ITの世界では「コンサルタント」という職種がよく知られていますが、その実態は必ずしも明確ではありません。
本稿では、コンサルタントの役割と業務内容、さらにエンジニアがコンサルタントに転職する際の利点と方策について解説します。
- コンサルタントの定義と役割
- コンサルタントの具体的な職務内容
- エンジニアがコンサルタントに転職できるかどうか
- エンジニアがコンサルタントに転職するメリット
- エンジニアがコンサルタントに転職するための方法
エンジニアの方でコンサルタントへの転職を検討中の方や、すでに転職の途上にある方は、ぜひ参考にしてください。
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コンサルタントとは
専門家による助言や指導を意味する「コンサルティング」という言葉は、「相談する」という語源を持っています。この用語がビジネス界で定着し、コンサルティング業務を行う人々をコンサルタント、その会社をコンサルティング会社と呼ぶようになりました。
企業活動においてコンサルタントの役割は、様々な情報を提供し、課題解決を支援することと認識されています。
コンサルティング業務は大きく以下の3つのカテゴリーに分類されます。
- ITコンサルティング
- 経営コンサルティング
- 戦略コンサルティング
ITコンサルティング
ITコンサルティングは、IT分野を中心に事業を展開する企業に対して、専門的なアドバイスを提供する業務です。
クライアントの経営戦略に沿ったIT戦略の策定や、システムの最適化による経営改善など、状況に応じて柔軟に対応します。
ITコンサルタントには、IT関連の専門知識、マーケティング分析力、プロジェクト推進力が求められます。
【ITコンサルタントの主な業務内容】
- ITインフラ、アウトソーシング、資産管理に関するコンサルティング
- ITリスク管理、セキュリティ対策のコンサルティング
- ERPやSCM、CRMシステムの導入支援、プロジェクト管理
- IT戦略策定、IT組織立ち上げ、ITデューデリジェンスなどのIT企画・戦略立案
- ビッグデータ、Webマーケティングを活用した業務改善提案
【ITコンサルティングの実績事例】
・人工知能を活用したデリバティブ契約業務の効率化 |
・RPAを導入した為替予約業務の改善 |
・基幹システムSAP ERPのクラウド移行 |
経営コンサルティング
企業経営に関する専門的なアドバイスを提供する業務が経営コンサルティングです。企業の現状を正確に把握し、課題を特定した上で、最適な解決策を提案することが主な役割となります。経営全般に関する幅広い知見と、的確な分析力、判断力が求められます。コンサルタントが立案した戦略の実行はクライアント企業が行いますが、財務から経営戦略までトータルでサポートに携わります。
【経営コンサルティングの具体的な職務内容】
職務ポジション | 仕事内容 |
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アナリスト |
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コンサルタント |
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マネージャー |
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パートナー |
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戦略コンサルティング
企業が直面する課題の解決に焦点を当てたコンサルティングサービスが戦略コンサルティングです。経営コンサルティングとは異なり、戦略策定後にアクションプランまで具体化することで、確実に企業の問題改善を実現することを目指します。
【戦略コンサルティングの具体的な業務内容】
- 企業やサービスのM&A戦略策定
- 企業の中長期的な成長戦略立案
- 組織全体の課題解決に向けた戦略支援
- 新規市場参入戦略の構築
- 新規事業戦略の策定
- 新製品開発戦略の立案
- 人事戦略の策定
- マーケティング戦略の構築
コンサルタントの仕事内容
コンサルティング業務の中核は、顧客から受託した課題に対して適切な解決策を提示し、実行を支援することにあります。
業界によって課題の内容や対処方法は異なりますが、本質的には顧客の要望を細かく分析し、プロジェクトチームが効果的な対策を講じることが肝心です。
コンサルタントに求められる資質には、以下のようなものが挙げられます。
- コミュニケーション能力
- 問題解決力
- プロフェッショナルな姿勢
- プロジェクト管理能力
- 論理的思考力
- IT戦略立案力
- 体力と精神力
- 業界知識や業務知識
- 市場動向を捉える力
一般的にコンサルティング業界は高収入で華やかなイメージがありますが、実際にはコンサルタントには非常に高い能力が求められる職種です。
顧客の厳しい要求に応えるプロセスでは、時間的制約や人間関係など様々な問題に直面します。
プロジェクトを成功に導くには、肉体的にも精神的にもタフでなければならないことを認識しておく必要があります。
エンジニアでもコンサルタントとして転職可能?
エンジニアがコンサルタントに転職することは可能ですが、年齢によって必要とされるスキルが異なります。
以下では、年代別に求められる能力や採用方法について説明します。ご参考ください。
- 20代の方は、アナリストやコンサルタント、シニアコンサルタントの職位で採用されることが多くなります。ポテンシャル採用が中心となるため、優れたコミュニケーション力や英語力があると有利です。また、システム開発経験やSIプロジェクトでの要件定義、運用参画経験があるエンジニアも重宝されます。
- 30代前半の方は、おおむねシニアコンサルタントとして採用されます。ポテンシャルに加え、プロジェクトリーダー経験(損益管理)やクライアント折衝経験など、具体的なノウハウが重視されます。年下のコンサルタントが上司になる可能性もあり、素直に意見を聞き、環境に適応する力が求められます。
- 30代後半から40代前半の方は、マネージャーの職位で採用されることが多くなります。そのため、以下のスキルが必要とされます。
・大規模プロジェクトのPM経験 |
・クライアントリレーション、ベンダー管理経験 |
・課題解決力、最適戦略提案力 |
エンジニア出身者は、コンサルタントと親和性の高い業務経験があると有利です。例えば、IT戦略策定の経験があったり、プログラミングスキルに加えてクライアント折衝のノウハウを持っている場合は、職務経歴書に明記するとよいでしょう。
エンジニアからITコンサルタントへ転職するメリット
本文では、技術者からITコンサルタントへの転職における利点を4つ取り上げます。
- 幅広い視野と経験の獲得
コンサルタントは様々な業界や企業と関わるため、多様な知見を身につけることができます。
- キャリアアップの機会
プロジェクトマネジメントやリーダーシップなど、新たなスキルを習得できる可能性があります。
- 高い報酬
一般的に、コンサルタントの給与水準は技術者よりも高めに設定されています。
- ワークライフバランスの改善
出張が多いものの、フレックスタイム制や在宅勤務制度を導入している企業も少なくありません。
スキルや経験が活かしやすい
技術者の専門知識や経験はITコンサルティング業務と相性が良いと言えます。
業界や職種を変更する転職は一般的に難しい面がありますが、エンジニアからITコンサルタントへの移行は職務の類似性から、それぞれが持つ能力や知見を生かしやすく、比較的スムーズにキャリアチェンジできると考えられます。
エンジニアより上流での仕事が可能
ITコンサルタントは、プログラミングを行うエンジニアとは異なり、経営戦略や事業計画など、企業活動の上流工程に関与することができます。
システム要件の策定や設計に先立ち、クライアント企業の経営課題や戦略的な方針を確認し、その段階から業務に携わることが可能です。
さらに、クライアントの課題解決に資するシステムインテグレーターやベンダーの選定プロセスにも関与することができます。
高年収が狙える
ITコンサルタントの職場では、実力主義が重視される傾向にあります。
そのため、年齢に関係なく、個人の能力次第で昇進や給与アップのスピードが速くなる可能性があります。
特に高収入を目指してエンジニアからキャリアチェンジを検討している方にとっては、魅力的なメリットと言えるでしょう。
ITコンサルタントの正社員の平均年収について、簡単に説明します。
- 求人情報サイトの調査によると、正社員のITコンサルタントの平均年収は約620万円となっています。
- 月額に換算すると約52万円になります。
- 年収の幅は396万円から1,285万円と比較的広く、勤務先や経験、求められるスキルによっては、1,000万円を超える年収を得ることも可能です。
一方、フリーランスのコンサルタントの平均年収は約1,033万円で、月額単価は86.1万円となっています。
高収入を望むコンサルタントは、将来的にフリーランスとして独立することも選択肢の一つとして検討すると良いでしょう。
業務コンサルや戦略コンサルもチャレンジ可能
コンサルティング業界に足を踏み入れると、その後の転職においては「コンサル経験者」として認識されることになります。
そのため、ITコンサルタントとしてのキャリアを経た後であれば、業務コンサルティングや戦略コンサルティングへの挑戦が可能となるのです。
実際、ITコンサルティング企業の中には、IT関連のプロジェクトだけでなく、業務や戦略に関わるプロジェクトも請け負っている会社が多数存在します。
様々な分野のプロジェクトに携わることで、キャリアパスの幅が広がることが期待できます。
転職の際は、コンサルティング企業の概要や業務内容などの情報を確実に把握し、自身のキャリア目標に合致するかどうかを慎重に検討することをお勧めします。
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エンジニアからコンサルタントへ転職成功させるために
本文では、技術者から経営コンサルタントへの転職を果たすための重要なポイントを3つ取り上げます。
- 業界知識の習得
コンサルタントには、クライアント企業の事業領域に関する深い理解が求められます。転職前から関心のある業界について、積極的に情報を収集し、知見を蓄えることが肝心です。
- ソフトスキルの向上
コミュニケーション力、プレゼンテーション力、課題解決力など、コンサルタントに不可欠なソフトスキルを意識的に磨いていく必要があります。研修やセミナーへの参加も有効な手段となるでしょう。
- ネットワーキングの強化
コンサルタント業界では人脈が重要視されます。転職活動の際も、的確なネットワーキングを行い、内定に繋げていくことが求められます。
自己分析、業界分析を徹底的に行う
ここでは、転職活動を円滑に進めるために、自己理解と業界知識の深化が不可欠であると説明しています。
まず、自分自身の長所や適性を言語化することで、面接時に自身の強みを的確に伝えられるようになります。
また、業界の動向や特性を把握することで、志望する分野を絞り込み、将来のミスマッチリスクを低減できます。
このように、自己分析と業界分析は相互に関連しており、両者を行うことで、転職先の選定や面接対策がスムーズになるのです。
自己分析のメリット
- 自身の特性を言語化できる(面接で有利)
- 転職の軸が明確になる
- 自身の強みを認識できる
- 他者の価値観を理解しやすくなる
業界分析のメリット
- 業界知識が深まる
- 志望業界を絞り込める
- 関心分野が広がる
- 志望動機に説得力が出る
- 入社後のミスマッチを防止できる
転職理由と志望動機を一貫させる
転職の理由と志望動機を一貫させることは極めて重要な課題です。その理由は、採用面接において説得力が高まるからです。
説得力は、コンサルタントにとって必須のスキルと言えます。
説得力に欠けると、人間性への信頼が損なわれ、将来的な業務遂行にも悪影響を及ぼしかねません。
エンジニアからコンサルタントへの転身を目指すのであれば、まずは志望企業の採用担当者を論理的に納得させることが、コンサルタントへの第一歩と位置付けられます。
採用段階から、コンサルタントとしての資質が問われているのです。
論理性を備えつつ、熱意を示し、入社への意欲を伝えることが肝心です。
コンサル専門転職エージェントを活用する
エンジニアからコンサルタントへの転職を実現するには、専門の転職サポート会社を活用するのが賢明な選択肢です。転職のプロフェッショナルに相談することで、自身の条件に合致した最適な求人を見つけられます。転職エージェントごとに得意分野や特色が異なるため、複数社に登録し、使い分けることをおすすめします。
ここでは、コンサルタント転職に強みを持つ3つの転職エージェントを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
【コンサルタント転職に強い転職エージェント】
企業名 | 特徴 |
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ビズリーチ |
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アクシスコンサルティング |
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ランスタッド |
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まとめ
この記事では、エンジニアからコンサルタントへの転職について詳しく説明しました。コンサルタントの概要、エンジニアがコンサルタントに転職するメリット、そして転職を成功させるためのコツを解説しました。
コンサルタントとは、クライアントから依頼された課題の解決をサポートする職種です。担当分野によって業務内容は多岐にわたり、高度な専門知識とノウハウが求められます。エンジニアでもコンサルタントへの転職は可能ですが、年齢によって必要なスキルが異なるため、事前に確認が必要です。
エンジニアがITコンサルタントに転職するメリットは以下の通りです。
- 保有スキルや経験を活かしやすい
- エンジニアよりも上流工程の業務に携われる
- 高収入を望める
- 業務コンサルや戦略コンサルにもチャレンジできる
一方で、コンサルタントへの転職を成功させるには、
- 自己分析と業界分析を徹底する
- 転職理由と志望動機を一貫させる
- 専門転職エージェントを活用する
ことが重要です。
高収入を目指す方にとって、コンサル業界は最適な選択肢です。少しでも興味がある方は、ぜひ転職にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。ITフリーランス向けダイレクトスカウト「xhours」を活用すれば、さらに有利にフリーランスの仕事を見つけられるでしょう。