情報セキュリティ管理士認定試験の詳細やおすすめ対策法を解説

近年、企業におけるIT活用が進む中、セキュリティに関する深い知見が必要とされています。
しかし、開発者以外の従業員のITリテラシーやセキュリティ知識が不足しているのが実情です。
そこで、企業内でセキュリティ管理を担い、関連知識の普及に携わる人材に適した資格が情報セキュリティ管理士です。
本稿では、この資格の試験概要、受験のメリット・デメリット、そして効果的な学習方法について解説します。

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情報セキュリティ管理士認定試験とは

情報セキュリティ管理士認定試験とは

一般財団法人全日本情報学習振興協会が主催する情報セキュリティ管理士認定試験は、セキュリティ管理に関する知識を問う試験です。
出題範囲には、

  • セキュリティトラブルの事例とその対処方法
  • セキュリティ対策に係る社内制度の策定と運用方法

などが含まれます。

この資格は技術者のみを対象としたものではなく、むしろ事務職や経理職、人事職、管理職など技術職以外の方の受験が推奨されています。
実際、情報漏えいなどのセキュリティインシデントが発生しやすいのは技術職とは無関係な部門であることが多いためです。

そのため、技術職以外の社員がセキュリティに対する理解を深めることで、社内ネットワークをより安全に運用できるようになります。

情報セキュリティ資格の階層

全日本情報学習振興協会は、情報セキュリティ分野における複数の認定資格を運営しています。

  • 情報セキュリティ管理士認定試験は、管理職向けの上位資格であり、プロジェクトリーダーなどが対象となります。
  • 情報セキュリティ初級認定試験は、一般従業員や個人のインターネット利用者向けの基礎的な内容が出題されます。

これらの資格は、かつては情報セキュリティ検定として3段階の級があり、現在の初級認定試験が3級程度、管理士認定試験が2級・1級程度に相当します。

さらに上位資格として、情報セキュリティ監査人の資格も用意されており、管理士合格後に講習を受講することで取得できます。この資格では、企業のセキュリティ監査に関する知識を学ぶことができます。

情報セキュリティ管理士認定試験

情報セキュリティ管理士認定試験

情報セキュリティに関する基礎的な知識を問う試験では、技術者にとって日常業務で当然意識していることが出題されます。
試験の内容について詳しく確認しましょう。

情報セキュリティ管理士認定試験概要

情報セキュリティに関する資格試験の詳細を説明します。
この試験は、

  • 全国11か所の指定された会場で受験できる
  • オンラインでも受験が可能

です。
試験は年4回実施され、2022年は

  • 2月
  • 5月
  • 8月
  • 11月

に行われます。
試験形式はPBTで、時間は120分間です。
問題数は非公開ですが、合格には全単元の7割以上の正解が必要です。

受験料 金額
一般 11,000円
学生 7,700円
情報セキュリティ初級認定試験合格者 6,600円

出題形式は選択式の筆記試験で、受験資格は特に制限がありません。

情報セキュリティ管理士試験の出題範囲

情報セキュリティ管理士試験の出題範囲は幅広く、コンピュータの基礎知識から実践的な対策まで多岐にわたります。
近年の事例を踏まえ、情報セキュリティの目的と3要素、関連法規を理解することが重要です。
脅威としては、

  • 紙媒体
  • 人的要因
  • コンピュータ
  • インターネット
  • 電子媒体

などさまざまな側面があり、それぞれに対する適切な対策を身につける必要があります。
また、

  • OS
  • アプリケーション
  • ハードウェア
  • スマートデバイス

などコンピュータの一般知識も問われます。
合格には4つの単元すべてで70%以上の正解率が求められ、バランスの取れた学習が不可欠です。

情報セキュリティ管理士認定試験の概要と合格への課題

情報セキュリティ管理士の認定試験は、2005年に情報セキュリティ検定試験として開始され、2018年には受験者数が6万人を超えました。
過去の合格率は約49.6%であり、2013年度の平均合格率は47.9%と公表されています。
つまり、平均的な合格率は概ね5割前後と見なせます。
情報セキュリティに関する知識や経験があれば、この試験は難しいものではありません。
IT分野で働いている方であれば、既に多くの内容を把握していることでしょう。
しかし、この試験の平均合格率が低いと感じられるのは、本来的な対象者がIT業務に携わる機会の少ない管理職層であることが大きな要因です。
問題数は非公開ですが、試験範囲は広範囲に及び、120分の制限時間内にすべての問題を解答しなければなりません。
そのため、情報セキュリティに関する知見があっても、出題形式に慣れておく必要があります。

情報セキュリティ管理士認定試験の申込手順と注意点

情報セキュリティ管理士認定試験の申込手続きには、オンラインと郵送の2つの方法があります。

  • オンラインの場合は、公式サイトで必要事項を入力し、支払い方法を選んで受験料を納めます。クレジットカード決済が完了すれば手続き終了です。
  • 郵送の場合は、申込書に記入して協会に送付し、コンビニや銀行で受験料を支払います。受験票が届いたら、写真を貼り付ける必要があります。

オンライン申込みの方が手続きが簡単で早いため、おすすめです。受験票は試験10日前までに届きますが、万が一届かない場合は速やかに問い合わせましょう。受験方法は、自宅でのオンライン受験と会場受験から選べます。オンライン受験の際は、視野角120度以上のWebカメラが必須です。協会からの貸出サービス(1,540円)も利用できます。

合格発表は試験約1ヶ月後に公式サイトで行われ、合格者には認定証書と認定カードが送られてきます。これらは6ヶ月以内に受け取る必要があります。

情報セキュリティ管理士資格の更新制度

情報セキュリティ管理士の認定は永続的に有効です。
ただし、認定カードについては法令の変更により2年ごとの更新が義務付けられています。
更新には

  • 年1回、2,200円の講習を受講する必要があり、2回の講習後に新しい認定カードが交付されます。

講習を受けられなかった場合でも、後日受講すれば資格を維持できますが、期間外となると

  • 受講料が5,500円に高額化し、講習時間も通常の2倍となるため、期限内の受講が推奨されます。

また、4回の講習と2回の更新を経た者には上級資格が付与される制度があります。

情報セキュリティ管理士試験の勉強時間と重点分野

情報セキュリティ管理士の資格取得に向けた学習時間は、一般的に10時間から20時間程度と言われています。
しかし、IT業界で活躍するエンジニアにとっては、日頃の業務でセキュリティに関する知識を身につけているため、比較的スムーズに試験に対応できるでしょう。

ただし、この資格試験は4つの単元から構成され、全ての単元で7割以上の正解率が求められます。
特に「情報セキュリティ総論」は、マネジメント視点からの出題が中心となるため、業務経験だけでは不足する可能性があります。
そのため、この単元を重点的に学習することをおすすめします。

1単元あたり10時間から20時間の学習時間が必要と考えると、IT業界以外の受験生は40時間から80時間程度の準備期間を確保する必要があります。
合格を目指すためには、問題演習に十分な時間を割くことが重要です。

情報セキュリティ管理士認定試験の資格取得のメリット

情報セキュリティ管理士認定試験の資格取得のメリット

情報セキュリティ管理士の資格を取得することで得られる利点は多岐にわたります。

  • まず第一に、専門的な知識とスキルを身につけることができる点が挙げられます。試験の範囲は広範囲に及び、情報セキュリティに関する包括的な理解が求められます。
  • 次に、この資格を持つことで、企業や組織から高い評価を受けられる可能性があります。情報セキュリティの重要性が高まる中、有資格者への期待は大きくなっています。
  • さらに、キャリアアップの機会が広がる点も見逃せません。情報セキュリティ分野での活躍の場が増えており、資格取得は大きな武器となるでしょう。

情報セキュリティ管理士認定試験の重要性

企業における情報漏洩やセキュリティ上の問題は、著名な大手企業でさえ後を絶たない状況にあります。
企業内で発生するセキュリティインシデントの多くは人的要因によるものと指摘されています。
そこで、情報セキュリティ管理士の資格試験に合格することで、

  • 個人のセキュリティ意識が高まり、
  • 適切なセキュリティ管理の手法が組織全体に浸透することが期待できます。

情報セキュリティ管理士の転職・就職への活用

マネジメント職の方にとって、IT・Web企業への転職や就職において、情報セキュリティ管理士の資格が役立つ場合があります。
しかし、IT業界で働く上では、セキュリティ意識を持つことが当然のことと考えられています。
そのため、エンジニアなどの技術職を目指す場合、直接的には情報セキュリティ管理士資格の恩恵は少ないかもしれません。
ただし、インフラ関連の職に未経験から転職・就職する際に、インフラ関連資格に加えて情報セキュリティ管理士の資格を取得していれば、セキュリティに関する深い理解があると評価される可能性があります。
したがって、面接で有利になりたい人には、この資格の取得をお勧めします。

情報セキュリティ管理士資格と企業の手当

企業によっては、IT関連の資格を取得することで、給与に上乗せされる可能性があります。
特に経験が浅く収入が少ない時期には、追加の収入源となるため有難いことでしょう。
ただし、すべての企業が全ての資格に手当を支給するわけではありません。

  • 企業ごとに指定された資格のみが対象となるため、情報セキュリティ管理士認定試験が手当の対象かどうかを事前に確認する必要があります。

情報セキュリティ管理士認定試験は一般的な資格ではないため、手当を目的とする場合は十分な確認が不可欠です。

情報セキュリティ管理士認定試験の資格取得のデメリット

情報セキュリティ管理士認定試験の資格取得のデメリット

情報セキュリティ管理士認定試験の受験には、確かに利点だけでなく、検討すべき欠点も存在します。
ここでは、この資格試験の負の側面について説明していきましょう。

  • 受験料が高額である
  • 試験範囲が広範囲にわたる
  • 合格率が低い
  • 資格取得後の活用方法が限られる
欠点 説明
受験料が高額 受験料は3万円以上と高額である。
試験範囲が広範囲 情報セキュリティに関する幅広い知識が必要とされる。
合格率が低い 合格率は2割程度と低い水準にある。
活用方法が限られる 資格取得後の活用の場が限られている。

情報セキュリティ管理士試験の勉強時間確保の難しさ

情報セキュリティ管理士の資格取得を目指す際、IT業界に関係する人々であっても、必ず学習時間を確保することが求められます。
この試験は難易度が極端に高いわけではありませんが、

  • 広範囲にわたる出題範囲と、
  • 問題数に対して制限時間が短いこと

が課題となります。
そのため、エンジニアとして活躍する人でさえ、スピーディーな問題解答力を身につけるために、演習問題に多くの時間を費やす必要があります。
しかし、本業や学業で多忙な中で10時間以上もの学習時間を確保するのは容易ではありません。
さらに、情報セキュリティ管理士試験の受験日は自由に選べないため、申し込み時には仕事や学校での多忙期を考慮する必要があります。

情報セキュリティ管理士資格の限界

情報セキュリティ分野における資格の価値は、状況によって異なる可能性があります。
IT業界では実践的な能力が重視される傾向にあり、セキュリティに関する高い意識は当然のことと見なされています。
そのため、セキュリティ関連の資格が実務に直接的に役立つものでない場合、その価値は低く評価される可能性があります。
情報セキュリティ管理士の資格は、主にマネジメント層を対象としているため、エンジニアとしての転職や就職を目指す場合、有利に働かない可能性があります。
転職や就職に有利な資格を取得したい場合は、他の選択肢を検討することをお勧めします。

情報セキュリティ管理士認定試験合格のためのおすすめの参考書

情報セキュリティ管理士認定試験合格のためのおすすめの参考書

情報セキュリティ管理士の資格取得を目指す際は、公式機関が発行する教材を活用することが賢明です。試験対策として、次のようなリソースを事前に活用しておくと良いでしょう。

  • 公式テキストの熟読
  • 過去問題集の演習
  • 模擬試験の受験

これらの教材を計画的に活用し、知識とスキルの定着を図ることが合格への近道となります。試験範囲は広範囲に及びますので、着実な準備が何より重要です。

情報セキュリティ検定実物形式問題集の紹介

一般社団法人全日本情報学習振興協会から発行された問題集について説明します。
この問題集には、以下の内容が収録されています。

  • 情報セキュリティ管理士認定試験の過去問題
  • 情報セキュリティ管理士認定試験の解説

発行年は2019年ですが、現行の試験にも対応しているとのことです。
実際に同じ問題が出題されたという声もあり、セキュリティの知識がある人は、この問題集を読み込むだけで十分かもしれません。
この問題集は、情報セキュリティ管理士だけでなく、情報セキュリティ初級の内容もカバーしているため、以下のように活用できます。

  • 情報セキュリティ初級試験の受験時に活用できる
  • その後、情報セキュリティ管理士試験でも使える

情報セキュリティ管理士認定試験公式テキストの解説

技術評論社から発行された『最短突破情報セキュリティ管理士認定試験公式テキスト』は、情報セキュリティ管理士試験の受験に必要な知識を網羅しています。
304ページと分量は多めですが、一般常識レベルの内容も含まれているため、理解できる部分は飛ばしながら学習するのが効率的です。
本書には演習問題が掲載されていますが、問題数が少ないため、

  • 過去問集の併用をお勧めします。

情報セキュリティ管理士試験では過去問からの出題が多いためです。

情報セキュリティ管理士過去問集の活用法

泰文堂から発行された過去問集は、2016年以前の問題が収録されています。過去にこの問題集と全く同じ問題が出題された例があるため、試験対策として活用するのがよいでしょう。
ただし、解説に一部誤りがあるため、公式の問題集をメインに使い、この過去問集はサブ的な位置づけとするのが賢明です。

情報セキュリティ管理士試験の過去問例題活用

情報セキュリティ管理士試験の公式ウェブサイトには、過去問題の一部が例示として掲載されています。これらは単なる一例であり、全範囲をカバーしているわけではありません。
そのため、

  • 参考書の活用が不可欠となります
  • 公開されている問題も有効に活用することをお勧めします

情報セキュリティ管理士って実は役に立たない?

情報セキュリティ管理士って実は役に立たない?

情報セキュリティに関する資格の価値については、様々な意見があります。
IT業界では、高いセキュリティ意識は必須とされています。

  • 情報セキュリティ管理士の難易度は、エンジニアにとって特に高くないと考えられています。

一方で、

  • 国家資格である情報セキュリティマネジメント試験は、基本情報技術者試験と同程度の難易度とされ、より説得力があると言えます。

出題内容も類似しているため、セキュリティ関連の資格を取得する際は、情報セキュリティマネジメント試験を優先することが賢明でしょう。

まとめ

まとめ

企業において個人情報を適切に管理するためには、情報セキュリティに関する知識が不可欠です。
情報セキュリティ管理士認定試験は、そうした知識を問う試験であり、ITに関わる機会が少ない職種の方でも比較的受験しやすい資格です。
近年、企業のセキュリティ意識の欠如が原因で個人情報流出などのトラブルが後を絶ちません。
情報セキュリティ管理士の資格を取得することで、セキュリティ意識を高め、技術者と円滑に連携しながら企業運営を行えるようになるでしょう。
本記事が皆様の参考になれば幸いです。