フリーランスとして活動を始めたばかりの人は、確定申告の手続きに戸惑うことがよくあります。
会社員時代は確定申告を雇用主に任せきりだった人が多かったためです。
会社員のうちは、確定申告について学ぶ機会や必要性がなかったことが、理解が進まない一因でしょう。
しかし、フリーランスは適切な確定申告を行うことで節税メリットがあるため、手を抜くべきではありません。
そこで今回は、確定申告に不安を抱えるフリーランス初心者のために、気をつけるべきポイントをご説明します。
気になる内容をタップ
確定申告の基礎知識
確定申告に関する基本的な事項を把握しておくことが重要です。
以下にその要点を示します。
・所得税の確定申告は、原則として毎年1月1日から3月15日までの期間に行う必要がある。 |
・確定申告が必要な人は以下のとおり。 |
・確定申告の際には、収入金額や必要経費、控除額などを正確に記載する必要がある。 |
・確定申告を行わなかった場合や、申告内容に虚偽があった場合は、重加算税が課される可能性がある。 |
確定申告とは
所得税の納付に関する手続きを指す確定申告は、本業や副業を問わず、1年間に獲得した収入の総額に基づいて、支払うべき税金の額を算出し、申告する一連の過程を指します。
納税額は所得によって決定されます。
所得は1月1日から12月31日までの期間で得た
- 収入や支出
- 医療費
- 寄付金
- 扶養家族の状況
などから計算されます。
これらの基本的な部分は雇用形態に関係なく同様であり、難しく考える必要はありません。
次に理解すべきは、自身で確定申告が必要か不要かの判断基準です。
- 雇用者で確定申告が不要な場合
- 雇用者でも確定申告が必要な場合
- フリーランスの場合
の3つのパターンを確認しましょう。
会社員(サラリーマン)に確定申告は原則必要なし|2024年6月について
会社員の場合、原則として確定申告は不要です。雇用主が年末調整を行うためです。確定申告の仕組みが理解しづらい理由でもあります。
会社員の年末年始の書類の流れを見てみましょう。
- 扶養控除等の申告書の提出
- 配偶者特別控除の申告書の提出
- 12月分の給与の確定
- 上記により年間の給与額、賞与額、社会保険料、源泉徴収額が確定
- 確定した所得に基づき所得税が確定
- 住宅ローン控除
- 各種保険料控除
年末調整により、12月または1月の給与で還付金が加算された経験がある人もいるでしょう。会社員の場合、雇用主が毎月の給与から税金を源泉徴収し計算しているため、個人の事務負担が軽減されます。定められた書類の項目を記入し、押印するだけで、所得が確定され納税が完了する仕組みとなっています。
会社員でも確定申告が必要な場合
会社員でも確定申告が義務付けられる状況には、以下のようなケースが挙げられます。
- 年収が2000万円を超える場合
- 副業による収入が20万円を超える場合
- 複数の勤務先から給与を得ている場合
- 同族企業の役職者として貸付金の利息や資産の賃貸料を得ている場合
- 災害などにより源泉徴収の猶予措置を受けている場合
その他にも確定申告が必要とされる要件はありますが、主に会社員に影響するのは上記の5点です。詳細については、国税庁の以下のウェブサイトをご覧ください。
確定申告が必要なフリーランス(個人事業主)・自営業
フリーランスや個人事業主、自営業者で一定額以上の収入がある場合、自身で所得を算出し税務署へ申告する必要があります。
つまり、従来は会社が行っていた収支の計算や申告手続きを自ら行うことになりますが、難しく考える必要はありません。
適切な確定申告を行えば以下のメリットがあります。
- 節税効果が期待できる
- 災害や収入減少時の補償を受けやすくなる
一方で、申告を怠れば補償を受けにくくなる可能性があることを忘れてはなりません。
フリーランスの確定申告でも必ず出てくる白色申告と青色申告
白色申告
・手続きが簡単
・帳簿等の記帳が不要
・必要経費の計上が制限される
・青色申告控除の適用がない
青色申告
・帳簿等の記帳が必要
・必要経費の範囲が広い
・青色申告特別控除(最大65万円)の適用がある
項目 | 白色申告 | 青色申告 |
---|---|---|
帳簿等の記帳 | 不要 | 必要 |
必要経費の範囲 | 制限される | 広い |
控除 | なし | 青色申告特別控除(最大65万円) |
青色申告のメリット
- 必要経費の範囲が広い
- 青色申告特別控除(最大65万円)が受けられる
簿記の知識は必要ですが、メリットを理解すれば学習コストは小さいものと感じられるでしょう。
白色申告
確定申告の方式には、白色申告と青色申告があります。
白色申告は手続きが簡単ですが、
- 収入や経費が少ない場合
- 経理経験が浅い場合
に適しています。
一方、青色申告は複雑ですが、特別控除が受けられるため節税効果が期待できます。
- 収入や経費が一定水準以上ある場合は、手間を惜しまず青色申告を選択するメリットがあります。
また、赤字処理ができないため、収入が不安定な仕事では白色申告では損失が発生する可能性があります。
長期的にフリーランスを続ける場合は、
- 徐々に青色申告に移行するか
- 外部に委託することを検討しましょう。
青色申告
確定申告において、白色申告とは異なり、青色申告では10万円、55万円、または65万円の特別控除を受けることが可能です。
フリーランスを始めたばかりの方は、まず10万円の特別控除を受けられるよう、簿記や確定申告の仕組みを学ぶことが推奨されます。
青色申告による節税効果は、以下の式で簡潔に説明できます。
- 収入 - 特別控除 - 経費 = 所得
この式は概算ですが、最終的な所得額から基礎控除額38万円を差し引いた金額が、所得税の対象となります。
したがって、収入と経費のバランスによっては、納める所得税額が少なくなる可能性があります。
収入を上回る経費があれば赤字となりますが、青色申告の場合、赤字分を3年間繰り越すことができるため、経費の計上方法次第では、さらなる節税効果が期待できます。
55万円以上の特別控除を受けるには、以下が必須です。
- 複式簿記による適切な帳簿付け
- 申告書への貸借対照表と損益計算書の添付
- 期限内提出
平成30年度税制改正により、令和2年(2020年)分から65万円の特別控除を受けるには、上記の要件に加えて、電子申告(e-Tax)または電子帳簿保存が義務付けられました。
フリーランス(個人事業主)の確定申告の時期・流れについて
フリーランスの方々が確定申告を行う時期と手順について解説します。
※2020年度の確定申告期限は、新型コロナウイルス感染症の影響により延長されています。最新情報は国税庁の公式ウェブサイトでご確認ください。
国税庁 | 確定申告期限の弾力的な対応について |
確定申告の時期
フリーランスの方は、前年の1月1日から12月31日までの収入と経費を計算し、翌年の2月16日から3月15日の期間内に確定申告を行う必要があります。年度は4月1日から翌年3月31日までとは異なることに留意が必要です。
確定申告とは、1年間の所得を算出し、所得税額を確定して納税することです。期限ぎりぎりに収支の計算を始めると、記憶違いやミスが発生しがちです。
そのため、
- 毎月決まった時期に収支計算を行うことが賢明です。
- さらに、週単位や日単位でメモを取る習慣をつけておけば、月次の計算が容易になるだけでなく、経費の漏れも最小限に抑えられ、結果的に得をすることができます。
フリーランス(個人事業主)の確定申告に必要なもの
フリーランスの方が確定申告を行う際に必要となる書類を、青色申告と白色申告に分けてご案内いたします。
青色申告の場合:
- 収支内訳書
- 総勘定元帳
- 現金出納帳
- 売掛金元帳
- 仕入帳
- 減価償却資産台帳
白色申告の場合:
- 収入金額のわかる資料(売上伝票、請求書など)
- 必要経費のわかる資料(領収書、レシートなど)
上記の書類を整備し、所轄の税務署に提出することが求められます。適切な記録の保持と申告が重要となりますので、ご留意ください。
青色申告の場合
個人事業主が青色申告を行う際に必要となる書類は以下の通りです。
- 確定申告書B
- 各種控除を受けるための証明書類
- 事業収支を示す決算書
- 収入金額が55万円以上の場合は貸借対照表と損益計算書
- 10万円以上の場合は損益計算書のみ
- 電子申告(e-Tax)または電子データによる帳簿の保存(収入金額65万円以上)
最高額の65万円の青色申告特別控除を受けるには、確定申告書B、各種控除証明書類、貸借対照表・損益計算書の決算書、電子申告または電子データ保存が必要です。10万円の特別控除であれば損益計算書のみで足ります。決算書の様式は国税庁サイトからダウンロードできます。
国税庁 | 確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等 |
赤字決算や事業所得以外の所得がある場合は、その種類に応じて第四表、第三表などの提出が求められます。ご自身の状況を確認の上、必要書類を漏れなく用意してください。各種控除の証明書類の詳細については下記をご覧ください。
国税庁 | 申告書に添付・提示する書類 |
白色申告の場合
白色申告に求められる主要な書類は3点あります。
- 確定申告書B
- 各種控除を証明する書類
- 収支内訳書
確定申告書Bと各種控除証明書類については、青色申告の場合と同様のものが必要となります。
異なるのは収支内訳書の部分です。収支内訳書は国税庁の公式ウェブサイトからダウンロードし、必要事項を記入した上で印刷しましょう。
国税庁|確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等 |
また、各種控除証明書類の詳細については、国税庁の別のページで確認できます。
国税庁|申告書に添付・提示する書類 |
確定申告書の提出方法と提出先
申告書の提出先は居住地を管轄する税務署となります。基本的には自身の住所を所管する税務署です。
転居した場合や所轄税務署が分からない際は、国税庁の公式サイトで確認できます。
申告書の提出方法は主に3つあります。
- 税務署への直接提出
- 郵送
- e-Taxによるオンライン申告
フリーランス初心者や経理・税務に不慣れな方は、税務署員に不備や誤りを指摘してもらえるため、直接出向くことが賢明です。
ある程度慣れたら郵送やe-Taxに切り替えましょう。
フリーランス(個人事業主)の確定申告で行う節税対策
フリーランスの皆さまが確定申告時に活用できる節税方法をご案内いたします。
- 必要経費の計上
仕事に関連する経費は必要経費として全額控除できます。
例えば、パソコン代 ソフトウェア代 書籍代 通信費 交通費 家賃の一部 などが該当します。
- 確定申告の際は、領収書や明細書を残しておくことが重要です。
経費の範囲と適切な記録の重要性
収入申告の方式によって、控除可能な経費の範囲や金額に違いがあります。
- 白色申告では、専従者控除として最大86万円までしか控除できませんが、青色申告の場合は上限なく、専従者給与として全額経費計上が認められます。
- 自宅を事務所としている場合、青色申告では家賃や光熱費の一定割合を必要経費と見なすことができます。
- また、赤字を3年間繰り越せるだけでなく、黒字年と赤字年の所得の相殺も可能です。
さらに、貸倒引当金の計上や少額減価償却の特例など、様々な制度を組み合わせることで、所得税負担を最小限に抑えられるのが青色申告のメリットです。
経費として認められるものについて
フリーランスや個人事業主にとって、業務に関連する支出は経費として計上できます。しかし、個人的な支出は経費とみなされません。事業活動に必要な費用のみが経費として認められるのです。
自宅を事務所として使用する場合、家事関連費は按分される必要があります。家賃や光熱費の全額を経費に計上することはできません。業務と私的利用の割合に応じて、適切に按分しましょう。
経費として認められる主な項目は以下の通りです。
- 家賃
- 光熱費
- 通信費
- 交通費
- 交際費
- 消耗品費
- 減価償却費
これらは従業員として勤務していた際、企業から支給されていた費用と同様のものです。ただし、全額が支払われるわけではありません。私的利用分と業務利用分を区別し、業務に必要な部分のみを経費として計上することが重要です。
個人的な支出と業務上の支出を明確に区別し、事業活動に必要な費用のみを適切に経費計上することが肝心です。私生活のための支出は経費として認められませんので、注意が必要です。
領収書の保管方法
領収証や明細書の提出は不要ですが、7年間の保存義務があり、税務調査時に提示を求められる可能性があることを覚えておく必要があります。
経費計算後に処分するのではなく、整理して保管することが賢明です。
特にフリーランス初心者は、経費計上の可否が分からず、領収証や明細書を捨ててしまうと損失が生じかねません。
経理に慣れるまでは、すべての領収証や明細書を保管し、経費該当性を判断しながら両方を残すべきです。
また、2020年度以降は源泉徴収票の提出は不要ですが、念のため領収証や明細書とともに保存しておくことをおすすめします。
まとめ
確定申告に関する基本的な情報や手順、青色申告と白色申告の違い、経費の扱い方などを解説しました。
フリーランスとして新たにキャリアをスタートした際、開業届けの手続きなどが分からず不安に感じることがあるかもしれません。
一人で全てを処理しなければならないプレッシャーも伴うでしょう。
しかし、確定申告や経費の取り扱いについて理解が深まれば、単に知識がなかっただけで、一つひとつは簡単な作業であることが分かります。
特に税金や金銭面での不安は大きくなりがちですので、疑問点があれば国税庁の公式サイトを参照するか、必要に応じて税理士に相談するなど、早期に不安を解消することをおすすめします。
本記事がフリーランス初心者の方の確定申告に関する疑問を解消し、青色申告と白色申告の違いを理解する一助となれば幸いです。
ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」に興味がある方は、ぜひ会員登録をお願いします。
xhoursにはアプリはありませんが、フリーランスとしてのキャリアに活かせるサービスとなっています。
本記事が皆様の助けとなれば幸いです。