活用
  • 人材の相互交流
  • 人材育成

派遣と出向の違い

労働形態には様々な種類があり、派遣と出向には明確な違いがあります。

  • 派遣労働者は派遣会社から雇用され、派遣先企業で業務を行いますが、派遣先との直接的な雇用関係はありません。
  • 一方、出向は本社に所属したまま、子会社や関連企業で勤務する形態です。

出向には在籍型と転籍型の2種類があり、

  • 前者は出向元と出向先の両社と雇用契約を結び、
  • 後者は出向元との契約を解消し、出向先と新たに契約を結びます。

出向の場合、勤務先企業が変わるため、異動とは異なる労働形態となります。

派遣と出向の雇用期間の違い

雇用形態である派遣と出向には、労働期間に関して相違点があります。

派遣労働者については、労働者派遣法の改正により、同一の従業員を3年を超えて同一の職場や部署で勤務させることが禁止されています。つまり、3年経過後は別の職場や部署への異動が必要となるのです。馴染みの職場を離れざるを得ないことが派遣労働のデメリットとなり得ます。ただし、

  • 無期雇用派遣として登録すれば、期間の制限なく同職場での勤務が可能です。
  • 産休や育休の代替要員、期限付きプロジェクトのメンバーとしての場合は、この3年ルールは適用されません。

一方、出向については、法的な雇用期間の規定はありません。各企業が定めた期間が出向期間として適用されます。出向期間の延長や短縮が可能なため、予定外のタイミングで出向元企業に復帰する場合があります。ただし、出向期間の変更は、あらかじめ出向規定に変更の可能性を明記している企業のみが認められます。不当な出向変更があれば、就業規則を確認する必要があります。

派遣と出向の労働時間の違い

労働条件における派遣と出向の相違点は、労働時間の決定方法にあります。

派遣の場合、労働時間は以下のように決められます。

  • 派遣元企業と受入企業間の「労働者派遣契約」で定められる
  • 具体的な労働時間、休憩、休日、有給休暇の取得ルールなどが契約時に確定する
  • 派遣先企業は、派遣元の36協定の範囲内であれば時間外労働を命じられる
  • 基本的には契約通りの労働時間を遵守することが求められる

一方、出向では以下のようになります。

  • 出向先企業の労働時間が適用されるケースが多い
  • 業務内容の変更に伴い従来と異なる勤務時間になる可能性がある

在籍型出向であれば出向元との雇用契約が継続するため有給休暇は消化可能ですが、転籍出向の場合は以下のようになります。

  • 出向先と新たに雇用契約を結ぶ
  • 出向元で取得可能だった有給休暇が使えなくなる点に留意が必要

派遣と出向における給与支払い条件の違い

労働者の給与支払い条件は、派遣と出向では異なります。

  • 派遣社員は、雇用主である派遣会社から賃金を受け取ります。派遣先企業が派遣会社に人件費を支払い、派遣会社がその中から経費を差し引いた額を従業員に渡すのが一般的です。
  • 一方、在籍型出向者は出向元と出向先の両社と雇用契約を結んでいるため、どちらの企業から給与を受け取ってもかまいません。出向契約で支払い元を定めることになります。
  • 転籍型出向の場合は、出向先企業から出向先の水準に合わせた給与が支払われるため、場合によっては年収が下がる可能性があります。

派遣の特徴

派遣の特徴

労働形態としての派遣には、固有の長所と短所が存在します。
ここでは、派遣労働に特有の性質について説明いたします。

長所

  • 企業は必要な人材を柔軟に確保できる
  • 労働者は自分の希望や適性に合った仕事を選べる
  • 雇用の流動化が促進される

短所

  • 雇用が不安定になりがち
  • 教育訓練の機会が少ない
  • 賃金が低い傾向にある
長所 短所
柔軟な人材確保 雇用の不安定さ
希望や適性に合った仕事 教育訓練機会の少なさ
雇用の流動化 賃金が低い傾向

自分らしく働ける派遣の魅力

臨機応変な働き方が可能なのが派遣の利点です。

  • 希望する職種、労働時間、勤務地などの条件を事前に示すことができるため、理想的な仕事を見つけやすくなります。
  • また、雇用契約の範囲外の業務を強制されることがほとんどないので、本来の仕事に専念しやすい環境が整っています。

派遣会社のサポート体制

労働者が派遣会社に所属することには、様々な利点があります。

  • 不当な扱いを受けた際には、派遣会社が仲介して是正を求めてくれます。
  • 新しい派遣先を決める際にも、担当者と相談できます。
  • キャリア相談にも応じてくれる派遣会社もあり、将来の働き方に合わせた提案をしてくれます。
  • さらに、無期雇用や正社員への移行を勧める場合もあります。

派遣での収入アップのためのスキルアップ

派遣労働者の収入は、個人のスキルや能力によって大きく左右されます。
専門的な資格や経験の有無が、派遣先企業における評価の重要な基準となるためです。
同じ職場でも、スキルを持つ者と持たない者では収入に開きが生じる可能性があります。
収入アップを目指すならば、スキル向上に努めることが肝心です。

  • 担当業務に関連する資格取得や、様々な企業での実務経験を積むなどして、自らの能力を高めていくことが賢明でしょう。

出向の特徴

出向の特徴

会社から異動する際には、固有の性質や長所・短所が存在します。
次の点を踏まえて、出向の特性を確認しましょう。

  • 出向は、本人の同意が必要です。
  • 出向先での人事権は、出向元企業が持ちます。
  • 出向期間は、通常3年以内と定められています。
  • 出向期間中の給与は、出向元企業から支払われます。
  • 出向期間終了後は、原則として出向元企業に復帰します。
長所 短所
新しい経験や知識を得られる 出向元企業との関係が希薄になる可能性がある
キャリアアップの機会となる 出向先企業の文化に馴染めない可能性がある
人脈を広げられる 出向期間中の評価が不明確になる可能性がある

出向の目的と影響

従業員の能力向上や新たな経験を積むことを目指し、社内外の異なる環境で業務に従事させることが出向の主な目的です。

  • 在籍型出向では、新しい職場での責任感や人間関係を通じて、キャリア形成に資する機会を与えることができます。
  • 一方、転籍型出向は、子会社への知識・ノウハウの移転や職場環境の改善などを企図して行われる場合があります。

また、親子会社間の橋渡し役として重要な役割を担うこともあり、出向者にとってはメリットとなりますが、一部には不本意な異動と受け止められ、士気の低下を招くリスクもあります。

出向のメリット

正社員としての地位を保ちながら、様々な企業での経験を積むことができるのが出向の大きな利点です。
通常の就職では、同じ会社で長期間勤務することになり、視野が狭くなる恐れがあります。
一方で転職には不安定さが伴います。
出向であれば、安定した待遇を維持しつつ、新たな環境で業務に従事できるため、バランスの取れた経験値の向上が期待できます。
労働条件の大幅な変更もないため、スムーズに異なる職場に適応することができるでしょう。

出向命令の可否と注意点

会社から出向指示があった際、原則として従わなければなりません。しかし、以下の場合は、出向を拒否することができます。

  • 就業規則や労働協約に出向に関する規定がない場合
  • 会社側に不当な意図がある場合

つまり、状況によっては出向を断ることが許容されますが、一方的な拒否は問題視される可能性があります。

派遣および出向を行う際の注意点

派遣および出向を行う際の注意点

労働者が派遣や出向に従事する際には、事前に留意すべき重要な点があります。
以下の内容を確認し、適切に対応することが求められます。
派遣や出向の業務に携わる前に、これらの項目を十分に把握しておくことが賢明です。

  • 労働条件の確認
  • 項目 内容
    賃金 時給や手当てなどの支払い条件を確認する
    労働時間 所定労働時間や残業の有無を確認する
    休暇 年次有給休暇や特別休暇の取得条件を確認する
  • 安全衛生対策の確認
    • 作業環境の安全性を確認する
    • 健康診断の実施状況を確認する
  • 社会保険の加入状況の確認
  • 教育訓練の有無の確認
  • 苦情処理体制の確認

労働環境変化時の労働条件確認の重要性

労働環境の変化に伴い、労働条件を確認することが肝心です。

  • 派遣社員は明示されていない業務を拒否できますが、条件を理解していないと過剰な負担を強いられかねません。

出向時も時間外労働や休日労働のルールを事前に把握し、出向元と出向先の違いを認識することが重要です。

  • 出向先が出向元のルールを無視して働かせようとする恐れもあり、問題があれば自ら指摘する必要があります。

偽装出向の危険性

労働者の異動に関する不適切な慣行が存在しています。

  • 出向元企業と出向先企業に実質的な関係がないにもかかわらず、従業員を出向させる行為があります。
  • この場合、出向ではなく労働者派遣業と見なされる可能性があり、法的規制の対象となります。

出向先企業から不当な資金提供を受けたり、複数企業への繰り返しの出向が行われていれば、偽装出向と判断される恐れがあります。

  • 偽装出向と認定されれば、企業は法令違反として処分を受ける可能性があります。
  • 従業員個人に対する罰則はほとんどありませんが、企業として問題のある行為を行っていたことには変わりなく、将来的なリスクを抱えることになるでしょう。

派遣と出向の共通点

派遣と出向の共通点

労働者の異動形態である派遣と出向には、相違点が存在する一方で、類似した側面も存在します。
ここでは、両者に共通する特徴について説明していきます。

  • 労働者の雇用主は、派遣元企業または出向元企業のままである
  • 労働者は、派遣先企業または出向先企業で就労する
  • 労働者の給与は、派遣元企業または出向元企業から支払われる

つまり、派遣と出向では、労働者の雇用関係は変わらず、就労先が変更される点で共通している。

区分 派遣 出向
雇用主 派遣元企業 出向元企業
就労先 派遣先企業 出向先企業
給与支払い 派遣元企業 出向元企業

派遣・出向の心構え

労働形態は多様化しており、派遣や出向など、様々な職場で勤務することが一般的になってきました。
勤務先によって業務内容や方法が異なるため、柔軟な姿勢と業務への理解が不可欠です。
環境の変化は心理的負担となり得るため、変化に対する適応力が求められます。

派遣・出向における選択の自由

労働者は派遣や出向の際、自らが勤務先を選択することはできません。

  • 派遣の場合、条件に合致する企業が紹介されますが、多数の選択肢から自由に決められるわけではありません。
  • 適切な職場がなければ、就労が困難になる可能性があります。

無期雇用派遣では、雇用期限の制限はありませんが、派遣会社の指示で勤務先が決定されるため、選択の余地がなくなります。
出向についても、基本的に労働者が勤務先を選べず、出向命令に従わざるを得ません。

派遣と出向では、労働者の意向が十分に反映されにくい側面があり、注意が必要です。

フリーランスなら自分の意思で働く場所を選べる

フリーランスなら自分の意思で働く場所を選べる

派遣と出向には多くの相違点がありながらも共通点も存在します。それぞれの特性を検討した結果、「自分には適さない可能性がある」と感じた方もいるかもしれません。

そのような場合におすすめなのが、フリーランスという働き方です。

  • フリーランスであれば、自身で就労場所や企業を選択できるだけでなく、業務内容も契約時に明確に決定できます。
  • 自身の求める環境や条件の下で働くことができるため、理想的な労働スタイルを実現できるでしょう。

現在派遣として勤務している方や、会社から出向命令を受けた方は、より自由度の高いフリーランスへの転身を、この機会に検討されてはいかがでしょうか。

まとめ

まとめ

フリーランスなら、自分の求める労働環境や就業条件を優先して自由に仕事を選べます。
リモートワークの普及により、自宅からフリーランスとして活躍する人も増えており、ワークライフバランスの向上にもつながります。
この機会にフリーランスへの移行方法や働き方のポイントを確認し、労働スタイルの変更を検討してみてはどうでしょうか。
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