引っ越し大変なの?経費可能な引っ越し費用や必要な手続きを解説!(2024年6月)

フリーランスとして業務に専念するため、仕事スペースを備えた住居への転居を希望している。
都市部の家賃は高額なので、地方に移り住みながらフリーランス活動を継続したい。
自宅兼事務所の場合、転居費用は経費として計上できるのだろうか。
フリーランスの転居は、個々の事情によって条件が大きく異なる。
本稿では、転居を検討中のフリーランスの皆様に向けて、

  • 転居費用の経費計上
  • 転居前後に必要な手続き

について詳細に説明する。

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フリーランスの引っ越し費用は経費にできる?

フリーランスの引っ越し費用は経費にできる?

フリーランスの方が引っ越し費用を経費として計上することは可能です。
ただし、計上できる金額は状況によって異なります。
経費計上が認められる引っ越しの条件は、大きく分けて2つのパターンがあります。

  • 1つ目は、自宅以外の仕事場として使用する物件(事務所など)への引っ越しです。
    この場合は、引っ越し費用の全額を経費として計上できます。
  • 2つ目は、仕事場と自宅を兼ねている住居への引っ越しです。
    この場合は、引っ越し費用の一部のみが経費計上の対象となります。

詳細については以下のとおりです。

自宅を仕事場と兼用する場合の条件

フリーランスが住居と職場を兼ねている場合、業務に使用する面積の割合に応じて、経費として計上できる金額が決まります。

例えば、自宅全体が80平方メートルで、そのうち30平方メートルの一室を仕事場として利用しているとすれば、経費計上可能な引っ越し費用の割合は以下の通りです。
30平方メートル÷80平方メートル×100=37.5%

もし引っ越し費用の総額が100,000円であれば、37,500円が経費として認められる目安金額となります。

仕訳の例:引っ越し費用総額100,000円の場合
  • 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
  • 雑費(支払手数料) 37,500円 現金 100,000円
  • 事業主貸 62,500円

引っ越し費用全体のうち経費計上できる37,500円を差し引いた62,500円については、私的な住居の引っ越し費用として扱われます。この場合の勘定科目は「事業主貸」です。

仕事場の面積比率は概算で申告して構いませんが、実態と乖離した金額を計上すると、確定申告時に問題視される可能性があります。引っ越し費用は、税務当局に合理的に説明できる金額を計上するようにしましょう。

フリーランスとしてどの引っ越し費用が経費になる/ならないを知ろう!

フリーランスとしてどの引っ越し費用が経費になる/ならないを知ろう!

独立した職業に従事する人々の転居に伴う費用が、事業上の経費として認められることは、先に触れた通りです。
しかし、すべての支出が経費と見なされるわけではありません。
どのような費用が経費に該当し、会計処理はどのように行われるべきかを、項目ごとに説明いたします。

  • 転居費用
    (項目ごとの説明)

敷金

敷金は支出時点では費用として処理することはできません。将来的に返還される性質を持つ支払いであるためです。会計上の勘定科目としては「敷金」を使用し、資産(投資その他の資産)に計上されます。
退去時に壁紙の張替えやフローリングの修理などが必要となり、敷金から控除された金額については、その時点で経費計上が認められます。その際の勘定科目は「修繕費」と記載されます。

礼金

賃借物件に支払う一時金である礼金は、退去時に返金されることがありません。そのため、経費として計上可能ですが、金額によって会計処理が異なります。

  • 礼金が20万円未満の場合、支払った期間中に全額を経費計上でき、勘定科目は「地代家賃」となります。
  • 一方、20万円以上の場合は繰り延べ資産として扱われ、数年にわたり減価償却が必要になります。この際の勘定科目は「長期前払費用」です。
例: 引っ越し時に現金で30万円の礼金を支払った場合
借方:長期前払費用 30万円
貸方:現金 30万円

減価償却期間は契約期間によって決まり、2年契約なら2年で償却します。

例:30万円の礼金(2年契約)の1年分を費用計上する場合
借方:地代家賃 15万円
貸方:長期前払費用 15万円

引っ越し業者への支払い

移転業務を外部委託した際の支払額は、「雑費」または「支払手数料」の勘定科目で経費処理できます。
一方、個人で梱包資材を調達した場合は「荷造運賃」の勘定科目となります。
ただし、事業と無関係な物品の移送費用は経費計上できませんので注意が必要です。
例外として、

  • ピアノ演奏家や音楽教室経営者のような職種であれば、楽器の輸送費も経費として認められます。

仲介手数料

不動産業者に支払う仲介料は、引越し業者への支払いと同じように、「雑費」または「支払手数料」として経費として計上することができます。

保険料

保険契約に伴う支出は、「損害保険料」の勘定科目で経費処理が可能です。ただし、契約開始日によっては仕訳の振替が必要になる点に留意が必要です。具体例を交えて説明しましょう。

  • 例1:1年契約の火災保険料を支払う場合
契約日 2020年6月1日
保険期間 2020年6月1日~2021年5月31日
年間保険料 12,000円
決算日 12月31日

仕訳は以下の通りです。
借方:損害保険料 12,000円
貸方:現金 12,000円

決算が12月末のため、支払済の保険料12,000円のうち、翌年分(2021年1月1日~5月31日)の6,000円は経費から除外し、次期に繰り延べる必要があります。

  • 例2:前払保険料を次期に費用計上する場合

借方:前払費用 6,000円
貸方:支払保険料 6,000円

経費計上のルールについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

フリーランスは2024年6月から確定申告するまでに引っ越した場合、注意しよう!

フリーランスは2024年6月から確定申告するまでに引っ越した場合、注意しよう!

フリーランスの方で住所移転と確定申告の時期が重なる場合、申告書の提出先に注意を払う必要があります。2020年度の確定申告期間は2021年2月15日から4月15日までの間に設定されていました。
引っ越しのタイミングと確定申告の関係によって、申告書の提出先は以下のようになります。

  • 1月に転居した場合
    申告書の提出先:新住所を所管する税務署
  • 3月に転居し、同月に確定申告を行う場合
    申告書の提出先:新住所を所管する税務署
  • 2月に確定申告を済ませ、3月に転居予定の場合
    申告書の提出先:旧住所(2月時点)を所管する税務署

いずれの場合も、確定申告書は居住地を管轄する税務署へ提出することになります。転居時期が確定申告期間に重なりそうな場合は、転出届や転入届の提出時期にも気を配る必要があります。

フリーランスとして引っ越しに必要な手続き

フリーランスとして引っ越しに必要な手続き

フリーランサーの転居に伴う事前・事後の手続きをまとめました。
移転の直前に慌てないよう、必要な書類や手順を事前に確認しておくことが重要です。

事前手続き 事後手続き
  • 住民票の転出届け
  • 国民健康保険の資格喪失手続き
  • 介護保険の資格喪失手続き
  • 児童手当の届出
  • 住民票の転入届け
  • 国民健康保険の資格取得手続き
  • 介護保険の資格取得手続き
  • 児童手当の届出
  • 納税通知書の転送手続き

納税地の変更手続き

フリーランスが事務所や自宅兼仕事場を移転する際、所得税・消費税の納税地変更に関する届出が求められます。
転居後、遅滞なく手続きを行う必要があり、提出先は旧住所を管轄する税務署となります。
書類は税務署へ直接持参するか、郵送も可能です。
手続きには本人確認が必須で、身分証と個人番号の確認が必要です。

  • 個人番号カードを持っていない場合は、個人番号記載の住民票を添付するのがよいでしょう。

個人番号カードについて詳しく知りたい方は、関連記事をご覧ください。

国民年金の手続き

公的年金制度における住所変更の手続きは、新居住地の自治体窓口で転入届の提出時に行うことができます。

  • 引っ越し後2週間以内に手続きを済ませましょう。

個人番号と年金番号が紐付けられている場合、年金機構と自治体間で自動的に情報共有が図られます。

  • 過去に年金関連手続きでマイナンバーを提示した経緯があれば、今回は手続き不要です。

国民健康保険の手続き

フリーランスの方々は、国民健康保険への加入手続きを怠らないよう気をつけましょう。
国民年金と同様に、転居後14日以内に新住所地の市区町村役場で必要な手続きを行う必要があります。

  • 異なる自治体に転居する場合、前住所地で資格喪失手続き、新住所地で加入手続きを行います。
  • 新しい保険証が届き次第、古い保険証は前住所地の自治体に返却しましょう。
  • 同一自治体内での転居であれば、住所変更手続きで対応できます。

なお、保険料の課税は転居した月を含め、新住所地の自治体が行います。
納付書払いの方は、転居前の納付書は使用できなくなるので、手続き完了後に送付される新しい納付書を利用してください。

給与支払いの手続き

フリーランスとして労働者を雇用している、または家族に対して専従者報酬を支払っている場合、「給与支払事務所等の設置・変更・廃止届出書」を提出しなければなりません。
提出先は「転居前の旧居住地を所管する税務署」となります。
引っ越し後1か月以内に手続きを完了させる必要があります。

海外引っ越しの手続き

フリーランスとして海外に移住したり、ノマドワーカーとして活動したりする場合、または配偶者の海外赴任に伴い国外へ転居する際には、通常の引っ越しとは異なる手続きが求められます。1年以上日本に戻らない場合、原則として日本の住民票を抜くことになります。必要な手続きは以下の通りです。

  • 事業の廃業届の提出

海外へ移転する際、納税地の変更ではなく、日本国内での事業を一旦廃止する形となります。業務を終えてから1か月以内に、事業所管轄の税務署へ提出します。

  • 青色申告の取りやめ届出

フリーランスとして青色申告を行っていた場合、事業終了年の翌年3月15日までに、事業所管轄の税務署へ届け出る必要があります。

  • 海外転出届の提出

転出予定日の14日前から提出可能です。なお、住民税は1月1日時点の住所地で課税されるため、12月末までに転出届を出せば、翌年度の住民税は不要となります。

  • 国民年金の任意加入手続き

年金保険料の支払い義務はなくなりますが、将来の年金受給額に影響するため、日本への帰国予定があれば任意加入を検討するといいでしょう。手続きは自治体窓口や年金事務所で行えます。

海外転出届を提出すると、所得税法上「非居住者」扱いとなり、原則として日本への所得税納付は不要です。ただし、国内源泉所得がある場合は例外的に納税義務が発生します。不安な点があれば、税理士会の税務相談会を活用するのがおすすめです。

経費控除について詳しく知りたい方は、関連記事をご覧ください。

まとめ

まとめ

自営業者が転居する際に必要となる経費の計上や手続きについて説明しました。
自営業者は引っ越しの前後の多忙さに気を取られ、手続きを忘れがちですが、確定申告でトラブルの原因となる可能性があります。
転居予定が決まった時点で、自営業者の引っ越しに必要な手続きを早めに確認することをおすすめします。
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本記事が皆様のお役に立てば幸いです。