国民一人ひとりに付与された12桁の番号であるマイナンバー制度は、2016年1月から本格運用が開始された国の基盤システムです。
しかし、政府がこの制度を導入した目的や、マイナンバーを利用することで得られるメリット、一方でリスクとなる点など、マイナンバーについて十分な理解がないフリーランスの方も多いのではないでしょうか。
フリーランスとして活動する上で、マイナンバーはどのような場面で必要となるのでしょうか。
本稿では、マイナンバー制度の概要、メリット、リスクについて解説するとともに、フリーランスにとってのマイナンバーの重要性にも言及します。
この記事を通じて、マイナンバーに関する知見を深めていただければ幸いです。
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マイナンバーカードとは?
マイナンバーカードは、個人番号が記載された樹脂製のICチップ搭載カードで、写真つきです。個人番号のほか、氏名、住所、生年月日、性別が表示されています。
新型コロナウイルス感染症に係る特別定額給付金のオンライン申請時に必要だったため、よく名前が取り上げられました。
マイナンバーカードの取得は義務ではなく、任意です。しかし、政府はマイナンバーカードの普及に力を入れています。
マイナンバーおよびマイナンバーカードにより、以下が実現可能となります。
- 行政手続のワンストップ化
- 添付書類の削減
- 本人確認の簡素化
利便性向上
マイナンバーカードは、様々な公的手続きやサービスにおいて活用できる多機能なツールです。
このカードを利用すれば、行政機関のオンライン申請はもちろん、身分証明書としての役割も果たします。
さらに、金融機関のネットバンキングや民間企業のオンラインサービスにも対応する見通しです。
従来は個別のカードが必要とされていた公的サービスを、マイナンバーカード1枚で受けられるようになります。
例えば、現在では健康保険証の代替としても使用可能です。
また、コンビニエンスストアなどで住民票や印鑑登録証明書などの公的証明書を入手することもできます。
マイナンバーカードに搭載されたICチップには、電子証明書が格納されています。
この電子証明書には、以下の2種類があります。
- 署名用電子証明書:インターネット上で電子文書を作成・送信する際に利用します。作成・送信した電子文書の真正性と、送信者が利用者本人であることを証明できます。
- 利用者証明用電子証明書:ウェブサイトやコンビニなどの情報端末にログインする際に使用します。ログインした者が利用者本人であることを証明できます。
※情報端末:
このように、マイナンバー制度は国民の利便性向上に大きく寄与するものとなっています。
行政の効率化
国民一人ひとりに付与された番号体系を活用することで、公的機関における個人情報に関わる業務の時間と労力を大幅に節減することが可能となります。
この制度が導入される以前は、個別に実施されていた複数の作業が連携し、重複する手続きを排除することができます。
個人情報に関する業務を番号体系なしで行うと、多大な手間がかかります。
この番号制度は、行政の効率化を目指しています。
公正・公平な社会の実現
マイナンバーの活用により、国民一人ひとりの収入に関する情報を一元管理することが容易になり、脱税行為を抑止することができます。
加えて、
- 年金や医療費助成金、生活保護費の不正受給や
- 失業手当の重複受給などを防ぐ効果も期待できます。
公正かつ公平な社会を実現することで、真に支援を必要とする人々を特定し、きめ細かなサービスを提供することが可能になります。
マイナンバー制度は、公正・公平な社会の実現に寄与します。
フリーランスとしてマイナンバーが必要な場合
この新しい制度の全体像を理解した上で、フリーランスの立場からマイナンバーがどのように関係してくるのかを確認しましょう。
個人事業主としてマイナンバーが求められる主な場面は、
- 税務申告の際
- 取引先への支払調書の発行
- 従業員の雇用
があげられます。
それぞれの状況について詳しく見ていきましょう。
確定申告
フリーランスで一定水準を超える収益や所得を得ている場合、納税申告を行うことが義務付けられています。
納税申告書類には、個人番号の記載が求められます。
個人事業主として納税申告を行う際には、自身の個人番号が必要不可欠となります。
フリーランスの納税申告に関する詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください↓
・ | フリーランスの納税申告ガイド |
・ | 確定申告チェックリスト |
・ | フリーランスの控除可能経費 |
支払調書の作成が必要な場合
税金関連の法令に基づき、納税者が一定額以上の金銭を支払った相手の情報を税務当局に届け出る義務がある書類が支払調書です。
この書類には、以下の内容が記載されます。
- 支払先の個人番号
- 支払金額
個人事業主が支払調書の作成を求められる場合、支払先の個人番号を入手する必要があります。
従業員を雇用している場合
従業員を雇用している場合、社会保障制度に関連する申告書や税務当局への提出書類に、従業員本人およびその扶養家族のマイナンバーを記載する義務があります。
具体的には、
- 健康保険・年金保険・雇用保険に関する書類
- 年末の調整関係書類
- 源泉徴収票
- 給与支払い報告書
などの提出物にマイナンバーを記載する必要があります。
自営業者としても従業員を雇用する場合は、従業員本人とその扶養家族のマイナンバーが求められます。
自営業における扶養控除についてさらに理解を深めたい方は、以下の記事をご覧ください。
フリーランスとしてマイナンバーが流出した場合のリスク
フリーランサーとして活動する際、自身や報酬の支払い先、従業員とその家族のマイナンバーが必要となることは理解できたと思います。
ここでは、マイナンバーが漏洩した場合のリスクについて見ていきましょう。
マイナンバーが流出する可能性としては、
- 政府機関やマイナンバーを提供したフリーランサー(個人事業主)・企業から漏れる場合
- 個人でマイナンバー通知カードやマイナンバーカードを紛失する場合
などが考えられます。
フリーランサーとしてマイナンバーが漏洩した際には、どのようなリスクが生じるのでしょうか。
情報漏洩のリスク
個人番号が外部に漏れた場合、不正な目的で個人情報が結び付けられる危険性があります。
さらに、個人番号カードの情報を悪用されると、オンラインポータルサイトへの不正アクセスにより、番号以外の個人データが流出するリスクも存在します。
オンラインポータル:
- 政府が運営するウェブサービスです。
- 子育てや介護などの行政手続が一括で行え、公的機関からの通知を確認できます。
悪用のリスク
偽装の事例が海外で頻発しています。
- 不正に年金や失業手当を受給したり
- 銀行口座を不正に開設するなどの事案が確認されています。
日本では本人確認書類の提出が一般的なため、現時点で大きな懸念はありませんが、偽装による悪用のリスクがゼロとは言えません。
フリーランスとしてマイナンバーの管理は徹底しよう
ここまでご確認の通り、マイナンバーは極めて重要な個人情報であり、適切な管理が求められます。フリーランスの方々は、自身や業務を通じて入手した他者のマイナンバーの取り扱いには細心の注意を払う必要があります。
フリーランスがマイナンバーを不正に扱った場合の罰則は以下の通りです。
- 正当な理由なく、マイナンバーの特定個人情報ファイルを提供した場合:4年以下の懲役または200万円以下の罰金
- 不正な利益を図る目的で、マイナンバーを提供または盗用した場合:3年以下の懲役または150万円以下の罰金
- 偽りその他不正の手段によりマイナンバーカードを取得した場合:6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金
フリーランスとしてマイナンバーの提出を拒否できる場合
フリーランスが受け取る対価の金額が一定額を下回る場合、支払者は税務当局への支払調書の提出義務がありません。この場合、フリーランスはマイナンバーの開示を拒否することができます。
対価が以下の金額以下の場合、支払調書の提出は不要です。
- 5万円以下: 芸能人への報酬、原稿料、講演料、士業者への報酬、一時金など
- 50万円以下: プロスポーツ選手への報酬、診療報酬、ホステス報酬、広告賞金、モデル報酬など
- 75万円以下: 競馬の賞金
したがって、これらの金額範囲内であれば、支払者はマイナンバーの記載を求められず、フリーランスもマイナンバー提出を拒否できます。仮に提出を求められた場合でも、拒否権があります。
まとめ
この記事では、マイナンバー制度の概要、重要性、およびフリーランスにおける必要性について説明しました。
フリーランスとしての情報管理は極めて重要なので、細心の注意を払う必要があります。
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本記事がみなさまのお役に立てば幸いです。