法人と個人事業主の税金の種類・税率・計算方法の比較

企業形態の違いにより課される税金の種類が異なります。個人事業者とは対照的に、法人には

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税
  • 消費税

などの納税義務があります。

法人は個人事業者に比べ、経費として計上できる範囲が広く、一定の所得水準を超えると法人化した方が節税効果が高くなる可能性があります。一般的には、事業所得が700万円を上回れば法人化を検討するのが賢明とされています。ただし、控除額などにより変動するため、所得が増加し法人化を視野に入れている個人事業者や新規法人設立者は、この点を参考にすると良いでしょう。

本稿では、法人に課される税金の概要を中心に解説します。

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法人にかかる税金の種類

法人にかかる税金の種類

法人には主に5種類の租税が課されます。

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税
  • 消費税および地方消費税

場合によっては、利子や配当金に対する所得税の支払いも発生することがあります。

法的実体として認められた組織体が法人です。企業を設立すると、代表者個人とは別に、法的主体としての法人が生まれます。

法人税の仕組みと個人事業主との違い

企業が獲得した収益に対して国が課す租税が法人税です。この税金の率は、法人の種類、資本金の規模、年間収入額によって異なります。
個人事業主が支払う所得税に比べ、法人税の税率は比較的低く設定されており、最高でも23.4%に留まります。
例えば、年収800万円の場合、

  • 中小企業は15%の法人税を納めますが、個人事業主は23%の所得税を支払う必要があり、負担が大きくなります。

法人税の計算方法は、

  • 課税対象所得に税率を乗じ、控除額を差し引いた金額となります。

また、

  • 法人は自身の報酬を経費として計上可能です。

このため、

  • 法人と個人への所得の分散が図れ、給与所得控除の適用により節税効果も期待できます。

法人住民税の仕組み

企業が本社や支店を置く地域の自治体に納める税金が法人住民税です。この税金は以下の2つの要素から構成されています。

  • 法人税割
  • 均等割

税率は自治体ごとに異なりますが、ここでは東京都の場合を例示します。

法人税割の計算方法

企業が支払う法人税割の金額は、法人税の課税標準額に基づいて決定されます。
東京都内においては、

  • 資本金の規模
  • 法人税額

によって適用される税率が変動します。
法人税割の計算方法は、法人税の課税対象額に一定の税率を乗じることで算出されます。

東京都の均等割の決定要因

東京都における均等割の税率は、企業の本社所在地や資本金の規模、従業員数などの要素によって変動します。

法人事業税の概要と税率確認方法

地方自治体は、その区域内で事業を行う法人に対し、法人事業税を課しています。
この税金の計算は、課税対象となる所得などの基準額に、一定の税率を乗じることで行われます。
税率は

  • 法人の種類
  • 資本金の規模
  • 年間収入額

などによって異なり、

  • 事業内容
  • 法人形態
  • 新規事業の開始時期

によっても変動する可能性があります。
適切な税率を把握するには、各都道府県の担当部署が提供する情報を参照するのが賢明でしょう。

特別法人事業税の導入

新たな法人税制度が令和元年10月1日以降に開始する事業年度から施行されることになりました。これは、法人事業税の税率引き下げに伴い導入された新税です。
この新税は国税ですが、地方税である法人事業税と併せて申告・納付が義務付けられています。
対象は法人事業税の納税義務がある全ての法人です。
令和元年9月30日以前に開始した事業年度については、旧制度の地方法人特別税が適用され、それ以降の事業年度から新制度の新税が課されることになります。

法人の消費税納税免除制度

個人事業者と同様に、法人においても消費税の計算は行われます。ただし、一定の要件を満たせば、納税が免除される場合があります。

  • 設立時の資本金が1,000万円未満で基準期間がない場合、創業年度は消費税の納税が不要となります。
  • さらに、一定期間の課税売上高または給与支払額が1,000万円以下で基準期間がない場合、翌年度も免除の対象となります。

しかし、2年目開始前に増資により資本金が1,000万円以上になったり、課税売上高などが1,000万円を超えると、課税事業者となり納税義務が生じます。

法人税が課せられる法人と法人税が課せられない法人

法人税が課せられる法人と法人税が課せられない法人

企業に対する課税には例外があり、一律に法人税が賦課されるわけではありません。

次に、法人税の対象となる法人と対象外の法人について説明します。

  • 法人税の対象となる法人
・株式会社
・合名会社
・合資会社
・合同会社
・相互会社
・一般社団法人
・一般財団法人

  • 法人税の対象外の法人
・国家公共団体
・地方公共団体
・公益法人等
・人格のない社団等

法人税の概要と軽減税率

企業体には様々な形態が存在し、それぞれに異なる税制が適用されます。

  • 株式会社や有限会社などの営利法人は通常の法人税率が課されますが、
  • 一方で協同組合などの組織形態では軽減税率が設けられています。

また、資本金の規模によっても優遇措置が講じられる場合があり、企業の実態に応じた税負担となっています。
ただし、非営利団体については別途の取り扱いがなされます。

法人税非課税法人の種類

法人税の非課税対象には、公益を目的とする団体権利能力を持たない任意の集まり、および公的な機関が含まれます。
具体例としては、

  • 公益社団法人や公益財団法人
  • 非営利型の法人
  • 学校法人
  • 宗教法人
  • 社会福祉法人

などが公益団体に分類されます。
一方、権利能力のない任意の集まりには、

  • マンション管理組合
  • 各種の研究会
  • 同窓会
  • PTA

などが該当します。
公的機関には、

  • 地方自治体
  • 政府系金融機関
  • 国立大学法人
  • 地方独立行政法人
  • 競馬場運営団体
  • 年金運営機構
  • 放送事業団体

などがあげられます。
ただし、公益団体や任意の集まりについては、物品販売などの収益事業から得た所得は法人税の課税対象となる点に留意が必要です。

法人税が課せられる「所得」とは?

法人税が課せられる「所得」とは?

法人の課税所得は、収入から費用を差し引いて算出されます。
収入には

  • 売上高
  • 資産売却益など

が含まれ、費用には

  • 原価
  • 販売経費
  • 災害損失など

が該当します。
具体的な計算式は以下の通りです。
課税所得=収入(売上高・売却益・利益)-費用(経費・損失)
ただし、収入と費用は会計上の概念とは異なり、必ずしも一致しません。会計上は費用だが課税上は損金非該当の項目や、会計上は非費用だが課税上は損金該当の項目があるためです。
そのため、会計上の税引前利益から課税所得を算出する際には、所定の修正を行います。
加算修正では、会計上は費用だが課税上は損金非該当の項目(一部引当金繰入額、交際費超過額、寄付金超過額など)を利益に加算します。
減算修正では、会計上は非費用だが課税上は損金該当の項目(欠損金繰越控除、租税特別措置による所得控除、受取配当金など)を利益から減算します。
つまり、適正な課税所得を算出するには、会計上の利益に対して加算減算修正を行い、課税上の所得を計算する必要があります。

法人税等のペナルティーと消費税の損金算入

企業が支払う税金のうち、以下の税金や罰金は、損金として控除することができません。

  • 法人税(国税)
  • 法人住民税
  • 延滞税や延滞金などの罰金
  • 利子源泉税
  • 配当源泉税
  • 外国法人税
  • 税抜方式の場合の消費税

これらの税金や罰金を損金に算入すると、制裁措置としての効果が薄れてしまうためです。
一方、税込方式の場合の消費税は、売上や仕入に含まれる消費税が損益計算に反映されているため、納付する消費税も損金に算入されます。

法人税を延滞した場合

法人税を延滞した場合

企業が法人税の支払いを遅延させると、遅延に応じた追加課税が科されます。この追加課税は利子に相当し、法定の納税期限の翌日から実際の納付日までの日数に基づいて算出されます。支払いが遅れるほど、追加課税の割合が高くなります。

追加課税の対象となるケースは、

  • 確定した税額の未納付
  • 申告書提出後の追加納税が生じた場合
  • 更生や決定処分後の残余納税額があるとき

です。

追加課税率は納付の遅延期間によって異なり、2か月を超えると著しく高くなるため、適切な納税期限の遵守が重要となります。

実効税率とは?

実効税率とは?

企業が実際に支払う税金の割合を表すのが「実効税率」です。この実効税率は、法人税に加えて住民税、地方法人税、事業税などの税金を合計して計算されます。

実効税率は、企業の規模や所在地によって異なります。
財務省の資料によると、日本の標準的な実効税率は約30%となっています。

ただし、正確な実効税率を知りたい場合は、専門家に相談することをおすすめします。

個人事業主にかかる税金

個人事業主にかかる税金

この節では、個人で事業を営む方に課される租税について解説いたします。個人事業主が納める必要のある税金の種類や計算方法、申告手続きなどを詳しく説明しますので、事業を始める際の参考にしてください。

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個人事業主の所得税計算

個人事業主の場合、課税対象となるのは、1年間の売上高から必要経費を差し引いた事業所得です。
さらに、この事業所得から各種控除額を差し引いた金額に対して累進課税が適用されます。

  • 利益が増えれば増えるほど、適用される税率も高くなる仕組みです。
  • また、法人と比べて必要経費の範囲が狭く設定されているため、高収入者ほど実質的な課税割合が高くなる傾向にあります。
  • 場合によっては、利益の約半分が税金として徴収されることもあります。

課税額の計算式は、

(売上高-必要経費-所得控除額)×税率-控除額

となります。

復興特別所得税の概要

2011年3月の東日本大震災の復興支援策として、一時的な増税措置が講じられました。この臨時の課税は、2013年から2037年までの25年間にわたり、所得税納税者に課されることになりました。

この復興税は、

  • 所得税の計算過程で一定の控除を行った後の金額に対し、2.1%の割増しを行うことで算出されます。

つまり、

  • 最終的な所得税額から各種控除額を差し引いた金額が、復興税の課税対象となる基準額と位置付けられているのです。

個人住民税の仕組み

地方自治体に納付される個人住民税は、納税者の居住地域によって異なる地方税となります。年次の所得税確定申告後、課税額が決定され通知されます。
この税金は、均等割と所得割の2つの要素から成り立っています。

均等割の仕組みと金額

定額課税される税金が均等割です。収入に関係なく一定の金額が課されます。
東京都の場合、都民税は1,000円、市区町村民税は3,000円が基本額です。
ただし、平成26年度から令和5年度までは復興特別税として

  • 都民税と区市町村民税にそれぞれ500円が上乗せされています。

つまり、東京都では

都道府県民税が1,500円
市町村区民税が3,500円

となり、均等割の合計額は5,000円になります。
均等割の金額は自治体ごとに異なる可能性があるため、居住地の自治体の情報を確認することが重要です。

所得割の計算方法

個人事業主の方の納税額は、前年度の収入から経費を差し引いた金額に応じて決まります。
この金額から所得控除額を差し引き、一定の税率を乗じた上で税額控除を行うことで最終的な納付額が算出されます。
標準的な税率は合計10%とされていますが、居住地域によって異なる場合があります。

個人事業税の概要と計算方法

地方自治体に納付する地方税の一種が個人事業税です。この税金は、法令で定められた業種に従事する事業者に課されますが、ほとんどの事業が対象となっています。
税率は事業の種類によって異なり、3%から5%の範囲内で設定されています。
個人事業税の計算方法は、(事業所得+青色申告特別控除額-事業主控除額)に税率を乗じたものとなります。
事業主控除額については、

  • 1年間事業を行った場合、一律290万円が控除されます。

したがって、年間事業所得が290万円以下であれば、個人事業税は発生しません。

消費税の計算と納税方法

企業は、販売額から仕入れや経費で支払った消費税額を差し引いた金額を納税する必要があります。納税額は、課税対象の売上高に税率を掛けた金額から、課税対象の仕入高に税率を掛けた金額を差し引いて計算されます。

一般的な税率は10%で、そのうち

  • 7.8%が国に納める消費税
  • 残りの2.2%が地方自治体に納める地方消費税

となっています。
ただし、軽減税率が適用される場合は、

  • 6.24%が消費税
  • 1.76%が地方消費税

です。

個人事業主については、前々年度の課税対象売上高が1,000万円以下であれば、その年の消費税納税が免除される特例制度があります。つまり、課税対象売上高が1,000万円を超えた事業年度から2年後に初めて納税義務が発生するということです。
ただし、前々年度の売上高が1,000万円以下でも、特定期間内に課税売上高や給与支払額が1,000万円を超えた場合は、即時に課税事業者となります。

また、支払った消費税額が受け取った消費税額を上回る場合には、還付を受けることができます。

そのほかの税金

そのほかの税金

様々な種類の課税対象があり、それぞれに異なる税率が設定されています。
主要な税金について説明しましょう。

自動車税と経費計上の違い

自動車に課される租税は、個人事業主や企業が所有する車両に対して賦課されます。
法人名義の車両については、取得費用や維持経費を経理処理することが可能ですが、個人事業主の場合は私的利用と業務利用の区分が困難なため、業務に使用された金額のみが経費として認められる扱いとなります。

固定資産税の概要

企業が保有する不動産や建築物などの有形固定資産に対して賦課される租税です。標準的な税率は1.4%と定められています。
個人事業主も不動産や建物を所有する場合、固定資産税の対象となります。
さらに、事業活動の有無にかかわらず、個人が所有する土地や建物についても固定資産税が課されます。

法人税の節税対策

法人税の節税対策

企業が支払う税金のうち、収益に課される法人税などについては、長期的な計画を立て、様々な税制上の措置を活用することで、節税を図ることができます。

ここでは、中小企業でも取り組める基本的な節税策をご紹介します。

  • 設備投資による減価償却費の増加
  • 役員給与の適正化
  • 交際費の損金算入
  • 従業員の福利厚生費の損金算入
  • 賞与引当金の計上
  • 貸倒引当金の計上
  • リース取引の活用

青色申告の重要性

税金の節約には、複式簿記による会計処理と財務諸表の作成が必須となる青色申告制度の利用が前提条件です。
この制度を選択すれば、以下の恩典を受けられます。

  • 欠損金の繰り越し控除などの税制上の恩典

また、所得控除や税額控除など、多くの優遇措置が青色申告者に限定されています。
申請手続きは簡単なので、従来の白色申告から早急に切り替えることをおすすめします。

中小法人の節税対策

中小企業には税制面での様々な恩恵が用意されています。これらの優遇策を賢明に活用することで、税負担を軽減することが可能です。

  • 一般的には損金算入が認められない交際費でも、中小企業には年間800万円までの特例があります。
  • 30万円未満の資産については、その年の経費として全額計上できる制度があります(ただし、年間300万円が上限)。
  • 一定の設備投資を行えば、所得控除や税額控除の対象となります。

ただし、中小企業向けの税制優遇措置には期限が設けられているものが多いため、最新情報の収集が不可欠です。

税額控除の種類と適用範囲

税金の納付額を減らすための制度が税額控除です。この制度は、支払うべき税金から一定額を差し引くことができます。
税額控除には、租税特別措置法と法人税法に基づく2種類があります。
対象資産、適用企業、業種、地域、計算方法は異なりますが、青色申告法人には次のような控除が認められています。

  • 研究開発を行った場合
  • 省エネ設備を取得した場合
  • 中小企業が機械を取得した場合
  • 特定地域で工場用機械を取得した場合
  • 雇用者が増えた場合

まとめ

まとめ

企業や協同組合などの事業活動から生じる収益に対して課される国税が法人税です。株式会社や一般的な法人がこれに該当します。

課税対象となる所得は、税引前の当期利益から必要な加算や控除を行って算出されます。その後、課税所得に税率を乗じ、控除額を差し引くことで最終的な納付額が決定されます。

法人税の節税策としては、以下が挙げられます。

  • 役員報酬の増額
  • 福利厚生の充実化
  • 在庫の処分

これらの方策を適切に講じることで、法人税の軽減が図れます。