JASA(一般社団法人組込みシステム技術協会)が主催する認定資格であるETEC(組込み技術者試験制度)は、組み込みシステムに関連する専門知識やスキルを問う試験です。
IT分野の資格の一つとして位置づけられ、開発者向けの高度な内容が含まれるため、合格すれば就職や転職に有利になります。
- 「組込みソフトウェア技術者試験クラス2」
- 「組込みソフトウェア技術者試験クラス1」
の2つのレベルがあり、難易度が異なることが特徴です。
本稿では、ETECの
- 試験概要
- 申込方法
- 学習時間
などについて説明します。
また、資格取得のメリットやおすすめの参考書も紹介しますので、ぜひご一読ください。
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ETEC(組込み技術者試験制度)とは
ETEC(組込み技術者試験制度)は、一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が主催する認定試験です。
この試験は、以下の対象者を想定しています。
- 自動車や家電製品などのコンピュータ制御システムに関わるソフトウェア技術者
国家資格ではなく、特定の分野の専門知識とスキルを評価する民間の試験制度となっています。
ETEC試験は、単なる合否判定ではなく、受験者のスキルとモチベーションの向上を目指しています。
そのため、以下の特徴があります。
- 試験結果の点数が受験者に開示される
- この点数は、技術者の学習到達度や評価の目安としても活用できる
- ソフトウェア技術者の学習意欲を高める役割も担っている
さらに、受験者には一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)から点数証明書が発行されます。
この証明書は、組み込み系ソフトウェアに関する知識とスキルを客観的に示す証明となります。
組込みエンジニアの役割と重要性
家電製品やIT機器などに搭載される組み込みシステムの開発を担う職種が組込みエンジニアです。
一般家庭で使用される電化製品や、製造現場で稼働するセンサーなどがその対象となります。
組込みシステムでは、マイクロチップやマイクロコンピューターなどの仕組みを構築する際に、システム開発と同様の技術的知識とスキルが求められます。
近年のIoT技術の進展に伴い、組込み技術者試験制度の必要性が高まるとともに、組込みエンジニアへの需要が増しています。
組込みエンジニアの業務では、パソコンとは異なる形でマイクロチップやマイクロコンピューターへの組み込みが行われます。
現在の課題として、扱うデータ量の増大によるメモリ不足やCPU処理能力の限界があり、これらの解決に組込みエンジニアが貢献しています。
ETEC(組込み技術者試験制度)試験
ETECの試験は、組込みソフトウェア技術者の熟練度に応じて、クラス2とクラス1の2つのレベルが用意されています。
- クラス1を受験するには、事前にクラス2で一定の点数を取得する必要があります。
- 組込みシステムに関する専門的な知識とスキルが問われるため、クラス1の方が難易度が高くなっています。
本文では、ETECの出題範囲、難易度、申込手順などについて説明しています。
組込み技術者試験制度(ETEC)の概要
ETEC(組込み技術者試験制度)は、組込み系ソフトウェアの技能を評価する試験の一つです。
一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が主催しています。
合否ではなく、組込み技術者のスキルレベルを示す指標となります。
800点満点で、正答率に応じてA〜Cのグレードに分類されます。
組込み系技術者としての能力向上の目安となっています。
- 「組込みソフトウェア技術者試験クラス2」は800点満点で評価され
- 「組込みソフトウェア技術者試験クラス1」はグレードのみの評価です
試験は全国のピアソンVUE社認定会場で受けられます。
- クラス2は90分、クラス1は120分のCBT方式です
- クラス2は120問、クラス1は90問出題されます
- クラス2は総点とグレード、クラス1はグレードで判定されます
受験料 | クラス2 | クラス1 |
---|---|---|
15,000円 | 20,000円 | |
(ともに税別) |
クラス1を受けるにはクラス2で500点以上が条件です。
会場で結果を知ることができ、後日デジタル証明書が発行されます。
ETECの出題範囲の違い
ETECの試験範囲は、クラス2とクラス1で異なります。
クラス2では2017年から「通信」分野が追加されています。
一方、クラス1の出題範囲は
- 「分析」
- 「理解・表現」
- 「知識」
から選ばれます。
技術要素 | 開発技術/管理技術 | 通信 |
---|---|---|
の3項目から120問が出題されます。 |
組込みソフトウェア技術者試験クラス2の出題範囲
組込みシステムの技術者試験では、以下の幅広い分野が出題範囲となります。
- プラットフォームやソフトウェアの基礎知識
- 開発手法
- 通信技術
- 品質管理
プロセッサやメモリ、システムコールなどのハードウェア・ソフトウェア基盤に関する理解が求められるほか、設計、コーディング、テストなどの開発プロセスの習熟が必要とされます。
また、以下の知見やマネジメント技術も問われる対象です。
- 有線・無線の通信規格についての知見
- 品質特性
- 構成管理
試験範囲は多岐にわたり、組込み分野の基礎から実務までをカバーしています。
組込みソフトウェア技術者試験クラス1の出題範囲
組込みソフトウェア技術者の能力を評価する試験では、以下の3つが問われます。
- 分析力
- 要求定義
- 構造設計
- 制約条件や非機能要件の分析
- システム検証
- 理解・表現力
- 要求定義の表現と理解
- システム方式設計の表現と理解
- 設計検証の表現と理解
- プロジェクト管理の表現と理解
- 専門知識
- システム要求分析
- システム方式設計
- ソフトウェア要求分析
- ソフトウェア方式設計
- システム結合
- システム適格性確認テスト
- プロジェクト管理
- ビジネススキル
ETECの組込みソフトウェア技術者試験の難易度と経験年数の関係
一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が公開した統計データによると、ETEC(組込み技術者試験制度)の「組込みソフトウェア技術者試験クラス2」と「組込みソフトウェア技術者試験クラス1」の受験者の平均スコアやグレード分布、構成比が示されています。
「組込みソフトウェア技術者試験クラス2」では、ET経験年数が長いほど平均スコアが高く、上位グレードの割合が増加する傾向にあります。
一方、「組込みソフトウェア技術者試験クラス1」のグレードAの構成比は0%となっており、両試験の難易度に差があることがうかがえます。
ETECのグレード評価は、A~Cの3段階に分類されます。
- グレードAは自立的にプロジェクトを運用できる能力
- グレードBは上位者の支援を受けながらプロジェクトを運用できる指導的立場
- グレードCは現場における専門的立場を示しています
両試験とも、ET経験年数が長いほど上位グレードを獲得しやすい傾向が見られます。
例えば、「組込みソフトウェア技術者試験クラス2」のグレードAにおいて、30年以上の経験者は未経験者の約4倍の割合となっています。
ETECと類似の資格にIPAの「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」がありますが、合格基準が設定されており、国家資格のためETECよりも難易度が高いとされています。
組込み技術者試験(ETEC)の申込手順
組込み技術者試験制度(ETEC)の受験申請には、いくつかの手順を踏む必要があります。
- まず、公式サイトから申し込みを行い、必要事項を入力します。
- 次に受験料の支払いを済ませ、最後に受験通知の確認を行います。
申請手順は定められた方法に従わなければ、受理されない可能性があるので注意が必要です。
試験当日は本人確認のため、身分証明書の持参が義務付けられています。
ETECの有効期限と再受験ルール
ETEC(組込み技術者試験制度)は、能力を評価する試験であり、有効期限や失効期限はありません。資格とは異なり、特別な権利が付与されるわけではないためです。
この制度では、再受験も認められています。
- 組込みソフトウェア技術者試験クラス2の場合、前回の受験から30日または60日が経過すれば再チャレンジできます。
- 一方、クラス1については180日の間隔を空ける必要があります。
期限の詳細は省略しますが、一定の条件を満たせば複数回の受験が可能となっています。
ETECの勉強時間の目安
ETEC(組込み技術者試験制度)の学習に費やす時間は、「組込みソフトウェア技術者試験クラス2」と「組込みソフトウェア技術者試験クラス1」で異なります。
一般的に、「組込みソフトウェア技術者試験クラス2」の理想的な学習時間は約50時間と言われています。
ただし、この目安は実務経験が約5年ある技術者の意見を参考にしています。
一方、「組込みソフトウェア技術者試験クラス1」の難易度は高く、合格するためにはさらに多くの学習時間が必要となります。
実際、「組込みソフトウェア技術者試験クラス2の平均スコア」を見ると、500点以上を獲得しているのは、ET経験年数が10年以上の受験者です。
このことから、「組込みソフトウェア技術者試験クラス1」で高得点を目指すには、相当の学習時間を確保する必要があると言えます。
ETEC(組込み技術者試験制度)の資格取得のメリット
ETEC(組込み技術者試験制度)の資格を持つことで、企業就職や転職の際に有利になるだけでなく、在職中は資格手当の支給対象となる可能性があります。
この資格は、組み込み系の技術知識とスキルを公的に証明するものです。
そのため、
- 家電製品や組み込みシステムを扱う企業では、ETEC資格保持者を重視する傾向にあります。
本稿では、ETEC資格取得のメリットについて詳しく説明します。
組み込み系ソフトウェア開発スキル習得のメリット
組込みシステムに関する専門知識と実践的な技能を身につけることができるのが、ETEC(組込み技術者試験制度)の資格取得のメリットです。
組込みソフトウェアとは、
- 家電製品
- コンピューター
- 自動車などの各種機器に搭載されているプログラム
のことを指します。
企業によっては、ハードウェアと並行して組込みソフトウェアの開発を行い、一体となった製品としてリリースされる場合もあります。
組込み技術者の転職・就職に活かせるETEC資格
組込み分野の資格を保有することで、IT企業への就職や転職の際に有利になります。
組込みシステムの開発、運用、管理などの専門的な業務を担当するため、他の技術者との連携や、キャリアアップの機会も期待できます。
IoTやAIなどの最新技術との関わりが深まっている現状から、組込み業界はますます注目を集めるでしょう。
そのため、高度な専門知識と技術を兼ね備えた組込み技術者は、大いに重宝されることになります。
求人サイトでも組込み技術者の募集が多数あり、将来的な展望も明るいと言えます。
組込み技術者資格の魅力
組込み技術分野における資格取得は、従業員に対する優遇措置につながる可能性があります。
具体的な待遇内容は企業ごとに異なりますが、多くの場合、
- 基本給に手当が上乗せされる形で報酬が増額されます。
結果として総収入が向上するため、資格取得は経済的なメリットが期待できます。
ETEC(組込み技術者試験制度)の資格取得のデメリット
ETEC(組込み技術者試験制度)の資格を取得するためには、初心者から熟練者に至るまで、実務を通じて培った知識とスキルが重要な役割を果たします。
しかし、学習に時間を要するなどの課題も存在します。
ETEC(組込み技術者試験制度)に合格するには、勉強を一切行わずには難しく、無事取得するためには計画的に学習時間を確保することが不可欠です。
それでは、詳細を確認していきましょう。
ETECの勉強時間と合格への道のり
ETEC(組込み技術者試験制度)の各グレードは難易度が異なるため、自身の知識やスキルに適したレベルを選択することが重要です。
合格には個人差があり、
- 「組込みソフトウェア技術者試験クラス2」で約50時間
- 「組込みソフトウェア技術者試験クラス1」では数ヶ月単位の学習期間が必要とされます。
会社員は業務量の変動により、継続した勉強が困難な場合があり、挫折する方もいます。
ETEC(組込み技術者試験制度)は社会的に価値のある資格ですが、学習時間の確保が課題となります。
ETEC(組込み技術者試験制度)高評価獲得のためのおすすめの参考書や問題集
組込み技術者試験制度(ETEC)に合格するには、適切な学習教材を活用することが重要です。
ここでは、ETECの効率的な対策に役立つ参考書と問題集をご紹介します。
- 「組込みシステム開発の基礎」
- 「組込み系技術者のための安全設計入門」
- 「組込みの理解を深める問題集」
などの書籍が、ETECの準備に適しています。
各書籍の内容や長所について、詳しく説明していきましょう。
組込みシステム開発の基礎
この書籍は、組込みシステムに関する知識を体系的に習得できる入門書です。
組込みシステム技術協会が人材育成の目的で編纂した参考書であり、
- プログラミング
- 組み込みアプリケーション
などの基礎知識が網羅されています。
組込み技術者試験にも対応しているため、組込みシステムの学習を志す学生や社会人にとって有用な一冊となっています。
組込み系安全設計入門
この書籍は、組み込みシステムの安全性に関する基礎知識を提供しています。
IoTデバイスや製造現場などで活用される組み込み技術について、ハードウェアとソフトウェアの両面から安全設計の要件を平易に説明しています。
組み込み技術者の資格取得を目指す方にも役立つ内容となっています。
組込技術者のための分かりやすいETEC対策書
この本は、組み込み技術の初心者向けに書かれた参考書です。
著者は香取巻男氏と立田純一氏で、ETECの試験範囲を分かりやすくカバーしています。
組み込み技術の経験が浅い方でも、この本を使えばETECの受験が可能となるよう解説されています。
組み込み技術の勉強を始める際におすすめの一冊です。
まとめ
ETEC(組込み技術者試験制度)の資格試験について、その詳細、申請手順、推奨される参考書などを説明しました。
IoT、AI、5Gなどの技術進歩に伴い、組み込みシステムの需要拡大が見込まれ、注目を集めています。
しかし、組み込み技術者のスキルや知識面での課題も残されており、ETEC資格取得を奨励する企業も存在します。
記事が皆様の助けとなれば幸いです。