法定雇用率とは?現状と罰則を徹底解説|企業が知っておくべき障害者雇用の基礎知識

法定雇用率という概念をご存知でしょうか。これは、企業が雇用する従業員全体に対する障がい者の割合を定めたものです。

しかし、その詳細や実際の運用については、一般的にあまり理解されていないのが現状です。罰則制度や実際の達成状況など、多くの人にとって馴染みの薄い側面があります。

本記事では、この重要な制度について、知っておくべき基本的な情報を分かりやすく解説していきます。

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法定雇用率について知ろう!

法定雇用率について知ろう!

障がい者雇用を支える法定雇用率

近年、多様な働き方を推進する法整備が進んでいますが、障がい者の安定雇用を促進する法律はそれ以前から存在していました。

その中核となるのが法定雇用率です。これは、企業や公的機関が雇用する全従業員に対する障がい者の割合を定めたものです。

この制度は民間企業だけでなく、国や地方自治体にも適用されます。

例えば、10人の従業員がいる場合、そのうち少なくとも2人は障がいのある人を雇用しなければならないという具合です。

この仕組みにより、障がい者の雇用機会の確保と社会参加の促進が図られています。

障がい者雇用促進法の意義と影響

障がい者雇用促進法は、障がいのある人々に安定した雇用機会を提供することを目的とした重要な法律です。

障がいを持つ人々は、しばしば就職や社会生活において不利な立場に置かれがちです。特に雇用は、生活を維持するための収入を得る上で極めて重要です。

この法律は、障がいのある人々が健常者と同等の雇用機会を得られるよう支援することを目指しています。障がい者雇用促進法は、近年注目を集めている働き方改革関連法よりもはるかに以前から存在しており、公平で包括的な社会の実現に向けた先駆的な取り組みの一つと言えます。

この法律の施行により、企業や組織は障がいのある人々の雇用を積極的に推進することが求められ、結果として多様性に富んだ職場環境の創出にも貢献しています。

法定雇用率ってどのくらい?

法定雇用率ってどのくらい?

障がい者雇用の法定雇用率

法定雇用率は障がい者雇用促進法に基づいて設定されていますが、組織によって異なります。

  • 民間企業では2.2%
  • 国や地方公共団体は2.5%
  • 都道府県の教育委員会は2.4%

と定められています。

この率は固定ではなく、国の人口動態や障がい者人口、企業の従業員数の変動に応じて定期的に見直されます。これは、社会の変化に合わせて適切な雇用環境を維持するためです。

法定雇用率の達成状況は、各組織が定期的に報告を行い、確認されます。

この制度により、障がい者の雇用機会の確保と社会参加の促進が図られています。

障がい者雇用の実態を示す「実雇用率」

多くの人が、自社における障がい者雇用の状況に関心を持っています。
しかし、すべての企業が法定雇用率を満たしているわけではありません。
企業の障がい者雇用の実態を示す指標として、実雇用率があります。
この数値は、企業が実際にどの程度障がい者を雇用しているかを表し、雇用状況の報告時に使用されます。

実雇用率の計算方法は以下の通りです。

  • まず、対象となる障がい者の常用労働者数(フルタイムで勤務している障がい者の数)を算出します。
  • 次に、その数を企業全体のフルタイム労働者数で割ります。

この結果得られた数値が、その企業の実雇用率となります。
この指標を通じて、各企業の障がい者雇用の現状を客観的に評価することができます。

法定雇用率の対象となる人は?

法定雇用率の対象となる人は?

障がいの多様性と個別対応の重要性

障がいの種類や程度は個人によって様々です。

  • 身体障がい
  • 知的障がい
  • 精神障がい(近年増加傾向)

障がい者雇用促進法の対象となる労働者は、これらすべての障がいを持つ人々を含みます。当初は身体障がいと知的障がいが主な対象でしたが、現在では精神障がいも含まれるようになりました。

同じ障がいでも、その症状の程度には大きな差があります。重度の障がいから、日常生活ではほとんど気づかれないような軽度の障がいまで幅広く存在します。このような個人差があるため、実際の雇用や支援の際には、それぞれの障がいの特性や程度に応じた対応が必要となります。

障がい者雇用においては、こうした多様性を理解し、個々のニーズに合わせた適切なサポートを提供することが重要です。

障がい者雇用のカウント方法

障がい者雇用における常用労働者のカウント方法には、法律で定められた特別なルールがあります。

  • 重度の身体障がいや知的障がいを持つ従業員で、週の労働時間が30時間以上の場合、1人を2人分としてカウントします。例えば、フルタイムで勤務する重度障がい者1名は、実際には2名分として計算されます。

  • 重度ではない障がい(身体障がい、知的障がい、精神障がい)を持つ従業員で、週20時間以上30時間未満の短時間労働者の場合は、0.5人分としてカウントされます。つまり、軽度の身体障がいを持つパートタイム従業員2名は、計算上1名分となります。

これらのカウント方法は、企業の障がい者雇用率を算出する際に重要な役割を果たします。

罰金などは発生する?法定雇用率の罰則事情

罰金などは発生する?法定雇用率の罰則事情

障がい者雇用率違反の罰則と納付金

法定雇用率を遵守しないことは法律違反となります。違反した場合の結果について理解しておくことが重要です。主な罰則として、虚偽の実雇用率申告や年次雇用状況報告の不履行に対しては、30万円以下の罰金が科されます。

さらに、フルタイム労働者が101人以上いる事業主で、実雇用率が法定雇用率を下回る場合、障がい者雇用納付金の支払いが必要となります。この納付金は、障がい者の雇用促進や職場環境の整備などに活用されます。

法定雇用率を守ることは、企業の社会的責任であり、また経済的なペナルティを避けるためにも重要です。障がい者雇用を積極的に進め、多様性のある職場環境を作ることが求められています。

障がい者雇用率未達の企業への対応と社会的影響

法定雇用率を満たさない企業に対する措置は、単なる金銭的な罰則にとどまりません。

  • 罰金や納付金の支払い後も、ハローワークによる指導が行われ、実雇用率の向上が求められます。
  • 改善が見られない場合、企業名が公表されるリスクもあります。

これらの対策は、障がいを持つ人々に平等な雇用機会を提供することを目的としています

こうした取り組みを通じて法定雇用率を達成する企業が増えることで、障がいを持つ人々にとってより暮らしやすい社会の実現につながるのです。

実際はどうなの?法定雇用率の達成率やいかに

実際はどうなの?法定雇用率の達成率やいかに

障がい者雇用の現状と課題

実際のところ、すべての企業が法定雇用率を達成できているわけではありません。

近年、達成企業数は増加傾向にあるものの、依然として半数以上の企業が未達成の状態です

国全体の実雇用率は目標の2.4%の約半分程度にとどまっており、障がいのある従業員の数はまだ十分とは言えません。

一方で、民間企業の実雇用率は着実に上昇しており、2017年時点で1.97%に達しています。

しかし、働き方改革が進められている現在でも、障がいを持つ人々にとって真に暮らしやすい社会の実現には、まだ道半ばと言えるでしょう

中央省庁の障がい者雇用率水増し問題

2022年3月、中央省庁による障がい者雇用率の水増し問題が大きな注目を集めました。
この不正は、障がい者手帳や診断書の確認を怠り、健常者や退職者を実雇用率の計算に含めるという形で行われていました。
その後の調査により、28の政府機関で約3700人分が不適切に計上されていたことが明らかになりました。

この問題は、障がい者雇用の現状に疑問を投げかけることになりました。
多くの企業が法定雇用率を達成できていない中、表面上は基準を満たしているように見せかけている組織の存在が浮き彫りになったのです。
このような不正は、

  • 障がい者の雇用機会を奪うだけでなく、
  • 社会の信頼を損なう行為です。

真の共生社会の実現に向けて、正直で透明性のある雇用慣行が求められています。

法定雇用率はまだまだ課題がある

法定雇用率はまだまだ課題がある

本記事では、法定雇用率の概念と意義について詳しく説明しました。

企業や団体が障害者雇用を推進する上で重要な指標となる法定雇用率の仕組みや、その達成に向けた取り組みの重要性を理解していただけたのではないでしょうか。

精神障がい者を含む法定雇用率引き上げ

近年、政府は2021年を目標に法定雇用率の0.1%引き上げを決定しました。
この変更の主な要因は、精神障がいを持つ人々も雇用率の算定対象に含まれるようになったことです。
職場環境の複雑化や各種ハラスメントの影響で、精神障がいを抱える人々が急増している現状を反映しています。

この法改正により、精神障がいを持つ人々も障がい者雇用の枠組みに正式に組み込まれることになりました。
法定雇用率の引き上げは、障がいのある人々にとってより働きやすい社会の実現に向けた重要な一歩と言えるでしょう。
この取り組みを通じて、多様性を尊重し、誰もが活躍できる職場環境の整備が進むことが期待されます。

まとめ

まとめ

障がいの種類や発生時期は人それぞれです。
先天的な障がいを持つ人もいれば、事故や病気により後天的に障がいを持つようになった人もいます。
特に精神障がいは、職場環境などのストレスが原因で発症するケースが多く見られます。
働き方改革を進める上で、単に労働時間の調整だけでは不十分です。
重要なのは、障がいの有無に関わらず全ての人が平等に働ける環境を整えること、そして精神的な健康を維持できる職場づくりです。
これらの取り組みが、現代社会において最も重要な課題の一つと言えるでしょう。