ITパスポート試験は、IT業界で活躍する様々な職種の人々が基礎的な知識を身につけることを目指した国家資格試験です。
この試験は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が定める「共通的知識に位置するレベル」をクリアしなければ合格とはみなされません。
現代社会ではIT技術が全産業と深く関わっているため、その基本的な理解は不可欠です。
ITパスポート試験はそうした知見を証明する国家資格と言えるでしょう。
- 本業やフリーランス、副業などでスムーズにIT関連業務を行うために、この試験の受験を検討する人も多いはずです。
本記事では、ITパスポート試験の概要を説明するとともに、
- 試験日程や内容など詳細な情報も紹介しています。
ぜひ最後までご一読ください。
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ITパスポート試験とは
ITに関する基礎的な知見を身につけることを目的とした国家資格試験であるITパスポートは、情報処理の促進に関する法律に基づいて実施されています。
この資格を取得することで、IT関連業務に従事する際の入門的な素養を備えることができます。
- 専門用語の簡易的な理解や業界内の基礎知識の習得が可能となるため、IT企業の社員だけでなく、独学で学ぶ方にも適した資格といえます。
ただし、論理的思考力が一定程度必要とされるため、IT業界以外の受験者にとっては決して簡単な試験ではありません。
そこで、ITパスポート試験の難易度について検討してみましょう。
ITパスポート試験資格の難易度
ITパスポート資格の難易度は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表している国家試験の中でも、一般的な知識レベルに位置づけられています。同機構が開示している下図の仕組みを、分かりやすく解説していきましょう。
前述の通り、ITパスポート資格を取得するには、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催するITパスポート試験に合格する必要があります。国家資格を詳しく分類すると
- 「ITを活用する側」
- 「情報処理技術者」
に大別されますが、ITパスポート試験は「ITを活用する側」に区分されます。
上の図で右に進むほど試験の難易度が高くなるため、情報処理技術者試験と比べるとITパスポート試験の難易度は低いと言えるでしょう。令和2年(2020年)度のITパスポート試験の合格率は58.8%で、受験者数131,788名中77,512名が合格しています。
同じ「ITを活用する側」に位置づけられる情報セキュリティマネジメント試験の難易度と比較してみましょう。同年度の情報セキュリティマネジメント試験の合格率は66.6%で、受験者数9,121名中6,071名が合格しているという結果を鑑みると、ITパスポート試験の方が難しい試験であることが分かります。
ITパスポート試験の詳細
ITパスポート試験の詳細については、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公式に公表しています。
この試験は複数の区分に分かれており、英語表記では"Information Technology Passport Examination(IP)"と呼ばれています。
年間を通して随時受験が可能となっています。
ここでは、IPAが発表している公式情報に基づき、ITパスポート試験の詳細を説明します。
ITパスポート試験の試験会場・日程・受験料
ITパスポート試験の会場選定にあたっては、「iパスWebサイト」に掲載された情報を参考にすることが賢明です。
【試験会場・日程】は以下の通りです。
- 国内各地域で週末を中心に随時実施されています。
- 2022年度の試験スケジュールについては、上記サイトでご確認ください。
- ただし、新型コロナウイルス感染症の影響により、一部会場では試験が中止になる場合や、定員オーバーで希望会場での受験ができない可能性があります。
【受験料】
現行の受験料は5,700円(税込)です。 |
2022年4月以降は7,500円(税込)に改定される予定ですので、ご留意ください。 |
現行料金での受験を希望する方は、2022年3月31日までに受験することをおすすめします。 |
ITパスポート試験の試験時間・出題形式・出題数・試験方式
試験の所要時間は2時間です。
問題形式は以下の通りです。
- 4つの選択肢から1つを選ぶ多肢選択式
- 100問が出題されます
- 小問形式も含まれています
試験はコンピューターを使用するCBT(Computer Based Testing)方式で行われます。
ただし、身体的な理由でCBTが受けられない方のために、年に2回(4月と10月)、筆記による試験も実施されています。
ITパスポート試験の出題内容
ITパスポート試験の出題範囲は、「戦略的側面」「管理的側面」「技術的側面」の3つの領域に分けられています。
戦略的側面では、企業活動や経営、法務などを含む、システムに関する戦略的な知識が問われます。経営学や個人情報保護法、知的財産権などの法的な概要を理解しておくことが重要です。
管理的側面では、システム開発におけるマネジメントに関する問題が出題されます。システムプロジェクトの管理方法やシステム監査の概要など、習得が必須となる内容です。
技術的側面では、IT関連業務の基礎知識やパソコンの構造、セキュリティ、ネットワークなどについて問われます。
各領域の概要は以下の通りです。
分野概要 |
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戦略的側面(約35問) |
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管理的側面(約20問) |
|
技術的側面(約45問) |
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ITパスポート試験の受験者数・合格率
日本資格取得支援(JQOS)の統計によると、令和2年度(2020年)のITパスポート試験の受験者数は131,788人に上りました。そのうち合格者は77,512人で、合格率は58.8%となっています。
2016年以降のITパスポート試験の受験者数と合格率は以下の通りです。
年度 | 受験者数(名) | 合格者数(名) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
2016年 | 77,765 | 37,570 | 48.3 |
2017年 | 84,235 | 42,432 | 50.4 |
2018年 | 95,187 | 49,221 | 51.7 |
2019年 | 103,812 | 56,323 | 54.3 |
2020年 | 131,788 | 77,512 | 58.8 |
ITパスポート試験に合格するためには、総合評価点が満点の1,000点中600点以上を獲得する必要があります。さらに「ストラテジ系」「マネジメント系」「テクノロジ系」の3分野別評価点がそれぞれ300点以上でなければなりません。つまり、各分野で最低300点を取り、総合点で600点以上を獲得しなければ不合格となります。
年を経るごとに受験者数と合格率が上昇している理由としては、以下が考えられます。
- ITが生活に浸透し、IT関連の基礎知識を身に付ける人が増えていること
- IT業界のみならず、他の業種や一般生活においてもITの活用が広がり、ITリテラシーの重要性が高まっていること
ITパスポート試験の申し込み手順
ITパスポート試験の受験手続きは、次のステップに従います。
- iパスWebサイトから受験申請を行う
- 申請画面に従い、必要な情報を入力する
- 受験料の支払い方法を選択する(クレジットカード決済、ペイジー、コンビニ払い込み)
- 受験票の到着を待つ
指定された手順以外で進めると、申請が受理されない可能性があるため、注意が必要です。
ITパスポート試験の申請手順の詳細については、こちらのリンクをご覧ください。
ITパスポート試験の有効期限
ITパスポート試験には期限切れの概念がありません。この試験は、IT分野における能力を証明するものであり、特定の権利を付与する資格とは異なるため、有効期限は設けられていません。
勉強時間
基本情報技術者試験の合格に向けた学習経験から判断すると、ITパスポート試験に合格するためには、およそ2~300時間(1日5時間で1ヶ月半~2ヶ月程度)の学習時間が必要となります。
試験は全100問の四者択一形式で、一部は過去問から出題されます。
そのため、過去問の理解を中心に学習することが重要です。
具体的には、
- 過去問の理解に100~200時間
- 最新のIT技術の習得に100時間程度
を割り当てることをおすすめします。
ITパスポート試験の資格取得のメリット
ITパスポート試験に合格し、認定資格を手にすることの利点を把握することは、試験対策の学習時における意欲向上につながるでしょう。
さらに、企業就職時だけでなく、副業やフリーランスとしての活動においても有益な効果が期待できます。
本稿では、ITパスポート資格取得のメリットについて説明します。
ITの基礎知識が身に付く
ITに関する基礎的な知識を身につけていることが、国家資格によって保証されているということが、ITパスポート試験に合格した意味となります。
コンピュータシステムや情報セキュリティなどの知識を活用し、オフィスツールの運用やAI(人工知能)などの新技術への対応が、もともとITパスポートで想定されている関連業務です。
IT関連業務と聞けば、初心者や浅い知識しかない人は複雑で難しいイメージを抱くかもしれません。
しかし、ITパスポート試験は基礎的な知識の習得を証明する資格に過ぎず、
- 基本情報技術者
- 応用情報技術者
などの上位資格を目指すための入り口と言えます。
ITパスポート資格を持っていれば、基本的なITスキルや知識を身につけていることが証明されるため、就職や転職、キャリアアップの際に有利になるケースもあります。
資格取得の基礎となる
ITパスポート試験は、情報処理推進機構(IPA)が主導するIT関連資格の中で、比較的合格しやすい試験の一つと言えます。
この資格は、
- 基本情報技術者
- 応用情報処理技術者
といった上位資格のみならず、さらに高度な知識・技能が求められる資格取得の基盤となります。
上位の情報処理技術者関連資格を目指す方にとって、ITパスポート試験に合格することは
- 自信やモチベーションの向上につながる
- 基礎知識を身につけるためにも推奨される資格
です。
資格手当や報奨金を得られる
ITに関する国家資格であるITパスポートは、個人的な魅力を高めたり、企業によっては手当や奨励金を受け取ることができます。
基本的には、就業規則に従って運用されているため、手当や奨励金の金額は会社ごとに異なります。
しかし、IT関連企業の中には、ITパスポート資格を評価しているところもあり、待遇面で優遇される利点があります。
IT系企業への就職対策
ITに関する基礎的な知識を有することは、IT関連企業への就職を容易にする大きな利点となります。
単に待遇面での優遇措置があるだけでなく、IT関連資格保持者を積極的に採用する企業も多数存在しています。
特に、IT業界での実務経験がない方や他分野からの転職希望者にとっては、ITパスポート試験の合格が評価されることがあり、受験をお勧めします。
ITパスポート試験の資格取得のデメリット
ITパスポート試験に合格し、資格を手にするためには、いくつかの欠点も認識しておく必要があります。
社会人にとって、業務と並行して学習時間を確保することは、かなり困難な課題となるでしょう。
ここでは、ITパスポート試験の合格に向けた学習時間の確保に伴う欠点について詳しく説明します。
- 仕事と学習の両立が難しい
- プライベートな時間が減少する
- 体調を崩しやすくなる
勉強時間を確保する必要がある
ITパスポート試験の資格取得には、段階的なアプローチが賢明です。
この試験は、情報処理推進機構が運営するIT関連国家資格の中で比較的初級レベルに位置づけられています。
しかし、初級とはいえ、合格には日々の地道な努力が欠かせません。
試験に合格するには、およそ2~300時間(1日5時間、1.5~2ヶ月程度)の学習時間が必要不可欠でしょう。
社会人が仕事と並行してこれだけの時間を確保するのは容易ではありません。
ITパスポート試験の過去問を解いて合格を目指そう
ITパスポート試験では、コンピュータ画面に表示された問題に対し、マウスやキーボードを使ってCBT方式で解答を入力することが求められます。
合格に向けた対策として、過去問題の理解が重要であることは前述の通りです。
では具体的にどのように学習を進めればよいでしょうか。
- 書店には多数の参考書や教材が並んでいますが、まずは過去問題に取り組むことをおすすめします。
- 実際に過去問題を解いていく中で、出題傾向が見えてくるはずです。
- また、過去に出題された同じ問題が散見されることにも気付くでしょう。
過去問題を理解するということは、同様の形式で出題された場合に正解を導き出せるようになるということです。
なお、iパスWebサイトではCBT模擬体験ソフトウェアも公開されています。
まとめ
この記事では、ITパスポートの資格について説明し、その取得のメリットを紹介しました。
- 国家資格であるITパスポートは、IT企業での優遇措置や就職活動での有利性があります。
- 試験の合格率も比較的高く、過去問題を活用した対策で合格を目指すことができます。
- IT業界だけでなく、副業やフリーランスとしても資格取得が有益です。
- フリーランス案件の獲得に役立つため、ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」をご活用ください。
スキルアップとキャリア形成の一助として、ITパスポート資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。