情報技術分野で活躍する専門職には、システムエンジニアとプロジェクトマネージャーがいます。
両者は技術者として分類されますが、期待される役割と職務は大きく異なります。
プロジェクトマネージャーは上位職階にあたり、多くがシステムエンジニア経験者から昇進しています。
本稿では、
- システムエンジニアとプロジェクトマネージャーの職務の違いを確認し、
- プロジェクトマネージャーに必要なスキルを紹介します。
また、
- システムエンジニアからプロジェクトマネージャーへの昇進方法、
- プロジェクトマネージャーの収入水準、
- 有用な資格についても言及します。
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SEとPMの仕事内容の違い
システムエンジニアという職種には、SEとPMという2つの異なる役割があります。
それぞれの業務内容は大きく異なっています。
- SEの主な責務は、システムの設計や開発、テストなどの技術的な側面を担当することです。
- 一方、PMは、プロジェクト全体の進捗管理や、関係者間の調整、リソース配分などをリードする役割があります。
つまり、SEが技術的な実務を行うのに対し、PMはプロジェクトの円滑な運営を図る立場にあるといえます。
システムエンジニアの役割と業務
プロジェクトにおいて、システムエンジニアは開発者としての役割を担います。
主な職務は、
- クライアントとの要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
など、上流工程の業務が中心となります。
ただし、プロジェクトによってはプログラミングを行うこともあります。
システムエンジニアは、プロジェクトマネージャーが作成した工程表に従うだけでなく、自身の判断力も求められます。
例えば、プログラミング中に問題が発生した場合、
- 上流工程に立ち返り
- 問題の原因究明
- 改善対応
が必要となります。
プロジェクトマネジメントの役割
プロジェクトの全体を統括する責務を負うのがプロジェクトマネージャーです。
彼らは作業者としての役割ではなく、チーム全体のマネジメントを主な職務としています。
- 意思決定権を有するほか、
- メンバーの状況を常に把握し、
- 支援が必要な者をフォローアップする必要があります。
PMに必要なスキル
プロジェクトマネージャーに求められる主要な能力は、以下の4つです。
- 計画立案と進捗管理
- コミュニケーションと交渉力
- 問題解決力
- ITに関する幅広い知見
まず、スケジュールや予算などを適切に管理する能力が不可欠です。
次に、関係者間の円滑な意思疎通と調整力が重要となります。
さらに、課題が生じた際に適切に対処できる問題解決能力も欠かせません。
最後に、インフラからアプリケーション開発に至るまでITの全般的な知識が求められます。
これらの能力を備えることで、プロジェクトを成功に導くことができます。
プロジェクト管理の基本
プロジェクトマネージャーの職務では、スケジュール管理や予算管理が主要な役割を担っています。これらは企画の根幹であり、適切な運営がなされなければ、期限内の目標達成は困難となるでしょう。
プロジェクト開始時には、全体の工程表を早期に作成することが求められます。その際、
- 体制
- リソース
- 人員
- リスク
なども検討する必要があります。
また、予算内で事業を完遂できるよう、
エンジニアの配置やスケジューリングなども慎重に検討しなければなりません。
PMの役割
プロジェクトマネージャーは、チームにおける主導的役割を担います。
メンバーへの指示や支援が求められるほか、困難に直面した際の助言提供も期待されます。
また、プロジェクトマネージャーは社内外の関係者と頻繁に関わる機会があります。
- 発注元や外注先とのコミュニケーションは、プロジェクトの成功に不可欠です。
- 発注元との適切な意思疎通がなされない場合、要求と異なる成果物を納めてしまうリスクが高まります。
- さらに、費用や作業範囲について調整が必要な場合もあります。
外注先との円滑なコミュニケーションに加え、相手が快適に業務に従事できるよう配慮することが求められます。
トラブル対応力が問われるPMの役割
プロジェクトの推進過程において、予期せぬ障害に直面することは珍しくありません。
そのため、プロジェクトマネージャーには以下の能力が必須となります。
- 問題の根源を特定する経験、知見、能力
- 解決策を見出せる経験、知見、能力
プロジェクトマネージャーは単に指示に従って定型業務を遂行するのではなく、
システム開発の進捗状況に応じて柔軟に対応することが求められています。
プロジェクトマネージャーに求められる高度なIT知識
プロジェクトマネージャーは、通常は各工程での実作業を行うことはほとんどありません。プロジェクトによっては、マネジメント業務のみに従事する場合もあります。
しかし、プロジェクトメンバーからの質問や相談に対応するためには、IT全般に関する高度な知識が不可欠です。また、メンバーが対処できない問題が発生した際には、プロジェクトマネージャーが支援に入ることも珍しくありません。
IT分野の深い専門知識を身につけるには、以下が求められます。
- 様々なプロジェクトに携わり経験を積むこと
- 日頃からIT全般に関する情報収集
PMになる方法
開発者からプロジェクトマネージャーへの移行には、いくつかの方策があります。
- まず、上流工程の開発プロジェクトに携わることで、より広範な視野と経験を得ることができます。
- また、リーダーシップの機会を積極的に求め、マネジメント能力を磨くことも重要です。
- さらに、スケジュール管理や予算管理などの業務に主体的に関与し、プロジェクト運営の実践的なスキルを身につけることができます。
これらの取り組みを通じて、開発者からプロジェクトマネージャーへの円滑な移行が可能となるでしょう。
PMの役割と成長
システム開発における上流工程は、プロジェクトマネージャーが主に携わる領域です。
この工程には
- 企画立案
- 業務要件の明確化
- 基本設計
- 詳細設計
などの作業が含まれています。
これらの作業は決まった手順に従うだけでは済まされません。案件ごとに異なる課題が存在し、自らの判断力を発揮しながら進めていく必要があります。
システム開発の基礎知識は書籍などから学ぶことができますが、プロジェクトマネージャーとして優れた能力を発揮するには、多くの実践経験を積む必要があります。
様々な案件に携わることで応用力が身に付き、複雑な課題にも対処できるようになるのです。
PMの役割と求められる資質
プロジェクトを統括する役割を担うPMは、技術者というよりもマネジメント的な立場と言えます。
そのため、以下が不可欠となります。
- 人々から好意を持たれる人格
- プロジェクトを適切に進行させるリーダーシップ
- 周囲を巻き込む力
さらに、メンバーが快適に業務に従事できるよう配慮することも重要です。
PMを志す方は、エンジニアリングスキルの向上と並行して、リーダー経験を積むことが賢明でしょう。
実際、PMの求人では、
PMの多面的な役割
PMの役割には、単なる開発業務やマネジメント業務だけでなく、プロジェクトの進行管理も含まれています。
スケジュール策定や予算執行管理などの経験がなければ、優れた技術力を持っていても業務遂行上で支障が生じる可能性があります。
そのため、何らかの形でスケジュール調整や予算運用を経験しておくことが、PMとして円滑な業務遂行につながるでしょう。
PMの年収
プロジェクトマネージャーの収入状況に関する調査結果が明らかになりました。
中央値で月額75万円、最高で210万円、最低でも20万円の報酬が得られるようです。
フリーランスとして活躍する場合、年収は900万円から1200万円程度が一般的な水準と考えられます。
ITプロフェッショナルの中でも高度な専門性とマネジメント能力が求められるため、収入面での処遇は比較的良好な傾向にあります。
PMにお勧めの資格
確かに、プロジェクト管理の分野で活躍するためには、専門的な資格を取得することが有益です。
プロジェクトマネージャーを目指す方向けの代表的な資格には、
-
プロジェクトマネージャ試験 PMP P2M PMOスペシャリスト認定資格(PMO-S(TM))
があります。
これらの資格は、プロジェクト管理に関する知識と実践力を認定するものです。
各資格の特徴や取得方法について、詳しく説明していきましょう。
プロジェクトマネージャ試験の概要
プロジェクトマネージャの国家資格は、情報処理推進機構(IPA)が主催しています。
この資格試験は、プロジェクトの統括責任者を対象としています。
合格すれば、高度なIT専門知識とプロジェクト管理に必要なスキルを有することが証明されます。
試験範囲は、
- IT全般
- 予算・スケジュール・品質管理など
が含まれます。
難易度が非常に高く、情報処理技術者試験の中でも最難関とされ、合格率は15%前後となっています。
PMPの国際資格について
プロジェクトマネジメントの国際資格であるPMPは、米国に本拠地を置くNPO法人が主催しています。
この資格を取得すれば、国内外でスキルを証明できるようになります。
PMPの保有者は情報技術分野だけでなく、広告や製造業界にも多数存在し、世界中で100万人を超える人々が取得しています。
様々な業界でプロジェクトマネジメントに関する知識を示す資格として認知されています。
PMPの試験を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 一定の学歴要件を満たすこと
- 35時間に及ぶプロジェクトマネジメント研修の受講
P2M資格の概要と取得のメリット
プロジェクトやプログラムの運営に関する民間資格としてP2Mが存在します。この資格は特定非営利活動法人である日本プロジェクトマネジメント協会が認定を行っています。
P2Mを取得することで、プログラムマネジメントに関する知識や技能を証明できます。
また、この資格の試験内容は日本の組織体制に適した形になっています。
P2Mの学習を通じて、分析的なプロセスアプローチ力や全体を見渡して価値を生み出す力が身に付きます。
P2Mの合格率は比較的高く、約7割となっているため、参考書などを活用して努力すれば合格が見込めます。
PMOスペシャリスト認定資格の概要
一般財団法人日本PMO協会が主催する認定資格があります。この資格を取得すると、組織内のプロジェクトマネジメントに対する横断的な支援を行うスペシャリストとして認められます。
試験では、プロジェクトマネジメントに関する幅広い知識が問われます。
- PMOの位置づけや定義、活動事例などの知識面と、
- プロジェクトマネジメント課題の抽出や具体的支援内容の策定などの技術面が出題されます。
この認定資格を受験するには、プロジェクトマネジメント関連の資格保有が前提条件となります。
まとめ
SEとPMは、両者ともエンジニアを指す用語ですが、役割と職務内容が異なります。
PMはSEよりも上位に位置づけられ、チームをリードする能力が求められます。
- エンジニアには様々なキャリアパスがありますが、SEからPMへの移行は一般的なキャリアアップの選択肢の一つです。
- SEからPMに転向すると、上流工程の開発に関与する機会が増え、マネジメント業務も増加します。
エンジニアの皆様にとって、本記事が役立つことを願っています。