事業計画書の内容やメリットを解説！

フリーランスの活動を法人化するために資金調達を検討している場合や、個人事業主として独立するが収入が不安定な場合、「事業計画書」の作成が重要となります。
本稿では、フリーランス(個人事業主)にとって事業計画書を作成するメリットと、適切な計画書の作り方についてご説明します。

• 事業の目標や戦略を明確化し、
• 資金計画や収支予測を立てることで、

安定した事業運営が可能になるでしょう。

フリーランス(個人事業主)として事業計画書を知ろう！

フリーランスまたは個人事業主として活動する際、事業の目標と実現に向けた手段や戦略を明確にするための計画書が事業計画書です。
この計画書には、1年から数年間の事業方針が数値を交えて具体的に記載されます。
事業計画書を作成する主な目的は、

• 銀行から融資を受けるため
• 顧客や取引先に自身の事業を説明するため

です。
つまり、協力者からの信頼を得るための資料として活用されます。
融資や取引先を必要としない個人事業主も多いでしょうが、事業計画書には自身の経営状況を把握し管理する重要な役割があります。
次の章でこの点について詳しく解説されます。

フリーランス(個人事業主)でも事業計画書は作成すべき？

フリーランスや個人事業主として活動する際、融資や事業計画書が不要だと考えがちですが、実はそうではありません。事業計画書の作成は、収益向上の可能性を秘めています。
計画を立てることで、売上げアップにつながる機会が生まれるのです。

事業計画書作成と売上高の相関

中小企業庁による調査では、事業計画書の策定が売上げ向上に寄与することが明らかになりました。

• 事業計画書を作成した企業は、そうでない企業に比べて売上増加の割合が高く、売上減少の割合が低いことが分かりました。
• さらに、事業計画書作成企業の7割が、経営方針の明確化や事業の強み弱み認識など、その効果を実感していました。

このように、フリーランスを含む個人事業主にとって、事業計画書の策定は売上拡大に有効な手段であると言えるでしょう。

フリーランス(個人事業主)が事業計画書を作成しない理由

フリーランスとして活動する個人事業主の中で、事業計画書を作成している割合は4割程度にとどまっています。
一方、法人企業では6割以上が事業計画書を策定しているという実態が明らかになりました。
個人事業主が事業計画書を作成しない理由としては、

• 現状維持で良いため
• 計画は不要であるため
• 経営内容を熟知しているため
• 時間的余裕がないため

などが挙げられています。
近年、フリーランスとして独立する環境が整備され、案件の受注が容易になったことで、個人事業主になる目的も変化してきました。法人化を検討する層以外は、ライフワークバランスを重視したり、自由に働きたいという志向が強まっているためです。
このような背景から、事業計画書を作成しない個人事業主が多数を占める状況にあります。

フリーランス(個人事業主)が事業計画書を作成するメリット

個人事業主にとって、ビジネスプランの策定は収益向上に寄与する重要な要素です。

各項目に分けて、収益増加の理由と、その他の恩恵について説明いたします。

• 収益増加の理由

• その他の恩恵

収益以外の利点も存在するため、総合的な観点から事業計画書の意義を捉えることができます。

フリーランス(個人事業主)のための事業計画書作成のメリット

フリーランスとして活動する際、事業の全体像を把握することは重要です。

• 多くの人が漠然とした計画を立てがちですが、主観に基づく計画には限界があります。
• 顧客別の売上高や利益率、年間目標と達成率、数年単位の方向性、前年度比較、得意分野、顧客のメリット・デメリットなどを分析することで、客観的な現状把握が可能になります。

そうすることで、

• 重要顧客の取引減少に気づき新規開拓が必要だと判断したり
• 一社への依存度が高すぎると認識したり
• 本来の目的を再確認できるなどの気づきが得られます。

事業計画書作成のメリットは、このように自身のビジネスを客観的に把握できる点にあります。

フリーランスのための事業計画書の重要性

個人事業主にとって、事業計画書は単に現状を客観的に把握するだけでなく、将来のビジネスビジョンを描く上でも重要な役割を担います。

例えば、

• 1年後の目標を設定することで、現時点で優先すべき業務が明確になります。
• 作業効率化のための外注化や法人化による事業拡大など、個人事業主としての目指すべき目標に向けて事業計画書を作成することで、目標達成に必要な作業や自己投資が明らかになるのです。

フリーランス(個人事業主)のための事業計画書の重要性

フリーランスや個人事業主にとって、業務の継続と計画的な運営は重要な課題となります。
一人で働くことが多いため、

• 締め切りや売上目標の管理など、上司の役割も自ら担う必要があります。

作成した事業計画に従うことで、

• 作業の進捗管理
• 計画への意識付け

が可能になります。経営者と従業員の両方の役割を果たす必要があるフリーランスや個人事業主こそ、事業の計画的運用のために事業計画書が不可欠なのです。

フリーランス(個人事業主)として事業計画書の内容を知ろう！

個人事業主としての活動計画を立案する際、以下の要素を含めるべきです。

• 事業の概要
• 目標設定
• 市場分析
• マーケティング戦略
• 運営体制
• 財務計画

これらの計画の根幹となる部分を網羅することが重要です。
独立した事業者として着実に歩を進めるためには、綿密な計画が不可欠となります。

フリーランス(個人事業主)の事業計画書作成ポイント

ここでは、個人事業主としての活動内容と実績を紹介します。

• 事業の名称
• 代表者の氏名
• 開業時期
• 事務所の所在地
• 代表者の経歴
• これまでの実績
• 事業概要
• ウェブサイト情報
• 連絡先
• 主要な取引先

などの情報を記載することができます。
法人化や資金調達、協力者募集などの具体的な目的がない場合でも、将来的な展開を見据えて、第三者に公開できる形で事業計画を作成しておくことが賢明です。

フリーランスのビジネスプラン作成における「6W2H」の重要性

フリーランスとして事業を展開するには、明確な目標と計画が不可欠です。

まず、自身の強みと価値観を踏まえ、なぜその事業に取り組むのかという目的を明確にする必要があります。

次に、

• 提供するサービスや製品を特定し、
• ターゲットとする業界や顧客層を絞り込みます。

営業方法や業務の遂行体制、価格設定なども事前に検討しておく必要があります。

さらに、タイムラインを設定し、目標達成までの期限を決めることが重要です。

このように、事業の各側面を体系的に検討し、具体的な計画を立てることで、軌道修正が必要な場合でも課題を特定しやすくなります。

フリーランス(個人事業主)の市場価値分析

フリーランスまたは個人事業主にとって、自身の市場価値を把握することが極めて重要です。
同種の業務を請け負っていても、以下の条件によって、その価値は一定ではありません。

• 過去の実績
• 経歴
• クライアントの予算
• 市場動向

フリーランスは、自身の市場価値が最も高くなる状況や環境を理解し、そのような条件を整えることが肝心です。
また、業界の需要と供給のバランスも、市場価値に影響を与えます。
例えば、AI技術の進展に伴い、機械学習分野で利用される「Python」の需要が高まっており、Pythonエンジニアの価値は2020年時点で高水準にあります。
定期的な市場分析を行い、フリーランスとしての価値を高める戦略を立てていくべきでしょう。

事業計画書作成時の設備資金と運転資金の計上方法

事業を運営するためには、設備投資と運営費用の両方が必要不可欠です。
設備投資とは、事業に必要な資産を購入するための資金のことを指します。
例えば

• フリーランスエンジニアの場合、パソコン、作業机、通信機器、場合によっては車両などが該当します。

一方、運営費用とは、

• 事務所賃料
• 人件費
• 外注費
• 商品仕入れ代金
• その他の経費

など、事業を継続的に運営するために必要な費用のことです。
個人事業主として事業計画を立てる際は、一般企業と同様に、設備投資と運営費用を別々に計上する必要があります。設備投資は貸借対照表に、運営費用は損益計算書に計上されます。

個人事業主が特に注意すべきは、運営費用の取り扱いです。自宅で業務を行う場合、生活費と運営費用の区別が付きにくい費用が発生します。

• 家賃や光熱費などがその例です。

一部を運営費用として計上することは可能ですが、恣意的な按分は避けるべきです。
例えば家賃の場合、作業スペースが家全体に占める割合に応じて、運営費用として計上する金額を決定します。一般的には4~5割程度が適切な範囲と言えるでしょう。
生活費を過大に運営費用として計上すると、税務上の問題が生じるだけでなく、関係者からの不信感を招く恐れがあります。運営費用の計上は、できる限り正確に行うことが賢明です。

フリーランス(個人事業主)の収支計画作成ポイント

フリーランス(個人事業主)が事業を展開する際、将来の収入と支出を見積もることが重要です。
通常、数年分の収支計画を1年単位で立てます。法人化を検討する場合は、特に重視すべき点です。
収支計画には、以下の項目を含めます。

• 売上高
• 原価
• 経費
• 利益
• 借入金返済額(該当する場合)
• 資金繰り表

一方、損益計算書は過去の実績を確認するための書類です。決算期には、収支計画と損益計算書を比較し、事業の評価を行うことをおすすめします。

フリーランスのための資金繰り表の重要性

フリーランスや個人事業主にとって、収入と支出のタイミングが不規則であることから、資金の流れを適切に管理することが重要です。
資金繰り表は、そのための有効なツールとなります。
この表には、以下の項目が記載されます。

• 前月からの残高
• 当月の収入と支出
• 借入金や返済金額

これらの項目を計算式に当てはめることで、当月の残高が算出されます。
翌月以降は、この残高が前月繰越金額となり、同様の計算が行われます。
このように、資金繰り表を活用することで、事業資金の現金残高や入金時期を把握し、資金不足を未然に防ぐことができるのです。

フリーランス(個人事業主)として事業計画書を作成してみよう！

事業計画書の作成プロセスについて、概要を把握できたと思います。すべての要素を網羅した計画書を作成するのは難しい場合があります。
しかし、フリーランス(個人事業主)として事業の全体像を把握することが目的です。
まずは取り組みやすい部分から優先的に着手するのが賢明でしょう。
法人化を検討中の方は、商工会議所の活用をおすすめします。

• 自治体の商工会議所サイトから計画書の雛形をダウンロードできる
• 不定期にセミナーも開催されている

また、民間の代行サービスも選択肢の一つです。
しっかりとした計画書作成を希望する方は、これらのサポートを活用するのが賢明です。

まとめ

個人事業主がビジネスプランを作成するためのノウハウ、作り方のポイントや注意事項について説明しました。

• 個人事業主も事業計画書を作ることで、収益の増加が期待できたり、事業の強みや弱みを可視化できたりと、様々な利点があります。

この機会にビジネスプランを作成し、個人事業主としての事業を見直してみてはいかがでしょうか。
本記事が皆様の一助となれば幸いです。