日本のIT業界を支える中核的存在が、システムインテグレータと呼ばれる企業群です。
システムインテグレータには様々な規模や特色があり、そこで培われるスキルや経験にも幅広い違いがあります。
将来のキャリアパスも多岐にわたるため、事前に十分な調査を行い、自身の目指す姿を明確にすることが重要です。
本稿では、システムインテグレータの特徴、目指すべき職種、一般的な転職先、収入水準などについて解説します。
特に、以下の方はぜひご一読ください。
- システムインテグレータへの就職を検討中の方
- この業界の実態を知りたい方
- キャリアアップのための職種選択に悩む方
- 転職の選択肢を探している方
気になる内容をタップ
SIerの特徴
この節では、システムインテグレーター企業の特性を説明いたします。
システムインテグレーターとは、
- 様々なハードウェアやソフトウェアを組み合わせ、顧客のニーズに合わせたシステムを構築する会社のことを指します。
これらの企業は、
- 顧客の要求を的確に捉え、最適なソリューションを提供することに長けています。
- また、システムの設計から導入、運用、保守までを一貫して行うことができるのが大きな強みとなっています。
SIer多重下請け構造の問題点
SIer業界には、発注元の企業から業務が次々と下請け企業に委託されていく階層構造が存在します。この多重下請け構造では、頂点にある発注元企業から業務が中堅企業、中小企業、零細企業へと流れ込むピラミッド型の構図となっています。
建築業界と同様に、SIer業界でもこうした構造が一般的に見られます。
しかし、この多重下請け構造には課題も存在します。
- 業務が次々と下請け企業に委託されるため、中間マージンが多数発生し、実際に作業するエンジニアの給与が低くなりがちです。
- 下流の下請け企業ほど予算が限られ、ギリギリの人員で作業を行わざるを得ない状況に陥りやすく、雇用条件や労働環境の悪化につながる恐れがあります。
- さらに、「SIerは忙しい」「長時間労働」といったイメージが定着すれば、エンジニア不足が深刻化する可能性も危惧されます。
もちろん、すべての企業でこうした状況に陥っているわけではありませんが、多重下請け構造自体が様々な問題を引き起こしかねない構造であると言えるでしょう。
SIerの多様な専門性と業務範囲
システム開発に携わる専門家を指すSIerは、多岐にわたる業務を担当します。
ITに関する高度な知識が求められるため、一般企業ではエンジニアを雇用せず、SIer企業に外注することが多いのです。
ただし、案件ごとに異なるプログラミング言語が必要となるため、SIerが全ての案件を受注できるわけではありません。
- 様々な分野で専門性を持つSIerが存在し、特定の領域で高い能力を有すれば、SIer企業で活躍する機会があります。
SIerの業務範囲はシステム開発のみならず、
データベース | サーバー | ウェブサイトの構築 |
など、幅広い分野で活躍が期待されています。
ウォーターフォール開発の特徴と重要性
SIer企業における開発手法の一つに、ウォーターフォール型があります。この方式は、上流工程から順を追って下流工程へと進んでいく形式を指します。
主な流れとしては、
- 要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
- コーディング
- テスト
- リリース
という段階を経ます。
各工程は前の段階が完了してから次に移行するため、品質の確保とスケジュール管理が容易になります。
隣接する工程間では若干の反復はあるものの、基本的には前工程を確実に終えてから次に進むのが特徴です。
SIer企業で活躍するには、このウォーターフォール型開発の理解が重要視されます。
目指すべきSIerのポジション
この節では、システムインテグレーター企業において目指すべき主要な職務について説明します。
キャリアの道筋は多様であるため、個人の志向性に基づいて選択することが重要です。
SIerのキャリアパス
SIer業界において、目指すべき重要な役割の一つがプロジェクトマネージャーです。この役割は、プロジェクトの品質、納期管理など、全体を統括する責任を担います。
SIerには様々な規模や難易度のプロジェクトがあり、それぞれにプロジェクトマネージャーが必要とされます。
通常は小規模案件から始め、徐々に大規模プロジェクトを任されるようになります。
大規模プロジェクトを手がけるプロジェクトマネージャーは高い市場価値があり、十分な収入が期待できます。この役割から更に管理職へと進む道もあります。
プロジェクトマネージャーになるには、プログラミングスキルに加え、マネジメントやコミュニケーション能力が求められます。
これらは勉強で身につける部分もありますが、実践を重ねることが何より重要です。
最初は
- プロジェクトマネージャーの補佐役
- PMO
などの経験を積むことをおすすめします。
ITアーキテクトの役割と重要性
ITアーキテクトは、システム開発プロセスにおいて重要な役割を担う職種です。
この職種は、IT開発の規格策定や推進、実行に関わる課題を分析する役割を持っています。
- 要件定義や設計の上流工程において、インフラやアーキテクチャの選定、要件の実現可能性の検証を行います。
過去にIT開発現場で過重労働が問題視されたことから、ITアーキテクトの存在が求められるようになりました。
システム開発の効率化と品質向上に大きく貢献しており、単なるエンジニアを超えてチーム全体に影響を与える重要な職種です。
開発規模が大きくなれば、その責任と共にやりがいも増していくことでしょう。
ITコンサルタントと類似点もありますが、ITアーキテクトはより技術的な観点から課題分析を行う点が特徴的です。
技術力のある企業が多く求めており、ITエンジニアの上級職としての側面も持ち合わせています。
スペシャリストを目指す方にとって、魅力的なキャリアパスの一つと言えるでしょう。
ITコンサルタントの役割と必要なスキル
ITアーキテクトと同様に、組織やプロジェクトに大きな影響を与えるポジションとして、ITコンサルタントの職務も検討に値します。
ITコンサルタントは、クライアント企業のIT課題に対し、ITの専門知識とビジネスの視点を組み合わせてソリューションを提供する役割を担います。
経営陣と直接対話しながらソリューションを提案するため、ビジネスに関する理解力が求められる職種です。
一方で、ITに関する一定以上の知識も必要不可欠であり、エンジニアを目指す中でも高い難易度が予想されます。
また、ITコンサルタントには優れたコミュニケーション能力が要求されます。
クライアントの課題を発見し、解決策を示すためには、上手な対話力が不可欠だからです。
適切な情報収集や分かりやすいプレゼンテーションには、高度なコミュニケーションスキルが求められます。
ITコンサルタントへの典型的なキャリアパスは、
- プロジェクトマネージャーを経験した後に就くことが一般的です。
クライアントの信頼を得るには、ITに関する深い専門知識が欠かせないため、まずはエンジニアとしての経験を積むことが重要となります。
フルスタックエンジニアの魅力と可能性
フルスタックエンジニアとは、様々な領域の開発を一人で担当できる技術者のことを指します。
- インフラからアプリケーションまで幅広い分野の知識を持ち合わせているため、非常に需要が高い存在です。
- 特に人材不足に悩む企業であれば、高給与での雇用も十分に期待できるでしょう。
多岐にわたる技術を習得することは容易ではありませんが、エンジニアとしての充実感は格別です。
- 現在の業務知識に留まらず、常に新しい製品や知見に対する好奇心を持ち続けることが重要とされます。
フルスタックエンジニアは組織に所属するだけでなく、個人事業や起業など様々な形で活躍する機会があります。
SIerのよくある転職先の業界
この節では、システムインテグレーター企業の従業員が新たな職を見つける際に一般的な業界について説明します。
システムインテグレーター企業の従業員が転職を検討する際、以下の業界が一般的な選択肢となります。
- ソフトウェアベンダー企業
- ユーザー企業のIT部門
- クラウドサービスプロバイダー企業
それぞれの業界には以下のような特徴があります。
業界 | 特徴 |
---|---|
ソフトウェアベンダー企業 | 自社製品の開発に従事する |
ユーザー企業のIT部門 | 社内システムの構築・運用を担当する |
クラウドサービスプロバイダー企業 | クラウドサービスの提供に携わる |
SIer転職のメリット
SIer業界内での転職は、従来の業務とは異なる新たな経験を積むチャンスとなります。
- 企業規模や取り扱う案件によって求められるスキルセットが変わるため、キャリアの幅を広げることができます。
- 大手SIerへの転職であれば、プロジェクトの上流工程に携わる機会が増え、マネジメント力や調整力を磨くことができます。
- 一方、中小SIerへの転職では、開発全般に関する幅広い知識とスキルが必要とされます。
異なる環境での就業経験を積むことで、専門性を高めるだけでなく、多角的な視点を身につけることができるでしょう。
Web系企業への転職とSIerのキャリア
Web系企業への転職は、SIerにとって新たな挑戦の機会となります。スピード感のある開発サイクルと幅広い技術への対応が求められるため、従来のキャリアとは異なる醍醐味を味わえるでしょう。
企画から開発までの一連の工程をワンストップで行うことが多く、自らの手を動かして開発に携われる点が魅力的です。自社サービスの構築にも関与できるため、エンジニアとしての経験を積む絶好の場となります。
幅広い工程や分野に精通したエンジニアは歓迎されやすい傾向にあります。
- Web系企業ではプログラミングスキルが重視されることが多いため、技術力の高さを示す準備が肝心です。
- アジャイル開発が一般的ですが、SIer出身者が活躍する事例も少なくありません。
- 最新のトレンドを把握し、スキルを磨いた上で転職に臨むことが重要となります。
ITコンサルタントの魅力と課題
ITコンサルタントは、経営課題解決に向けてITの知見を活用する専門職です。
この分野には高い需要があり、報酬水準も魅力的です。
コンサルティング会社が対応する業界は多岐にわたるため、得意分野によって携わる業界は異なります。
- ITスキル
- コミュニケーション力
- ビジネス力
- 関連知識
が求められます。
学ぶべき範囲は広範にわたりますが、ITスキルを経営課題解決に直接生かせる点に大きなやりがいがあります。
SESの魅力と働き方
SESは"System Engineering Service"の略称で、システム開発における委託契約の一種を指します。
人材派遣と同様の働き方で、企業に常駐し、プロジェクトベースで開発からリリース、保守運用まで関与します。
SESとして勤務すれば、以下のメリットがあります。
- 様々な企業で業務経験を積むことができる
- 幅広い専門知識と企業ネットワークを構築できる
- 長時間労働が少ない
- 人間関係によるストレスが少ない
また、場合によっては大手企業の重要プロジェクトに携わる機会も得られ、単なる派遣業務以上の価値があると言えるでしょう。
SIerの年収
システムインテグレーターの収入水準は高い部類に入ります。IT業界の平均年収を上回る453万円と公表されており、ITコンサルティング職に次いで2番目に高額です。
ITエンジニアの需要は根強く、スキルを磨けば将来的にさらなる高収入が望めるでしょう。
ただし、個人の実力次第で開きが大きいことも事実です。
IT業界の中でも比較的恵まれた職種と言えそうです。
まとめ
SIer業界は複雑な構造を持ち、システム開発に関連するほとんどの業務を請け負うことが特徴です。
また、ウォータフォール開発が一般的であることを覚えておくと良いでしょう。
SIerからの転職やキャリアパスには様々な選択肢があり、自身の志向に合わせて選択することが推奨されます。
SIerの年収は比較的高水準にあり、スキルアップによってさらに高収入を得る機会が存在します。
- ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」を活用することも一つの選択肢です。
本記事が皆様の参考になれば幸いです。