ゼロトラストは、内部ネットワークと外部ネットワークを区別せず、全てのアクセスを疑う姿勢を指します。
この考え方に基づき、組織は情報資産を徹底的に保護することができます。
本文では、以下の点について詳しく説明しています。
- ゼロトラストの概要
- ゼロトラストが注目される理由
- ゼロトラストの仕組み
- ゼロトラストの7つの要件
- ゼロトラストの長所と短所
- ゼロトラストの導入時の留意点
- ゼロトラストの運用時の留意点
セキュリティ知識が求められる職種の方や IT 業界の従事者は、ぜひ一読されることをお勧めします。
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ゼロトラストとは?
ITセキュリティにおいて、従来の考え方を転換するゼロトラストという概念が注目されています。
この手法では、内部ネットワークと外部ネットワークの区別なく、全ての通信を潜在的な脅威と見なします。
これにより、情報資産への不正アクセスを徹底的に防御することが可能になります。
従来のアプローチでは、
- 社内ネットワークと社外ネットワークの境界線に防御ラインを設けていました
が、ゼロトラストではそうした境界線を無くし、全ての接続を同等に扱うことで、より強固な保護を実現するのです。
ゼロトラストが注目される背景
ゼロトラストが脚光を浴びる理由は3つの大きな要因があります。
- COVID-19のパンデミックによるリモートワークの普及
- クラウドサービスの広がり
- 内部情報漏洩に伴うセキュリティ上の課題
モバイル機器の活用とテレワーク、クラウドサービスの浸透により、社会や労働環境が多様化し、企業システムの内外の境界線が曖昧になりつつあります。その結果、従来の境界防御型のセキュリティ対策では、サイバー攻撃から重要データを守ることが困難になってきました。そこで注目を集めているのが、ゼロトラストという新しいアプローチなのです。
ゼロトラストネットワークの仕組み
ネットワークセキュリティを強化するための手法として、ゼロトラストの概念が注目されています。
この考え方では、内部と外部を問わず、全てのアクセスとデータ通信を監視し、適切なセキュリティレベルを満たしているかを検証します。
- 組織内外からの不正なアクセスやデータ漏えいを防ぐため、厳格な認証と通信の安全性確認が不可欠となります。
ゼロトラストの7要件
ゼロトラストには、満たすべき7つの条件があります。
IT分野では、これらの条件を満たすことで、ゼロトラストネットワークが構築可能とされています。
ここでは、ゼロトラストの7つの条件について説明します。
- すべてのリソースは、アクセスが制限されたセキュリティマイクロペリメータで保護される
- ネットワークロケーションは信頼できない
- アクセスは最小権限の原則に基づく
- アクセスは厳格な認証と認可に基づく
- セッションは動的に監視される
- セッションは暗号化される
- ネットワークとリソースは動的に分離される
ネットワーク・セキュリティの重要性
デジタル情報資産の安全性を確保し、ネットワーク上での適切な運用を維持するための対策がネットワーク・セキュリティです。
外部からの不正アクセスを阻止したり、内部データの不正な流出を防ぐ措置などが含まれます。
データ保護と情報セキュリティ
データの保護と安全性を確保するための対策が、データ・セキュリティです。
不正なアクセスからデータを守り、データの秘密性、一貫性、利用可能性を維持することが目的です。
- 機密情報の取り扱いに対する意識向上と、
- 外部ツールによる監視・保護、
- 外部要因からの情報漏えい防止が重要となります。
デバイスセキュリティの重要性
デバイスの安全性を確保するための対策は、コンピューターウイルスやマルウェア、フィッシング詐欺、不正侵入などの危険から保護することを目的としています。
具体的には、
- 従業員が使用する機器の管理
- アクセス権限の付与
- 利用中の機器のセキュリティ状態の維持
などが含まれます。
クラウドワークロード・セキュリティの重要性
クラウド環境におけるワークロードのセキュリティ対策とは、企業がIaaS/PaaSを活用する際に、利用状況やリスクを明確化し、システム運用の効率化と情報セキュリティの強化を図るための手段です。
- 利用者への注意喚起や管理者への通知を行うことで、認識されていないクラウドサービスによる被害を防止します。
アイデンティティ・セキュリティの重要性
組織は従業員に対して業務に必要な技術的リソースへのアクセスを許可する一方で、サイバー攻撃のリスクを最小限に抑える必要があります。
この目的のため、アイデンティティとアクセス管理の対策が講じられます。
- 定期的な認証情報の変更
- 最小権限の原則に基づくアクセス制限
などが実施されます。
こうした取り組みにより、組織はセキュリティとユーザビリティのバランスを図ることができます。
セキュリティ可視化と外部SOC委託の重要性
セキュリティの状況を把握し、サイバー攻撃を受けた場合は、その内容を特定し、分析を行い、適切な対策を講じることが肝心です。
しかし、実際には
- 社内の人的リソースが不足していたり
- 最近のセキュリティ脅威が高度化していることから
可視化と分析については、常時監視体制を整えているSOC組織(Security Operation Center)に外部委託するケースが増えています。
効率的なセキュリティ運用のためのワークフロー自動化
セキュリティ対策を円滑に進めるには、業務の自動化が不可欠です。
自動化により、インシデント発生時の迅速な対応が可能になります。
その際、現状の業務プロセスを把握し、非効率な部分を特定することが肝心です。
課題を見つけ、改善に向けた強い意志を持つことが重要なのです。
ゼロトラストのメリット
ゼロトラストの利点を2つ説明いたします。
- まず、従来のセキュリティモデルに比べ、より強固な保護が可能になります。
- 次に、リモートワークなどの新しい働き方にも柔軟に対応できるようになります。
外部リンクの記載は控えさせていただきます。
ゼロトラストによるセキュリティ強化
ここ数年、クラウドやモバイル技術の進化により、従来の内部ネットワークと外部ネットワークの境界が曖昧になってきました。
このため、適切なセキュリティ対策を講じることが困難となり、新しいサービスを業務に活用するのが難しくなっていました。
しかし、ゼロトラストの概念を取り入れたネットワークでは、状況に応じて柔軟にセキュリティ対策を実施できるようになりました。
内部と外部の境界を取り除き、必要な人に必要な範囲のアクセス権限のみを付与することが可能になったのです。
ゼロトラストによる包括的セキュリティ対策
場所や時間、利用デバイスに関係なく、安全に情報にアクセスできるようになるのがゼロトラストセキュリティの特徴です。
- ネットワークやデバイスごとに脅威を確認し、アクセスの度に認証を行うことで、サイバー攻撃からの防御が可能になります。
さらに、
- 全てのアクセスを一元管理できるため、情報漏えい時の被害検知や原因特定、対処が迅速に行えます。
ゼロトラストのデメリット
ゼロトラストアプローチには、いくつかの課題が存在します。
- まず、ゼロトラストの実装には高度な技術力と膨大な労力が必要となります。
- セキュリティ対策の強化は、利便性の低下を招く可能性があります。
- また、ゼロトラストへの移行には多額の投資が求められ、中小企業にとっては負担が大きくなる恐れがあります。
- 適切な運用体制を整備しないと、セキュリティリスクが高まる可能性もあります。
ゼロトラストの導入コストと情報漏えいリスク
組織がゼロトラストの実装を検討する際、一定の投資と労力が必要となります。しかし、データ漏洩による潜在的な損失を考えると、そのコストは正当化されます。
ただし、限られた予算の中で対策を講じる必要があることは、課題の一つと言えるでしょう。
ゼロトラストの落とし穴
ゼロトラストは、すべての情報を不信の対象とし、判断を下すアプローチです。このため、利便性の高いシステムやツールの利用を制限し、業務効率が低下する可能性があります。
例えば、
- クラウドサービスに対する理解が不足している場合、生産性や利便性が損なわれる恐れがあります。
ゼロトラスト導入時・運用時の注意点
この記事では、ゼロトラストアーキテクチャの実装と管理における重要な側面を取り上げます。
組織がこの先進的なセキュリティモデルを適切に活用するための指針を提供します。
不要な外部リンクは省略し、コンパクトな内容に絞り込んでいます。
- ゼロトラストの基本原則
- ネットワークを信用しない
- デバイスを信用しない
- アクセスを最小限に抑える
- ゼロトラストの主要コンポーネント
- マルチファクター認証
- マイクロセグメンテーション
- 暗号化
- アナリティクス
フェーズ | 説明 |
---|---|
計画 | ゼロトラストの目標と要件を定義する |
設計 | ゼロトラストアーキテクチャを設計する |
実装 | ゼロトラストコンポーネントを導入する |
運用 | ゼロトラストを継続的に監視・改善する |
ゼロトラスト導入における社内体制と社員理解の重要性
ゼロトラストは幅広い領域に適用されます。
企業内でゼロトラストを実装する際の留意点は、
- 運用体制の構築
- 従業員一人ひとりのシステム理解が重要
です。
多額の投資を行ってもゼロトラストシステムが適切に活用されなければ無意味です。
従業員全員にゼロトラストの導入目的や利点を周知し、業務効率がどの程度向上するかを理解してもらう必要があります。
ゼロトラスト導入時の運用上の注意点
ゼロトラスト導入における運用面での留意点は、業務の効率性や利便性を損なわないことが肝心です。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が作成した「ゼロトラスト導入指南書」には、以下のような注意事項が記載されています。
- 導入計画を策定し、定期的に見直す
- 初期段階では正常動作も含め綿密に監視する
- 運用部門からの問い合わせに対応できる体制を整備する
- 運用部門のメリットを示しながら調整する
- 業務への影響を最小限に抑えるため運用部門と事前調整を行う
- 業務の重要度に応じてポリシーを見直す
- 運用ルールの変更に合わせてポリシーの見直しを行う
運用現場への影響を最小限に抑えながら、段階的にゼロトラストを導入していくことが重要とされています。
まとめ
本稿では、IT業界で注目されているゼロトラストの概念について解説しました。
ゼロトラストとは、内外を問わずすべてのネットワーク環境を不信任とし、情報資産を徹底的に保護する考え方です。
この背景には、以下の点があります。
- テレワークやクラウドサービスの普及
- 内部情報漏洩の問題
ゼロトラストには7つの要件があり、以下のセキュリティが求められます。
- ネットワーク
- データ
- デバイス
- ワークロード
- アイデンティティ
- 可視化と分析
- 自動化
メリットとしては、クラウドやデバイスを安心して活用でき、時間や場所を選ばずに業務ができます。
一方、デメリットとして以下の点があります。
- 導入コストや手間がかかる
- 業務効率が下がる可能性がある
導入時は体制づくりと従業員の理解が、運用時は効率性と利便性の維持が重要です。
情報化社会におけるセキュリティ対策として、ゼロトラストの考え方は情報資産の脅威を防ぐ上で重要な役割を果たします。
業務環境の改善と効率化の観点から、ゼロトラストネットワークの設計や導入を検討するのがよいでしょう。