固定残業代という言葉から、どのようなイメージが浮かびますか？
一般的に、時間外労働に対しては残業代が支払われますが、固定残業代はこれとは異なる仕組みです。
現代の多様な労働形態に対応するため、残業代の支払い方法も変化してきています。
多くの企業が固定残業代制度を採用していますが、同時に求人に関するトラブルの原因にもなっているとされています。
この記事では、固定残業代の仕組みや、それに伴うメリットとデメリットについて詳しく説明していきます。
週10時間の副業案件を
会員登録した方限定で配信中！
気になる内容をタップ
固定残業代制度と一般的な残業代制度との違い
残業代の仕組みと重要性
所定労働時間を超えて働いた時間に対して残業代が支払われます。
例えば、月に20時間の時間外労働があった場合、その20時間分の残業代が支給されます。
これが一般的な残業の形態で、退勤時間の記録に基づいて労働時間が計算されます。
そのため、企業が忙しく従業員の拘束時間が長くなる時期には、給与も増加する傾向があります。
残業代は労働者の権利として法律で保護されており、適切に支払われることが重要です。
固定残業代制度の仕組みと特徴
固定残業代制度では、毎月の基本給に一定時間分の残業代が含まれています。
例えば30時間分の残業代が組み込まれている場合、実際の残業時間が30時間未満でも、その分の残業代を含んだ基本給が支給されます。
通常の残業制度とは異なり、所定労働時間を超えた分だけ追加で残業代が支払われるわけではありません。
ただし、この制度下では効率的に業務をこなすことで、より短い労働時間で残業代込みの給与を得られる可能性があります。
つまり、生産性向上によって実質的な時給を上げることができるのが特徴です。
固定残業代の仕組みとは？
固定残業制度の仕組みと特徴
固定残業制度は、実際の残業時間に関わらず、一定額の残業代が支給される仕組みです。これは基本給の一部として扱われることもあります。法律上は「みなし労働時間制」と呼ばれ、「みなし残業」という正式な用語は存在しません。
この制度の下では、例えば月35時間までの時間外労働に対して4万円の固定残業代を支給するという契約が結ばれることがあります。この場合、実際の残業時間が35時間であっても5時間であっても、同じ4万円が支払われます。
固定残業制は、労働時間を「みなす」という考え方に基づいているため、「みなし残業」とも呼ばれることがありますが、これは正式な用語ではありません。この制度は労使間で事前に合意された残業時間と金額に基づいて運用されます。
固定残業制と労働時間みなし制の違い
固定残業制と労働時間みなし制は、どちらも労働時間の管理方法に関する制度ですが、その仕組みと適用される状況が異なります。
固定残業制では、あらかじめ定められた時間外労働に対する手当が給与に含まれています。例えば、月30時間までの残業代3万円が固定されている場合、実際の残業時間が35時間であれば、追加で5時間分の残業代が支払われます。
一方、労働時間みなし制は、主に事業所外で働く営業職や記者、添乗員など、実際の労働時間の把握が困難な職種に適用されます。この制度では、一定の時間働いたものとみなして給与が支払われます。
固定残業制では規定時間を超えた場合に追加の残業代が発生しますが、労働時間みなし制ではみなし時間内に残業が含まれているため、通常は追加の手当は発生しません。
これらの制度は労働者の働き方や職種の特性に応じて適用され、適切な労務管理と公正な賃金支払いを目的としています。
固定残業代の計算方法
固定残業代の基本的な計算方法について説明します。
まず、固定残業代が適切な割増賃金になっているか確認することが重要です。計算には以下の手順を踏みます：
- 時給の算出：
基本給 ÷ 月平均所定労働時間 = 時給
※月平均所定労働時間 = (365日 - 年間休日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月 - 割増賃金の計算：
時給 × 割増率(1.25～1.5) = 割増時給
※割増率は法定で2割5分以上5割以下と定められています - 固定残業代の算出：
割増時給 × 固定残業時間 = 固定残業代
具体例として、月給30万円、固定残業45時間、割増率1.25の場合を考えてみましょう。
| 月平均所定労働時間 = (365-110日) × 8時間 ÷ 12ヶ月 = 170時間 |
| 時給 = 30万円 ÷ 170時間 ≈ 1,765円 |
| 割増時給 = 1,765円 × 1.25 = 2,206円 |
| 固定残業代 = 2,206円 × 45時間 = 99,270円 |
このように、固定残業代は約99,270円と計算されます。実際の運用時には、労使間で十分な合意形成を行うことが大切です。
固定残業代の上限
固定残業時間の法的制限と上限
固定残業時間は、労働基準法で定められた残業時間の上限規制に従う必要があります。
36協定で定める労働時間の延長には法的な制限があり、それを超える時間を設定することはできません。
労働基準法では、労働時間を1日8時間・週40時間と定めています。時間外労働については、36協定に基づき、原則として月45時間以内、年360時間以内とされています。
これらの規定を踏まえると、固定残業代として設定できる時間の上限は、月間30時間（年間360時間を12ヶ月で割った値）程度と考えられます。企業は、これらの法的制限を遵守しながら、適切な固定残業時間を設定する必要があります。
固定残業代40時間の適切性と36協定の重要性
36協定の範囲内である「月45時間以内、年360時間以内」を下回る設定であれば、固定残業代を40時間分とすることは適切です。
ただし、この取り決めを行うには、事前に36協定を締結していることが必須条件となります。
固定残業代40時間の法的リスク
固定残業代40時間分であっても、状況によっては法的に問題となる可能性があります。具体的には、以下のような事例が挙げられます。
まず、固定残業代が他の手当と明確に区別されていない場合です。賃金の内訳が不明確だと、違法とみなされることがあります。例えば、「基本給〇〇万円（固定残業代含む）」という表記ではなく、「基本給〇〇万円（固定残業代●時間分の×万円含む）」のように、詳細を明記する必要があります。
次に、固定残業代の支払いに関する問題があります。この制度では、実際の時間外労働の有無に関わらず、毎月定額で支払われるべきです。したがって、設定された上限時間に満たない場合でも、全額が支払われなければなりません。
これらの点に注意を払うことで、固定残業代制度を適切に運用し、法的リスクを回避することができます。
固定残業時間の現実的設定
特別条項付き36協定を締結することで、業種や企業の特殊事情に応じて、1ヶ月45時間を超える時間外労働が認められる場合があります。
しかし、全従業員の労働時間を厳密に管理し、条件を超過しないようにすることは実務上非常に困難です。
そのため、固定残業時間は45時間以内に設定することが現実的であり、多くの企業で推奨されています。
この方法により、法令遵守と業務の効率化のバランスを取ることができます。
転職の際に注意したい固定残業代のポイント
固定残業代制の適切な表示と注意点
基本給に関する記載で「月給24万円（月給に固定残業手当を含む）固定残業代を超えた割増賃金は別途支給」というような表現を見かけることがあります。これは固定残業代制を採用している企業の特徴ですが、この表現だけでは具体的な残業時間が不明確です。
実際には、企業には固定残業代に関する以下の情報を明示する義務があります：
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に対応する労働時間数と金額の計算方法
- 固定残業時間を超える労働に対する追加の割増賃金支払いについて
これらの情報を適切に表示した場合、以下のような記載になるでしょう：
「月給24万円（時間外労働の有無に関わらず20時間の時間外手当として4万円を支給）20時間を超過する時間外労働については別途割増賃金を追加として支給」
固定残業代制のある企業への転職を検討する際は、給与体系の詳細を慎重に確認することが重要です。特に、固定残業代の具体的な金額とそれに対応する残業時間が明確でない求人には注意が必要です。
固定残業代と最低賃金問題
固定残業代と対応する残業時間が明確に示されているにもかかわらず、基本給のみを時給に換算すると最低賃金を下回るケースが存在します。
このような事例は、企業が不適切に賃金を抑制している可能性があり、労働基準法違反の疑いが生じる場合があります。
従業員は自身の給与体系を注意深く確認し、疑問がある場合は適切な機関に相談することが重要です。
固定残業制と企業文化：転職時の注意点
固定残業代制度では、実際の残業時間に関わらず、残業代を含めた給与が全額支給されます。
ただし、「残業が当然」「定時退社は怠慢」といった風潮が根付いている企業も存在します。
このような社風の下では、定時で帰宅することに躊躇を感じる従業員も少なくありません。
一方で、転職を考える際には、事前に企業の組織文化や労働環境について詳しく調査することが重要です。
特に、IT・Web業界やゲーム業界など、急速に変化する分野では、企業の実態を把握することが career success の鍵となります。
転職を検討する際は、自身のニーズと企業の文化が合致するかどうかを慎重に見極めることが大切です。
固定残業代のメリットとは
固定残業代制の両面性
固定残業代制の本質は、実際の労働時間に関わらず一定額の残業代が支給される仕組みです。
この制度下では、業務効率を上げて定時内に仕事を終えられれば、通常より高い給与水準を維持できる可能性があります。
つまり、生産性向上への動機付けとなり得る一方で、労働時間と報酬のバランスに注意が必要な制度といえるでしょう。
ワークライフバランスがもたらす好循環
ワークライフバランスを重視する人は、効率的に業務をこなし定時退社を目指します。
これにより残業代を確保しつつ、私生活の充実も図れます。
効率を追求することで、業務への創意工夫や新たな取り組みへの意欲も高まります。
こうした姿勢は企業にとっても好ましく、結果として高い評価を得られる可能性があります。
さらに、自身の業務スキル向上にもつながり、キャリア発展の機会が増えるというメリットがあります。
固定残業代のデメリットとは
固定残業代の落とし穴
一部の悪質な企業では、固定残業代を支払っていることを理由に、規定の時間外労働を超過しても追加の割増賃金を支払わないケースがあります。
しかし、法令で定められた割増賃金が固定残業代（みなし残業代）を上回る場合、労働者にはその差額を受け取る権利があります。これは国の定めるルールに基づいています。
固定残業代制度を不適切に利用する企業も存在するため、労働者は自身の権利を十分に理解し、適切な対応を心がける必要があります。
固定残業代制の落とし穴
固定残業代制を導入している企業の中には、残業を当然視する風潮が存在することがあります。このような企業では、固定残業代が設定されていることを理由に、日常的な残業を前提とした求人を出すケースが見られます。
さらに深刻な例では、以下のような状況が発生することがあります：
- 残業を強制するようなパワハラ的行為が発生している企業も存在します。
- ブラック企業とまでは言えなくとも、過度な残業が常態化している職場環境も少なくありません。
このような状況を避けるためには、就職や転職の際に企業の労働環境や固定残業代に対する考え方を十分に調査することが重要です。求職者と企業の間で、固定残業代に関する認識の齟齬がないか、しっかりと確認することをお勧めします。
最後に
固定残業代に関するトラブルは、労働問題の中でも最も頻繁に発生する案件の一つとなっています。その仕組みの複雑さから、残業代未払いなどの問題が生じやすい傾向にあります。
もし不当に残業代が支払われていないと感じた場合は、早期に専門家に相談するなど、適切な対応を取ることが重要です。そのような事態に備えて、給与明細、雇用契約書、タイムカードの記録など、労働条件に関する書類は必ず保管しておきましょう。
転職を考える際は、固定残業代制度のメリットとデメリット、その仕組みについて十分に理解することが大切です。自分に合った待遇を得るためには、制度の内容を把握し、慎重に判断することが求められます。労働条件や給与体系について疑問がある場合は、専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。また、ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」のような専門的なプラットフォームを活用することで、より自分に適した条件の仕事を見つけやすくなる可能性があります。
