Rustは、2015年にリリースされてから、CやC++に代わるアプリケーション開発言語として注目されています。
実際、Microsoft社やGoogle社がRustを開発言語として採用したことから、Rustがどのような言語なのか、その特徴について気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、Rustの特徴やフレームワーク、メリットやデメリットについて解説します。
今注目のRustについて理解を深めるために、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
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Rustとは?
Rustとは、Graydon Hoareの個人プロジェクトをMozilla社が支援するかたちで開発し、2015年にリリースされたプログラミング言語です。
これまで、OSやコンパイラの作成では主に「C」 や「 C++」が主に使用されていました。
しかし、Rustは実行速度がCやC++並みでありながら、CやC++と比べて非常に安全性が高いという点が評価を受け注目を集めています。
Stack Overflow社によって行われた調査によると、2022年にはエンジニアが選ぶ最も好きな言語としてRustが選ばれました。
実際、Microsoft社のWindowsの開発や、Google社のAndroidOSの開発に採用されるなど、大規模なアプリケーション開発時への使用ケースが増えており、今後ますますRustの需要が高まることが期待できるでしょう。
Rustの特徴
Rustは「安全性」「速度」「並列性」に考慮して開発されたプログラミング言語です。
そのため、RustはCやC++と同様の実行速度を持ちながら、CやC++の課題であった低い並列性を克服し高い安全性を持っており、高い評価を受けています。
実際、Rustは速い処理速度と高い安全性を求められるプロジェクトで多く採用されており、需要はますます高まる一方だといえます。
そこで、Rustの主な特徴をCやC++と異なる点も踏まえて詳しく解説していきます。
安全性が高い
Rustの最大の特徴は、安全性が高い点です。
Rustは、それぞれの変数自体に所有権を持たせる仕組みがあり、複数の箇所から一斉にメモリを書き換えることができません。そのためメモリの多重開放が起こらず、メモリの安全性が保たれる仕組みになっています。
またRustでは、コンパイラが所有権を持つといったRust独自の概念を持ちます。これにより、メモリーリークの発生の防止やnullエラー防止に効果的です。
他にもRustは様々な仕組みや機能によって、RustはこれまでのC や C++言語の脆弱性という問題点を改善し、他の言語と比べて高い安全性を持つ言語として広く認知されています。
実行速度が速い
Rustの実行速度は速く、実行速度が同程度であることも特徴の1つです。
Rustの実行速度が速い要因として、まずRustがネイティブコンパイラ言語であり、コンパイラにLLVMを使用し直接機械語を生成することが挙げられます。
また、RustがC++の「ゼロオーバーヘッド原則」を元に静的ディスパッチを用いて前もって対応可能な関数を生成するため、オーバーヘッドがなくなることも要因の1つです。
さらに多言語と比べてRustにはGCがなく、メモリ要求を抑えてプログラムを作成することができるためメモリ効率が上がることも要因となります。
このようにCやC++と同様の機能や構造を持つことで、CやC++と同程度の実行速度を保つことができるため、処理速度が必要なプロジェクトでも採用することが可能です。
安全な並列処理
Rustは、これまでCやC++の弱点とされてきた低い並列性を改善し、安全な並列処理を行うことが可能です。
Rustはマルチスレッドを使用してコードを並列で処理する仕組みを取っています。しかしマルチスレッドは処理時間を短縮できる一方で、エラーの発生確率を上げることが懸念されます。
そこでRustでは、並列処理時に所有権の概念を利用することで、他のスレッドとデータ共有が行われず、データ競合が発生しないため安全な並列処理を行うことが可能です。
また、スレッドへデータが送受信される場合にはチャネルを経由して実行されるため、外部からスレッドを通して変更されることがなく、高い安全性を持つ並列処理が可能となります。
このようにRustはCやC++の課題である低い並列性を克服するかたちで開発されています。
Rustのフレームワーク
フレームワークとは、開発を効率よく進めることのできる機能があらかじめ備わった枠組みを指します。フレームワークを使用することによって、開発の幅が広がり効率よく開発を行うことが可能です。
フレームワークはプログラミング言語ごとに種類があり、その特徴も様々です。
そこで下記では、Rustの代表的なフレームワーク「actix-web」「Tauri」「axum」について、メリット・デメリットを踏まえて紹介します。
actix-web
actix-webとは、株式会社estiによって開発されたフレームワークです。認知度が非常に高く、Webアプリケーション開発に必要な機能が一通り備わっています。
主なメリットは速度が速いことです。シンプルな関数を定義することで容易にWebアプリケーション開発に取り組むことができるため効率的です。
HTTP1や HTTP2、SSL/TLSのようなWebサーバー機能があり、ミドルウェアとの接続にも対応しています。また「SQLとの組み合わせ」のようなexampleやドキュメントが用意されているため、開発時間を短縮することも可能です。
actix-webは、Webアプリケーション開発に必要な機能がシンプルに備わっているフレームワークですが、ミドルウェアを並べてカスタマイズを自由に行うこともできます。
シンプルな機能と速い実行速度を持ちつつ、カスタマイズも自由に行えるフレームワークだと言えるでしょう。
Tauri
Tauriとは、2022年「Election」というフレームワークの進化系として開発されたフレームワークです。Electionと異なりアプリのUIを構築できることで、ファイルサイズやメモリ容量が大幅に小さいコンパクトさが特徴です。
Tauriは、Windows、macOS、Linuxなどのクロスプラットフォームに対応しています。その一方で、Chromiumなどのブラウザを組み込まない設計を実現しました。これにより、脆弱性を発見してからパッチ配布までステップを踏む必要なくebView側の脆弱性対応次第で解決するため、Rustは高いセキュリティを備えています。
今後モバイルアプリ開発への対応を目指しており、C++やGo言語の追加が計画されているなど、今後ますます期待のできるフレームワークと言えるでしょう。
axum
axumとは、2021年tokioチームによってリリースされたフレームワークです。Webアプリケーションに必要な機能は一通り備わっています。
主なメリットは、コードにマクロを使用しない設計という点です。コード上にマクロがないことで、直感的に作業することができ、書き心地も良いと高い評価を得ています。
またtokioチームによって開発されたことから、tokioのhyper、tower、tracingなどに関するバージョン管理が必要ないという点においても安心感の高いフレームワークだといえます。
axumはactix-webと類似する点が多く、エラー表現や返し方、マクロを使用しないコード作成、ハンドラの書き方などは非常に似ています。その一方、 gRPC サーバ上ではTonicが標準となっており、似たスタック上にWebサーバーを実装することができる点については、actix-webより優れているという評価を得ています。
Rustのメリット:安全性が非常に高い
Rustの最も大きなメリットは、安全性が非常に高いことです。
Rustは、実行速度が同程度なCやC++の脆弱性を改善するかたちで開発されたため、CやC++に替わる言語として高い注目を集める言語の1つです。
また、他のプログラミング言語と比べても高い安全性という点が非常に評価されており、Microsoft社やGoogle社をはじめとした様々な企業の開発に採用されています。
そこでRustの特徴である高い安全性について、Rustの機能や仕組みを踏まえて詳しく解説していきます。
所有権を使ったメモリ管理方法
Rustでは、1つの値に対して1つの変数のみが所有権を持つというメモリ管理方法を採用しています。
そのため、複数の外部箇所からメモリを同時に書き換えることができません。これによりメモリの多重開放を防ぐことができるため、高い安全性を保つことが可能です。
またRustでは、ガベージコレクション(使用しなくなったメモリ領域をプログラムが自動的に判断して開放する)によって、メモリ領域を最小限に抑えてプログラムを作成することができます。このように、高い安全性とメモリ効率の良さがRustのメリットです。
他にもRustは、所有権を持った変数がライフタイムを越えないようにする仕組みや、メモリーリークの発生を防ぐ仕組みがあります。
エラーを未然に防ぐ
Rustでは全ての変数が値を持つため、値が入っていないことを表す場合には「値がnullかどうか」事前にチェックを行います。これにより、予期せずnullへアクセスすることがなく、nullエラーによるシステム全体の停止を防ぐことが可能です。
また、nullエラーに限らず、多くのシステムエラーは不正なデータアクセスが大半の要因です。
しかし、Rustではコンパイル時に不正なデータアクセスを防止する機能があるため、実行前に不正なメモリアクセスが起きる可能性を取り除くことができます。
多言語の場合実行時にチェックを加えて行う必要がある一方、Rustではプログラム実行前コンパイル時に行えるため、開発効率の向上が図れます。このように、コストを増やすことなくプログラム欠陥の原因を探せることはメリットだといえます。
C や C++の脆弱性を改善
これまでCやC++では、セキュリティ上の脆弱性が課題とされてきました。しかし、その多くはメモリリークやダングリングポインタといったメモリ利用時のエラーが要因です。
そこでRustでは、前述したようにプログラム側でコンパイル時にエラーの有無をチェックするため、ボローチェッカーを備えています。これにより、プログラム欠陥の要因となるエラーを未然に防ぐことが可能です。
また、ボローチェッカーが自動的に働くことでプログラムがエラーを監視できる状態に繋がるため、高い安全性を保つことができます。
このようにRustは、所有権を使ったメモリ管理方法やコンパイル時のエラー検査によって、これまで課題とされてきたCやC++の脆弱性を改善し、高い安全性を持つ言語です。
Rustのデメリット:学習コストが高い
Rustのデメリットは、Rust独自の概念を理解する必要があるため、多言語と比べて学習コストが高いことです。
特に「所有権」や「ライフタイム」といった概念は、CやC++の学習経験がなく、メモリ管理に詳しくない人にとって理解しづらい概念となります。また「マルチパラダイム」における構文が幅広いため、言語知識の幅が求められます。
Rust独自の概念を学習する必要があるため、必要な知識のボリュームは膨大です。しかし、これまでCやC++の学習経験がある人や幅広い言語を学習してきた人であれば、Rust独自の概念を理解することが比較的容易な場合もあります。
Rustを習得したい人は、ある程度幅広い言語学習やCやC++の学習を終えてから取り組むとよいでしょう。
まとめ
Rustは、CやC++の脆弱性を改善し「安全性」「速度」「並列性」に重点を置いて開発されたプログラミング言語です。
所有権を使ったメモリ管理方法やコンパイル時のエラー検査により安全性が非常に高い点が大きなメリットです。また、CやC++と速度が同程度で、nullエラーを始めとする様々なエラーを未然に防ぐことができる点で高く評価されています。
以上のことから、RustはCやC++に代わるアプリケーション開発の言語として注目されており、今後ますます需要が高まる言語だといえるでしょう。
Rustのフレームワークは「actix-web」「Tauri」「axum」です。Rustは比較的学習コストが高い言語のため、ある程度幅広い言語学習やCやC++の学習を終えてから取り組むとよいでしょう。