技術者には様々な専門分野が存在しますが、その中でも「クラウド技術者」に注目が集まっています。本記事では、「クラウド技術者とは何か」について詳しく解説します。主な内容は以下の通りです。
- クラウド技術者の業務内容
- 従来のインフラ技術者との違い
- クラウド技術者の収入水準
- 必要なスキルと資格
- 将来的な需要動向
クラウド分野への就職を検討している方は、本記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。
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クラウドエンジニアの業務概要
クラウドエンジニアの主な職務は、インターネット経由で利用可能なシステムの設計・構築を行うことです。
クラウドコンピューティングとは、物理的な環境を必要とせず、ネット上でシステムを利用できるサービスを指します。
従来は、ネットサービスを活用するためには、サーバーやネットワークの構築、ソフトウェアのインストールやライセンス購入が必須でした。
しかし、クラウドの概念が登場したことで、そうした環境がなくてもデータの保存やシステム利用が可能になりました。
クラウドサービスは主に次の3つに分類されます。
- IaaS(Infrastructure as a Service):データセンターとハードウェアが提供される
- PaaS(Platform as a Service):IaaSに加えて、OSやミドルウェアも提供される
- SaaS(Software as a Service):PaaSに加えて、業務アプリケーションも提供される
多くのクラウドサービスは、不特定多数のユーザーに提供されるパブリッククラウド上で動作します。
一方、社内など特定の利用者のみがアクセス可能な専有環境をプライベートクラウドと呼びます。
2021年時点で、クラウドエンジニアが関わることの多いパブリッククラウドは以下の3つです。
・AWS | Amazonが提供し、世界シェアNo.1 |
・Azure | Microsoftが提供し、世界シェアNo.2 |
・GCP | Googleが提供し、世界シェアNo.3 |
身近な代表的なクラウドサービスとしては、オンラインストレージ、Webメール、クラウド会計ソフトなどが挙げられます。
このようなクラウドサービスの開発に携わるのが、クラウドエンジニアの仕事です。
インフラ設計のクラウド化
クラウド上で稼働するシステムの基盤を構築していきます。基盤とは、土台や下部構造を意味する言葉です。
日常生活では、水道、電気、交通網などの生活に不可欠なものを指します。
一方、クラウド環境における基盤とは、クラウドシステムを動作させるためのサーバーやネットワークのことを指します。
クラウドエンジニアの最初の仕事は、この基盤部分の要件定義と設計を行うことです。
- 提供するサービスの内容
- 予想される通信量やユーザー数
- 予算の規模
- クライアントの要望
上記の点についてクライアントとの打ち合わせと提案を重ね、実際の設計書を作成します。
クラウドエンジニアにとって、拡張性やセキュリティ面を考慮した設計が重要です。
進化し続けるクラウド技術の将来を見据えた計画と、クラウド環境に適したセキュリティを備えた基盤を設計します。
クラウド環境の構築
クラウド上で機能するシステム環境を設計に基づいて実際に構築していきます。
クライアントの要件に応じたソフトウェアのセットアップや設計、仮想サーバーの構築、データベース環境の構築、プログラミング作業、動作検証や負荷テストの実施など、構築から動作テストに至る一連の工程がクラウドエンジニアの職務範囲に含まれます。
クラウドの運用と保守
クラウドエンジニアの職務には、構築したシステムの円滑な運用と問題発生の予防を目的とした保守作業が含まれます。
具体的には、
- 運用上の課題の特定
- 運用コストの見直し
- 定期的なメンテナンス
- トラブルやエラーの原因究明と対処
などが挙げられます。
システムの提供だけで仕事が終わるわけではなく、その後の対応も重要な役割を担います。
導入後のシステムが必ずしも当初の計画通りに機能するとは限らないため、クライアントが快適に利用できるよう、日々の管理業務もクラウドエンジニアが担当します。
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クラウドとオンプレミスの技術者の違い
システムの基盤構築という点では、クラウドエンジニアとインフラエンジニアは同様の役割を担っています。
しかし、大きな違いは物理的な環境の管理の有無にあります。
- インフラエンジニアの職務には、ケーブル配線作業やハードウェア機器の設置、保守、交換などが含まれます。
- つまり、自社のオフィスやデータセンターにシステムを設置して運用する、いわゆるオンプレミス運用に対応できる知識とスキルが必要とされます。
一方、クラウドエンジニアの業務では、そうした作業は発生しません。
代わりに、クラウドサービスに関する専門的な知識が求められます。
しかしながら、「基盤を構築する」という本質的な仕事は両者に共通しています。
そのため、インフラエンジニアからクラウドエンジニアへのキャリアパスも一つの選択肢となり得ます。
クラウドエンジニアの最新年収動向
クラウドエンジニアの収入水準を把握するため、「AWSエンジニア」「Azureエンジニア」「GCPエンジニア」の3職種の年収データを比較します。
フリーランス向けポータルサイトに掲載された案件から算出した、最高額、最低額、平均額は以下の通りです。
エンジニア職種 | 最高年収 | 最低年収 | 平均年収 |
---|---|---|---|
AWSエンジニア | 2,040万円 | 324万円 | 921万円 |
Azureエンジニア | 2,220万円 | 336万円 | 901万円 |
GCPエンジニア | 2,400万円 | 360万円 | 937万円 |
※数値は単価を12か月分乗じた年収換算値
フリーランスのクラウドエンジニアの平均年収は918万円と算出されました。一方、同じくフリーランスの
- システムエンジニアは758万円
と、クラウドエンジニアの方が高い収入水準にあります。
正社員向けの求人サイトのデータでは、
- クラウドエンジニアの平均年収は599万円
- システムエンジニアは508万円
と、こちらでもクラウドエンジニアの方が高収入となっています。
クラウドエンジニアに求められる最新のスキル
クラウド技術者に求められる主要な能力は、以下の3つの領域に関する知見と実践経験です。
- サーバー/ネットワーク
サーバーの構築・運用 | ネットワーク設計・構築 |
セキュリティ対策 | パフォーマンスチューニング |
- ミドルウェア
Webサーバー(Apache, Nginx等) | アプリケーションサーバー(Tomcat等) |
データベース(MySQL, PostgreSQL等) | メッセージングシステム(RabbitMQ等) |
- クラウド
クラウドサービスの利用(AWS, Azure, GCP等) | コンテナ技術(Docker, Kubernetes等) |
サーバーレスアーキテクチャ | 自動化・インフラコードの活用 |
サーバーとネットワークの実践的スキル
クラウド環境における作業を円滑に遂行するには、サーバーやネットワークに関する幅広い知見と実践的な経験が不可欠です。
常に学習心を忘れることなく、担当システムの事前学習や事後復習、自主的な勉強を怠らずに行う必要があります。
クラウドエンジニアとして求められるスキルには以下のようなものがあります。
- セキュリティを考慮したクラウド設計力
- 可用性が高く、コスト効率の良いシステム構築力
- 安定した運用と迅速なトラブル対応力
- Ruby、Python、Java、JavaScriptなどのプログラミング言語力
さらに、クラウドサービスの基盤としてLinuxが広く採用されていることから、Linuxに関する知識の習得も推奨されます。
経験に基づくミドルウェア理解
コンピューターシステムにおいて、オペレーティングシステム(OS)と個別のアプリケーションソフトウェアの間に位置するソフトウェアがミドルウェアと呼ばれています。
このミドルウェアの存在により、OSは高度な処理を実行できるようになり、動的なアプリケーションが機能するようになります。
主要なミドルウェアには以下のようなものがあります。
- Webサーバー
- アプリケーションサーバー
- データベース管理システム
- バックアップ
- ジョブ運営
- 監視
- 高可用性クラスタ
クラウドエンジニアとして業務を遂行するためには、これらのミドルウェアに関する知見と経験が求められます。
ミドルウェアを活用したシステム設計が必要となる案件も存在するためです。
ミドルウェアの範疇まで対応できれば、より高い報酬を得られるフリーランスエンジニアを目指せます。
また、クラウドエンジニアに求められるスキルとして、クラウド技術に関する知識と経験が挙げられます。
AWS、Azure、GCPといった主要なパブリッククラウドのサービスの理解と、それらの設定・運用ができることが重要です。
3大パブリッククラウドをすべて扱えるようになれば、クラウドエンジニアとしての活躍の場が大きく広がるでしょう。
クラウドエンジニアに役立つ人気資格
クラウド技術者を志望する、または現役のクラウド技術者としてさらなる能力向上を目指す場合、3大パブリッククラウド(AWS、Azure、GCP)の公認資格の取得が推奨されます。
各資格の詳細については、以下の通りです。
AWS | ・
|
---|---|
Azure | ・
|
GCP | ・
|
AWS 認定ソリューションアーキテクト資格 最新版
AWS認定資格は、Amazon Web Servicesに関する専門的な知見やスキルを公的に証明するものです。
Amazon社自身が認定する12種類の資格の一部であり、学習を通じて実践的なスキルを身につけることができます。
AWS認定ソリューションアーキテクトには、以下の2つのレベルがあります。
- アソシエイト:1年以上のAWSクラウド活用における課題解決と対策実施の経験
- プロフェッショナル:2年以上のAWSソリューション設計、運用、トラブルシューティングに関する包括的な経験
一定のAWS知識が必要とされるため、難易度は決して低くありません。
そのため、基礎レベルの「AWS認定クラウドプラクティショナー」から学習を始めることをおすすめします。
Azure認定資格試験
マイクロソフトが直接認証する「IT専門家と開発者の技術力と専門性を評価する資格」がMicrosoft Azure認定試験です。
知識水準に応じて3つのカテゴリーに分かれています。
- Fundamentals:Azure初学者向け
- Associate:Azure中級者向け
- Expert:Azure上級者向け
試験の分野は開発者向け、管理者向け、DevOpsエンジニアなどがあり、この資格を取得することでAzureに関する一定の専門知識を証明できます。
クラウド認定資格の最新情報
Google Cloud認定資格は、Google Cloudを活用したアプリケーションやデータソリューションの開発、設計、運用に関する知識とスキルを証明する資格です。
この資格は、難易度に応じて2つのカテゴリーに分類されています。
- 一つ目は、基礎的なスキルを身につけたい人向けの「アソシエイト認定資格」
- 二つ目は、高度なスキルの習熟度を評価したい人向けの「プロフェッショナル認定資格」です。
試験の対象分野は多岐にわたり、
開発者 | データ | セキュリティ | ネットワーク |
---|---|---|---|
など、さまざまな領域をカバーしています。 |
この認定資格を取得することで、Google Cloudの特定の分野における自身のスキルを客観的に示すことができます。
クラウド分野の需要と展望
クラウド分野の需要と将来性は拡大し続けると予測されます。
根拠として、総務省の調査では、企業のクラウドサービス利用率が2014年から2018年にかけて増加し、83.2%の企業がクラウド導入の効果を実感していることが明らかになりました。このような利用拡大と満足度の高さから、今後もオンプレミスからクラウドへの移行が加速すると考えられます。
また、株式会社MM総研の調査によると、以下の結果が示されています。
- クラウド市場規模が2018年から2019年にかけて約4,000億円増加
- 2024年には5兆3,970億円に達すると予想
- AWS、Azure、GCPを利用する企業数がすべて増加する見込み
新型コロナウイルス感染拡大に伴うテレワークやWeb会議の普及もクラウドサービス利用の後押しとなっています。このような市場動向を受け、クラウドエンジニアの需要も高まっていくことが予想されます。実際、経済産業省は2030年にIT人材が最大79万人不足すると試算しており、クラウドエンジニアの活躍の場は広がっていくと考えられます。
すでにミニストップ、キリン、ネスレなどの大手企業がクラウド移行を実施しており、今後さらに多くの企業がクラウド移行を行う可能性があります。
概要
クラウド上で稼働するシステムの設計、構築、運用などを担うのがクラウドエンジニアです。
物理的な環境への対応が必要ないことがインフラエンジニアとの違いです。
フリーランスのクラウドエンジニアの平均年収は約918万円となっています。
- インフラ、ミドルウェア、クラウド関連の知見や経験が求められ、
- AWS、Azure、GCPなどの環境別資格を持つことが有利です。
今後さらに需要が高まる職種と見込まれています。
そのため、今後の独立や転職でクラウドエンジニアを目指すことをおすすめします。
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