企業の中核業務に関わるシステムを扱う汎用機エンジニアは、幅広い知見と技術力を兼ね備えた職種です。
エンジニアには様々な種類がありますが、汎用機エンジニアはその一つです。
この職種について詳しく知りたい方は必見です。
汎用機エンジニアはシステム系やWeb系と比べると馴染みが薄い職種かもしれません。
本稿では、以下の点について解説します。
- 汎用機エンジニアの業務内容
- 汎用機エンジニアの転職事情
- 汎用機エンジニアの収入水準
さらに、この職種への転職に向けたポイントも紹介しますので、ご参考ください。
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汎用機エンジニアとは
汎用コンピューターに携わる専門家とは、どのような役割を担うのでしょうか。
まずは、汎用コンピューターという言葉の意味を理解することから始めましょう。
汎用コンピューターとは、特定の用途に特化されていない、万能なコンピュータのことを指します。
このような汎用性の高いコンピュータシステムを
- 設計
- 構築
- 運用
- 保守
するのが、汎用機エンジニアの仕事です。
幅広い知識と技術力が求められる職種と言えるでしょう。
汎用機エンジニアの役割と現状
幅広い用途に対応できる柔軟性を備えた機器を指す汎用機。この万能なコンピュータは、企業の中核業務を支える重要な役割を担っています。
かつては主流だったこの汎用機を専門に扱うエンジニアが、汎用機エンジニアと呼ばれています。
マルチタスク処理能力に長けているため、大量のデータ処理が必要とされる大企業や金融機関、官公庁などで現在も活躍の場があります。
汎用機は、OSなどの技術仕様がメーカー独自の設計であり、一般的なシステムエンジニアとは区別されています。
現在、汎用機を提供しているメーカーは
- IBM
- Unisys
- Atos
- NEC
- 富士通
の5社です。
日本国内では、IBMの汎用機が主流となっています。
オープン系とプロプライエタリ系の違い
システムの技術仕様が公開されているかどうかによって、汎用系とオープン系は区別されます。
汎用機は、メーカーが独自に設計した仕様に基づいて構築されており、その詳細は外部に開示されないことが多くあります。
一方、オープン系は複数のコンピュータで構成されるクライアント・サーバーシステムであり、その技術仕様は一般に公開されているケースがあります。
代表的なオープン系には
- UNIX
- Linux
- Windows
などがあり、これらのシステムを担当する技術者をオープン系エンジニアと呼びます。
汎用機エンジニアの仕事内容
汎用コンピューターを扱うシステム開発者の職務は、一般的なシステムエンジニアと基本的には変わりません。
しかし、以下の点が主な業務となります。
- 独自の技術仕様に基づく汎用機上でのシステム構築
- ハードウェア特化型の開発
オープンソースと比べて、汎用システムは導入費用や運用コストが高額なため、中小企業での採用は少数に限られます。
そのため、汎用コンピューター開発者が就職できる職場は、以下の組織が中心となっています。
- 大手企業
- 金融機関
- 官公庁
汎用機エンジニアの年収
一般的な企業に雇用されている汎用機エンジニアの平均年収は約473万円と言われています。
一方、ITエンジニアの平均年収は556万円と高い水準にあるため、汎用機エンジニアの収入は低めだと考えられます。
フリーランスとして活動する汎用機エンジニアの収入状況を見ていきましょう。
- フリーランスの汎用機エンジニアの平均年収は627万円
- 最高額は1,560万円
- 最低額は264万円と幅があります
スキルや経験年数、案件の内容によって単価が異なるため、このような開きが生じています。
また、年代別に見ると、
年代 | 平均年収 |
---|---|
20代 | 約500万円 |
30代 | 約550万円 |
40代 | 約600万円 |
と、年齢が上がるにつれて平均年収が上昇する傾向にあります。
これらの数値は一つの目安にすぎませんが、フリーランスの汎用機エンジニアとして活躍する際の参考になるでしょう。
転職市場からみる汎用機エンジニア需要
現代社会においてオープンソースが主流となる中、汎用コンピューターの専門家に対する需要動向を把握することは重要です。
本文では、そうした汎用機エンジニアの現状と展望について詳しく説明しています。
汎用機の現状と課題
汎用機は、主にトランザクション処理に優れており、コンパクトなデータセンターを実現できるという2つの長所があります。
そのため、現在でも大企業や保険・金融業界、官公庁の中核業務システムに活用されています。
代表的な汎用系言語としては「COBOL」が挙げられますが、CRMやERPパッケージ、クラウドが主流となった現代では、その需要が減少しつつあります。
汎用系システムは、オープンソースとは異なり専門知識が必要なため、独自の修正が困難な場合もあります。
また、多くの案件が新規開発ではなく、
- 既存システムの運用保守やリプレース
が中心となっています。
つまり、現行システムの維持のみの開発であり、他の分野と比べて業務内容に新鮮味が乏しいことも、需要減少の一因となっているかもしれません。
汎用機エンジニアの需給と将来性
将来的には、オープンソースの技術が主流となり、従来の汎用システムは徐々に需要が減少すると予測されています。しかし、保険や金融業界においては、汎用システムが完全に姿を消すことはないと考えられています。その理由は、長年にわたり利用されてきた汎用システムが堅牢性と信頼性に優れているためです。
IT人材の需給に関しては、みずほ情報総研の調査によると、2021年時点で約107.1万人のIT人材が確保されていますが、実際の需要は31.4万人分不足しています。現在、汎用システムエンジニアを含むIT人材は供給が需要に追いついていない状況にあり、さらに現役の技術者の高齢化も進んでいます。
IT業界全体の平均年齢は、2025年までは微増傾向にありますが、2026年以降は微減傾向に転じると予測されています。このため、汎用システムエンジニアについても、
- 2025年までは中高年世代が活躍する一方で
- 2026年以降はベテラン層の退職や新卒・転職組の増加により、平均年齢が下がっていくと見られています。
未経験から汎用機エンジニアへの転職を実現させるには
汎用機エンジニアへの職種変更は、経験がなくても実現可能ですが、その場合は困難が伴います。
そこで、未経験者が汎用機エンジニアとして活躍するためのポイントを5つご紹介します。
- プログラミング言語の習得
- 金融業界や公共分野の知見の獲得
- システム開発に関する技能と知識の習得
- 転職理由と志望動機の一貫性
- 転職サイトやエージェントの活用
それぞれについて詳しく解説しましょう。
汎用系システムの開発に必須の言語
汎用系システムでは、特定の専門的なプログラミング言語の使用が義務付けられています。これは、オープンソースのプラットフォームとは対照的な点です。
汎用系の開発において不可欠な言語として、以下が挙げられます。
- COBOL
- Java
- PL/I
- FORTRAN
これらの言語の習得は、汎用機エンジニアを目指す上で最低限の要件となるでしょう。
金融系汎用機エンジニアに必須の業界用語
金融・保険・証券や公共・官公庁などの業界では、一般企業とは異なる専門用語や業務範囲があり、従来の知識だけでは不十分な場合があります。
金融系エンジニアを目指す場合、業界特有の用語を理解しておく必要があります。
例えば、
- PFM(個人金融管理ソフト)
- オープンAPI(銀行と外部のデータ連携)
- モアタイムシステム(24時間365日の即時振込)
- ブロックチェーン(分散型ネットワークでのデータ同期)
- トランザクションレンディング(インターネット取引に基づく融資)
- AIスコアレンディング(AIによる低与信層向け融資条件決定)
などの用語が挙げられます。
これらは金融業界で不可欠な知識ですが、保険・証券や公共・官公庁でも最低限の理解が求められます。
システム開発に必要なスキル
システム開発において重要なのは、プログラミング言語の習得だけではありません。
- マネジメント力
- 論理的思考力
- コミュニケーション能力
- IT知識
- プロジェクト管理スキル
なども備えておく必要があります。
さらに、メーカー独自の技術を使用する汎用機でも、常に最新の知見を身につけることが求められます。
転職を視野に入れるなら、絶えず新しい技術動向やスキルを確認し、自身のキャリアに活かすよう心がけましょう。
転職理由と志望動機の一貫性
面接では、現職を離れる理由と新しい職場への思いが問われます。
専門知識や経験を持っていても、それらに矛盾があれば採用は難しくなるかもしれません。
理由と思いを別々に考えるのではなく、一体のものとして捉えることが重要です。
- まず、転職したい動機を明確にし、
- その上で新しい職場で実現したいことを検討すれば、
一貫性のある回答ができるはずです。
汎用機エンジニア転職のサポート活用
経験が浅い場合、転職の際には専門的なサポートを活用することが賢明です。
転職サイトと転職エージェントは、それぞれ異なるサービスを提供しています。
- 転職に関する全般的な支援が必要な方は、応募書類の作成やインタビューのアドバイスなど、転職プロセス全般をサポートする転職エージェントがおすすめです。
- 一方、汎用機エンジニアとしての知識やスキルを既に習得しており、希望する求人を探すだけであれば、転職サイトを利用するのが適切でしょう。
両者を併用することで、幅広い求人情報にアクセスできます。状況に応じて、最適なリソースを活用することが重要です。
まとめ
汎用機エンジニアの将来展望については、オープン系が主流になることは間違いありません。しかし、それが専用機の淘汰を意味するわけではありません。
時代は循環する傾向にあります。
- かつては分散システムが主流でしたが、その後、1台の汎用機で処理できる集中システムが登場しました。
- しかし、再びオープン系の分散システムが台頭しました。
クラウドの時代は集中システムの復活を意味する可能性があり、汎用機エンジニアの需要が高まるかもしれません。
転職を検討する際は、ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」を活用するのがおすすめです。
本記事が皆様の参考になれば幸いです。