ノーコード開発という用語は耳にしたことがあるものの、その実態を把握していない人が多数いるのではないでしょうか。
この開発手法は、特にIT関係者にとって理解しておく必要があります。
本稿では、以下について解説します。
- ノーコード開発の定義
- 長所と短所
- 代表的なツール
加えて、ノーコード開発の普及がエンジニアに及ぼす影響についても言及します。
本稿を通じて、ノーコード開発の実態を掴むことができるでしょう。
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ノーコード開発とは
ノーコード開発は、コーディングを行うことなく、システム、アプリケーション、Webサイトなどを構築する手法を指します。
この方法では、ノーコード開発ツールと呼ばれるソフトウェアを活用します。
管理画面上で特定の部品を組み合わせたり、テンプレートを調整したりすることで、システムの開発が可能となります。
WordPressもその一例で、HTML/CSSの知識がなくてもWebサイトを作成でき、プラグインの導入により機能を拡張することができます。
プログラミングスキルがなくてもシステム開発ができるため、ノーコード開発は現在注目を集めています。
日本では現在エンジニアが不足しており、企業がエンジニアを雇用できない状況も多く見られます。
そのような企業がノーコード開発を選択するケースも増加しています。
ローコード開発との違い
システムの構築において、プログラミングの手間を最小限に抑える方法がローコード開発です。
基本的な機能は管理画面から設定し、細かな調整はコーディングによって行います。つまり、一定のプログラミングスキルが求められますが、その分、システムの微調整が容易になるというメリットがあります。
ノーコード開発と同様に、ローコード開発も近年注目を集めている開発手法です。
ノーコード開発を行うメリット
ノーコード開発を採用することで得られる利点は以下の4点にあります。
- プログラミングの知識がなくてもシステムを構築可能
- 開発にかかるコストを抑制できる
- 関係者間の意思疎通を円滑化
- セキュリティ上のリスクを低減できる
それぞれの恩恵について詳しく説明していきましょう。
プログラミングスキル不要でシステム開発できる
ノーコード開発の最大の利点は、コーディングの知識がなくても構築できることです。
ノーコード開発ツールのインターフェースを使えば、簡単な操作でシステムを構築することが可能です。
プログラミングを習得するには多大な時間と労力が必要となります。
そのため、
- Webサイトやアプリの開発途中で挫折してしまう人が後を絶ちません。
一方、ノーコード開発の場合は、ツールの使用方法を学ぶだけで済むため、そこまで学習時間を要しません。
つまり、開発したいと思ったタイミングですぐに着手できるのです。
システム開発の費用を抑えられる
ノーコード開発は開発コストを削減できるという利点があります。
システムやアプリを一から構築する場合、すべての機能をコーディングして実装する必要があります。さらに、実装した機能が適切に動作するかテストを行い、安定した運用と保守を継続しなければなりません。そのため、システム開発には多額の人件費が必要となります。
一方、ノーコード開発では既存のテンプレートや機能を活用するため、開発に要する時間を短縮でき、コストを抑制できます。また、テストや運用・保守にかける労力も軽減されるでしょう。開発費用を抑えられれば、その分をマーケティングに振り向けることができ、サービスユーザー数の増加につながる可能性があります。
コミュニケーションコストの削減
ノーコード開発には、情報伝達の手間を軽減できるという利点があります。
システム構築を行う際、プロダクトマネージャー(PdM)など企画者が技術者に対して、どのようなアプリケーションを作成するかを指示する必要があります。
企画者と技術者の間で認識の違いがあると、要求とは異なるシステムが開発されてしまい、多大な労力が無駄になってしまいます。
ノーコード開発であれば、企画者自身がシステムを作成できるため、情報伝達に伴うコストを削減することができます。
セキュリティリスクを下げられる
ノーコード開発ツールの利点の一つは、セキュリティ上の脅威を軽減できる点にあります。
ウェブアプリケーションやモバイルアプリは不特定多数のユーザーが利用するため、常に不正アクセスの危険性が存在します。
システムをリリースする際には、セキュリティ対策を講じる必要があります。
しかし、想定されるリスクすべてに対処するのは容易ではなく、セキュリティに関する高度な専門知識を持つエンジニアを雇用しなければなりません。
一方、ノーコード開発ツールには既にセキュリティ対策が施されているため、自社でその対応を行う必要がありません。
その結果、セキュリティリスクを低減することが可能となります。
ノーコード開発を行うデメリット
ノーコード開発の実施には、いくつかの課題が存在します。
主な懸念点は以下の3点です。
- 特定のノーコード開発ツールへの依存が高まる
- ノーコード開発ツールの習得に一定の労力が必要となる
- 多くのノーコード開発ツールが海外製品であること
それぞれの課題について、より詳しく説明していきましょう。
ノーコード開発ツールへの依存
ノーコード開発には、特定のプラットフォームに縛られてしまうという欠点があります。
ノーコード開発では、プラットフォーム上で用意された機能やオプションの範囲内でしか変更ができません。
そのため、
- Webアプリやモバイルアプリを作成できる一方で
- 独自の機能を実装することが難しくなる可能性があります
オリジナリティを重視する場合、ノーコード開発は適さない選択肢と言えるでしょう。
ノーコード開発ツールの学習に時間がかかる
ノーコード開発には一定の習熟期間が必要となります。
ノーコードツールの管理画面の操作方法やプラグインの導入手順など、基礎から学習しなければなりません。
特に高機能なツールを選択した場合、リリースまでに相当の時間を要する可能性があります。
そのため、プログラミングスキルを持つ人にとっては、ノーコード開発よりも通常のプログラミングの方が効率的な場合もあります。
エンジニアリソースが豊富な企業では、ノーコード開発の導入メリットが薄れる可能性があります。
ノーコード開発ツールは海外製が主流
ノーコード開発ツールは外国企業によるものが多数を占めています。
そのため、以下のような課題があります。
- 公式ウェブサイトやツールの利用方法が英語で記載されていることがあり、英語が理解できない場合は活用が困難になる可能性があります。
- 利用方法に関する問い合わせをメールで行う際も、英文で対応しなければならず、時間を要することもあるでしょう。
国産のノーコード開発ツールも存在しますが、選択肢は限られています。
しかし、ノーコード開発が普及すれば、国内企業がサービスを開始する機会も増加すると考えられます。
ノーコード開発ツールを導入する際の注意点
ノーコード開発ツールの導入に際しては、2点に留意する必要があります。
- まず初めに、無償のノーコード開発ツールを試用することが賢明です。
- 次に、目的に適合したノーコード開発ツールを選択することが肝心です。
以下に、それぞれの留意点について詳細に説明します。
ノーコード開発ツールを試す
ノーコード開発ツールを活用する際は、最初に無償で利用できるオプションから試してみることをおすすめします。
- 完全に無料で提供されているツールや、一定期間は無償で使用可能なものが多数存在します。
自社にとって適切なノーコード開発ツールかどうかは、実際に手を動かしてみないと判断できません。
まずは無料で利用しながら、自社のニーズに合ったツールを探索していきましょう。
ノーコード開発ツールの選び方
ノーコード開発ツールの選択には、目的に合ったものを見極める必要があります。これらのツールは万能ではなく、
- ECサイト構築
- 業務システム開発
- Webサイト制作
など、特定の用途に特化しているケースが多くあります。
また、使いやすさの程度もツールごとに異なります。
- 初心者でも扱いやすい一方で機能が制限されているものもあれば
- 高度な機能を備えているが習熟に時間を要するものもあります
開発対象の種類や、投入できる時間を踏まえて、適切なノーコード開発ツールを選ぶことが重要となります。
代表的なノーコード開発ツール
次に、主要なノーコードデベロップメントプラットフォームを3つご紹介いたします。
- Shopify
- Bubble
- Zapier
がそれにあたります。
これらのツールを理解することで、ノーコード開発に関する知見をさらに深めることができるでしょう。
それぞれのノーコードデベロップメントツールについて、詳細を説明させていただきます。
Shopify
Shopifyは、ネット上で商品を販売するためのプラットフォームとして知られています。世界中で広く活用されており、高い人気を誇っています。
Shopifyでは、管理画面に必要な情報を入力するだけで、誰もが容易にオンラインショップを開設できます。
他のノーコードツールと比較すると、
- デザインや決済方法の選択肢が豊富で、
- カスタマイズの自由度が高いのが特徴です。
さらに、日本語にも対応しているため、英語が得意でない方でも利用しやすくなっています。
Bubble
Bubbleは、マッチングアプリや検索アプリなどさまざまなWebサービスを構築できるノーコードツールです。
- 無料プランが用意されているため、気軽にWebサービスを作成することができるのがメリットです。
- 無料プラン以外にも3つのプランが用意されており、開発の規模に応じて選択が可能です。
- また、Webサービスの細かい仕様をユーザー自身で決めることができるため、カスタマイズ性が高いのが特徴です。
一方で、Bubbleを完全に習熟するには一定の学習時間が必要となります。
ノーコード開発ツールの中でも人気が高いため、情報が豊富で、分からない点を調べやすいというメリットもあります。
Zapier
Zapierは様々なアプリケーションを統合し、作業を自動化するためのノーコードツールです。
例えば、Twitterに投稿した内容をInstagramにも同時に投稿するよう設定することができます。
複数のアプリを連携させるには、プログラミングによる方法もありますが、Zapierを利用すれば、コーディングスキルがなくても統合が可能となります。
Zapierを活用して多数のアプリを連携させれば、業務の効率化が図れるはずです。
ノーコード開発が広まればエンジニアは不要になる?
ノーコード開発ツールの活用により、技術者を雇用せずにシステム構築が可能になります。
このため、ノーコード開発の浸透によりエンジニアの需要が失われるのではないかと懸念する向きもあるでしょう。
しかし、ノーコード開発には一定の制約があり、エンジニアの役割が不要になるとは考えにくいと推測されます。
ノーコード開発ツールを用いた場合、
- システムがツール機能に依存した構成となり、独自性の発揮が困難になるため
です。
ノーコード開発が普及すればシステム構築の機会は増えますが、その中で勝ち残るには独自性が重要になってくるため、結果的にエンジニアへの開発委託需要は生まれるはずです。
仮にすべてのシステム開発がノーコードで行われたとしても、
- システム設計やプロジェクト管理など上流工程の業務は残ります。
したがって、エンジニアがノーコード開発の普及を過度に危惧する必要はないと考えられます。
まとめ
この記事では、ノーコード開発ツールについて説明しました。
ノーコード開発の長所と短所を理解していただけたと思います。
- ノーコード開発は、ウェブサイトやアプリを簡単に作成できるため、優れた選択肢です。
- しかし、ノーコード開発には限界があり、独自性の高いサービスを構築したい場合は適していません。
- また、ノーコード開発ツールには様々な種類があり、開発するサービスに合わせてツールを変更することが重要です。
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